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企業間取引の多くで採用されている「請求書払い」は、スムーズな決済と取引関係の信頼を築くために欠かせない決済方法です。しかし、導入や運用において、支払期日や与信管理、未払いリスクなどの課題を把握しておかないと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
→ダウンロード:請求書電子化で「ミスなく」月次決算を実現できる理由とは?3つのメリットをご紹介
本記事では、請求書払いの基本的な仕組みや利用条件、メリット・デメリットを詳しく解説します。また、実務で役立つ注意点や効率化のポイントについても紹介し、経理担当者が安心して運用できるようサポートします。請求書払いを正しく理解し、適切に管理することで、キャッシュフローの安定と業務の効率化を実現しましょう。
請求書払いとは?
請求書払いは、企業間取引(BtoB)で広く利用されている後払い決済の仕組みです。この方法では、取引先が商品やサービスを受けた後に請求書を受け取り、指定の期日までに代金を支払います。現金やクレジットカードによる即時決済とは異なり、売り手と買い手の間に一定の支払い猶予期間が生まれるため、資金繰りの調整がしやすくなります。企業のキャッシュフローを安定させる重要な手段として、多くの業界で採用されています。
一方で、売り手側は未回収リスクを伴うため、与信管理や取引条件の設定が必要となります。適切なルールを設け、取引の流れを理解することで、安全かつスムーズな請求書払いを実施することが可能です。
請求書払いの定義と仕組み
請求書払いは、企業が取引を行う際に一般的に利用される決済方法であり、商品やサービスの提供後に売り手が請求書を発行し、買い手が後日支払いを行います。売り手は、締日ごとに取引内容をまとめた請求書を作成し、買い手に送付します。買い手は、請求書に記載された支払期限までに、銀行振込や口座振替などの方法で代金を支払うことで、取引が完了します。
例えば、ある企業が月初にオフィス用品を仕入れた場合、月末に請求書を受け取り、翌月末までに支払いを完了させるといった流れになります。このように、請求書払いは「後払い決済」の代表的な形態の一つであり、企業の取引を円滑に進める役割を果たしています。
後払い決済としての請求書払いの特徴
請求書払いの最大の特徴は、商品やサービスの提供後に代金を支払う「後払い方式」であることです。企業間取引では、売り手と買い手の間に信頼関係があり、与信管理を通じて取引が成立します。そのため、請求書払いは「掛け払い」や「信用取引」とも呼ばれることがあります。
請求書払いの特徴として、以下のような点が挙げられます。
まず、商品やサービスの提供後に請求書が発行されることが挙げられます。これにより、買い手は購入時点での即時支払いを避け、一定期間の資金管理が可能になります。また、請求書には支払期限が明記されており、売り手と買い手の間であらかじめ取り決められた期日までに支払いを行うことが求められます。
さらに、請求書払いは売り手と買い手の信用関係を基に成り立つため、取引を行う際には売り手側が買い手の支払い能力を審査する「与信管理」が必要になります。このため、新規取引の開始時には、売り手が買い手の経営状況や財務情報を確認し、適切な支払い条件を設定することが一般的です。
請求書払いは、企業のキャッシュフロー管理を円滑にし、取引の流れをスムーズにする一方で、売り手側にとっては未払いリスクがあるため、適切な与信審査や支払管理が重要になります。
請求書払いを利用する条件と手順
請求書払いを適切に利用するためには、事前の与信審査をクリアし、取引条件を明確にした契約を締結することが重要です。取引開始後は、請求書を正しく作成・送付し、入金確認と未回収時の対応を適切に行うことで、安全な取引を確保できます。
また、クラウドシステムを活用することで、請求書発行や入金管理の業務を効率化し、ヒューマンエラーを防ぐことが可能です。以下では、請求書払いをスムーズに運用することで経理業務の負担を軽減し、取引先との信頼関係を強化する手順を解説します。
利用条件となる与信基準
請求書払いを導入するには、支払いを行う企業の信用力を審査し、適切な与信枠を設定する必要があります。売り手は、買い手が期限内に支払いを行えるかどうかを判断するため、以下の基準をもとに与信審査を行います。
