— 御社の事業内容について教えてください
池田様:オフィスビルや公共施設、ショッピングセンターやホテルといった建物の設備管理や警備、清掃など、建物に関係する業務を行う“建物管理の専門会社”です。
来期で日本管財は第60期を迎えますが、持続的な成長を実現するためには、「グループ シナジー」を発揮しつつ、事業の強化を図ることが必要不可欠と考え、2023年4月3日に持株会社である日本管財ホールディングスを設立しました。
— 「TOKIUMインボイス」と「TOKIUM経費精算」導入前の課題についてお聞かせください
池田様:まず請求書については、毎月あつかう1万枚以上の請求書のほとんどが紙で、その処理が経理部だけでなく各拠点にとっても大きな負担となっていました。
建物管理という事業の性格上、県庁や市役所、公営住宅、体育館といった各種施設の所有者である官公庁との取引も多くあります。そして、官公庁との取引では成果物や契約書、請求書を書面で提出する事が多い為、必然的に当社の協力会社から受領するエビデンスも書面となる事が多くなります。
契約書については厳格に入札参加資格申請で申請した印影との同一性が求められます。
そうした事情から、業界として紙が非常に多くなっており、当社の業務スタイルも「紙ありき」となっていました。
— 経理部だけでなく各拠点にとっても負担だったのでしょうか?
池田様:はい。月末になると各拠点では、協力会社さんから届く請求書の内容と基幹システムに登録されているデータとの照合作業に何日も費やしていました。当月支払予定の作業の請求書が届いていなければ、協力会社さんに問い合わせ、判明した作業の遅れなどの情報を基幹システム上の作業スケジュールに入力するといった対応も必要になります。
また、そうしたチェックを済ませたことを示すための、担当者やグループ長、管理課長や部門長などの捺印リレーにも工数を要していました。
さらに、そうした処理を済ませても経理部に請求書を送る前にもうひと手間必要で、経理部が確認しやすいように、自社で定めた取引先番号を記入した上でその番号順に並べ替えます。私も経験したことがあるのですが、慣れていても30〜40分はかかる作業です。
拠点数が多いだけに、会社全体で考えると紙の請求書の処理に膨大な工数がかかっていました。
— 経理部側ではどういったご苦労がありましたか?
池田様:スキャン作業がとにかく大変でした。全国から毎月送られてくる段ボール箱3箱分ほどの請求書を、支払系を担当する3名が毎回20時間程度かけてスキャンしていました。
スキャン作業がより大変になっていたことの理由に、中小企業や個人事業主の方との取引が多いという事情があります。
管理業務を受託するといっても、当社が設備のメンテナンスや清掃といった現場での業務を全て行うわけではなく、全国で数千社にも上る協力会社さんたちに委託するのですが、多くが中小企業や個人事業主の方なのです。
結果として、送られてくる請求書のサイズや紙質はバラバラで、特殊なサイズのものや昔ながらの複写式のもの、油紙のような質感の薄手のものまであり本当に多種多様です。だからスキャナーにセットして一気にスキャンすることができません。
請求書の種類に合わせて調整しながらひたすらスキャンし続けるのは、担当者にとって苦痛以外の何物でもありませんでした。
— 原本はどのように保管していましたか?
