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請求書の発行・受領は毎月発生する業務であり、難しくはないものの手間がかかるため、業務効率化に大きな影響を与えています。企業によっては毎月何百通と請求書を発行することもあり、請求書に関する作業だけで1~2日を費やしてしまうケースもあるのではないでしょうか。
→ダウンロード:請求書受領クラウド選び方ガイド【6社の比較表付き】
そこで、経理部門でも特に請求書業務の効率化を進めるために欠かせないのが請求書業務のクラウド化です。
本記事では、クラウド請求書システムを導入するメリットやシステム選択のポイントを解説した上で、おすすめのシステムを紹介します。請求書業務の効率化を検討している担当者の方は、ぜひ参考にして下さい。
クラウド請求書システムとは
クラウド請求システムとは、請求書に関する業務を電子化するシステムです。クラウド上での作業となるため、オフィス以外の場所でも作業できる特長があります。
テレワークの普及や業務効率化に加え、2022年に改正された電子帳簿保存法などの影響により、経理業務の電子化が進んできました。クラウド請求システムも電子化を進める手段の一つで、請求書に関する業務効率化が期待できます。
請求書発行クラウドと請求書受領クラウドの違い
クラウド請求書システムは、大きく「請求書発行クラウド」と「請求書受領クラウド」の2つに分けられます。
請求書発行クラウドは、主にWeb上で請求書を作成・発行し、取引先へ電子データとして送付するまでを行うためのシステムです。
これに対し、請求書受領クラウドは、紙もしくは電子化された請求書を受領し、管理するためのシステムになります。
どちらも請求書業務を効率化させるシステムという点では同じです。ただ、2023年10月より施行されたインボイス制度では、取引先から受領した適格請求書(インボイス)の適切な処理が求められます。
そのため、特に請求書受領クラウドは請求書業務において重要な役割を果たすシステムといえるでしょう。
クラウド請求書システム導入のメリット
クラウド請求システムの導入により、経理業務にはさまざまなメリットが生まれます。その中でも大きいのは次の4点です。
請求書作成・受領の効率化
クラウド請求書システムを導入することで、請求書作成・受領業務の大幅な効率化が実現します。
発行システムであれば、一度設定した取引データを記憶させておけるため、次月以降は自動で請求書作成・送付・保存などが可能です。
また、受領システムであれば、受領代行作業の自動化が実現するため、支払い漏れや確認漏れが防げるようになります。これにより、取引業務の効率化を果たせると同時に経理担当者の作業負担軽減も可能です。
ヒューマンエラーの防止
請求書業務は単純な定型業務ではあるものの、金銭を扱う業務であるため、絶対にミスは許されません。ただ、入力ミスや確認漏れなど、人が行う作業のため、ヒューマンエラーをゼロにすることは非常に困難です。
しかし、クラウド請求書システムを導入すれば、ヒューマンエラーが起きるリスクを大幅に軽減できます。請求漏れや誤請求など請求書に関わる業務のミスが減少することで、取引先の信頼向上につながり、良好な関係を維持できるでしょう。
コストの削減が可能
これまで請求書に関わる業務を手作業でやっていた場合、クラウド請求書システムを導入することでコスト削減効果も期待できます。
紙の請求書を電子化し、取引先にメールで送付すれば、用紙代や印刷代、封筒・切手代などのコストがかかりません。
また、人が行ってきた業務がクラウド請求書システムで自動化されれば、経理担当者の労働時間削減につながり、人件費の削減も可能です。結果として請求書に関する業務が大幅に減り、コスト削減が実現するでしょう。
セキュリティ対応と法改正対応
電子データは紙の書類に比べ、改ざんしやすいというデメリットがあります。しかし、クラウドは閲覧者権限の設定も厳密にできるため、適切に管理すればセキュリティ面での不安も解消されるでしょう。
また、クラウドサービスであれば、常に最新の法改正に応じてアップデートできるので、電子帳簿保存法やインボイス制度などへの対応も可能です。
ここ数年、デジタル技術の進化もあり、経理業務のやり方も日々変化を続けています。今後も法改正は継続していくと予測できるため、常に最新の状況に対応する上で、クラウド請求書システムの導入は担当者の負担軽減に大きく貢献するでしょう。
クラウド請求書システムの選び方とコツ
現在、さまざまな企業から多様なクラウド請求書システムが提供されています。そのため、自社にとって適切なシステムを選択しないと、かえって手間が増え、非効率になってしまうケースも少なくありません。
ここでは、自社に最適なクラウド請求書システムを選択するポイントやコツを紹介します。
利用する業務範囲の確認