まず、財務状況の確認が重要です。買い手の貸借対照表や損益計算書を分析し、自己資本比率や流動比率が健全であるかを判断します。これにより、企業の経営が安定しているかどうかが見極められます。
次に、過去の取引実績も審査のポイントになります。以前に取引を行ったことがある場合は、支払いの遅延履歴がないかを確認し、信用度を評価します。初めての取引先であれば、他社との取引履歴を参考にすることもあります。
さらに、信用調査会社のデータを活用することで、買い手の支払能力や経営状況を客観的に判断できます。特に、新規取引の場合は、外部の信用情報を活用することで、未回収リスクを回避できます。
これらの基準をクリアした場合、買い手は請求書払いを利用できるようになります。
取引開始までの流れ
与信審査に通過した後、売り手と買い手の間で正式に契約を締結し、請求書払いの取引を開始します。この際、契約書には取引条件を明確に記載し、支払いに関するルールを取り決めることが重要です。
契約書には、支払期限や支払方法、遅延利息の発生条件などの情報を明記します。たとえば、「月末締め翌月末払い」や「振込手数料は買い手負担」などの取り決めを事前に行うことで、トラブルを防ぐことができます。
また、取引の上限額(与信枠)を設定することで、買い手の支払能力に応じた適切な取引が可能になります。過大な与信枠を設定すると、未回収リスクが高まるため、慎重に判断する必要があります。
請求書の作成・送付までの手順
商品やサービスを提供した後、売り手は請求書を作成し、買い手に送付します。請求書には、以下の情報を明記する必要があります。
・請求書の発行日と取引内容(商品名、数量、単価など)
・合計金額と消費税額
・支払期限
・振込先口座情報
請求書の作成・送付には、請求書発行クラウドシステムを活用することで、作業を効率化できます。クラウドシステムを導入すると、請求書の作成・送付・管理を一元化でき、手作業によるミスの防止や業務の効率化が実現できます。
以下の記事では、請求書の送り方について詳しく解説していますので参考にしてください。
入金確認と未回収時の催促・督促の対応方法
請求書の支払期限を迎えたら、売り手は買い手からの入金を確認します。支払いが完了している場合、入金消込(請求書と入金記録を照合する作業)を行い、取引を完了させます。
しかし、支払期限を過ぎても入金が確認できない場合は、適切な催促・督促を実施する必要があります。対応の手順として、まずメールや電話で支払いを依頼し、買い手に入金を促します。
支払い遅延の理由が資金繰りの問題である場合は、柔軟な対応が求められることもあります。例えば、一時的な支払い猶予を認めるケースもありますが、その際は新たな支払期日を明確にし、書面で合意を取ることが重要です。
それでも支払いが行われない場合は、書面による正式な督促を行い、最終的には内容証明郵便や法的手続きを検討することになります。未回収リスクを回避するため、適切な対応を速やかに行うことが求められます。
以下の記事では、督促状の書き方や催促の仕方について詳しく解説していますので参考にしてください。
請求書払いのメリット・デメリット
請求書払いは、売り手・買い手の双方にとって利便性の高い決済方法ですが、適切な管理が求められます。売り手側にとっては、取引の効率化や売上拡大につながる一方、未回収リスクや与信管理の負担が発生します。買い手側にとっては、キャッシュフローの安定化が図れるものの、支払い管理の煩雑さが課題となります。
請求書払いを安全に運用するためには、与信管理の徹底、請求書管理システムの導入、支払いスケジュールの適切な管理が欠かせません。適切な方法で運用することで、企業の経営基盤を強化し、より安定した取引を実現することができます。以下では、請求書払いのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
請求する側のメリット:業務効率化と請求作業の省略
請求書払いの最大のメリットは、売り手がスムーズに取引を進められる点にあります。特に、大口顧客との取引では「掛売り」が一般的であり、売り上げを拡大しやすくなります。
請求する側の請求書払い4つのメリット
メリット | 内 容 |
1. 経理業務の負担軽減 | 取引の都度、入金確認をする必要がなくなる。請求書払いでは、月末締めや翌月末支払いなどのスケジュールが設定されるため、個々の取引ごとに支払いを確認しなくてよい。 |
