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請求書の支払期限を適切に管理することは、企業の信用を守り、スムーズな取引を実現するために欠かせません。しかし、経験の浅い経理担当者にとって、適切な期限の設定や未払い時の対処は悩ましい課題となることもあります。
→ダウンロード:請求書電子化で「ミスなく」月次決算を実現できる理由とは?3つのメリットをご紹介
本記事では、支払期限の基本ルールから、支払遅延を防ぐ工夫、トラブルが発生した際の対応策、さらには業務を効率化する方法までをわかりやすく解説します。初心者でもすぐに実践できる具体的な手法を紹介し、読後には「もう迷わない」と自信を持てる内容となっています。経理業務の精度を向上させ、取引先との信頼関係を強化したい方は、ぜひご覧ください。
請求書の支払期限とは
請求書の支払期限は、取引の安定性を確保し、資金管理を円滑にするために不可欠な要素です。法律上の明確な規定はないものの、多くの企業が「月末締め・翌月末払い」や「翌々月末払い」を採用しており、取引先との合意のもとで設定されます。支払サイトの適切な管理は、売掛金の回収を円滑にし、企業の資金繰りを安定させるために重要です。
また、支払期限と有効期限は異なり、特に売掛金の有効期限は2020年4月1日以降の取引で5年間と定められているため(民法166条)、未回収の債権が時効にならないよう注意が必要です。企業は請求管理を徹底し、適切なタイミングで請求業務を行うことで、取引の信用を維持しながら健全な経営を行うことができます。
参考:民法166条
支払期限の定義と設定方法
請求書の支払期限の決め方には法律上の明確なルールはありません。各企業が取引先と交渉して決定するのが一般的ですが、業界慣習としてよく採用される支払条件があります。
最も一般的な支払サイクルは、「月末締め・翌月末払い」または「月末締め・翌々月末払い」です。例えば、3月1日から3月31日までの取引を3月末で締め、4月末または5月末を支払期限とする方式です。これは、取引をまとめて請求し、買手側に一定の資金調達期間を提供することで、スムーズな取引関係を維持するための方法です。
また、一部の企業では、取引日から一定日数後に支払う「○日後払い」方式を採用しています。例えば、「請求書発行日から30日後」を支払期限とする場合、3月15日に発行された請求書は4月14日が支払期限となります。
支払サイトとは?締め日と支払い日の関係
支払サイトとは、売掛金・買掛金が処理されるまでの期間を指す言葉で、請求書の発行から支払日までの間の期間を指します。この支払サイトは、企業の資金繰りに大きく影響を与えるため、適切な設定が重要です。
支払サイトは「締め日」と「支払日」によって決まります。たとえば、「月末締め・翌月末払い」の場合、3月の取引が3月31日で締められ、4月末が支払日となります。この期間が長いほど、売掛金の回収までに時間がかかるため、企業側の資金繰りへの影響が大きくなります。
一方で、支払サイトが短いと、買手側のキャッシュフローが厳しくなるため、取引条件として交渉が必要となることもあります。特に、新規取引の場合や長期契約の締結時には、支払サイトを事前に確認し、双方にとって適切な条件を設定することが重要です。
支払期限と有効期限の違い
支払期限と有効期限は異なる概念ですが、混同されやすいため注意が必要です。支払期限は、請求書に記載されている「いつまでに支払うべきか」を示す日付のことで、取引契約に基づいて設定されます。
一方、有効期限は、売掛金に対する請求権が法的に有効である期間のことを指します。2020年の民法の改正により、2020年4月1日以降に発生した売掛金の請求権は5年間で時効となります。つまり、請求をしないまま5年が経過すると、債権としての効力を失う可能性があります。
なお、2020年4月1日より前に発生した売掛金の時効は2年間とされていました。これにより、企業は未回収の売掛金がないか定期的にチェックし、時効が成立する前に請求することが求められます。未回収リスクを防ぐためにも、支払期限の管理とともに有効期限の確認を行いましょう。
以下の記事では、請求書の法的効力について詳しく解説していますので参考にしてください。
請求書の支払期限の決め方
