この記事は約 4 分で読めます。
宛名が「上様」と書かれた領収書は経費で落とせるのでしょうか?
結論は、「落とせます」。
宛名が個人名であれ上様であれ、その領収書での支出が会社の事業のために使われたものであれば、経費として落とすことができます。
その際重要なポイントとなってくるのは、その領収書での支出が会社の事業のために使われたものであると証明できること(個人的な支出ではないことを証明できること)です。
領収書の宛名が上様となっている場合、他の資料で会社の支払いであることをカバーするようなものを準備するか、その旨記録として残しておきましょう。
ここからは、この上様と書かれた領収書について、より踏み込んで解説してゆきます。
ちなみに筆者である私は日系企業、外資系企業の経理部で8年間働き、主に月次・年次決算や税務申告といった経理業務を担当してきました。
本記事のテーマである領収書については、年間数百枚は確認していますので、その点皆様の参考にしていただければと思います。
そもそも「上様」(うえさま)とは?
領収書に書かれている「上様」は、一般的には「うえさま」と読みます。うえさまの他に、「かみさま」「じょうさま」と読む場合もあります。
上様の由来は複数ありますが、その中で主だったものは2つ。まず一つ目は、「上得意様」「上客様」という言葉が省略され、「上様」となった説。二つ目は、古代中国で帝のことを「上様」と呼んでいた文化が日本に伝わり、将軍や天皇のことを「上様」と呼ぶようになった説。この2つが有力とされています。
この2つの説からもわかる通り、「上様」とは直接名前を呼ばずに目上の人を表すときに使われていた言葉になります。そのため、現在の領収書でも、名を表さずに目の上の人を表す呼称として利用されています。
領収書の宛名が上様でも経費として落とせるか?
では、その領収書、宛名が上様でも経費として精算することは可能なのでしょうか?
宛名が上様でも経費として落とせる
答えは、落とせます。
その領収書での支出が会社の事業のために使われたものであれば、経費として落とすことができます。
領収書の宛名は、誰が支出したのか確認するために利用されています。この場合の「誰が」とは、「会社が」となります。
そのため、一般的に会社名を記載しておくことで、会社としての支出である(=個人的な支出ではない)と表すことに利用されています。
けれど、会社としての支出であると証明するための手段は、宛名でなければならないわけではありません。税法でも「領収書の宛名でのみ事業用と判ずる」等の記載はありません。
会議の開催履歴や議事録等、他の資料でも代替えは可能です。そのため、領収書の宛名は上様でも経費として落とすことは可能なのです。
宛名が個人名でも経費として落とせる
また、上様の場合だけでなく、宛名は個人名であっても会社の経費として落とすことはできます。
宛名が個人名であれ上様であれ、その領収書での支出が会社の事業のために使われたものであれば、経費として落とすことができます。理由は、上様の場合と同じになります。
領収書の宛名が上様・個人名となっている場合、補足資料を準備すること
領収書の宛名が上様、または個人名となっていても、経費として落とすことができます。
その際重要なポイントとなってくるのは、その領収書での支出が会社の事業のために使われたものであると証明できること(個人的な支出ではないことを証明できること)です。
領収書の宛名が上様となっている場合、他の資料で会社の支払いであることをカバーするようなものを準備するか、その旨記録として残しておきましょう。
例えば、それが喫茶店での打ち合わせだった場合、その打ち合わせ内容の議事録(簡単なメモ)にどこの場所でいつ打ち合わせをしたのか、ということを入れておきましょう。
そうすることで、上様と宛名の書かれた領収書の支払日、支払先(=場所)と付け合わせをすることで、情報が補完でき、その喫茶店での支出が会社の費用であると証明することができます。
できる限り宛名が会社名の領収書を受け取ること
宛名が上様の領収書でも、会社の費用として落とすことはできます。
だからといって、すべての領収書を上様名義でもらうことは止めにしましょう。
中にはこの上様という言葉を利用し、個人用の支出も事業の支出であると見せかけ、脱税を行う人もいます。あまりに上様の領収書ばかりだと、税務調査の際にこのような脱税ではないかと疑われかねません。
何のやましいこともないちゃんとした費用なのに疑われるのは、ちょっと納得がいきませんよね。
そうならないためにも、領収書をもらう際はできるだけ会社名で受け取るようにしましょう。
