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経過勘定の処理に悩む経理担当者は少なくありません。特に、新入社員として経理部門に配属されたばかりの方は、期末決算での経過勘定の仕訳に頭を抱えているかもしれません。
この記事では、経過勘定の基本的な考え方から4つの勘定科目の違い、具体的な仕訳例まで、実務で使える知識をわかりやすく解説します。経過勘定の仕組みを理解して、自信を持って経理業務に取り組みましょう。
経過勘定とは
企業の経理業務で欠かせない経過勘定は、経営状態を正確に把握するための大切な仕組みです。商品やサービスの代金支払いと、実際にそれを利用する時期が異なることはよくあります。
たとえば、来年度1年分の保険料を今年度末に支払うケースがこれに当たります。このように現金の出し入れのタイミングと、実際の収益や費用を計上する時期がずれた場合、決算時に調整が必要になります。
このズレを調整するための仕組みが経過勘定であり、その処理に使う項目を経過勘定科目と呼びます。経過勘定を使うことで、各会計期間の正確な損益計算が可能になり、企業の経営状態をより正確に把握できるようになるのです。
経過勘定科目は4種類
企業が継続的に利用したり提供したりするサービスには、現金の支払いや受け取りのタイミングが様々です。そのため、経過勘定科目は「未払費用」「未収収益」「前払費用」「前受収益」の4種類に分かれています。
それぞれの科目には明確な使い分けがあり、企業の会計処理を正確に行うための基礎となっています。
未払費用
サービスの提供は受けているのに、まだ支払いをしていない場合に使うのが未払費用です。
3月分の給与を4月に支払う場合、3月末の決算時点では給与は未払いですが、3月の費用として計上しなければなりません。その他にも、借入金の利息や事務所の家賃、水道光熱費、各種保険料なども、後払いの場合は未払費用として処理します。
このように未払費用は、既に発生している費用を正しい期間に計上するための勘定科目なのです。
未収収益
自社がサービスを提供したにもかかわらず、まだ代金を受け取っていない場合に使用するのが未収収益です。
典型的な例が、貸付金の利息を後払いで受け取る場合です。3月末時点で既に貸付サービスを提供しているのに、利息の支払いが4月になる場合、3月末時点で未収収益として処理します。
また、不動産賃貸の家賃を後払いで受け取る場合も、同様の処理が必要になります。これにより、実際の収入時期に関係なく、サービスを提供した期間の収益として正しく計上できます。
前払費用
サービスをこれから受けるのに、代金を先に支払ってしまった場合に使用するのが前払費用です。
よくあるケースが、事務所の家賃を1年分前払いするような場合です。3月末に翌年度分の家賃を支払った場合、4月以降のサービス分については前払費用として処理します。
同様に、機器のリース料や火災保険料、自動車保険料なども、年間契約で前払いする場合は前払費用として計上します。これにより、実際にサービスを受ける期間に合わせて費用を正しく配分できます。
前受収益
これから提供するサービスの代金を先に受け取った場合に使用するのが前受収益です。3月末に翌年度分の賃貸料を受け取った場合、4月以降のサービス分については前受収益として処理します。
また、貸付金の利息を前受けする場合や、まだ提供していない商品やサービスの手数料を先に受け取る場合も、前受収益として計上します。これにより、実際にサービスを提供する期間に合わせて収益を正しく配分することができます。
経過勘定の覚え方
経過勘定の4つの科目を見て、「どの勘定科目を使えばいいのかわからない」と感じる方も多いはずです。実際の経理業務では、取引内容に応じて適切な勘定科目を選ぶ必要があり、その判断に迷うことは珍しくありません。
しかし、シンプルな覚え方のコツを押さえれば、迷わず正しい勘定科目を選べるようになります。
語呂合わせをする(くまのみみ)
経過勘定の基本的な考え方には、「繰延べ」と「見越し」という2つのキーワードがあります。これを「くまのみみ」という語呂合わせで覚えましょう。
「く」は繰延べの「く」で、「ま」は前払費用・前受収益の「ま」。「みみ」はどちらも見越しの「み」で、未収収益・未払費用を表します。たとえば、「期末に保険料を繰延べた」という場合、「繰延べ=く」なので、「前がつく費用=前払費用」を使うといった具合です。
このように、語呂合わせを活用すれば、勘定科目の選び方がスムーズになります。
お金の出入りを理解する
経過勘定科目の使い分けは、お金の動きをイメージすると分かりやすくなります。既にお金が動いている場合は「前」がつく勘定科目を使います。たとえば、来年度分の家賃を先に支払った場合は「前払費用」、逆に先に受け取った場合は「前受収益」です。
一方、まだお金が動いていない場合は「未」がつく勘定科目を使います。たとえば、今月分の家賃をまだ支払っていない場合は「未払費用」、まだ受け取っていない場合は「未収収益」となります。
