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テレワークの普及や業務効率化の影響もあり、多くの企業で書類の電子化が進んでいます。ただ、取引先によっては紙の請求書を求めるケースもあり、その際は、請求書を印刷して郵送しなくてはなりません。
→ダウンロード:郵便料金値上げが招く「請求書業務の混乱」を回避する方法
ただ、近年では書類を郵送する機会が少なくなり、郵送の方法やマナーを知らないといったケースも多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、紙の請求書を郵送する方法や郵送のメリット・デメリット、効率的に郵送をするためのポイントなどをお伝えします。経理部門の担当者や新入社員の方などは、ぜひ参考にして下さい。
請求書の郵送に必要なもの
紙の請求書を郵送するには、請求書以外にも封筒や切手などの準備が必要です。ここでは、請求書の郵送に必要なものについて解説します。
準備物一覧
請求書を郵送する際に必要なものは次の通りです。
- 請求書
日付、商品名、金額、消費税、合計額などの他、送付先の会社名や担当者名などに間違いがないかを確認した上で印刷しておきます。
- 送付状
送付状とは、送付する書類の内容や枚数を記載した文書ですが、必ず同封しなければならないわけではありません。ただし、複数の請求書を送る場合、枚数を記載しておけば紛失や請求漏れリスクが低減するため、同封することをおすすめします。
- 封筒
請求書と送付状を入れるための封筒を準備しましょう。詳しくは後述しますが、書類のサイズに合わせて複数のサイズの封筒を準備しておきます。
- 請求書在中スタンプ
開封しなくても内容が分かるようにするために封筒に押印するスタンプです。このスタンプを押印しておけば、重要な郵便物と認識されるため、放置や廃棄のリスクを避けられます。
- 切手
郵送する際、必ず必要になるのが切手です。郵送する請求書が多い場合は直接郵便局に持ち込み、そこでサイズや重さを計ってもらい、必要な切手代を払います。よく切手を使う場合はオフィスに一定の枚数を用意しておくと、その場で切手を貼ってポストから投函できるので便利です。
請求書の書き方について詳しくは下記をご覧下さい。
封筒の色とサイズ
請求書を郵送する際、封筒の色とサイズには適切な配慮が欠かせません。ここでは、色とサイズそれぞれについて、請求書を郵送する際のポイントを解説します。
- 封筒の色
封筒には、開封しなくても内容がわかるように「請求書在中スタンプ」を押印することが一般的です。しかし、同時に封筒の中身は見えないようにしなくてはなりません。
請求書は取引を証明するための信書であるため、第三者に内容を知られないような工夫が必要です。具体的には、白色で薄い封筒は避け、グレーやブルーなど中身が透けない色を選択した上で、厚めの素材にしましょう。透け防止加工が施されたものもおすすめです。
- 封筒のサイズ
多くの請求書はA4サイズの用紙に印刷するため、請求書を郵送する際の封筒は、三つ折りにして入れられる長形3号が一般的です。
長形3号であれば定形郵便物で送れるため、郵送コストの削減にもつながります。なお、請求書を折らずに送りたい場合は、角型2号を使用します。
適切な切手を準備しよう!
切手の代金不足があると、取引先相手が不足分を支払わないといけません。自社が発行する郵便物の料金を相手に支払わせるのは非常に失礼に当たり、場合によっては取引先としての信用を失ってしまうリスクもあります。そのため、切手は適切なものを準備しておきましょう。
最も安全なのは、郵便局に持ち込む方法ですが、自社で切手を貼る場合は郵便局のWebサイトで最新の料金と郵便物のサイズや重さを確認した上で間違いないように貼るようにします。
郵便料金は2024年10月に変更されたので、変更前の切手を貼らないように注意が必要です。2024年12月現在、定型郵便であれば110円切手が必要になります。定型外郵便の場合、50g以内であれば140円切手を用意しておきましょう。50g以内でもA4用紙なら10枚程度は入るため、基本的には110円か140円切手があれば問題ありません。
参考:日本郵便株式会社 | 手紙(定形郵便物・定形外郵便物)の基本料金
封筒への記載方法と書類の入れ方
請求書を郵送する際、請求書内容に間違いがないようにすることはもちろん、手にした際にまず目につく封筒への配慮も欠かせません。封筒への記載を正しく行うことで、間違って紛失や廃棄をするリスクが減り、自社の信頼度向上にもつながります。
また、請求書の入れ方にも十分注意する必要があります。相手が見やすく間違いが起こりにくいように入れることも意識しなくてはなりません。ここでは、封筒への記載方法、入れ方について解説します。
封筒への記載方法
封筒の記載方法について、表面と裏面それぞれのポイントを見てみましょう。
表面
- 送付先郵便番号
