経費精算

経費として計算できる費用・税金とは?計上するときの注意点を解説

更新日:2025.01.28

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企業経営や個人事業において、経費の計算は利益や税金に大きく影響する重要な業務です。しかし、どの費用が経費として認められるのか、計上する際にどんな点に気をつければよいのか、悩まれている方も多いのではないでしょうか。

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本記事では、経費計算の基本的な考え方から、計上できる費用・税金の種類、注意すべきポイントまで、実務に即して詳しく解説します。

経費とは

経費とは、「経常費用」の略称で、事業活動を行って利益を得るために必要となる費用のことを指します。例えば、事務所の家賃や光熱費、従業員の給与、販促活動の費用など、事業の運営に直接関わる支出が経費に該当します。

これらの費用は事業の利益を生み出すために必要不可欠なものとして、税法上でも「必要経費」として認められています。ただし、すべての支出が経費として認められるわけではなく、事業との関連性や支出の合理性などが判断基準です。

意図的に関係のない支出を経費として計上したり、金額を水増ししたりすることは、税務上の不正とみなされる可能性があるため、正しい理解と適切な処理が求められます。

経費計算は所得税の額に影響する

経費計算は、納める税金の額に直接影響を与えます。税金は収入(売上)からではなく、収入から経費を差し引いた「所得」に対してかかります。

下記の計算例のように、同じ売上500万円でも、経費の計上額が100万円と200万円では、納める所得税に17万円もの差が生じます。そのため、経費を適切に計上しないと、本来支払う必要のない税金を余分に納めることになってしまうのです。

【所得税の計算例】

■売上500万円、経費100万円のケース

課税所得 = 売上500万円 – 経費100万円 = 400万円

所得税額 = 400万円 × 税率20% – 控除額42.75万円 = 37.25万円

■売上500万円、経費200万円のケース

課税所得 = 売上500万円 – 経費200万円 = 300万円

所得税額 = 300万円 × 税率10% – 控除額9.75万円 = 20.25万円

経費の違いによる所得税の差額:17万円

一方で、経費でない支出を無理に経費として計上すると、税務調査の対象となり、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。正確な経費計算は、適切な納税額を算出するために不可欠な作業です。

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経費計上を行うメリット・デメリット

経費計上は企業会計において重要な実務ですが、メリットとデメリットの両面があります。適切な経費計上を行うことで節税効果が得られる一方で、事務作業の増加や会計上の利益減少といった影響も考慮する必要があります。以下では、具体的なメリット・デメリットについて詳しく解説します。

経費計上を行うメリット

経費計上の最大のメリットは、節税効果です。経費として認められた支出は、課税所得から控除されるため、支払う税金を適切な額に抑えることができます。

例えば、月額5万円の事務所賃料を経費計上すると、年間60万円の経費となり、所得税率が20%の場合、12万円の節税効果が得られます。また、消費税の計算においても、経費として認められた支出にかかる消費税額は、仕入税額控除の対象となります。

さらに、経費を適切に管理・把握することで、事業のコスト構造が明確になり、経営判断や予算管理にも活用できます。無駄な支出の発見や、経費削減の検討材料としても役立つのです。

経費計上を行うデメリット

経費計上にともなうデメリットとしては、まず事務作業の負担増加が挙げられます。経費として認められるためには、領収書やレシートなどの証憑書類を適切に保管し、仕訳処理を行う必要があります。特に小規模事業者にとって、この作業負担は無視できません。

また、経費計上により会計上の利益が減少するため、融資審査などで不利になる可能性があります。金融機関は企業の収益力を判断する際に、利益率を重要な指標としているためです。

さらに、経費計上のルールは複雑で、誤った処理をしてしまうリスクもあります。特に、消費税の課税事業者の場合、経費の税区分や仕入税額控除の要件など、細かな注意点が多くあります。

