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『年末調整が終わって息をつく暇もなく、年始にバタバタと給与支払報告書を出したものの、間違えてしまった!』
と思った経験はありませんか?
1月1日時点で給与を支払っている役員・従業員全員分の給与支払報告書を1月31日までに提出しなければなりません。不慣れな報告書であるため、間違ってしまうこともあると思います。従業員の住所が違っていたり、退職してしまったり、訂正が必要な場合も多々あるでしょう。
間違っていても、大丈夫。各自治体では訂正を受け付けていますので、訂正して自治体に再提出すればよいのです。
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ただし、自治体によって報告書の内容や必要書類が少し異なります。
最終的には自社が提出する自治体のホームページを見て確認するしかないのですが、自治体のホームページは無味乾燥であったり、様々なところに情報が散らばっていたりします。各ケース毎の訂正方法を知りたいと思ったときに、網羅的に解説してあるページがあったら便利ですよね。
この記事ではそうした悩みにお答えし、給与支払報告書を間違ってしまった場合の対処法を、様々な場合に分けてご紹介します。
そもそも、給与支払報告書とは?
給与支払報告書とは、地方税である住民税(都道府県民税や市町村民税)の支払い根拠となる書類です。
給与支払報告書は個人別明細票と総括表にわかれます。個人別明細書は源泉徴収票と内容が同じなので混同しがちですが、個人別明細書は提出先が市町村となり、住民税や国民健康保険料の支払いの計算根拠となります。
また、源泉徴収票にはない総括表という書類もあります。給与支払報告書は、略して「給報」(きゅうほう)と呼ばれることもあります。
所得税は確定申告や源泉徴収(年末調整)によって納税しますが、住民税は行政側が税額を決定・通知し課税します(賦課課税方式)。
サラリーマンなどの給与所得者については、事業主が自治体に給与支払報告書を提出することで、行政側が所得を把握して課税する仕組みになっています。
個人別明細書の作成対象になるのは
1月1日時点で、給与を支払っている事業所等は原則として前年1年のうちに給与を支払った役員・従業員全員分の個人別明細書を1月31日までに提出しなければいけません。例外として、すでに退職している役員・従業員のうち、前年に支払った給与の合計が30万円以下の方については、提出が免除される自治体が多いです。
ただし、自治体によって異なるため、提出する市区町村に確認しましょう。(未提出には罰則があります)
例えば、令和1年度の個人別明細書を作成する対象となるのは以下のいずれかに該当する方です。また、給与等の支払を受けている方にはパートタイム・アルバイトの方を含みます。
- 令和1年1月1日に給与等の支払を受けている方
- 平成30年中に退職した方
従業員の住所がどこにある者を個人別明細書で提出するのか
市内、自治体の管轄内に住所がある場合、個人明細書を提出します。
住所が自治体内にない場合、総括表のみ提出してください。その際には、総括表の「報告人員」の「在職者」欄と「退職者」欄に、ともに「0」と記入してください。
また、「受給者総人員」欄は、市外に住所がある従業員の方がいる場合はその人数を、市内・市外問わず従業員の方がいない場合は「0」と記入してください。
従業員が異動した、または提出する自治体が間違っていた場合
「給与支払報告書」を提出したあと、退職などにより給与の支払をしなくなった場合は、「異動届出書」を提出する必要があります。給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書を異動事由「住所誤報」で作成し、自治体に提出します。
併せて、給与支払報告書(個人別明細書)を1月1日時点に居住している市町村へ再提出します。
A市という役所に給与支払報告書を出したが、該当者は実際A市の役所には住んでおらず、B市に住んでいました。この場合の対応も上記と同様です。
提出書類
・ 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
給与支払報告書の訂正・修正の方法とは
結論としては、訂正して再提出してください。各自治体では、訂正を受け付けています。
それぞれのケース毎に、訂正のやり方を記載します。