請求書の支払期限を設定する際には、取引先との合意を前提としながら、自社の資金管理や業務フローを考慮することが重要です。特に、支払期日が金融機関の休日に重なる場合は、前倒しの支払いを検討し、年末年始や連休時の特例対応を決めておくことで、遅延のリスクを回避できます。
また、下請代金支払遅延防止法の適用を受ける場合は、納品から60日以内のできるだけ早い時期に支払いを完了させることが求められます。特に、小規模事業者や個人事業主との取引では、相手方の資金繰りに配慮し、早めの支払いを意識することが大切です。
支払期限を決める際のポイント
支払期限を設定する際には、企業の資金繰りや取引先との契約条件を考慮することが必要です。一般的には「月末締め・翌月末払い」や「月末締め・翌々月末払い」などの方式が採用されますが、業種や契約内容によって異なる場合があります。そのため、取引先と事前に合意を取ることが重要です。
また、支払いミスが発生すると、会社の信用を損なうだけでなく、遅延利息や取引条件の見直しを求められる可能性もあります。特に、新規取引や海外取引においては、支払いスケジュールを明確にし、相手方の要望を把握した上で期限を決定することが求められます。
一般的な支払期限とは異なる日程を設定する場合は、取引先に事前に通知し、納得してもらうことが重要です。例えば、「月末締め・翌月20日払い」とする場合は、契約時点でその旨を明記し、双方が認識を共有することでトラブルを防ぐことができます。
支払期日が年末年始・土日祝日に当たる場合の対応
支払期限が金融機関の休日と重なる場合は、特に注意が必要です。金融機関が休業していると振込ができず、結果として支払いの遅延が発生する可能性があります。企業は、年末年始や大型連休、土日祝日などに支払期限が重なる場合の対応を事前に決めておくことが重要です。
一般的な対応策としては、支払期日を前倒しにする方法が挙げられます。例えば、12月末が支払期限となる場合、金融機関の営業日を考慮し、12月28日までに支払いを完了させるように設定することで、取引先への影響を最小限に抑えることができます。また、支払い予定日が休日に重なる場合は、契約書や取引ルールに「休日の場合は前営業日に支払う」旨を明記しておくと、スムーズに対応できます。
企業によっては、休日や連休期間中の支払業務を回避するため、通常の支払スケジュールとは異なる特例を設けることもあります。例えば、12月は資金移動が増加するため、「12月請求分は翌年1月10日払い」といったルールを設定する企業もあります。このように、繁忙期や休日に対応した柔軟な支払期限を設定することが、経理業務の円滑化につながります。
下請代金支払遅延防止法や支払期日の設定
企業が下請会社やフリーランスへ支払う報酬に関しては、下請代金支払遅延防止法が適用されます。この法律では、納品を受けてから60日以内のできるだけ早い期間内に代金を支払わなければならないと定められています(下請法第2条の2 下請代金の支払期日)。
例えば、企業が外部の制作会社に業務を依頼し、12月1日に納品を受けた場合、2月1日までに支払いを完了させる必要があります。もし60日を超えて支払いが遅れると、違反とみなされ、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
また、支払い条件を設定する際には、取引先の規模や業種による影響も考慮することが重要です。特に、小規模事業者や個人事業主との取引においては、長期の支払サイトが相手方の資金繰りに大きな負担を与える可能性があるため、可能な限り早めの支払いを心がけることが求められます。
このように、支払期限の設定には、社内の資金管理だけでなく、取引先の状況や法的要件を十分に考慮することが重要です。
参考:下請代金支払遅延等防止法
支払期限を過ぎた場合の対処法
請求書の支払期限を過ぎた場合、まずは自社の請求内容や送付手続きに誤りがないかを確認し、取引先への連絡を通じて支払いを促すことが基本的な対応となります。取引先の状況に応じて柔軟に対応しながら、適切な支払いスケジュールを確保することが大切です。
再三の連絡にもかかわらず支払いがない場合は、内容証明郵便や支払督促などの法的措置を活用し、未払いリスクを最小限に抑えましょう。特に、請求権の時効が5年であることを念頭に置き、時効完成前に適切な対応を行うことが重要です。
自社に不備がないか確認する