本記事では、注目されている4社の経費精算システムを徹底比較した資料を無料配布しています。自社に最適な経費精算システムを選定したい方は下記からご覧ください。
【関連する無料ガイドブック】
▶ 経費精算システム選び方ガイド【4社の比較表付き】
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
社内規則によっては上様の領収書での経費精算はできない場合もある
上記で「上様名義の領収書でも経費で落とせる」と書きました。
但し、これは税務上の話。
社内規則で、宛名が上様の領収書での経費精算はできないと定めている場合もあります。
理由は、会社の費用であることを証明できないから
なぜ、宛名が上様と書かれた領収書は、社内規則で精算できないと定められているのでしょうか。
その理由は、領収書に書かれた「上様」が本当に会社のことを指しているのかどうか、証明できないから。
中小企業や個人事業主であれば、従業員一人一人にヒアリングをしたり、付属の資料を追加して事業の支出であったことを証明できますが、大企業ではそうはいきません。
「上様」で許可した途端、経理部には大量の「上様」の領収書が回ってくることになるでしょう。レジ前で会社名を名乗るより、「上様で」と言ってしまった方が簡単ですからね。
宛名が個人名の場合も精算できない会社がある
宛名が上様では、社内規則で領収書が精算できない場合があります。
これは宛名が個人名の場合も同じです。
従業員が少ない場合は、領収書以外の証拠を集めることも容易ですが、人数が多い場合はそれが本当に個人的な支出ではないということを証明することが難しくなってきます。
そのため、社内規則で精算できない(しない)と定めている会社が多くあります。
従業員数の多い会社では、宛名が上様の領収書では精算できない場合がほとんど
私は複数の会社で経理を経験していますが、どこの会社も上様、または個人名での領収書の精算は認めていませんでした。
けれど、人数がさほど多くなかった中小企業では、例外的に「上様」の領収書でOKとした場合もありました。
その際は、領収書の提出者が間違いに気づき、領収書の再発行をお店に依頼したが対応してもらえなかったこともあり、事業用であることを証明する資料の提出と、事の顛末を記載した書類を提出してもらうことで可としました。
このような対応は、従業員が少ない会社であったからできたこと。従業員の多い会社では、支払件数からいって避けることをおすすめします。
また、ぜひ下記記事も参考にしてみてください。
そもそも領収書はなぜ必要なのか?
経費精算をする際、領収書はなぜ必要なのでしょうか?
それは、支出の内容を証明・確認するためです。
我々会社側にとっては、それが経費として落とすことが正しいと証明するため。
逆に調査する側にとっては、それが経費として落とすことが正しいと確認するためになります。
領収書での確認内容は4つ
何かを経費として精算する際、確認ができる資料を残しておかなければならない項目は4つ。
- 支払日(品物の購入日/サービス等の利用日・使用日)
- 支払先(店名や相手先)
- 支払内容(サービス内容)
- 支払金額
領収書は、この4点を確認するための資料として用いられています。
レシートでも経費として落とせる
経費として精算するためには、上記4点が確認できる資料(証拠)を残しておく必要があります。その際、資料は領収書でなければならないという定めは税法上、ありません。
そのため、領収書ではなく、レシートでも経費として落とすことは可能です。
レシートが領収書の代わりにできなかったのは過去
では、なぜ一般的に経費精算の際領収書が利用されているのでしょうか。
それは、昔のレシートでは前述した4つの事項が確認できなかったからです。現在のレシートは、4つの事項が確認できる作りになっているところがほとんど。そのため、今はレシートでの経費精算も可能です。
ただし、4つの事項がきちんと記載されていることが大前提。
古いレジを使用しているお店では、いまだに4つの事項が記載されていない場合もあります。その場合は、経費精算の際の証拠とするには弱い資料となりますので、そのレシートでの精算は避けるようにしましょう。
また、電子帳簿保存法の規制緩和により領収書の破棄も可能です。
まとめ
上様名義の領収書でも、会社の経費として落とすことはできます。
しかし、「個人の支出ではない」、と証明できることが必要となってきます。
領収書を受け取る際は、できる限り会社名で受け取るようにしましょう。
▶ 電子帳簿保存法・インボイス制度対応ガイド【全20ページ | 対応方針まで丸わかり】
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます