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経理担当者が避けては通れない業務の1つに、仕訳や仕訳入力があります。決算書作成などの基礎であり、経理の要ともいえる業務です。仕訳業務をおろそかにするとさまざまな問題が起こりやすくなるため、日々確実かつスピーディーにこなしていく必要があります。
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仕訳や仕訳入力は、企業で働く人なら部署に関係なく理解しておくべき業務です。決算書を読んで正しく理解するためにも、要点をおさえて理解度を高めておきましょう。
この記事では、仕訳入力の基本ルールから具体的な方法まで詳しく解説します。仕訳業務の効率化テクニックも紹介するため、ぜひ最後までご覧下さい。
仕訳入力とは
仕訳入力がどのような業務なのか理解するために、仕訳の意味や仕訳入力の役割をチェックしておきましょう。
以下では、仕訳と仕訳入力について詳しく解説します。
仕訳の概要
仕訳とは、日々の取引で発生するお金の流れを、ルールにしたがってラベリングして記録することです。取引内容を表す項目と数字を用いてお金の流れを明確にします。取引内容を表す項目を、勘定科目と呼びます。
仕訳の具体例は、以下の通りです。
取引内容 | 会社で使用する目的で150円のペンを現金で購入した |
仕訳 | 消耗品費 150 / 現金 150 |
会社で使用する目的で購入したペンは、「消耗品費」などの勘定科目を用いて仕訳を行います。仕訳によってお金の流れをまとめることで、どのような目的で企業の財産が増減したのかを把握しやすくなります。正しい決算書を作成するには、1つ1つの取引内容を正確に仕訳することが重要です。
仕訳入力とは
仕訳入力とは、仕訳が完了した後に内容を帳簿に記載することです。仕訳をするだけでは勘定科目ごとの合算や残高の確認が難しいため、仕訳入力をして把握しやすい状態にまとめます。
勘定科目ごとに金額の計上や残高確認ができる状態にしておくことで、企業の財政状況(経営状況)の可視化が可能です。決算時には、仕訳入力をした帳簿をもとに決算書を作成します。
仕訳入力は、紙ベースの帳簿や電子データで管理する電子帳簿で行うのが一般的です。近年は、紙で管理する企業は少なくなり、電子帳簿で経営状態を把握する企業が多く見られます。
帳簿の種類
仕訳入力に関係する帳簿は、主に「主要簿」「補助簿」の2つに分類されます。
それぞれの帳簿の具体例は、次の通りです。
主要簿 | 仕訳帳、総勘定元帳 |
補助簿 | 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、仕入先元帳 |
仕訳帳は、仕訳内容が時系列に記載されます。仕訳帳に記載した仕訳を勘定科目ごとに記載した帳簿を総勘定元帳と言います。主要簿は、全ての企業が作成しなければならない帳簿です。
補助簿は、主要簿の足りない部分を補う目的で作成する帳簿です。現金の流れや仕入に関する取引などを詳しく把握するために役立ちます。
作成する補助簿は、企業によって異なります。主要簿と違って、必ず作成しなければならないという決まりがあるわけではありません。
仕訳入力における基本ルール
仕訳入力には、注意すべき基本的なルールがあります。正確な仕訳業務を行うために、基本ルールをしっかりとおさえておきましょう。
以下では、仕訳入力における代表的なルールを2つ解説します。
貸方と借方を区別する
仕訳をする場合は、「貸方」「借方」を区別して考える必要があります。
仕訳は必ず、貸方と借方を同じ金額にするのがルールです。2つが必ず一致することを、貸借平均の原則と呼びます。
簡単に言うと、貸方(右側)には使ったお金、借方(左側)にはもらったお金を記載します。
お金が増えれば借方に記載し、貸方には増えた理由となる勘定科目を記載するのがルールです。
例えば、売り上げ10,000円を現金で回収した場合の仕訳は、以下の通りです。
お金が減った場合は、貸方に記載して借方にお金が減った理由を記載します。
例えば、旅費交通費として5,000円を現金で支払った場合の仕訳は、以下の通りです。
相手勘定科目に注目することで、お金の増減理由が一目で分かります。
自社の勘定科目に従う
一度決めた勘定科目は、変更せずに使い続けるのがルールです。
勘定科目は、企業内で発生した取引をラベリングするために用いる分類項目です。企業ごとに使う勘定科目の名称は異なります。あらかじめ自社にとって使いやすい勘定科目を設定しているため、指定された項目を使用しましょう。
勘定科目の認識が人によって異なると、仕訳入力で混乱が生じるおそれがあります。同じ意味合いを持つ他の勘定科目を使ってしまうと、取引内容を正しく把握できなくなるため注意が必要です。「消耗品費」と「事務用品費」、「支払手数料」と「雑費」、「新聞図書費」と「福利厚生費」のように、どちらの勘定科目でも通じる取引は複数あります。
取引の性質の可視化や、取引の種類ごとの合計額の計上、他の勘定科目との比較などをスムーズに行うためにも、自社が使っている勘定科目はしっかりと覚えておきましょう。
主な勘定科目の分類
主な勘定科目の分類は、以下の通りです。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
勘定科目の種類や名称は企業によって異なるものの、必ず5つの性質のいずれかに分類されます。簿記では、5つの分類をまとめて簿記の5大要素と呼びます。まずは、それぞれの性質を理解しておくことが大切です。
ここでは、5つの分類について詳しく解説します。
資産
資産には、企業が保有している貨幣によって価値を評価できるものが該当します。いわゆる企業の財産と言える勘定科目です。
資産は、1年以内に現金化できる「流動資産」と長期にわたって保有する「固定資産」に分けられます。
資産に該当する主な勘定科目は、次の通りです。
流動資産 | 現金 当座預金 受取手形 売掛金 有価証券 |
固定資産 | 建物 土地 車両運搬具 機械装置 関連会社株式 商標権や特許権 |
固定資産には、形のある有形固定資産と商標権や特許権のように形のない無形固定資産があります。
また、貨幣によって価値を評価できなくても、将来的に効果を発揮することが見込まれる費用は、繰延資産として資産計上されるのが特徴です。繰延資産には、開業費や創立費などが挙げられます。
負債
負債には、企業が支払いや返済の義務があるものが該当します。負債と聞くとマイナスな印象を持たれやすいものの、実際には企業が資産を得るにあたってどのように資金調達をしたかを把握するための勘定科目です。
支払いや返済義務が1年以上にわたるものは、固定負債に分類されます。
負債に該当する主な勘定科目は、次の通りです。
流動負債 | 支払手形 買掛金 未払消費税、未払法人税等の未払費用 |
固定負債 | 長期借入金 社債引当金 |
確定した消費税や法人税のうち、未払いのものは負債扱いです。
また、将来的に発生する金額を見積もって計上する引当金も、負債に分類されます。引当金には、退職給付引当金や売上割戻引当金、貸倒引当金や賞与引当金などがあります。
純資産
純資産とは、企業が保有している資産から負債を差し引いたものです。企業の財務状況を把握する上で重要な勘定科目です。総資産の割合が多いほど、企業の財務状況が安定していることを意味します。
純資産に該当する主な勘定科目は、以下の通りです。
- 資本金
- 資本準備金
- 事業主貸
- 事業主借
- 元入金
- 繰越利益剰余金
純資産の多くは、資本金や資本準備金などの株主資本が占めます。
収益
収益は、企業が会計期間内に営業活動などで得た収入を意味します。
収益に該当する主な勘定科目は、以下の通りです。
- 売上
- 受取利息
- 有価証券評価益
- 受取配当金
- 雑収入
- 固定資産売却益
- 前期損益修正益
収益を得た方法によって、用いる勘定科目が変わります。企業のメインとなる事業で得た収入は売上高と呼ばれ、「売上」勘定を用いて仕訳を行います。
利息や株式で得た収入は営業外利益に分類されるため、「受取利息」「有価証券評価益」などの勘定科目で区別しなければなりません。事業に関係しない特別な事情で発生した収益は、特別利益に分類されます。「固定資産売却益」「前期損益修正益」などの勘定科目を用います。
費用
費用は、企業が会計期間内に営業活動にかかった支出を意味します。
費用に該当する主な勘定科目は、以下の通りです。
- 仕入
- 給料
- 家賃
- 租税公課
- 福利厚生費
- 宣伝広告費
- 支払利息
- 固定資産除却損
- 災害損失
お金を支払った目的によって、用いる勘定科目が異なります。メイン事業にかかった費用は売上原価と呼ばれ、「仕入」勘定が用いられます。
売上原価以外の費用は、販売費および一般管理費、営業外費用に分類され、費用の種類を示す勘定科目が用いられるのが特徴です。固定資産の除却や火災などで損失が出た場合は、特別損失として「固定資産除却損」「火災損失」などの勘定科目を用いて仕訳を行います。