2. 経理業務の効率化 | 取引期間内の請求と入金をまとめて処理できるため、業務の効率化が図れる。毎月まとめて請求書を発行し、同一の期日に入金を受けることで、支払管理が一元化できる。 |
3. 決済手段の多様化による売上増加 | 請求書払いが可能な取引先であれば、現金やクレジットカード以外の決済手段を提供できるため、取引先の支払いやすさが向上し、売上増加につながる。 |
4. リスク管理の向上 | 請求書発行から入金までのプロセスを通じて、リスク管理が可能。売り手は取引の際に信用情報をチェックし、未回収リスクを低減する対策を講じることができる。 |
請求する側のデメリット:未回収リスクと与信管理の課題
請求書払いを導入すると、未回収リスクが発生する可能性があります。特に、売り手は代金回収までのタイムラグによる資金繰りへの影響に注意が必要です。
取引先が支払いを滞納すると、売り手のキャッシュフローが悪化し、資金調達が必要になるケースもあります。そのため、与信管理を適切に行うことが重要です。取引開始時に信用調査を実施し、支払能力を事前に確認することで、未回収のリスクを抑えることができます。
また、請求書の作成・送付・入金管理などの事務作業が増加する点もデメリットです。特に、請求漏れや支払期限の管理が煩雑になりやすいため、クラウド型の請求管理システムを導入することで、業務の効率化が可能になります。
支払う側のメリット:キャッシュフローの安定化
買い手にとって、請求書払いの最大のメリットは、キャッシュフローの管理がしやすいことです。
支払う側の請求書払い3つのメリット
1. 資金繰りの改善 | 商品やサービスの利用後に支払いができるため、一時的な資金不足でも取引を継続可能。在庫を確保しながら売上が確定するまで支払いを遅らせることで、資金の流動性を確保できる。 |
2. 柔軟な支出対応 | 一時的に多額の支出が必要な場合でも、請求書払いを利用することで柔軟な対応が可能。設備投資や仕入れの際に手元資金の減少を抑えることができる。 |
3. 取引の透明性向上 | 請求書に基づく支払いによって取引の透明性が高まる。請求書には取引の詳細が明記され、記録が残るため、監査や経理処理がスムーズに行える。 |
支払う側のデメリット:支払い忘れと信用リスク
買い手には支払管理の負担が増えるリスクがあります。支払いの期日を管理しなければならないため、支払い漏れが発生しやすいのが課題です。
特に、複数の取引先と請求書払いを行っている場合、期日管理を適切に行わないと、遅延による延滞金が発生する可能性があります。そのため、支払い管理システムを導入し、期日ごとの支払いスケジュールを把握することが重要です。
また、信用リスクにも注意が必要です。請求書払いの取引を継続する中で、売り手の経営状況が悪化し、突然取引条件が変更されるケースもあります。そのため、取引先の信用情報を定期的に確認し、リスクを最小限に抑える必要があります。
請求書払いの注意点と対策
請求書払いを適切に運用するためには、支払期日を明確に設定し、振込手数料の負担を事前に決めることが重要です。また、内税・外税の取り扱いを統一し、請求書に明確に記載することで、誤解を防ぐことができます。押印に関しては、取引先の要件を確認し、電子化の流れに沿った対応を検討するとよいでしょう。
さらに、支払い忘れを防ぐためのシステムを導入し、スケジュール管理を徹底することで、業務の効率化を図ることができます。請求書払いの仕組みをしっかり理解し、適切な管理を行うことで、取引先との信頼関係を築き、円滑な経理業務を実現しましょう。
上記のように、請求書払いを適切に運用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。以下では、請求書払いに関する注意点とその対策について詳しく解説します。
支払期日や振込手数料の確認
請求書払いでは、一般的に「月末締めで翌月末もしくは翌々月末に支払い」といった支払スケジュールが設定されることが多くなっています。請求書を発行する際には、取引先との契約内容に基づいて明確に支払期日を記載することが重要です。支払期日が不明確な場合、支払い遅延のリスクが高まるため、請求書の見やすい位置に明記しておくとよいでしょう。
また、振込手数料の負担についても事前に取り決めておく必要があります。契約書や発注書で「手数料は請求元が負担する」または「支払元が負担する」と明示することで、支払い時のトラブルを未然に防ぐことができます。特に取り決めがない場合、一般的には支払う側が手数料を負担するケースが多いですが、取引条件によっては異なることもあるため注意が必要です。