給与支払報告書の総括表を間違えた場合の対処法
1.所在地や名称に誤りがあった場合
「給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書」を提出します。
正しい内容へ直したものの左上に赤字で「訂正」と明記して提出します。
総括表は、左上に追加・訂正の欄がありますので、そこに○をつけて提出をする事になります。
2. 1.以外のその他の誤り
特に提出し直す必要はありません。
給与支払報告書の個人別明細書を間違えた場合の対処法
1.住所の記載を間違えていた場合
住所誤報を提出します。市内での誤りの場合は、訂正分の給与支払報告書の提出でも可です。
2. 1.以外の部分を間違えていた場合
訂正分の給与支払報告書を提出します。
給与支払報告書(個人別明細書)の摘要欄に朱書きで「訂正」と記載し、給与支払報告書(総括表)と併せて提出します。
提出書類(さいたま市の例) ※提出書類は自治体により異なるので、自治体HPでご確認ください。
・ 給与支払報告書(総括表)
・ 普通徴収切替理由書(普通徴収の該当者がいない場合は提出不要)
・ 給与支払報告書(個人別明細書)
・ 事業主本人のマイナンバーカード又は通知カード及び本人確認書類の写し(個人事業主の方のみ)
参考文献:さいたま市ホームページ 「提出した給与支払報告書に誤りがあった」
給与支払報告書の提出方法?報告書の取得方法は?
給与支払報告書(個人別明細書)は各自治体のホームページでダウンロードするか、税務署、個人市税特別徴収センターで配布しています。
参考文献:「給与支払報告書」について
電子データによる給与支払報告書の提出方法とは
ほとんどの役所では、前々年に税務署へ提出すべき「給与所得の源泉徴収票」が1,000枚以上である給与支払者は電子データにて提出する必要があります。電子申告(elTAX)または光ディスク(CD、DVD)によって提出します。
『eLTAX』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
マイナンバー及び本人確認について
給与支払報告書(総括表・個人別明細書)を市区町村に提出する場合、給与支払者のマイナンバーまたは法人番号及び従業員の方とその扶養親族等に係るマイナンバーを記載する必要があります。マイナンバー(個人番号)及び法人番号の記載については、法令で定められています。
給与支払報告書総括表に記入する内容は6つ
総括表には、概ね以下の項目を記入しますが、提出先の自治体により多少内容が異なりますので、各自治体にご確認ください。
1.法人番号
平成28年分(平成29年1月末までに提出するもの)から、法人番号の記載が必要となりました。法人番号がわからない場合は、国税庁の法人番号公表サイトで調べることができます。
2.提出区分
「年間分」と「退職者分」のどちらかを選択します。原則として年間分を選択しますが、提出する個人別明細書がすべて退職者分の場合には退職者分を選択します。
3.事業種目
事業内容を記入します。
4.提出先市区町村数
給与支払報告書を提出する市区町村の数を記入します。
5.受給者総人員
昨年中に給与を支払った役員・従業員の数を記入するのが一般的です。
6.報告人員
総括表を提出する自治体に個人別明細書を提出する対象となる人数を記入します。市区町村によっては、普通徴収の人数と特別徴収の人数を分けて記入する必要があります。
参考文献:こちらからダウンロード
給与支払報告書の訂正・修正方法に関してよくある疑問
Q1.1年以上前に提出した給与支払報告書に誤りが見つかりました。1年以上経過しますが、自治体に訂正報告ができるのでしょうか。
A:1年以上前の誤りの場合、訂正報告できません。正しい源泉徴収票を発行し、従業員に確定申告してもらうことで、上書きして税額を訂正します。
Q2.給与支払報告書は各市町村で異なりますか?
A:総括表については、異なります。市町村毎に総括表を作成し、管理しているからです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。給与支払報告書は、源泉徴収票と似通っていますが、各自治体に提出し、住民税や国民健康保険の徴収の根拠となる書類です。間違いがないようにしましょう。
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