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「損益分岐点を計算しておいて」と依頼された時に、その都度計算方法を検索して算出してしまっていませんか?
「そもそも損益分岐点ってなんなんだろう?」
「公式ではなく、どんな仕組みで算出するんだろう?」
こういったお悩みをもったことはありませんか?
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損益分岐点がわかれば、現在の経営状況が見えてきます。そして損益分岐点を公式でなく本質的に理解することで、経営層に向けて改善提案をすることもできます。
また、自分で計算をしなくても会計システムで計算をしてくれるものもあります。損益分岐点を把握して、経営をワンランクアップしましょう。
今回は損益分岐点を構成する要素、およびその計算式と覚え方について、例題を交えて紹介します。
損益分岐点算出の計算式
損益分岐点 = 固定費 ÷ {1―(変動費÷売上高)}
一見するとややこしい公式ですが、本質を理解するととてもシンプルで簡単です。
詳しく紐解いていきましょう!
変動費や固定費がわからない方は記事の後半でも解説しております。
損益分岐点とは、「利益0のポイント」
損益分岐点とは、管理会計上の概念の一つで、【会社の利益が赤字にも黒字にもならない、利益ゼロとなる売上高】を指します。利益がプラスマイナス0の同じ状態を指して「赤黒トントン」と言う場合もあります。
簡単にまとめると以下の状態です。
- 利益>経費・・・黒字
- 利益=経費・・・損益分岐点/赤黒トントン
- 利益<経費・・・赤字
損益分岐点を計算してわかること・メリット
損益分岐点がわかると、会社の経営状況がわかります。損益分岐点を下げる=利益を出しやすくするために、実態に基づいた意思決定をすることが可能です。
闇雲に経営しているといつか破綻してしまいます。複合的な要素が絡み合って経営が進んでいるとはいえ、損益分岐点を把握しておくことは会社を健全に経営していくためには必須となります。
また、営業部門や仕入部門に対しての目標設定にも役立ちます。むやみに高い目標を設定していてはモチベーションも上がりません。黒字化するための目標を立てることができます。
業界によっては売上高減少が予想できる場合もあります。そんな時にはどのくらい売上高が減少しても赤字にならないかを事前に試算することができるため、結果的に赤字になる前に対応策を講じることが可能です。値下げをする際にも、損益分岐点を活用していくらまで下げることができるのかを計算することもできます。
損益分岐点がわからないと、いま会社は儲かっているのか、それともマイナスになっているのかすらわかりません。
売上が上がっていても、仕入金額が上がっていれば利益は出ません。事業がちゃんと成り立っているのかを理解するためのシンプルで本質的な方法が損益分岐点の算出なのです。
損益分岐点の計算方法の覚え方は公式の本質を押さえること
公式を暗記するのも手ですが、本質を理解するために損益分岐点をグラフ化してみましょう。
売上高が4,000万円だった時、固定費1,000万円・変動費2,000万円とします。
縦軸を【収益・費用】、横軸を【売上高】としてください。まずは固定費をグラフに書き込みます。固定費は売上高の影響を受けないので、まっすぐ線を引きます。
次は変動費を書き込みましょう。変動費は縦軸は固定費の上から、横軸はゼロから書きます。固定費と違い、変動費は売上高によって左右されるため、徐々に上がっていきます。
売上高が4,000万円の時、かかった費用の総額はいくらでしょうか?
