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初心者でも分かる!出張費の日当とは?相場や支給方法を解説

更新日:2025.01.28

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出張費の日当とは、出張に行った従業員に対して、企業が支給する手当を指します。どのように支給するかといったルールを含め、日当に関する運用方針は企業の裁量に任されている部分もあるため、状況に応じて柔軟に設定することが可能です。しかし、あいまいな取り決めのままでは、従業員による不正などトラブルの温床になるため、注意しなくてはいけません。

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また、日当は基本的に法人税、所得税、住民税がかからないものの、高過ぎると課税対象になるなど、税務上の取り扱いにも注意する必要があります。この記事では日当の概要、メリット、デメリット、支給額の決め方や導入手順について詳しく説明します。経理担当者はもちろん、営業など出張が多い部署に勤務している人も知っておくと役立つ知識です。最後まで分かりやすく解説したので、ぜひご一読下さい。

日当とは

日当の意味

日当とは、従業員に対し、出張中の食事代や通信費などの諸経費に充てるために企業から支給される手当のことです。出張手当と呼ばれることもあり、実費ではなく一日当たり5,000円など一律の金額を支給するのが一般的な扱いとなっています。

ただし、具体的な金額は出張の目的や滞在期間、現地の物価水準などを考慮して設定されるため、個々のケースに応じて異なるのが実情です。また、日当は本来従業員が業務の遂行に伴って受け取る賃金(給与)とは別に支払われる手当です。つまり、法律上は給与と日当は別のものとして扱われるため、理論上「日当を受け取った分だけ給与が受け取れなくなる」ことはあり得ません

出張費との違い

日当(出張手当)とよく似た言葉に出張費がありますが、両者は異なるため注意して下さい。出張費は、出張を伴う業務を遂行するにあたって生じる費用を指す言葉です。具体的には、交通費や宿泊費、出張手当が含まれます。

一方、日当は出張に行った従業員に対して企業から支払われる金銭を指します。出張費の方が、日当より広い概念であると考えて構いません。

日当の目的

企業は、従業員の出張に当たって日当を出す義務を負いません。しかし、実際は出張する従業員に対し、日当を出すことを就業規則で決めている企業が多いのも実情です。

ここで、なぜ出張に伴って日当を出す企業が多いのか、考えられる目的について解説します。日当は、本来は従業員が出張中に払った経費、生活費、雑費を補償するための手当です。しかし、それだけではなく、日当を支給することで次の目的が達成できると考えられています。

  • 従業員のモチベーション維持
  • 外食費用を補填するため
  • 残業代の一部として支給
  • 拘束時間の代償として支給する
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日当のメリット・デメリット

日当のメリット

前述したように、企業が出張に出た従業員や役員に対し、日当を支給するための制度を設けることは、法律上義務付けられていません。しかし、以下に掲げるさまざまなメリットがあることから、日当を支給している企業があるのも事実です。

  • 節税効果
  • 従業員の手取り額アップ
  • 従業員からの不満防止

日当は基本的には非課税であるため、企業・従業員に対して一定の節税効果は見込めます。つまり、源泉徴収を行う必要がない上に、旅費交通費として計上できるため、結果として企業の経費を増やせる分、法人税を節約することが可能です。また、従業員にとっても日当から源泉徴収されることがないため、手取り額がアップします。

さらに、日当を支給するのは従業員からの不満を解消する手段としても有意義です。出張に行くと食事代や雑貨代など何かとお金がかかりがちになるため、その分の補填を受けたいと思う従業員がいても不思議ではありません。日当を支給することで、その一部でも補填するという姿勢を示せば、従業員の満足度も高められます。

日当のデメリット

一方、日当を支給することには、以下のデメリットもあります。

  • 支出が増える
  • 経理部門の業務量が増える
  • 出張旅費規程の策定・整備が必要

まず、従業員に日当を支給すると、その分企業にとっては支出が増えることになる点に留意しなくてはいけません。特に出張が多い企業の場合、コスト管理も難しくなるため、導入には慎重にならざるを得ない部分があります。

