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経理業務の中でも特に重要なのが帳簿管理です。帳簿は企業の取引を正確に記録し、経営状況を把握するための重要な基礎資料となります。
本記事では、帳簿の種類や記入のポイント、業務効率化の方法まで、経理部門の新任担当者向けに分かりやすく解説します。帳簿管理の基本をしっかりと理解し、正確で効率的な経理業務を目指しましょう。
帳簿の役割とは
経理業務において、日々の取引内容を正確に記録し管理することは非常に重要です。企業の収益・支出を適切に管理し、経営状況を把握するためには、会計帳簿をつけることが欠かせません。会計帳簿とは、事業上の取引や資産の変化を記録するための書類のことです。企業活動に伴う取引の証拠となる伝票をもとに作成し、これにより企業の財務状況を明確に把握することができます。
会計帳簿の作成は、会社法第432条においてすべての事業者に義務付けられています。この帳簿は日々の経理・会計業務における基礎となるだけでなく、決算時に作成する損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の基となる重要な書類です。そのため、取引の内容を正確に記録し、適切に保管することが求められます。
帳簿の保存期間は7~10年
法人における帳簿の保存期間は、原則として事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間と定められています。
ただし、以下のケースでは10年間の保存が必要となります。
- 青色申告で欠損金が生じた年度の帳簿
- 会社法で定められている会計帳簿
そのため、多くの企業では帳簿の保管期間を10年間に統一して管理しています。これにより、税務調査への対応や過去の取引内容の確認を、より確実に行うことができます。
文書保管の方法やルールについては、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
帳簿と台帳は同じ意味?
帳簿と台帳は、事業上の取引やお金の流れを記録する書類という点では共通しています。両者の間に明確な違いは定義されておらず、ほぼ同じ意味を持ちます。
台帳は取引内容やお金の流れを記録した個別の書類を指し、帳簿はそうした台帳の総称として使われます。そのため、一般的な実務では「帳簿」という言葉が広く用いられています。
帳簿には2種類ある
企業の経理業務において会計帳簿は、次の2種類に分けて管理します。
- 主要簿
- 補助簿
主要簿は企業の全取引を記録する基本となる帳簿であり、補助簿は主要簿を補足する帳簿です。それぞれが異なる役割を持ち、企業の経理実務を支えています。
主要簿
主要簿とは、企業の日々の取引を漏れなく記録し、企業活動の全体像を把握するための中心となる帳簿です。複式簿記を採用している企業では、主要簿の作成は必須となります。
仕訳帳
仕訳帳は、取引が発生した順に、その内容を「借方」と「貸方」に分けて記録する帳簿です。日々の取引を下記の勘定科目に分類することで、企業活動の実態を正確に把握することができます。
勘定科目 | 内容 |
資産 | 企業が保有する現金・預金、売掛金、商品、建物など経済的価値のある財産 |
負債 | 買掛金、借入金、未払金など企業が返済や支払いの義務を負う債務 |
純資産 | 資本金、利益剰余金など企業が持つ正味の財産 |
収益 | 商品やサービスの販売による売上高、受取利息など企業の収入をもたらすもの |
費用 | 商品の仕入高、従業員への給料、支払家賃など企業活動に伴う支出 |
【仕訳帳に記載すべき項目】
● 日付:取引が発生した年月日
● 摘要:取引内容の説明
● 元丁:仕訳を転記した総勘定元帳のページ番号
● 借方:資産の増加や費用の発生を記録
● 貸方:負債・純資産の増加や収益の発生を記録
総勘定元帳
総勘定元帳は、仕訳帳の内容を勘定科目ごとに整理し直した帳簿です。各勘定科目の増減や残高の変動を一目で確認することができ、財務諸表を作成する際の基礎資料となります。
【総勘定元帳に記載すべき項目】
● 日付:取引発生の年月日
● 摘要:取引内容の説明
● 相手勘定:取引の相手となる勘定科目
● 借方金額:その勘定科目の増加額
● 貸方金額:その勘定科目の減少額
● 残高:その勘定科目の現在の残高
補助簿
補助簿とは、主要簿だけでは把握しきれない取引の詳細な内容や明細を記録するための帳簿です。企業の規模や業態に応じて、必要な補助簿を選択して使用します。
現金出納帳
現金出納帳は、日々の現金収支を記録する帳簿です。入金と出金の内容を時系列で記録し、現金残高を正確に把握します。現金の実在高と帳簿残高を照合することで、不正や誤りを防ぎます。
預金出納帳
預金出納帳は、金融機関の預金口座ごとの入出金明細を記録する帳簿です。普通預金や当座預金など、口座の種類ごとに別々の帳簿を設けて管理します。通帳やインターネットバンキングの記録と定期的に照合を行います。
買掛帳
買掛帳は、商品の仕入れや掛け取引の支払状況を管理する帳簿です。仕入先ごとに口座を設け、取引の発生から支払いまでの経過を記録します。期日までの支払い漏れを防ぎ、仕入先との良好な関係を維持します。
売掛帳
売掛帳は、商品の販売や掛け取引の回収状況を管理する帳簿です。得意先ごとに口座を設け、売上の発生から入金までの経過を記録します。売掛金の回収漏れを防ぎ、適切な債権管理を行います。