答えは、固定費1,000万円+変動費2,000万円=3,000万円です。これを売上高から引くと、利益が計算できます。利益は、600万円ー400万円=200万円 となります。売上高1,000万円だと黒字になっていることがわかります。
これでグラフは整いました。
これから算出するものは損益分岐点、つまり利益ゼロでと売上高と費用がトントンになる状態、より噛み砕くと【売上高=固定費+変動費】になる状態を計算します。
変動費は売上高に比例して、一定の割合で増えていきます。この一定の割合を変動費率と言います。変動費率は変動費÷売上高という式で算出されます。今回の場合だと、(2,000万円÷4,000万円)×100%=50%となります。
これから計算するものは以下です。
損益分岐点となる売上高=固定費+損益分岐点となる売上高に応じた変動費
→変動費を変動費率を用いて書き直します。
損益分岐点となる売上高=固定費+(損益分岐点となる売上高×変動費率)
→損益分岐点となる売上高で項をくくります。
損益分岐点となる売上高ー(損益分岐点となる売上高×変動費率)=固定費
これを数式に当てはめると、以下のようになります。
つまり、損益分岐点となる売上高は2,000万円です。
グラフの売上高と変動費が重なる点とも一致します。
損益分岐点計算式のわかりやすい例題
例題
売上高が1,000万円、固定費が300万円、変動費が600万円の企業の損益分岐点を計算してください。
答えと解説
この場合、下の計算式で算出することができます。
つまり、750万円の売上でやっと利益と経費が同じ金額になるということです。
750万円以上の売上がないと、黒字化しません。もしも750万円を下回っているようであれば、この企業は売上を伸ばすための施作を早急に打たなければいけません。
損益分岐点を下げる改善方法
方法1. 固定費・変動費を下げる
損益分岐点を下げる、つまり利益が出るポイントを下げることになります。仕入金額の交渉やオペレーション改善による機械稼働数・作業員数適正化などが具体的な施策として挙げられます。経費を減らすことで利益幅を増やすという方法です。
方法2. 売上高を上げる
単純明快です。売上を上げることで利益と経費のバランスを改善します。販売数を伸ばしたり、売上単価を上げたりすることで、売上高が上がります。売上高をいくらにする必要があるのかも、損益分岐点を計算できればすぐにわかります。
方法3. 損益分岐点比率を理解する
損益分岐点比率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を計算した指標です。実際の売上高を100%とした場合、損益分岐点売上高が何%なのかを計算します。損益分岐点比率は低いほどいいとされています。
一般的には80%を下回っていれば優良で、100%を上回っていると赤字企業ということになります。損益分岐点比率は、以下の算式によって求められます。
損益分岐点比率(%) = 損益分岐点売上高÷実際の売上高×100
先述したように、時として売上が落ちることが事前にわかっている場合があります。そんな時もただ慌てるだけでなく、損益分岐点比率を理解することで、どこまで落ちてもトントンでいられるかが見えるようになります。
損益分岐点の3つの要素は固定費、変動費、限界利益
損益分岐点を理解するために、3つの要素を解説します。
1.固定費とは?
固定費とは、会社が存続するために売上高に左右されることなく、必ずかかる費用を指します。
例えば事務所や店舗の家賃、借入金の支払利息、保有している資産に対する固定資産税、福利厚生のために加入している保険料などです。例示した費用は毎月同じ金額がかかり、売上の増減の影響は受けません。
2.変動費とは?
固定費に対し、変動費とは売上の増減に応じてかかる金額が変わるものです。商品仕入高、原材料加工費、加工のために稼働した機械の光熱費などが変動費に当たります。これらは売上が少なければかかる費用も低く、売上が大きければかかる費用も高くなります。
このように分類すると簡単なものに思えますが、実際に分類するとなると一つの費用がどちらに属するのか迷う部分もあるかと思います。
例えば人件費がその典型です。
人件費は一般的には固定費に分類されますが、売上が伸びたことにより工場の作業員や販売スタッフを増やす必要がある場合には、その分を変動費に分類することもあります。実態に合わせて分類していくことがポイントです。
3.限界利益とは?
固定費と変動費が理解できたら、次に限界利益について解説します。
限界利益とは、売上から変動費を引いたものであり、利益と固定費を足したものです。固定費回収に貢献する、という意味合いから「貢献利益」とも言われます。要するに、売上から変動費を引いた粗利と捉えればOKです。(製造業・建設業は異なります。)
少し難しいですが、この概念を理解できると損益分岐点改善を理解しやすくなるので、ここも押さえておきましょう。
『限界利益』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://www.keihi.com/column/22572/
まとめ
損益分岐点を理解することで、現在の経営状況や未来の試算ができるようになります。損益分岐点改善のための施策も想像以上にたくさんあったのではないでしょうか?
公式に当てはめてわかったつもりになるのではなく、本質的に理解することで損益分岐点以上の情報を得ることができるようになります。
また、製品ごとに損益分岐点を求める場合は少し面倒ですね。会計ソフトなどの中には自動で計算をしてくれるものもあります。
経営状況を確かめるために、自社の損益分岐点を計算してみてはいかがでしょうか?
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