また、社内での手続きも整備しないといけないため、自然に経理部門の業務量も増えることにも注意しましょう。加えて、出張旅費規程が特段設けられていない場合、策定・整備に時間や費用がかかります。

日当の支給額の相場

ここで、日当の支給額の相場についてみてみましょう。企業や役職によっても差はありますが、一般的な相場は以下のようになっています。

  • 国内出張の場合:2,000円(別途、宿泊費として5,000円~10,000円/泊が支給される)
  • 海外出張の場合:5,000円

なお、株式会社産労総合研究所が行った「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果」によれば、調査に参加した企業における国内の宿泊費に関して、旅費規程上での平均額は8,606円となっていました。

参考:株式会社産労総合研究所「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果」

出張費の上限や支給額の相場についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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ケース別の日当の設定の仕方

日当自体、企業が従業員に対して支給する義務がない以上、具体的な金額や支給方法についても法的な決まりはありません。企業ごとに独自で決めて問題ないものの、支給する目的ごとに望ましい決め方があります。

想定外の出費を補填するケース

まず、想定外の出費を補填するために日当を支給する場合の扱いを見てみましょう。例えば、飛行機が天候不良で欠航になり、当初の予定にはない場所で宿泊することになった場合の宿泊費や飲食代などが考えられます。

日当を支給すれば、このような当初見込まれる宿泊費や交通費以外の想定外の雑費にも対応が可能です。想定外の出費の補填を目的としている場合、現金での支給を基本とし、「出張1件当たり〇〇円」と固定の金額で旅費計算を行うことになります。

外食費用を補填するケース

出張中の外食代を補填する目的でも、日当が支給されることがあります。特に、ビジネスホテルへの素泊まりなど、食事が含まれない場合は、従業員が自分で食事代を負担せざるを得ません。外食したりお弁当を購入したり、何かと食事代がかかる以上、出張が長くなるほど従業員の「持ち出し」は増えてしまいます。

一部でも補填できるよう日当を支給することが好ましいですが、具体的に支給すべき金額は食事回数によって変わります。出張の期間や宿泊先のプランも考えつつ調整しましょう。

残業代のカバーをするケース

残業代の一部に充てるという意味で日当を支給する場合は、出張中の労働環境や業務内容に応じて調整が必要です。まず、出張先での労働時間が把握できる場合は、通常の残業代と同じように扱えば問題ありません。しかし、出張先での労働時間を正確に把握できない場合、「事業場外みなし労働時間制」が適用されることがあります。これは、以下の2つの条件を満たせば、実労働時間に関係なく一定時間労働したとみなす制度です(労働基準法第38条の2)。

  • 労働者が労働時間の全部もしくは一部について事業場外で業務に従事していた
  • 実労働時間を算定しがたい事情がある

より簡単に言うと、事前に「出張に行った際は、実労働時間に関係なく1日8時間働いたとみなす」といった取り決めをしておけば、出張先での実労働時間に関係なく、1日8時間働いたものとして労働時間を計算できます。

拘束時間の代償として支給するケース

従業員の出張に伴う移動時間を拘束時間として扱い、その分の補填という意味で日当を支給する企業もあります。この場合、移動時間を労働時間として計算し、時間外手当を支給すると考えましょう。なお、具体的な支給額は出張先や支給目的、役職により変わります。一般的には、役員に対する支給額の方が、一般社員に対する支給額よりも多い点にも留意しましょう。

日当の導入手順

一般的な日当の導入手順は以下の通りなので、以降において詳しく解説します。

  1. 日当の目的を設定する
  2. 日当の適用範囲を決める
  3. 出張の定義を決める
  4. 費用項目を設定する
  5. 就業規則に組み込む
  6. 出張旅費規程を作成する

日当の目的を設定する

日当を設定する際は、目的や必要性を考えてから細かい部分を詰めていきましょう。前述したように、日当を設定する目的は企業や実際に出張する従業員、役員の立場によって変わる部分もあります。何を目指して日当を設定するかによっても、妥当な金額や整備すべき規則は変わるため、目的があいまいだと細かい部分を決めることはできません。