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経費として計上できる費用とできない費用

経費計上において重要なのは、どの費用が経費として認められ、どの費用が認められないかを正しく理解することです。税務上の経費(必要経費)は、事業との関連性や支出の必要性などが判断基準となります。以下では、具体的な費用の区分と、それぞれの特徴について解説します。

経費計上できる費用

経費として計上できる主な費用は以下の通りです。

  • 人件費:従業員の給与、賞与、法定福利費など
  • 地代家賃:事務所、店舗、駐車場などの賃借料
  • 水道光熱費:事業用の電気、ガス、水道など
  • 通信費:電話代、インターネット料金など
  • 消耗品費:文具、コピー用紙などの事務用品
  • 広告宣伝費:チラシ、ウェブサイト制作費など
  • 旅費交通費:営業活動や出張にかかる交通費、宿泊費
  • 接待交際費:取引先との会食費、贈答品代など
  • 修繕費:事業用設備の修理費用
  • 減価償却費:固定資産の減価償却費

また、事業に関連する税金のうち、以下のものは経費として計上できます。

  • 固定資産税(事業用資産分)
  • 事業税
  • 印紙税
  • 自動車税(事業用車両分)
  • 登録免許税

これらの費用は、事業活動に直接必要なものとして、税務上も経費性が認められています。

経費計上できない費用

経費として計上できない主な費用には以下のようなものがあります。

  • プライベートでの支出:個人的な飲食費、衣服代など
  • 所得税、住民税などの税金
  • 罰金、延滞税、過料
  • 家事費用(事業と関係のない生活費)
  • 贈与税、相続税
  • 健康保険料、国民年金保険料(個人事業主本人分)
  • 個人で使用する自動車の維持費
  • 会社の役員や従業員への接待費用
  • 私的な旅行費用

また、以下の税金も経費として計上することはできません。

  • 所得税および復興特別所得税
  • 法人税
  • 住民税
  • 相続税・贈与税
  • 延滞税・加算税

これらの費用は、事業活動との直接的な関連性が認められないため、経費として計上することはできません。特に、プライベートと事業の両方で使用するものについては、事業使用分を適切に按分して計上する必要があります。

以下の記事では、社員旅行を経費で処理する方法について詳しく解説していますので参考にしてください。

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経費計上するときに注意するべきこと

経費計上を適切に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。主な注意点として、以下が挙げられます。

  • 勘定科目は一度決めたら同じ科目を使用する
  • 固定資産税は事業用部分のみ経費計上できる
  • 自宅兼用の場合は按分する必要がある
  • 家族に支払う給与は費用にならない
  • 事業と関係のない支出は経費にできない
  • 勘定科目によっては注意が特別なルールがあるので注意

これらの点について、以下で詳しく解説していきます。

勘定科目は一度決めたら同じ科目を使用する 

勘定科目の選択と使用には、継続性の原則が適用されます。これは、一度選択した勘定科目は、正当な理由がない限り継続して使用しなければならないというルールです。

例えば、インターネット料金を今年度は「通信費」として計上し、来年度は「広告宣伝費」として計上するような変更は避けるべきです。このような変更は、以下の問題を引き起こす可能性があります。

  • 期間比較が困難になる
  • 経費の実態が不明確になる
  • 税務調査の対象となるリスクが高まる

勘定科目を変更する必要がある場合は、変更の理由を明確にし、帳簿に記録しておきましょう。また、重要な変更の場合は、税務署への届出が必要になることもあります。

固定資産税は事業用部分のみ経費計上できる

固定資産税を経費として計上する場合、事業用として使用している部分のみが対象となります。例えば、事業用の建物や機械設備にかかる固定資産税は全額経費計上できますが、自宅兼事務所の場合は事業使用部分に応じた按分が必要です。