請求書の作成と発行を自動化したいといった場合は、請求書発行クラウドを選択するのがおすすめです。逆に受領した請求書の管理を自動化したいのであれば、請求書受領クラウドを選択すると良いでしょう。
また、受領クラウドといっても入金管理のみなのか、催促や売り上げ情報の集計機能も必要なのかなど、細かな機能についても現状分析をした上で慎重に選択する必要があります。
ただ、業務のデジタル化を進めていく中で、どこか一点だけを電子化してもあまり意味はありません。現状は必要ないと思っても将来的に必要になるケースも十分に考えられます。
そのため、短期ではなく長期的な視点で必要な機能を予測し、自社に合ったシステムの選択をしましょう。
自動化する範囲の確認
クラウド請求書システムは、請求書の作成・発行から支払い状況の管理、催促、受領した請求書の保管、支払い漏れや確認漏れのチェックなど多様な業務の自動化を実現します。
そのため、自社の現状分析を行い、どこまで自動化したいのか、その範囲を確認しましょう。場合によっては、現在使用している他のシステムと連携させれば、自動化が実現する可能性もあります。
できるだけコストを抑えるためにも、請求書に関わる業務だけではなく、経理業務全般のプロセスも見直しを進めた上で、自動化したい範囲を決めることが重要です。
クラウド請求書システムとひと口にいっても、その種類は多様なため、それぞれに得手不得手もあります。自社の課題に合わせ、まずどの業務範囲までを自動化したいのかを明確にしましょう。
インボイス制度・電子帳簿保存法対応
クラウド請求書システムを導入しても紙の請求書を残したままでは、業務効率化は進みません。より効率化を進めたい場合は、請求書のペーパーレス化推進を前提とした上で、導入を検討する必要があります。
そして、ペーパーレス化を進める上で、システム選択のポイントとなるのは、電子帳簿保存法とインボイス制度に対応しているかどうかです。法律に対応しているシステムを選択すれば、電子化の障壁もなくなるため、スムーズにペーパーレス化を進められます。
なお、電子帳簿保存法への対応度合いはシステムによってさまざまです。ただ、JIIMA認証を受けているシステムであれば、基本的には問題ありません。
また、インボイス制度は、ほとんどのシステムで適格請求書の発行に対応しているため、電子帳簿保存法への対応を重視して選択すると良いでしょう。
電子帳簿保存法への対応方法について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
既存システムとの連携
請求書を作成する際、既存の基幹システムや販売管理システムなどと連携して請求金額を取り込む必要が生じます。システム連携の方法として挙げられるのは、作成したCSVをインポートするか、API連携させるかの大きく2つです。
より効率化を進めるのであれば、API連携ができるものが良いでしょう。特に請求書を頻繁に発行する場合、毎回別システムからCSVをダウンロードして請求書システムにインポートするのは大きな手間です。
月に一回程度であれば、インポートするタイプでも問題ないものの、より効率化を重視するのであれば、API連携をおすすめします。
取引先に合わせた発行・受領方法の選択
請求書のペーパーレス化を進める上で問題となるのが、取引先が紙の請求書のみを扱っているケースです。取引先が紙の請求書をマストとしている場合、自社だけの都合で電子化は進められません。
請求書システムによっては、郵送代行やFAX送信に対応したものもあるため、取引先の状況に合わせ、柔軟に対応できるものを選択しましょう。
サポート体制とセキュリティの確認
請求書に関わる業務に遅延が発生すれば、迷惑がかかるのは自社だけではありません。取引先にも多大な迷惑がかかってしまうため、導入時やトラブル発生時には迅速に対応するサポート体制が整備されているかも重要な選択ポイントの一つです。
また、金銭に関するやり取りをするため、セキュリティが充実しているかの確認も欠かせません。万が一、他社に請求書の情報が漏えいすれば、信用問題に発展するため、セキュリティ面も必ず確認しましょう。
おすすめ請求書発行・受領クラウド6選
おすすめの請求書の効率化を実現するシステムを、発行と受領に分けて見てみましょう。
請求書発行クラウド
まず、請求書を作成・発行する際に利用するシステムを4つ紹介します。
TOKIUM請求書発行
TOKIUM請求書発行は、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応した請求書の他、納品書や見積書などをオンライン上で作成し、電子送付を行うシステムです。
請求書のレイアウトはCSVを取り込むだけで簡単にカスタマイズ可能で、複数のテンプレートを登録することもできます。そのため、従来使っていた紙の請求書のレイアウトを大きく変える必要もありません。
また、導入時の初期設定やメールアドレスの収集代行、導入後のサポートも充実しています。さらに、他のTOKIUNサービスを利用している場合は、マスタ共通化による管理工数の削減で経理以外の多様な部署で働く担当者の負担軽減も可能です。
