— 御社の事業内容について教えてください
当社は「ひとりひとりのモビリティライフを想い笑顔あふれる毎日を創る」を経営理念として、神奈川県内でトヨタ車の新車および中古車の販売、自動車整備・修理、カスタマイズ・部品の販売などを行っています。1939年に神奈川トヨタ販売株式会社が設立され、1948年に現在の社名である神奈川トヨタ自動車株式会社に変更しました。取り扱い車種はクラウン、ランドクルーザーをはじめとするトヨタ車全車種と、レクサス全車種です。ショッピングモールなどにおける展示会からの販売実績は、当社の非常に大きな強みです。
— TOKIUM導入前に感じられていた課題について教えてください。
まず、大きな背景としてトヨタ自動車は2020年5月から全国のトヨタ販売店で全車種併売をスタートすると発表しました。当社は、このタイミングに合わせ、現在の神奈川トヨタ自動車株式会社に、トヨタカローラ横浜株式会社、ネッツトヨタ横浜株式会社、ネッツトヨタ湘南株式会社の3社を統合しました。この統合がきっかけとなり、各社ごとに異なっていた経理業務のプロセスに起因する、3つの大きな課題を解決する必要が生じました。
1つ目は、4社統合による様々な領域の規定や運用の整理です。その中でも特に、基幹システムを統一する作業は、マスターの設定や運用方法を4社統一にする必要がありました。
また経理部門においては、業務スタッフの雇用形態が各社によってバラバラであったために、各拠点によって社員とパートが混在していましたので、同じ職種であっても、役割や責任の重さ、勤務時間などが異なっていました。そのため、各勤務形態に応じた、業務範囲を設定する必要がありました。
2つ目は、現金を取り扱うリスクの軽減です。これまでは各拠点で、業務で立て替えた経費は領収証と伝票をセットして経費精算業務を担当するスタッフへ渡して精算していました。そのため、毎月多くの現金が入出金されるような運用が続き、特に月末は銀行への預け入れや、基幹システムの稼働時間内に出納総括を行わなければならず、経費精算業務を担当するスタッフの心理的なプレッシャーになっていたことに加えて、現金の取り扱いリスクも発生していました。
3つ目は、内部統制上の課題です。運用の問題として、前述の通り、各拠点の経費は拠点ごとに精算を行うので、どうしてもその経費の妥当性の判断が経費精算業務を担当するスタッフに委ねられてしまい、検印は出納総括が終わってから管理者が行う、いわゆる、事後承認がよく発生していました。
そのほかにも、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応準備も必要だったため、なるべく早い時期に、経費精算システムの導入が求められていました。
— TOKIUM導入の具体的な背景について教えてください。
先述の課題を解決するために、まず検討したのが、当社グループ会社にシステム開発を依頼することでした。
しかし、領収証原本との突合作業や保管における業務負荷は変わらず、また法改正のたびにシステムをリアルタイムで改修することなど現実的には難しいと判断し、SaaSを導入する方向で進めることを決定しました。
— 導入前に比較したサービスがあれば教えてください。
「TOKIUM経費精算」以外にも複数のシステムを検討しました。また、ワークフローのシステムも検討しましたが、インボイス制度の法改正に対する迅速なアップデートが困難なことや、当社規模の人事異動に対する承認プロセスのメンテナンス負荷などが高いことが判明したため、ワークフローシステムではなく経費精算システムの導入を決めました。
— 「TOKIUM経費精算」を選定した決め手を教えてください。
複数の経費精算システムを比較検討した結果、「TOKIUM経費精算」だけが領収証の原本回収と突合作業に対応できる点が大きな決め手となりました。
今回のシステム刷新における目指すべき姿は、「店舗スタッフと本部スタッフの双方が業務を効率化できるシステムを導入する」ことでした。グループ会社の中には他社のシステムをすでに導入している会社もありましたが、当社にとって導入コストがかかったとしても、営業スタッフや業務スタッフの経費精算にかかる手間や、本部の突合作業にかかる時間を大幅に削減できることが明らかだったので、TOKIUM経費精算を利用すれば、会社全体の生産性が向上し、導入コスト以上の効果が得られると考え、導入を決定しました。
— TOKIUMの導入サポートに対する感想を教えていただけますか。
導入に際して、トヨタ販売店の基幹システムである「ai21(アイ21)」に対応した専用フォーマットをTOKIUMさんが作れるのかと当初は疑問に思っていました。しかし、お互いが根気良くミーティングを重ねて理解を深めた結果、完成にたどり着けた時は、非常に嬉しかったです。比較検討していた他社では対応が難しいと言われていましたが、TOKIUMさんと何度も仕様書を検証して専用フォーマットを作成し、仕訳データをCSVファイルからスムーズに取り込めるよう調整していただきました。このおかげで、会計システムとの連携が問題なく進められました。