まず最初に、自社側のミスがないかを徹底的に確認することが重要です。請求書の発行日や支払期限が正しく記載されているかを見直し、請求金額や振込先口座に誤りがないかを確認します。また、取引先が請求書を確実に受領しているかをチェックし、支払い方法が取引先のルールと合致しているかも検討する必要があります。
さらに、請求書を送付した証拠として、送信メールや郵便の追跡番号を確認し、取引先に届いていることを確かめることが重要です。万が一、自社のミスが判明した場合は、速やかに訂正請求書を発行し、取引先に再送しましょう。
取引先へ連絡し、支払いを促す
自社側にミスがないことを確認したら、取引先へ支払いを促します。まずは、メールを送付し、未払いの事実を伝え、支払い対応を求めます。メールの文面には、請求書の詳細や支払期限、支払い方法を明記し、相手がすぐに対応できるようにします。
もし、メールでの対応がない場合は、担当者に直接電話をかけ、支払いの確認を行います。口頭で確認することで、相手の状況や支払い遅延の理由を把握しやすくなります。取引先の資金繰りが厳しい場合、支払いスケジュールの調整が必要になることもあるため、柔軟に対応することが求められます。
それでも支払いに応じてもらえない場合は、最終通告として書面での通知を送付します。書面には、「指定期日までに支払いがない場合は法的措置を検討する」旨を記載し、支払いの最終期限を明確にしましょう。
内容証明や支払督促を活用する法的措置
取引先に支払いを促しても対応がない場合は、法的手段を検討します。最初に、「内容証明郵便」を利用し、正式な支払催告を行います。内容証明郵便は、送付した文書の内容や送付日を証明するもので、後の裁判手続きにおいて有力な証拠となります。
また、請求書の有効期限(時効)は5年と定められており、時効を迎えると請求権が消滅してしまいます。しかし、内容証明郵便による催告を行うことで、時効が6か月間延長されるため、時効直前の未払い請求に対して有効な手段となります(民法第150条1項)。
内容証明郵便を送付した後も支払いがない場合は、「支払督促」の手続きを利用できます。支払督促は、裁判所を通じて正式に支払いを命じる手続きであり、通常の訴訟よりも低コストで迅速に進めることができます。支払督促の申立手数料は通常訴訟の半額で済み、手続き自体も簡易的なため、最短4週間程度で権利が確定するケースもあります。
それでも相手が支払いに応じない場合は、裁判所の許可を得て「強制執行」を行い、相手の財産を差し押さえることが可能になります。これにより、銀行口座や不動産、動産を差し押さえて債権を回収することができます。
参考:民法第150条1項
支払遅延・未払いを防ぐための工夫
支払遅延や未払いを防ぐためには、請求書の支払期限を明確に記載し、取引先が見落とさないように工夫することが大切です。また、与信管理を継続的に実施し、取引先の信用状況を把握することで、リスクを未然に回避することが可能になります。
さらに、クラウド型請求管理システムを導入することで、請求業務の効率化を図るとともに、支払遅延や未払いを未然に防ぐことができます。特に、取引先の支払状況をリアルタイムで把握できる点は、大きなメリットとなります。
請求書の支払期限を明確に記載する
請求書を発行する際には、支払期限を明確に記載することが不可欠です。支払期限が分かりにくいと、取引先が見落としたり、支払いを後回しにする原因になりかねません。そのため、請求書の上部や請求額、支払口座などの重要な情報が集中している部分に支払期限を明記するのが効果的です。
また、単に「○月○日まで」と記載するのではなく、「○月○日までに指定の口座へ入金してください」と具体的な指示を付け加えることで、取引先の対応を促しやすくなります。さらに、支払期限が土日祝日や年末年始に重なる場合の対応についても記載しておくと、よりスムーズな入金につながります。
与信管理を継続的に行う
支払遅延や未払いを防ぐには、取引先の信用状況を定期的に確認し、必要に応じて取引条件を見直すことが重要です。与信管理は、新規取引を開始する際だけでなく、既存の取引先に対しても継続的に行うべきものです。
具体的には、取引先の財務状況や支払い履歴をチェックし、信用リスクが高まっている場合は、支払いサイトの短縮や前払い制への変更を検討することができます。また、業績が悪化している取引先については、取引の限度額を見直すなど、柔軟な対応が求められます。