池田様:当社は東京と西宮(兵庫県)の二本社制なのですが、直近1年分を西宮の本店にあるキャビネットに、それ以外は貸し倉庫に保管していました。
先ほどお話ししたように官公庁さんからは紙での提出を求められる事が多く、監査の際に支払実績や請求書、契約書などを見せるようにと言われると、必要な書類を探し出さなくてはならず大仕事でした。
— 経費精算に関する課題についても教えてください
池田様:経費精算も紙ベースである限り出社が必要です。出社しなくてもスマホから申請・承認ができるような環境を実現したいと考え、実は3年ほど前には既に経費精算システムの入れ替えを検討し始めていました。
しかし、そうこうするうちに電子帳簿保存法やインボイス制度の話が出てきました。そこで試算してみると、法制度への対応により工数にして9,000時間の増加、インフラ整備費なども含めた費用としては5,300万円かかるという試算結果が出たのです。
その試算結果を受け、法対応によって生じる負担の軽減という視点で改めてシステム選定することにして、この機に全部まとめて対応しようということになりました。
— いろいろ重なってシステム導入へと繋がったのですね。
池田様:はい。紙ベースでの運用に伴う負担、電子帳簿保存法とインボイス制度、それからコロナ禍の影響もありました。紙運用を続ける限りどうしても出社が必要ですので、社員を守るためにテレワークを実施するにはペーパーレス化が必須でした。
加えて、当社はBCP(非常事態においても事業を継続するための計画)の観点を重視していて、二本社制をとっているのもそうした観点からです。
そんな背景もあり、もともと全社的にDX推進に向け動き始めてもいましたので、ペーパーレス化の流れは既にできていたともいえます。
堺様:主要オフィスで進めていたフリーアドレス化に即した判断だったともいえそうです。以前は各自に割り振られたデスクの上に書類が山積みになっていて、まさに昭和のオフィスといった感じでしたが、フリーアドレス制が導入されて書類を積み上げる場所がなくなった以上、ペーパーレス化を進めざるを得ませんので。
— システムを検討する中で、最終的にTOKIUMに決めた理由は何ですか?
池田様:中小の協力会社さんでは電子化対応が難しいケースも少なくないため、中小企業や個人事業主の方との取引の多い当社にとって、紙の請求書も電子化した上で取り込んでもらえることは大きなポイントでしたね。
その他、紙と同じような感覚で扱えるので従来の運用を大きく変える必要がなかったこと、会計システムへの連携がスムーズにできることも加えた3つが決め手でした。
他社のシステムでは、紙は自分でシステムに入力しないといけなかったり、自社で利用している会計システムと連携が出来なかったり……。全て対応しているのがTOKIUMさんだったのです。
近藤様:会計システムとの連携について言えば、細かなセグメント情報や複数の条件分岐がある場合、他のSaaSでは「そこは手動でやってください」「別途プログラムを組んでください」となることが多いです。
一方、TOKIUMさんでは対応していただけるケースがほとんどで、こうしたカスタマイズにおける柔軟性はシステム部門としてはありがたく、優位性を感じさせるポイントとなったように思います。
また、汎用ワークフローがあると知り、電子化する仕組みがまだ整っていないグループ会社への展開に幅広く活用できるのではないかとも感じました。
池田様:グループ会社にも導入することを視野に入れると、当初思っていたよりも多くの使い方ができそうなTOKIUMさんのシステムなら当社のDXの可能性が広がるのではと想像されたのです。実際、グループ会社7社に展開済みです。
— グループ会社への展開時に苦労したことがあれば教えてください
池田様:分社した会社であればともかく、M&Aでグループ会社になったようなところはカラーが全く異なります。また、インターネット広告代理店、警備専門会社、オーナー代行サービス会社など、業種の違いもカルチャーの違いに繋がります。そこへ「うちと同じシステムを導入してください」と言えば、反発も出てきます。
そこで、対面や電話で窓口以外の従業員含め広くコミュニケーションを取り、現行の運用を聞き取り、擦り合わせをし、各社の規模感や業務フローに即した運用を提案することでなんとか導入まで漕ぎ着けました。
TOKIUMさんのシステムには、各社の実情に即した運用が可能なだけの自由度の高さがあるからこそ可能だったと思います。
近藤様:本質的な問題として、ホールディングス化したにもかかわらずシステムや基盤が標準化されていないと、非効率な仕組みが人材活用や業務効率向上を阻む可能性があります。ですから、基本的には共通基盤でやっていこうと。
矢部様:同じような環境を固めて日本管財グループとして統一していくことで、投資も集中的にできますし、生産性も上がっていくでしょう。
近藤様: もう少し先の話とはなりそうですが、できれば業務プロセスも統一するところまで持って行きたいですね。
— 当社の導入サポートについてのご感想をお聞かせください
池田様:とても柔軟に対応していただいて、大変感謝しています。
こちらで取りまとめた現場の話を受けてもらうだけでなく、現場の人間が集まる場で生の声を聞いていただいたり、直接説明していただいたりしました。さらに、そうした場で出てきた意見をすぐにエンジニアに投げていち早く改修してくださったのもありがたかったですね。
近藤様:そう、改修対応が早いですよね。使い勝手がどんどん良くなっています。
また、専任サポート担当者の知識の豊富さには驚かされましたね。仕訳など会計的なことに精通していて、システム連携に関してもこちらの考えていることを的確に汲み取っていただけたのが助かりました。
— 「TOKIUMインボイス」導入の効果はいかがですか?