さらに、フォーマットの作成にとどまらず、「システムの導入は最初が肝心です」と、TOKIUMの担当者が徹底的に導入のサポートをしてくれたことも印象に残っています。また、導入後も手厚いサポートを続けていただいています。これにより、システムに関する理解が深まったことはもちろんのこと、ビジネスパートナーとしても絆が深まったと感じました。
— TOKIUMのスムーズな導入のため、御社内で取り組んだことがあれば教えてください。
導入は本部部門、支社本部、店舗と3段階に分けて進めました。
当社の組織は、大きく分けて営業本部と管理本部があり、営業本部には地域ごとに店舗をまとめる8つの支社があります。全従業員は3,000名以上おりますので、段階的に導入していく方針で進めていきました。まず、管理本部の約200名を対象にトライアルという形で導入を開始しました。本部部門では、多様で複雑な経費科目や税率の混在などが多数存在していたため、様々なマスター設定を検証しながら進めました。説明会を対面で実施することで、申請できないなどのトラブル発生時はすぐに対応することができましたし、その場で使用感や疑問点などのフィードバックを収集することができました。この取り組みが、今のマニュアル作りの礎となり、後の支社や店舗への導入を円滑に進めるうえで非常に役立ちました。
続いて、店舗を除いた営業本部スタッフと8支社の本部スタッフの約150名を対象に導入を進めました。ここでは、店舗展開を見据えて、支社スタッフにもTOKIUMを知ってもらい、理解を深めて貰いたかったためです。そして、最終的に店舗の営業スタッフ約1,000名の利用開始となり全店導入が完了しました。
また、受け入れやすい雰囲気を作るために、導入後の経費精算から振り込みまでの流れを丁寧にご案内しました。その結果、大きな負担がかからずに業務が楽になることを理解してもらえ、「TOKIUM経費精算」は便利で簡単という良い評判を社内に広められたことで、利用が浸透したと考えています。
— 「TOKIUM経費精算」の定量面の導入効果について教えていただけますか。
まず、全社で経費精算にかかる時間を年間で15,000時間削減できました。さらに、現金による精算件数が約3分の1に減少し、現金の取り扱いリスクが軽減されました。また、現金による立替が減少したことで1月当たり約5,000枚あった領収証の枚数が、10分の1以下に削減できました。TOKIUMによる領収書の原本回収と突合作業の自動化により、経費精算の業務が効率化され、新たな時間が生まれたので、その時間を別の作業などで有効に活用して貰っています。
店舗の経費精算業務を担当していたスタッフの作業時間も、これまで全社で年間約8,000時間から、今ではほぼゼロになっています。ここでも新たに生まれた時間は、お客様や電話対応など、他のスタッフのサポートに活用して貰っています。
— 定性面についてはいかがでしょうか。
定性面でも大きな効果が見られます。これまで営業スタッフは展示会などから店舗事務所に一旦戻り、経費精算を行う必要がありましたが、「TOKIUM経費精算」の導入により業務スマホ1つで精算が可能となり、経費精算のためだけに帰社をしなくても大丈夫になりました。これにより、営業スタッフの業務効率が大幅に向上できました。
TOKIUMの利用者に対する社内調査では、8割以上が「出金手続きが楽になった」と回答しています。さらにTOKIUMに対する総合評価も半数以上が「良い」と回答するなど現場からの評判は上々です。
想像していた以上に効果があったのは、TOKIUMの導入により承認フローが整備され、人事組織のピラミッド構造に基づいた承認フローを構築できたことです。部長の承認は上席の担当役員が、店長の承認は上席である支社本部長がそれぞれ行うようになりました。これによって、不正リスクの削減や承認プロセスが周知され内部統制が強化できました。
— 今後どのような財務部門を目指したいとお考えでしょうか。展望をお聞かせください。
今までアナログで属人的に行っていた請求書と領収書の突合にかけていた時間が減り、新たな時間が生まれました。今後はこの時間を業務改善に向けたアイディアの検討や法改正の対応などに投下できるようにしていきたいと考えています。さらに集まった経費精算のデータを元に分析を行い、より生産性の高い仕事に注力することや、予実管理、工数削減の仕組作りに活用していきたいと思います。
— 本日は貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。
【取材日:2024年12月】