まず送付先の郵便番号を左上に記載します。郵便番号用の四角がない場合は、左三桁と右四桁の間にはハイフンを入れましょう。
- 送付先住所
送付先の住所は自社と同じ地域であっても省略せず、必ず都道府県から記載します。また、数字は漢数字で記載し、住所が長く二行にまたがる場合、二行目は一文字下げて始めるのがマナーです。
- 送付先の企業名・部署名・役職名・氏名
会社名を記載する際、株式会社や有限会社も省略はしません。また、企業名と部署名だけを記載する場合は、最後に「御中」と記載します。
役職名・氏名まで記載する場合は、最後に「様」を入れますが、その場合、「御中」は記載しません。なお、氏名まで分からない場合は、「担当者様」でも大丈夫です。
- 「請求書在中」の添え字
封筒の左下に「請求書在中」の添え字を記載します。手書きの場合は文字を四角で囲むと、より分かりやすくなるのでおすすめです。郵送する量が多い場合はスタンプを用います。
郵便は「速達」を赤字で記載するため、「請求書在中」は青字(スタンプの場合は青インク)にするのが一般的です。
裏面
- 送付日
裏面の左上に元号と漢数字を用い、送付する日付を記載します。
- 送り主の住所
送り主である自社の住所を記載する場所は、裏面の真ん中付近にある継ぎ目部分です。右側に郵便番号と住所、左側に企業名と氏名を記載します。
継ぎ目がない場合は、左下部分に郵便番号、住所、企業名、氏名をまとめて記載しましょう。なお、氏名を住所よりも一回り大き目に記載すると、誰が送ったかがすぐに分かりやすくなるのでおすすめです。
- 封じ目(〆)
最後に封筒が未開封であることを示し、宛先の本人が開封するようにするため、糊付けをした上から封じ目を入れます。
なお、自身が受け手となった場合、宛先本人に許可を取らず開封すると、「信書開封罪」に問われるリスクもあるので注意しましょう。
書類の入れ方
請求書を三つ折りにして入れる場合は、まず下から3分の1を上に折り込み、次に上から3分の1を下に折り込みます。開封前に中が見えないよう、印字面を内側に折り込むのがポイントです。
請求書を折らずに入れる場合は、折れ曲がりを防ぐため、クリアファイルに入れた上で封入しましょう。また、どちらの場合でも送付状を一番上にして入れるようにします。
なお、窓付き封筒に入れる場合は、窓の部分に送付先の住所が入るよう、印字面を上にして折りたたむようにして下さい。
送付状の作成方法
送付状とは、同封する書類の内容やあいさつなどを記した書類のことです。主に、送付物の内容を相手に確認してもらう目的で同封します。送付状は必ずしも必要なものではありませんが、ビジネスマナーとして同封することが一般的です。
送付状の作成に決まったルールはないものの、次のような項目を記載します。
- 送付日
請求書を送付する日付を記載します。封筒の裏面に記載する日付と同じ日で、記載場所は書面の右上です。
- 宛先
送付先の郵便番号・住所・会社名・部署名・担当者名を書面の左上に記載します。封筒の宛先同様、都道府県や株式会社、有限会社などは省略せずに記載しましょう。
- 送り主情報
書面右側で、相手の宛先より下に自社の郵便番号・住所・会社名・部署名・担当者名を記載します。また、何かあった際にすぐ連絡が取れるよう、電話番号やメールアドレスも記載しておきましょう。
- 本文(あいさつ文)
前文であいさつや日ごろの感謝、主文で送付状を送付することを伝え、最後に末文として結びのあいさつを記載します。
- 書類内容
送付した請求書の内容について記載する部分です。請求書の枚数や内訳を記載します。なお、書類内容を記載する際、一番上に「記(きがき)」を記載し、一行空け書類内容、最後に「以上」で締めます。
請求書郵送時の注意点
請求書の双方にとって重要な書類となるため、ミスのないよう注意しなくてはなりません。特に次の3点については細心の注意を払う必要があります。
宛名や送付書類のミスがないか確認する
宛名のミスは取引を行う相手に対し非常に失礼な行為です。また、住所に不備があると宛先不明で戻ってきてしまうリスクもあるため、しっかりと確認しましょう。
多くの企業では月末に請求書をまとめて作成して送るため、送付先と送る書類に間違いが起きやすくなります。別の企業へ送る請求書を送ってしまい開封されると機密情報の漏えいにつながる場合もあるので注意が必要です。
大企業に送る場合は、担当者の元へ届くのに時間がかかる、誤配されるなどのリスクがあるので、必ず部署や担当者名まで記載しましょう。
普通郵便か速達で送る
請求書は信書のため、日本郵便または信書便事業者を使い、普通郵便もしくは速達で送ります。違反した場合、郵便法第76条により3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
日本郵便であってもゆうパックやゆうメールで信書は送れないので注意して下さい。
提出期限を確認する