池田様:まず何よりも、見込まれていた法対応に伴う工数増大、特に各拠点での工数増大が著しく抑制されています。
システムを入れずに法対応する場合、たとえば適格請求発行事業者番号を手入力する手間やそれを照合する手間などが増えるはずで、先ほどお話しした通り年間9,000時間程度の工数増大が見込まれていました。
現在、請求書の電子化率は87%ですので、単純計算ですが、本来増えるはずだった9,000時間×87%=7,830時間が削減されていることになります。電子化率がこの先さらに上がっていけば工数削減効果はより高まるでしょう。
— 経理部における効果はいかがですか?
池田様:スキャン作業がなくなりましたので、それにあてていたひと月当たり20時間前後の工数が削減されましたし、原本管理の手間からも解放されました。
また、システム導入以来、官公庁の監査をまだ経験していないのですが、数カ所に事前確認してみた感じでは「電子帳簿保存法に対応しているのでPDFが原紙です」というスタンスであれば、PDFでの提示でも受け入れてもらえそうです。そうなれば、監査時の書類捜索も必要なくなるのではと期待しています。
堺様:加えて、請求書と同じタイミングで協力会社さんから届く作業完了報告書についてもペーパーレス化を進めており、当社の基幹システムに報告書データを直接アップロードしていただく形に変わってきています。
直近で集計を取ったところ、85%以上の報告書が基幹システムに直接アップロードされています。オンラインでのやり取りに抵抗感を持つ協力会社さんは一定数いるものの、このまま順調に推移していけば、請求書まわりと報告書まわりのどちらもペーパーレス化が進み、紙は限りなくゼロに近づくはずです。
— 「TOKIUM経費精算」についてはいかがですか?
池田様:評判は上々です。スマホから申請・承認できる便利さはもちろん、適格請求書発行事業者番号や税率を都度入力する必要もなく、スマホで撮影するだけで済むのですから、かなり楽になっているといえます。
この先利用者が操作に慣れて、より効率の良い使い方ができるようになってくるほど、便利さが増していくことでしょう。
— 業務効率化は各自の業務の進め方や部署の業務運営にどう影響していますか?
池田様:スキャン作業ではなく、承認時のより細かなチェック作業に時間を使えるようになりました。以前であれば見落としてしまっていたかもしれないような点にも気づいて指摘できるようになり、統制機能が強化されています。
また、システム導入により入金担当や支払担当の業務ウェイトが多少変わったことを機にジョブローテーションを行いましたので、結果的に人材育成に役立ったかと思います。
— 将来的に目指す経理部門像についてお聞かせください
池田様:足元の話では、経理部で現在実施している週に3日くらいのテレワークを、さらに進めて週に4日くらいとし、ひと月に数日出社すれば回っていくようにして、多様性のある働き方を目指したいですね。
グループ全体に関わる話では、グループ会社の経理の一元化、いわゆるシェアードサービスを視野に入れていきたいです。それをホールディングス化した効果の一つとして示せると良いと考えています。
今後ますますリソース確保が難しくなるであろうことを考えれば、やはり分散するより集中するべきです。今回のシステム導入をシェアードサービスへの足がかりとすることができるのではと思っています。
【取材日:2024年3月28日】