近年では、信用調査会社が提供する企業情報データベースを活用することで、最新の信用情報を容易に取得することが可能です。与信管理を強化することで、リスクを未然に防ぎ、安定した取引を維持することができます。
クラウド型請求管理システムの導入
支払遅延や未払いのリスクを低減するために、クラウド型請求管理システムの導入を検討するのも有効な手段です。特に、多くの取引先を抱える企業や、請求業務の負担を軽減したい場合に適しています。
クラウド型請求管理システムを導入することで、請求書の発行から送付、入金確認までのプロセスを一元管理できるようになります。これにより、請求漏れや入金確認の手間を削減し、取引の管理がよりスムーズになります。
TOKIUMでは、請求書の発行・受領双方の業務を効率化することができるプラットフォームを提供しています。
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以下の記事では、おすすめの請求書発行・受領クラウドを紹介していますので参考にしてください。
支払期限が短すぎる場合や未記載の場合の対応
請求書の支払期限が短すぎる場合や未記載の場合、適切に対応することで円滑な取引関係を維持することが可能です。期限が短い場合は、相手方に理由を説明し、具体的な支払可能日を提示することで交渉をスムーズに進めることができます。
一方、支払期限が記載されていない場合は、契約書や過去の取引履歴を確認し、それでも不明な場合は取引先に直接問い合わせることが重要です。以下では、それぞれのケースに応じた対応方法について解説します。
支払期限が短い場合の交渉方法
請求書の支払期限が非常に短い場合、通常の資金管理計画に支障をきたすことがあります。そのため、期限を延長できるかどうか、相手方に問い合わせることが重要です。
まず、請求書を受け取ったら、支払期限を確認し、自社の支払スケジュールと照らし合わせます。もし、期日が通常の取引慣習よりも短く、資金準備が間に合わない場合は、すぐに取引先に連絡を取り、期限の延長について相談しましょう。
交渉の際には、単に「支払期限を延ばしてほしい」と依頼するのではなく、具体的な理由を説明するとスムーズに進みます。たとえば、「当社の通常の支払サイクルは月末締め翌月末払いのため、現行の期限では対応が難しい。翌月〇日まで延長できないか」など、具体的な日付を提示することで、取引先も対応を検討しやすくなります。
また、取引先が期限延長に応じる場合、書面やメールでの記録を残しておくことも重要です。これにより、後の誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
支払期限未記載時のルールと対処法
請求書に支払期限が記載されていない場合、支払うべき期限を判断するのが難しくなります。こうした場合、まずは取引先に直接確認することが基本となります。
取引開始時に契約書を取り交わしている場合、その内容を確認し、支払期限が明示されているかどうかを確認しましょう。契約書に明記されていれば、その日付に従い支払いを行います。
もし契約書がない場合は、過去の取引履歴を参考にし、通常の支払サイクルに基づいた期日を設定することが考えられます。たとえば、取引先がこれまで「月末締め翌月末払い」の条件で取引していた場合、その条件を前提として支払いを行うことが適切です。
さらに、取引先に直接連絡し、支払期限の明確な日付を確認することが最も確実な方法です。その際、文書やメールなどで確認した内容を記録しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
請求書の支払期限を適切に設定・管理することは、企業のキャッシュフローを安定させ、取引先との円滑な関係を維持するために不可欠です。期限管理が甘いと、未払いの発生やトラブルに発展し、経理担当者の負担が増えるだけでなく、会社全体の信用にも影響を及ぼします。
本記事では、支払期限の適切な決め方、未払い時の対処法、トラブルを未然に防ぐ工夫、さらに業務を効率化する方法まで解説しました。クラウドシステムの活用を含めた効果的な管理手法を取り入れることで、請求業務をスムーズにし、経理の負担を軽減できます。
請求書管理は単なる事務作業ではなく、企業の経営基盤を支える重要な業務です。本記事の内容を参考に、正確かつ効率的な請求業務を実現してください。