以下の記事では、PLの基礎知識から実践的な分析手法まで、具体例を交えてわかりやすく解説していますので参考にしてください。
仕訳入力の方法3選
仕訳入力の方法は、以下の3つです。
- 振替伝票
- Excel
- システム・会計ソフト
それぞれにメリットとデメリットがあるため、特徴を理解した上で仕訳入力を行いましょう。
振替伝票
振替伝票は、取引内容を記録することを目的とした伝票で、紙に直接手書きする昔ながらのスタイルです。
借方科目と貸方科目、金額と摘要欄があり、仕訳帳としての役割も果たします。振替伝票で仕訳入力を行う場合は、仕訳帳への記入を省略できます。

振替伝票のメリットは、パソコンなどの機器がなくても仕訳ができることです。パソコン操作が苦手な人でも簡単に作業ができます。
一方で、記入に手間がかかるため業務のスピード感が劣ります。合計額を出すには都度計算しなければならず、ミスが生じやすくなるなどのデメリットもあります。万が一入力に誤りがあった場合は、二重線と訂正印で訂正が必要です。また、振替伝票は一定期間保存が必要であるため、保管場所も確保しなければなりません。
取引が多い企業の場合、デメリットの方が大きくなる可能性があります。
Excel
振替伝票や仕訳帳のフォーマットを用いて、設定されている項目にデータを入力する方法です。必要な項目が含まれていれば、使いやすいようにカスタマイズも可能です。
Excelは多くの人が使用しているため、仕訳入力がしやすいと感じる人が多く見られます。基本的なパソコン操作ができれば誰でも仕訳入力ができる点が大きなメリットです。データで管理されるため、保管場所を確保する必要もありません。
ただし、データの取り扱いには注意が必要で、完璧に使いこなすのは難しいと言えます。誤ってデータを消してしまうおそれもあります。仕訳業務の効率を高めるには、バックアップをとるなどの対策が必須です。
また、Excelで入力した仕訳は、決算書の作成時に集計作業が必要になります。
システム・会計ソフト
経理業務のためにつくられたシステムや会計ソフトを使って仕訳入力をする方法です。自動仕訳機能が付いているものであれば、経理の知識がない人でも簡単に仕訳業務ができます。そのため、アルバイトやパート従業員に任せることも可能です。
システムや会計ソフトの最大のメリットは、使いやすさとミスの防止につながることです。手書きをする必要がなく、ミス防止機能があるため業務の効率化につながります。決算書の作成時に集計してくれる機能を活用すれば、決算業務の負担も軽減できるでしょう。定額減税やインボイスなど、法改正にも対応しているため安心です。
一方で、セキュリティリスクが伴う点がデメリットです。セキュリティ対策が不十分だと、情報漏えいやデータ改ざんなどが起こるリスクがあります。パスワードの管理を徹底するなど、管理体制を徹底することが大切です。
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仕訳入力の効率化にはシステム導入がおすすめ!
仕訳業務は、基本ルールや入力方法を一度覚えてしまえば迷いなく進められます。しかし、取引の度に入力することに負担を感じる人も少なくありません。
仕訳業務を効率化するには、システム導入がおすすめです。学習機能によって自社のルールにしたがって仕訳業務を行うため、ヒューマンエラーも防ぎやすくなります。
システム導入にはコストがかかるものの、長期的な視点で見るとコスト負担より業務効率化によって得られる利益の方が大きくなるケースがほとんどです。
会計システムには、経費精算など他のシステムと連携できるものも多く、経理全体のペーパーレス化を進めることにもつながります。在宅勤務など多様化する働き方への対応やコスト削減など、さまざまなメリットが期待できます。
ペーパーレス化のメリットや推進のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
システム導入で経理業務の効率化を実現しよう
この記事では、仕訳業務の必要性や基本ルール、具体的な仕訳入力の方法について詳しく解説しました。仕訳入力への理解は深まったでしょうか。
入力した仕訳内容は帳簿に反映され、記載された勘定科目や金額をもとに決算書が作成されます。企業の財務状態を正確に把握するためにも、日々の仕訳業務を正確かつスムーズに行う必要があります。
この記事をきっかけに、経理部の人もそうでない人も仕訳について知識を深められていればうれしいです。仕訳は企業の決算など経理業務の根底を支える業務であるため、ぜひ今一度見直してみましょう。