内税・外税の取り扱い注意
請求書を作成する際、消費税の表示方法を明確にすることが求められます。内税方式と外税方式のどちらを採用するかは、取引先との契約や業界の慣習によって異なりますが、増税などの影響を考慮し、誤解のない表記を心掛けることが大切です。
内税方式では、税込価格として請求額を記載し、消費税が含まれていることを明示します。一方、外税方式では、商品やサービスの価格と消費税を分けて記載し、合計額を計算する方法を取ります。特に、請求書発行時に消費税率が変わる可能性がある場合は、税率の明記を忘れずに行い、取引先との認識のズレを防ぎましょう。
印鑑捺印の必要性と電子化対応
請求書に押印をするかどうかは、取引先の要求や企業のポリシーによって異なります。押印には、請求書の真正性を証明する役割があり、特に紙の請求書の場合、角印を押すことで信頼性を高めることができます。角印は、会社の正式な書類であることを示すものであり、多くの企業で使用されています。
ただし、電子請求書を導入する企業が増える中で、押印を不要とするケースも増えています。電子帳簿保存法の改正により、電子請求書の保存が認められ、押印なしでも法的に有効となる場合があるため、取引先の要件を事前に確認することが大切です。また、押印が必要な場合でも、電子印鑑の活用を検討することで、業務の効率化を図ることができます。
以下の記事では、電子印鑑について詳しく解説していますので参考にしてください。
支払い忘れを防ぐための対策
請求書払いでは、支払期日を過ぎると取引先との関係に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、支払い忘れを防ぐための仕組みを整えることが重要です。特に、複数の請求書を管理する必要がある場合は、経理システムを活用してスケジュールを一元管理するとよいでしょう。
支払い期限が迫った際にリマインダーを設定することも効果的な方法です。経理担当者が手作業で確認するのではなく、クラウド型の請求管理システムを導入することで、自動的に支払い期日を通知し、対応漏れを防ぐことができます。
万が一、支払い期限を過ぎてしまった場合は、速やかに取引先に連絡を入れ、事情を説明した上で、すぐに支払い手続きを進めるようにしましょう。誠意を持った対応を行うことで、取引先の信頼を維持しやすくなります。
請求書払いの課題をクラウドシステムで解決!
クラウド型の請求書管理システムを導入することで、発行・受領・管理の各プロセスを最適化し、業務の効率化を実現できます。請求書払いの課題を解決し、適切な管理体制を構築することで、取引の透明性を高め、企業の経営基盤を強化していきましょう。
請求書発行・請求書受領クラウドを導入しよう!
請求書の発行や受領業務を効率化するためには、クラウド型のシステムを導入するのが有効です。
TOKIUM請求書発行
TOKIUM請求書発行は、紙と電子の両方の請求書を一元管理し、送付作業を自動化するクラウド型システムです。これにより、手作業による請求書作成や郵送作業の負担を削減し、発行業務を大幅に効率化できます。また、システムを活用することで、請求書の誤送や記載ミスを防ぎ、取引先とのスムーズな取引を実現できます。
TOKIUMインボイス
TOKIUMインボイスは、受領した請求書をデータ化し、支払期限の管理や承認フローを最適化するクラウドサービスです。紙の請求書を電子化することで、ペーパーレス化を促進し、管理の手間を削減できます。また、支払期限のリマインダー機能を活用すれば、支払い忘れを防ぎ、取引先との信用を維持することが可能になります。
以下の記事では、おすすめの請求書発行・受領クラウドを紹介していますので参考にしてください。
まとめ
請求書払いを適切に運用することで、企業は資金繰りの安定と経理業務の効率化を同時に実現できます。適切な与信審査を行い、取引先の信用力を見極めることで、未回収リスクを最小限に抑えることが可能です。また、入金消込や少額請求業務の効率化を進めることで、経理部門の負担を軽減し、より正確な財務管理が行えます。
さらに、クラウド型請求書管理システムを導入することで、請求書の発行・受領・管理を一元化し、業務フローを最適化できます。これにより、手作業によるミスを防ぎ、取引の透明性と信用を高めることができます。請求書払いは、単なる決済手段ではなく、企業の経営基盤を強化する重要な要素です。本記事で紹介した対策を実践し、より効率的で安全な取引を実現しましょう。