このように、お金の動きと勘定科目の関係を理解することで、より直感的な判断が可能になります。
経費勘定の仕訳方法
経過勘定の基本的な考え方を理解したら、次は具体的な仕訳の方法を確認していきましょう。実際の経理業務では、取引内容に応じて借方と貸方を正しく記帳する必要があります。
ここでは、4つの経過勘定科目それぞれについて、分かりやすい具体例を使って仕訳方法を解説します。
未払費用
毎月15万円のシステム利用料が発生するサービスを利用していて、3か月分をまとめて後払いする契約の場合を考えてみましょう。
月末には費用が発生しているため、以下の仕訳が必要です。
<未払費用の仕訳例>
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 150,000円 | 未払費用 | 150,000円 |
未収収益
自社が所有するマンションの1室を月額8万円で貸し出していて、3か月分をまとめて後払いで受け取る契約を例に考えてみましょう。
毎月家賃収入は発生しているため、以下の仕訳が必要です。
<未収収益の仕訳例>
借方 | 貸方 | ||
未収収益 | 80,000円 | 家賃収入 | 80,000円 |
前払費用
月額5万円のセキュリティサービス料を3か月分前払いする場合を考えてみましょう。
先に支払った費用は、サービスを受ける月に費用として計上します。
<前払費用の仕訳例>
借方 | 貸方 | ||
前払費用 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
前受収益
自社が運営する駐車場の月額3万円の利用料を、利用者から3か月分前払いで受け取る場合を考えてみましょう。
先に受け取った収入は、サービスを提供する月の収益として計上します。
<前受収益の仕訳例>
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 90,000円 | 前受収益 | 90,000円 |
経過勘定と4つの未決済項目の違い
経理業務をしていると、経過勘定と似た性質を持つ「未決済項目」という勘定科目に出会います。両者は似ているように見えますが、その使い方には明確な違いがあります。経過勘定は、継続的なサービスの提供や利用に関連して発生する科目です。
一方、未決済項目は一時的な取引で発生し、必ずしもサービスの提供を伴わない科目です。この違いを理解することで、より正確な会計処理が可能になります。
前払金
前払金は、一時的な取引で代金を先に支払う場合に使用します。新しい社用車を購入する際に支払う手付金や、出張で利用するホテルの予約金がこれに当たります。
また、新しい備品を発注する時の前金払いなども前払金として処理します。前払費用との違いは、継続的なサービスではなく、一度きりの取引であることです。このように、物品の購入やスポット的なサービスの利用で前払いが発生した場合は、前払金として計上します。
前受金
前受金は、一時的なサービスや商品の提供に対して、先に代金を受け取る場合に使用します。オーダーメイドの家具を製作する際に受け取る内金や、コンサルティング契約の着手金などがこれに当たります。
また、イベントのチケット代を事前に受け取る場合も前受金として処理します。前受収益との違いは、継続的なサービス提供ではなく、一回限りの取引であることです。このように、将来の商品やサービス提供に対する代金を先に受け取った場合は、前受金として計上します。
未払金
未払金は、既に発生した一時的な債務で、まだ支払いが済んでいないものを計上します。クレジットカードで購入した事務用品の支払いや、社用車のローン返済分がこれに当たります。
また、外注先への支払いが翌月になる場合も未払金として処理します。未払費用との違いは、継続的な契約に基づくものではなく、個別の取引から生じる債務であることです。このように、一度限りの取引で支払いが後になる場合は、未払金として計上します。
未収金
未収金は、一時的な取引で代金を後から受け取る場合に使用します。使わなくなった社用車や古くなった事務機器を売却し、代金を後日受け取る場合がこれに当たります。
また、不要になった備品を従業員に売却し、給与から差し引く場合も未収金として処理します。未収収益との違いは、継続的なサービス提供ではなく、一回限りの販売取引であることです。
このように、固定資産の売却など、一時的な取引で代金の受け取りが後になる場合は、未収金として計上します。
以下の記事では、「未収金」「売掛金」「未収収益」の違いについて詳しく解説していますので参考にしてください。
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以下の記事では、経理の残業時間を減らす方法について詳しく解説していますので参考にしてください。