企業の経理業務は基本的に締め日が決まっていることが多いため、請求書の送付が遅れてしまうと、相手の経理担当者に迷惑がかかってしまいます。場合によっては支払いがひと月遅れになってしまう場合もあるでしょう。
そのため、それぞれの企業にあらかじめ締め日を確認した上で送付すれば、相手の迷惑もかからず、支払い遅れを防ぐことにもつながります。
特に大企業が取引先の場合は担当者に届くまでに時間がかかる可能性もあるので、締め日に余裕を持って送付することを心がけましょう。
請求書を郵送するメリット
電子化によって紙の書類は減少しているものの、請求書を郵送することで得られるメリットは少なからず存在します。ここでは、その中でも特に大きなメリットを見てみましょう。
改ざんのリスクが低い
紙の書類は、電子化された書類に比べ、改ざんのリスクが低くなります。原本と控えを紙で物理的に保管することになるため、持ち出しされるリスクが低い上、改ざんされたとしても、完全に改ざんの痕跡を消すのは困難です。その結果、改ざんを防止し、安全に管理できます。
電子データ非対応の取引先に対応できる
企業ではあらゆる業務でパソコンを使うことが当たり前となり、紙の書類の電子化も急速に進んでいます。しかし、電子データ非対応で紙の書類を扱う企業も少なくありません。
そのため、いつでも紙のやり取りをできる体制を整備しておけば、電子データ非対応の企業との取引でも対応可能です。
請求書を郵送するデメリット
請求書の郵送は、紙ならではのデメリットが発生します。特に次の2点については、スムーズに業務を進めて行く上で、大きなデメリットです。
コストが高い
一つめのデメリットは、請求書を郵送する場合、紙代、印刷代、封筒代、切手代などのコストがかかってしまう点です。また、請求書送付の履歴を残すには、配達記録郵便や簡易書留を選択する必要があり、その場合はさらにコストがかかります。
一方、電子化している場合、これらのコストはかかりません。メールを送信する通信費のみのため、郵送よりもコストを抑えられるでしょう。
到着までの時間が長い
郵送は取引先に到着するまでの時間がかかってしまうのもデメリットの一つです。メールで電子化した請求書を送信すれば1分もかからないのに対し、郵送は最低でも1日はかかります。
特に週末に送った場合、到着は週明けです。その分、相手の請求書処理も遅れてしまうのは大きなデメリットといえます。場合によっては、やり取りの遅れにより企業の損失が発生することもあるでしょう。
請求書の送付を効率化する方法
請求書の送付は毎月発生する定型業務のため効率化は欠かせません。ここでは、請求書を郵送する業務を少しでも効率化する方法を紹介します。
郵送代行サービス
郵送で手間がかかるのは、印刷から封入、宛名書き、郵送までの一連の作業です。そこで、この作業を効率化するには、郵送代行サービスの活用をおすすめします。
請求書はもちろん、あらゆる書類の郵送を代行してくれるため、経理業務だけではなく、郵送が必要な全ての部署で効率化が可能です。
ただし、信書の郵送代行は情報漏えいのリスクもあるため、サービスは信頼性を重視して選択するようにしましょう。また、代行サービスには費用がかかるため、得られる効果を比較して導入を検討すべきです。
郵送ではなく電子上の取引に切り替える
取引先との連絡をメールで行うことが多い場合は、請求書のやり取りもメールで行ったほうが効率的です。電子化することで、コスト削減にもつながります。
電子メールでのやり取りはタイムラグが発生しないため、郵送よりもやり取りがスムーズです。また、社外でも請求書の授受が可能なので、テレワークの推進にもつながります。
ただし、電子化する際には電子帳簿保存法関連の要件を満たすことが条件です。さらに、取引先に電子化に切り替えることを認めてもらう必要があります。
電子化を行っていない取引先に対しては、電子化をすすめるのも効率化を進める方法の一つです。もちろん、自社がまだ電子化していない場合は、まず自社から電子化を進める必要もあります。
紙の請求書といっても、作成は基本的にパソコンで行っているケースがほとんどのため、印刷せずにPDF化し、メールでやり取りする方法に切り替えるだけでも大きな効率化につながります。電子化によってどのくらい効率化やコスト削減が可能なのか、一度社内で検討してみましょう。
以下の記事では、請求書をメールで送る時に気を付けたいポイントを解説していますので参考にしてください。
いざという時のためにも郵送時のマナーを把握しておこう
業務の電子化が進む中でも、紙の請求書を使用する企業がゼロになったわけではありません。そのため、いざ取引を開始してみたら紙でやり取りをする必要があるケースもまだまだ考えられます。
そうした際にも慌てず、スムーズに取引を進めるには、郵送の方法もしっかりと把握しておくことが重要です。
一方で、業務効率化やコスト削減のためには電子化を進めることが欠かせません。電子化への切り替えが進んでいない場合は、これを機会に検討してみてはいかがでしょう。