計算例を示すと、以下のようになります。

年間固定資産税額:24万円

建物全体の面積:100㎡

事業使用部分の面積:30㎡

経費計上できる金額:24万円 × (30㎡ ÷ 100㎡) = 7.2万円

このように、固定資産税は使用実態に応じて適切に按分し、事業用部分のみを経費として計上する必要があります。

自宅兼用の場合は按分する必要がある

自宅を事務所としても使用している場合、家賃や光熱費などの経費は、事業使用部分と生活使用部分を適切に按分する必要があります。按分方法は主に面積基準と使用時間基準があります。

【面積基準による按分の例】

月額家賃:15万円

全体面積:80㎡

事業使用面積:20㎡

経費計上額:15万円 × (20㎡ ÷ 80㎡) = 3.75万円

【使用時間基準による按分の例(光熱費の場合)】

月額光熱費:3万円

1日の事業使用時間:8時間

1日の総時間:24時間

経費計上額:3万円 × (8時間 ÷ 24時間) = 1万円

このように、自宅兼事務所の経費は、合理的な基準で按分し、事業使用分のみを経費として計上します。

家族に支払う給与は費用にならない

生計を共にする家族への給与は、原則として経費として認められません。ただし、以下のような例外があります。

【青色申告の場合】

  • 専従者給与として経費計上可能
  • 届出と給与支払の事実が必要
  • 適正な金額の範囲内であること

【白色申告の場合】

  • 専従者控除として一定額を経費計上可能
  • 配偶者は86万円まで
  • その他の親族は50万円まで

なお、青色事業専従者給与として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 事前に青色事業専従者給与に関する届出を提出
  • 給与の支払いを確実に行い、源泉徴収も適正に実施
  • 労働の対価として適正な金額であること

事業と関係のない支出は経費にできない

事業と関係のない支出を経費として計上することは、税務上の不正として扱われます。例えば以下のような支出は、経費として認められません。

  • 私的な旅行費用を出張費として計上
  • 家族との食事を接待交際費として計上
  • 個人的な趣味の物品を消耗品費として計上
  • マイカーの維持費を全額車両費として計上

このような不適切な経費計上が税務調査で発覚した場合、以下のようなペナルティが課される可能性があります。

  • 過少申告加算税(本税の10%~15%)
  • 重加算税(本税の35%~40%)
  • 修正申告による追徴課税
  • 場合によっては脱税として刑事罰の対象

税務調査の際には、経費の内容を証明する領収書や取引記録の提示を求められます。そのため、経費計上の際は適切な証憑書類を保管し、事業との関連性を説明できるようにしておきましょう。

勘定科目によっては注意が特別なルールがあるので注意

特に注意が必要な勘定科目について、それぞれのルールを解説します。

■福利厚生費

  • 全従業員を対象とした制度であること
  • 金額が社会通念上適正であること
  • 現金や商品券など換金可能なものは対象外
  • 例:社員旅行費用、健康診断費用など

■接待交際費

  • 1人当たり5,000円以下の飲食費は会議費として計上可能
  • 資本金1億円以下の法人の場合:

接待飲食費の50%まで損金算入可能または年間800万円まで損金算入可能

■消耗品費と減価償却

  • 10万円未満の物品:消耗品費として一括計上可能
  • 10万円以上30万円未満:少額減価償却資産として一括計上可能(年間300万円まで)
  • 30万円以上:固定資産として減価償却が必要

これらの勘定科目は、金額の制限や特別な処理規則があるため、経理担当者は内容をよく理解して適切に処理する必要があります。

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まとめ

経費計算は、事業の収益性や納税額に大きく影響する重要な業務です。経費として認められる費用と認められない費用を正しく理解し、適切に計上することが必要です。

特に注意すべき点として、事業との関連性の確認、自宅兼事務所の経費按分、家族給与の取り扱い、特別なルールのある勘定科目の処理などが挙げられます。また、経費の証憑書類は7年間の保管が必要で、不適切な経費計上は重いペナルティの対象となります。

適切な経費計算を行うことで、無駄な税負担を避けつつ、健全な事業運営を実現することができます。経費計算の重要性を理解し、正確な経理処理を心がけましょう。

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