経費帳
経費帳は、企業活動に伴って発生する諸経費を記録する帳簿です。消耗品費、旅費交通費、通信費など、経費の種類ごとに区分して記録します。経費の無駄を把握し、コスト管理に活用します。
固定資産台帳
固定資産台帳は、企業が保有する建物、機械装置、車両などの固定資産を管理する帳簿です。取得価額、取得日、耐用年数、減価償却費などを記録し、資産の減価償却計算や適切な更新時期の判断に活用します。
帳簿を記入するときのポイント
経理実務において、帳簿記入は必要不可欠な業務です。取引の事実を正確に記録し、経営状況を的確に把握するためには、いくつかのポイントに留意しながら帳簿をつける必要があります。
使いやすい様式の帳簿を選ぶ
帳簿の記入を効率的に行うには、使いやすい様式を選ぶことが大切です。記入項目が不足していたり、記入欄が狭すぎたりする帳簿を使用すると、業務に支障が生じるだけでなく、ミスの原因にもなります。
帳簿の様式には、手書きで記入する「手書き帳簿」、表計算ソフトで作成したフォーマットを使用する「エクセル帳簿」、専門のソフトウェアを利用する「会計ソフト」などがあります。それぞれの特徴を理解し、企業の規模や業務内容に適した様式を選びましょう。
記入漏れなどのミスには注意する
経理業務における帳簿の記入ミスは、決算書類の誤りや税務申告の誤りにつながる重大な問題です。日々の取引を記録する際は、以下の点に特に注意を払う必要があります。
- 取引の記入漏れがないか
- 勘定科目の仕訳は正しいか
- 金額の転記は間違いないか
- 日付の記入は正確か
- 相手先の名称は正しく記載されているか
帳簿の記入を間違えてしまった場合には、修正ペンや修正液は使用せず、必ず二重線と訂正印で修正します。これは、修正の履歴を残し、透明性を確保するためです。訂正印は、修正箇所の上部または右側に押印します。この方法は、税務調査においても正当な修正方法として認められています。
帳簿の業務を効率化する方法
経理部門における帳簿の記帳業務は、毎日の取引を正確に記録し、管理する必要がある根幹的な業務です。企業規模が大きくなるほど取引量も増え、月間数千件にも及ぶ取引を漏れなく記録する必要があります。
このような帳簿記入作業は、単に記録するだけでなく、法令に準拠した正確な処理と、期日までに処理を終える効率性の両立が求められます。経理担当者は日々の取引を適切な勘定科目に分類し、金額や取引内容に誤りがないよう確認しながら、迅速に業務を進めていく必要があります。
業務フローを見直す
経理業務の効率化には、まず現状の業務フローを見直すことから始めます。取引証憑の受け渡しルートを最短化し、仕訳や承認のフローを明確にすることで、無駄な作業時間を削減できます。
また、帳票類の保管場所を整理し、必要な書類をすぐに取り出せる環境を整えることも重要です。定型的な処理はルーチン化し、部署間の連携方法を標準化することで、業務の質を保ちながら効率を高めることができます。
経理システムの導入を検討する
一般的な経理システムは、取引データの自動仕訳や帳簿の自動作成など、手作業による業務負担を軽減します。財務諸表の作成やデータのバックアップも自動化され、基本的な経理業務の効率化を実現できます。
TOKIUMは、経理業務のペーパーレス化と効率化を同時に実現する支出管理クラウドです。専任のオペレーターが99%以上の精度で領収書や請求書の内容を入力し、データ化を代行します。これにより、手書きの領収書や英語の領収書も含め、正確なデータ入力が可能です。
紙の書類はTOKIUMが代行で受け取り、スキャンして電子化します。受け取った書類の原本は10年間保管されるため、社内でのファイリングや保管作業が不要になります。さらに、あらゆる会計ソフトと連携可能で、導入時に個別カスタマイズも行われるため、記帳ミスの防止と作業効率の向上が図れます。
インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も万全です。JIIMA認証を取得しており、タイムスタンプ機能などの法定要件を満たしています。検索要件を満たしたデータ保存や、専用アプリでの領収書撮影時の自動タイムスタンプ付与など、法令順守に必要な機能を備えています。
電子帳簿保存法対応のシステム選択については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
経理を外注化する
経理業務の外注化は、専門家による正確な処理が期待でき、社内の業務負荷を軽減できるメリットがあります。法令対応も専門家に任せられるため安心感があり、本業への集中が可能になります。
しかし、外注費用が発生することや、社内での即時対応が難しくなる点には注意が必要です。また、機密情報の社外流出リスクや、経理知識の社内蓄積が進まないといった課題もあります。このため、外注化を検討する際は自社の状況を踏まえ、一部業務に限定するなど、適切な範囲を見極めることが重要です。
まとめ
帳簿は企業の取引を記録する重要な書類として、会社法で作成が義務付けられています。主要簿と補助簿の2種類があり、それぞれが補完し合いながら企業の経理業務を支えています。帳簿の記入には正確性が求められ、記入漏れや仕訳ミスには細心の注意が必要です。
近年では経理システムの導入やクラウドサービスの活用により、業務の効率化とペーパーレス化が進んでいます。自社の状況に合った方法を選択し、効率的な帳簿管理を実現することで、経理業務の質の向上につなげることができます。