会計処理

白色申告の一括償却資産について!具体例で分かりやすく解説!

更新日:2023.05.18

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砂時計

白色申告をされる皆さんは「一括償却資産」をご存知ですか?

通常、資産を購入した際は、耐用年数に従って償却していくことになっています。
しかし、白色申告の方でも20万円未満の資産であれば早期に償却することが可能です。
これを「一括償却資産」といいます。

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一括償却資産は資産の合計が10万円以上20万円未満であれば、減価償却期間を3年とすることができる制度です。

この記事では一括償却資産とは何か、ということに加えて、一括償却資産の判断基準や仕訳の方法などを具体例をふまえて説明していきます。
白色申告の方も適用できるメリットが多い制度となりますので、ぜひ覚えて活用してみて下さい!

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一括償却資産とは、減価償却の方法のひとつ

まず、減価償却の方法としては3種類あります。
1つ目は通常の償却方法です。これは購入した資産によって償却の年数などが変わってきます。この年数を耐用年数といい、建物だったら14年、車であれば4年というように、資産によって異なります。白色申告と青色申告どちらも原則はこの方法で償却することになっています。
2つ目は一括償却をする方法です。一括償却できる資産は総額が10万円以上20万円未満のもので、償却期間を一律3年とすることができます。例えば、本来パソコンの耐用年数は4年ですが、一括償却資産にすると3年で償却することができます。一括償却資産にするかどうかは自由に選択することができます。そして、一括償却資産は白色申告でも青色申告でも使用することができます。
3つ目は、少額減価償却資産の特例を使用する方法です。この特例を使えば、30万円未満の資産は購入した年度で全額経費として処理することができます。ただ、使用できるのは青色申告のみとなっております。

 通常の減価償却一括償却資産少額減価償却資産
白色申告
青色申告

一括償却資産の計算式

計算式は、以下の通りです。

当期の減価償却費=資産の金額×当期の月数/36カ月

例えば、12月決算の会社がその年の1月に18万円のパソコンを購入した場合、当期に減価償却費として計上できるのは
18万円×12カ月/36カ月=6万円 となります。

一括償却資産の2つのメリット

メリット1.税金が安くなる

一括償却資産とした場合、本来の耐用年数より短い期間で償却できることが多いので、より多くの金額を減価償却費として計上できます。そうするとその年の損益が減り、税金が安くなるというメリットがあります。

メリット2.償却資産税の対象外である

ある一定額以上の固定資産を所有していると、「償却資産税」という地方税が課税される場合があります。ただ、一括償却資産としたものについては課税されないことになっています。

一括償却資産にできる金額はいくら?

それでは具体的に一括償却資産とできる基準について見ていきましょう。

判断基準は資産の総額

一括償却資産にできるかできないかの判断は金額で判断します。購入した資産の総額が10万円以上20万円未満のものとなりますが、ここでは資産の総額という点に注意して下さい。例えばパーツごとに購入して組み立てて一つの資産として使用する場合、全て合計した金額になります。

税込処理(免税業者)か、税抜処理かで異なる

そして、金額に消費税を含むかどうかですが、皆さんの会社の会計処理が税込か税抜かによって異なります。税込処理の場合は消費税を含めた金額で、税抜処理の場合は消費税を含めない金額で判断します。なお、売り上げが1000万以下の免税業者については消費税を含めた金額で判断します。

一括償却資産になるのか?3つの具体例で解説

次に実際に具体例を用いて一括償却資産になるかどうかの判断をしていきます

具体例1. 税込15万円のパソコンを購入した。なお、申告は税込処理で行っている。

こちらは税込処理ですので、判断する金額は15万円となります。したがって一括償却資産となります

具体例2. 税込10万円の椅子を購入した。なお、申告は税抜処理で行っている。

こちらの会社は税抜処理ですので、判断する金額は税抜の92,593円です。そうすると一括償却資産とはなりませんが、10万円以下は経費として処理しますので、消耗品費とすることができます。