日当の適用範囲を決める

「なぜ日当を支給するのか」が明確になったら、次は適用範囲を決める必要があります。全ての役員と社員が適用対象となる扱いが一般的です。ただし、アルバイト・パートや契約社員などの非正規雇用者に出張に行ってもらうことがある場合は、適用対象に含めておくのが望ましいでしょう。具体的な扱いは「誰が出張を伴う業務を行うか」を踏まえて決めて構いません。

出張の定義を決める

何をもって出張とするか、定義を決めておくことも重要です。ただし、法的な決まりはないため、具体的な条件は企業の実態に応じて決めて構いません。現実的には「本社もしくは営業所など勤務地から目的地までの距離が片道150㎞以上」など、移動距離やエリアの範囲を盛り込んで決めることになります。また、宿泊を認めるか、日帰りでの対応とするかについても、移動距離やエリアの範囲など具体的な判断基準を設けておくと良いでしょう。

費用項目を設定する

出張の定義が明確になったら、細かい部分を詰めていく作業に入ります。具体的には、「交通費」「宿泊代」「食事代」「日当」などの費用項目を設定しましょう。ただし、項目ごとにあらかじめ金額を定めるのか、実費精算するのかは、適宜決めて構いません。つまり「日当12,000円(ただし交通費、宿泊費を含む)」としても、「食事代、雑費については日当4,000円とし、交通費や宿泊代は実費にて精算」としても特段問題はないと考えて下さい。

就業規則に組み込む

制度として日当を設けるのか、設ける場合の具体的な内容については企業の裁量に任されていますが、従業員に適用するためには就業規則に組み込まなくてはいけません。具体的な文言は異なりますが、現実的には「日当は出張日程に応じて支給するが、当該出張が〇日以上になった場合、〇日以降については所定額の75%を支給する」といった形で書くことになります。文言を作成したら、念のために社会保険労務士などの専門家にチェックしてもらうとより確実でしょう。

出張旅費規程を作成する

ここに至るまで決めた項目を盛り込む形で、出張旅費規程を作成します。就業規則内に「出張に関する詳細な規定は、出張旅費規程に定めるところによる」という文言(委任規程)を設ければ、独立した出張旅費規程として設けることが可能です。もちろん、就業規則の一部として出張旅費に関する規定を盛り込んでも構いません。なお、出張旅費規程を作成する際は、出張後の手続きや出張報告書の作成などのルールも決めておきましょう

旅費計算システムによる業務効率化

出張に伴い日当を支給することは、従業員と企業の双方にとってメリットになり得ますが、一方で経理部門の業務量が増えるという問題点もはらんでいます。特に、日当金額が役職、部署、出張先によりパターンが分かれるケースでは、正確な日当を計算するのに苦労するかもしれません。業務量の増加や煩雑な計算が、担当者の不満につながる可能性もあります。

そこで導入を検討すべきなのが、経費精算システムです。必要な設定を済ませれば、後は指示通りに操作することで、正確な計算ができます。役職や部署に関わらず、日当に関する手続きを一元的に管理しやすくなるため、経理担当者の負担やストレスも軽減できるでしょう。

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日当支給における注意点

制度を設け、日当を支給する場合は、以下のように注意すべき点があるため、詳しく解説します。

  • 基本的には課税対象にならない
  • 日当が高過ぎる場合は課税対象になる
  • 消費税はかからない
  • パートやアルバイトも日当の対象になるのか
  • 派遣社員や契約社員に日当支給する際
  • 出張日当の勘定科目

基本的には課税対象にならない

日当は、基本的には課税対象にならないという特徴があります。そのため、企業は法人税が節税でき、従業員は余分に所得税や住民税を払うことがないというのがメリットの1つです。つまり、所得税や住民税を計算する際の「所得」に含まれないため、日当を受け取ったからといってその分税金が増えることもありません