SOCレポートやISMS認証、Pマークなど第三者機関からの認証を取得しているため、セキュリティも万全の体制となっています。これらの機能や体制整備により、安心して請求書発行業務の効率化が可能です。
楽楽明細
楽楽明細は、請求書をはじめとした帳票発行業務効率化に特化したシステムです。帳票データをCSVやPDF形式でアップロードするだけで、発行先に応じて、Webでのダウンロードやメール添付などの方法で帳票を発行できます。
API連携を活用することで、現在利用中のシステムから楽楽明細に顧客情報や帳票データを一括で取り込むことも可能です。電子帳簿保存法やインボイス制度対応はもちろん、承認フローによる帳票の二重チェック機能も有しています。
また、郵送代行機能やFAX送信機能も搭載しているため、紙の請求書のみを扱う企業との取引でも柔軟な対応が可能なシステムです。
ジョブカン見積/請求書(株式会社DONUTS)
ジョブカン見積/請求書は、帳票の発行と受領の両方に対応したシステムです。請求書や見積書の他、納品書、領収書、合計請求書、概算見積書、入金伝票など幅広い帳票を直感的な操作で簡単に作成できます。
また、送付状況や入金状況を把握できるステータス管理機能を備えており、作業の抜け漏れを防ぐことが可能です。電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しています。
初期費用やサポート費用は無料で、30日間無料お試しもあるので、とりあえず試してみたいといった際におすすめのシステムです。
BtoBプラットフォーム 請求書
BtoBプラットフォーム請求書も請求書の発行と受領の両方に対応しているシステムです。100万社以上が利用しているシステムで、実績も豊富なため、安心して利用できます。紙ベースの取引をクラウド上でのやり取りに切り替えることで、請求書関連業務のペーパーレス化を推進します。
また、販売管理システムや会計システムとの連携により、請求書処理の完全自動化に加え、自動入金消込機能で入金漏れも防げるため、担当者の負担軽減が可能です。
請求書受領クラウド
続いて請求書の受領を主としたシステムを紹介します。
TOKIUMインボイス
TOKIUMインボイスは、電子化された請求書の受領や紙の請求書のデータ化代行により、支払に関する業務の完全ペーパーレス化を実現するシステムです。
電子帳簿保存法対応システムに欠かせないJIIMA認証を取得しているだけでなく、認証機関である日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が実際に導入し、利用しているサービスです。
通常、紙を電子化した際、データ化した内容に間違いがないかの確認が求められますが、TOKIUMインボイスの高いデータ化制度により、内容の正誤確認も不要です。
さらに、経理担当者の負担を大きくしている適格請求書発行事業者登録番号のチェックも自動で行われます。登録番号の照合作業が不要になる上、ヒューマンエラーの削減も可能です。
TOKIUMインボイスについてさらに知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
BillOne(株式会社Sansan)
BillOneは請求書の発行と受領の両方に対応したシステムです。紙で届く請求書を99.9%の精度でデータ化するスキャン代行サービスにより、多様な企業との取引に対応します。
メール以外にFAXや郵送で送られてきた請求書のデータ化を迅速かつ正確に行えるため、請求書受領から月次決算までにかかる時間の大幅な短縮も可能です。
invox受取請求書
invox受取請求書は、請求書発行から売り上げ計上・入金消込・督促までを自動化するシステムです。また、請求データを取り込み、送信先を指定すればインボイス制度に対応した請求書を取引先の希望に応じたフォーマットで発行できます。
会計システムやオンラインバンク、ERPなどとの連携により、請求書業務だけではなく、会計に関する多くの業務自動化により、効率化と担当者の負担軽減が可能です。電子帳簿保存法に対応した機能も多数搭載されています。
請求書に関する業務はクラウド化で効率化と担当者の負担軽減を実現させよう
クラウド請求書システムは請求書に関する業務を電子化するシステムです。請求書を作成・発行するものと受領するものの大きく2つに分けられますが、両方を兼ね備えたものも少なくありません。
請求書業務は、決して難しくはないもののミスは許されない業務です。しかも毎月発生する業務のため、経理担当者の負担は大きくなります。
クラウド請求書システムは、請求書に関する業務の多くを自動化する上、デジタル化により担当者の負担軽減も可能です。ただ、さまざまなタイプがあるため、導入する際は、自社の課題を明確にした上で、それぞれのシステムを比較して選択しましょう。