具体例3. 税込21万円の機械を購入した。なお、申告は税抜処理で行っている。

税込では20万円を超えていますが、税抜処理の会社ですので税抜金額にすると194,444円となり、一括償却資産とすることができます

一括償却資産の仕訳方法

それでは次に一括償却資産に関する仕訳を見ていきます。
(例)1月1日に税込15万円のパソコンを現金で購入した。なお、白色申告で、税込処理を行っており、決算月は12月である。

購入時

まずはパソコンを購入した時について考えていきます。
初めに対象の資産を一括償却資産にできるか判断します。一括償却資産は青色申告でも白色申告でも使用できます。また、金額ですが、税込処理のため税込の15万円で判断することになります。10万円以上20万円未満が対象となりますので、このパソコンは一括償却資産とすることができます
購入した時の仕訳は以下の通りです。

日付借方金額貸方金額
1/1一括償却資産150,000現金150,000

減価償却費計上時

次に12月31日になって減価償却費を計上する時について考えていきます。
<減価償却費の計算>
一括償却資産の償却費の計算式は
当期の減価償却費=資産の金額×当期の月数/36カ月
ですので、当期の減価償却費は
150,000円×12カ月/36カ月=50,000円となります。
当期の仕訳は以下のようになります。

日付借方金額貸方金額
12/31減価償却費50,000一括償却資産50,000

 
そして、2年目、3年目も同様に費用計上していきます。

償却期間の途中で売却した時

もし2年目の3/1に3万円で売却した時について考えてみましょう。
<償却期間の途中で除却した場合>
償却期間の途中で除却した場合であっても、特に税務処理は行いません。これは、一括償却資産制度が生まれた背景に関係してきます。たくさんの資産を所有するようになると、資産の管理だけで膨大な時間がかかってしまいます。それを少しでも軽減しようとして生まれたのが一括償却資産です。
したがって一括償却資産としたものについては個別で管理をせず、総合計で表します。
この合計は一括償却資産の中に1年目で売却したり2年目で廃却したりしたものがあったとしても変更はしません。
<仕訳>
まず、2年目に3万円で売却した仕訳は以下の通りです。
この時点で一括償却資産勘定には変更はありません。

日付借方金額貸方金額
3/1現金30,000雑収入30,000

 
そして、期末には当期分の償却費を計上します。

日付借方金額貸方金額
12/31(2年目)減価償却費50,000一括償却資産50,000

 
3年目にはすでにパソコンは手元にありませんが、同じように減価償却費を計上します。

日付借方金額貸方金額
12/31(3年目)減価償却費50,000一括償却資産50,000

 
手元にないのに減価償却費を計上するというのはイメージが湧きにくいかもしれませんが、他にも一括償却資産としてまとめた資産がたくさんあって、どの資産が今手元にあるか把握できない状態だと考えると想像しやすいと思います。

青色申告者が使用できる「少額減価償却資産の特例」を使うのも手かも?

ちなみに、青色申告者は一括償却資産の他に、「少額減価償却資産の特例」という制度を使用することができます。これは30万円未満の資産を購入した場合、全額を当期の費用とすることができる制度です。3年で償却とする一括償却資産よりも、さらに当期に算入できる費用が大きくなり、より多くの節税効果があります。
以前は青色申告は帳簿付けが面倒だからという理由で白色を採用していた事業主も多いかと思いますが、現在では白色申告者も帳簿付けが義務付けられるようになり、手間の部分では青色申告とそれほど変わらなくなりました。
こちらの少額減価償却資産の特例は使えるとかなり便利であるほか、青色申告では節税制度が多くありますので、一度青色申告されることも検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。一括償却資産は大変便利な制度であることが分かって頂けたかと思います。
なお、一括償却資産の合計金額に制限はありませんので、どんどん活用して、節税対策を行っていきましょう!

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