これまで日当を導入していなかった企業が新規に導入する場合、従業員が税金のことを懸念していたら、その点をていねいに説明しておきましょう。

日当が高過ぎる場合は課税対象になる

前述したように、日当には本来税金がかかりません。しかし、税務調査で日当が基準に合致しない、社会通念上の常識範囲に照らし合わせて高過ぎると判断した場合は、課税対象になることもあり得ます。具体的には個々の状況に照らし合わせて判断することになりますが、「一般の従業員が海外出張に行った際の往復の航空券がファーストクラス、現地での宿泊先は五つ星ホテル、別途出張1日につき日本円で2万円を支給」といったケースは否認されるかもしれません。

なお、日当が高過ぎると判断された場合、過剰な部分については給与もしくは役員賞与として扱うことになります。給与として扱われた場合は、従業員が所得税や住民税を支払わなくてはいけません。また、役員賞与として扱われた場合は、会社の経費には算入できなくなります。

消費税はかからない

日当を出す場合、消費税の扱いがどうなるかは出張先によっても異なります。まず、出張先が国内かつ日当が通常必要な支出と認められれば、課税仕入れの対象となります。つまり、仕入税額控除として、日当にかかる消費税額を、売り上げにかかる消費税額から控除することが可能です。一方、出張先が国内でも通常必要な支出と認められなかったり、出張先が国外だった場合は、仕入税額控除はできません。

パートやアルバイトも日当の対象になるのか

パートやアルバイトも日当の対象にすることは可能です。出張に行ってもらう可能性があるなら、対象に含めておくと良いでしょう。ただし、その際は正社員と同様、就業規則に定めなくてはいけません。

企業によっては、正社員用とパートやアルバイトなどの非正規社員用の就業規則を分けていることがあります。分けている場合は、両者の就業規則に出張経費に関する規程を必ず盛り込むようにしましょう。具体的な文言については、社会保険労務士など専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

派遣社員や契約社員に日当支給する際

派遣社員に対して出張や日当の支給ができるかは、派遣社員と派遣元企業との労働条件次第です。派遣元企業によっては、そもそも派遣社員の出張を認めていないケースがあるため、まずは出張させることに問題がないか確認する必要があります。

一方、契約社員に関しては、就業規則にその旨の規定を設けることで日当を支給することが可能です。

出張日当の勘定科目

出張手当の勘定科目は、基本的に「旅費交通費」を使います。ただし、出張に伴って会食をする際は、その費用を「会議費」または「交際費」として扱わなくてはいけません。具体例をチェックしてみましょう。

例)従業員Aの出張(出張期間3日)に伴い、飛行機代が往復5万円、ホテル代が2万円、現地での会食代が3万円発生したため、終了後に現金で支払った。なお、これらとは別に、宿泊を伴う出張の際は、日当として1日につき2,000円を支給することを就業規則に定めている。

以下の記事で、無料で使える出張旅費精算書テンプレートを入手できますので、会社でフォーマットが用意されていない場合は、ご利用ください。

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日当のデメリットはある程度システムで解決できる

日当は、従業員が出張した際に会社から支給される手当です。従業員にとってはモチベーションの維持、企業にとっては節税策の一環となるというメリットがあります。特に、出張中は食費など何かと細かい出費が生じる上に、肉体的・精神的な負担もかかるため、何らかの補償をするという意味でも、日当の支給は有意義です。

ただし、その分費用がかかることに加え、経理処理も大変になるため、支給する目的を明確にした上で、問題が起きないよう慎重に進めていきましょう。日当を支給するかどうかも含め、運用方針は基本的に自由に決めて構いませんが、就業規則の反映や税務上の扱いを誤るとトラブルが起きるかもしれません。問題がないか、税理士や社会保険労務士などの専門家に確認することも重要です。

なお、日当に伴う「経理処理が大変」というデメリットは、ある程度は経費精算システムで解消することが可能です。最初に必要な設定を済ませれば、後は画面の指示に従うだけで正しく、かつ効率的に経理処理ができます。経理部門の負担も軽減できるため、積極的に導入を検討しましょう。

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