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法人カードの経理処理、正しい勘定科目の選び方や仕訳方法に悩んでいませんか。経費の支払いを法人カードに集約すれば効率化が図れるはずなのに、かえって処理が複雑になってしまうというお悩みをよく耳にします。
本記事では、法人カードの経理処理の基本から、白色・青色申告別の仕訳方法、ポイントやキャッシュバックの処理まで、実務で必要な知識を徹底解説します。これを読めば、経理担当者の方はもちろん、個人事業主の方も、自信を持って法人カードの経理処理を行えます。
法人カードの経理処理方法
法人カードの経理処理は、申告方法によって大きく異なります。白色申告と青色申告では記帳方法や必要な書類が変わってくるため、自社に適した方法を選択することが重要です。
- 白色申告
- 青色申告
ここでは、それぞれの特徴と処理方法について詳しく解説していきます。
白色申告
白色申告の場合、単式簿記で記帳を行います。単式簿記では、取引の「日付・金額・概要」をシンプルに記載していくため、専門的な簿記の知識がなくても比較的簡単に経理処理を行うことができます。たとえば、法人カードで1万円の消耗品を購入した場合、「4月1日 消耗品費 10,000円」というように、実際に取引が発生した日付で記帳します。
ただし、白色申告には事業所得の控除額に制限があることや、赤字を次年度に繰り越せないといったデメリットがあります。そのため、事業規模が大きくなってきた場合や、より詳細な経営分析を行いたい場合は、青色申告への切り替えを検討する必要があるでしょう。
青色申告
青色申告の場合は、複式簿記による記帳が必要です。複式簿記では、取引を「借方」と「貸方」の2つの視点で記録し、決算時には貸借対照表や損益計算書などの決算書類の添付が必要となります。法人カードでの支払いは、商品購入時に「借方:消耗品費」「貸方:未払金」として計上し、実際の引き落とし時に「借方:未払金」「貸方:普通預金」として処理します。
このように記帳は複雑になりますが、最大65万円の青色申告特別控除を受けられることや、赤字を次年度に繰り越せるなどのメリットがあります。また、複式簿記による記帳は、より正確な経営状況の把握や分析が可能になるため、事業の成長を目指す企業には適していると言えるでしょう。
法人カードで使用できる勘定項目
法人カードでの支払いに使用できる主な勘定項目と、該当する支出をご紹介します。適切な勘定項目で処理することで、正確な経理処理と税務申告が可能となります。
勘定項目 | 該当するもの |
消耗品費 | 事業用の文具や清掃用品、家具、電子機器など10万円未満で1年以内に使用するもの |
旅費交通費 | 業務での電車・バス・タクシー代、出張時の宿泊費、有料道路料金、ガソリン代、駐車場代 |
接待交際費 | 取引先との飲食代、手土産代、お中元・お歳暮などの贈答品、慶弔見舞金 |
通信費 | 業務用の携帯電話料金、インターネット利用料、固定電話代、切手代 |
新聞図書費 | 業務に必要な書籍、新聞の購読料、電子図書代 |
荷造運賃 | 商品発送時の宅配便の送料、梱包資材費用など |
会議費 | 会議室のレンタル料、会議時のお茶代、備品代 |
研修費 | 業務に必要な技術や知識習得のための研修費用 |
光熱費 | 事務所などで使用する電気・ガス・水道料金 |
地代家賃 | 事業用の事務所や駐車場、倉庫などの賃料、共益費(20万円未満の礼金・更新料含む) |
修繕費 | 事業用の物品や設備の修理費用、事務所移転時の原状回復費用 |
雑費 | 他の勘定科目に該当しない一時的かつ少額な経費 |
法人カードで経費の支払いをするメリット4選
法人カードを導入することで、経理処理の効率化だけでなく、経理業務全体の最適化が実現できます。
- 複雑な経理処理を効率化できる
- ミスを防げる
- 支払いに余裕を持たせられる
- ポイント利用で出費を抑えられる
以下では、法人カードを活用することで得られるこれら4つの主要なメリットについて詳しく解説します。
法人カードの作り方については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
複雑な経理処理を効率化できる
法人カードを導入することで、経理処理の大幅な効率化が可能になります。従業員による立替や仮払いが不要となり、経理担当者は個人口座への振込作業から解放されます。また、カードの利用履歴が一元管理されるため、経費の把握が容易になります。
さらに、法人カードと会計ソフトを連携させることで、明細データを自動で取り込み、仕訳作業を自動化することも可能です。これにより、経理担当者の作業負担が大幅に軽減され、より重要な業務に時間を割くことができます。
ミスを防げる
法人カードを利用することで、経費精算における様々なミスや不正を防止できます。経費精算システムと連携すれば、利用明細データが自動的に取り込まれるため、手入力によるミスが削減されます。また、経費の水増しなどの不正も防ぎやすくなります。
加えて、領収書の紛失や経費申請の忘れによる計上漏れも防ぐことができます。カード会社から発行される利用明細で、利用日時や利用者を正確に把握できるため、経費の計上漏れを未然に防ぐことが可能です。
支払いに余裕を持たせられる
法人カードを利用することで、企業のキャッシュフローを改善できます。実際の支払いまでに約1ヶ月の猶予期間が設けられるため、資金繰りに余裕を持たせることが可能です。
また、毎月の引き落とし日が決まっているため、支払いの予定が立てやすく、計画的な資金管理が可能になります。特に季節変動のある事業や、大型の支出が発生する場合でも、支払いのタイミングを調整しやすいというメリットがあります。
ポイント利用で出費を抑えられる
法人カードの利用で貯まったポイントは、企業の経費削減に活用することができます。貯まったポイントは、オフィス用品の購入や、出張時の航空券との交換、支払いへの充当など、様々な形で活用可能です。
さらに、カード会社によっては高還元率のプログラムや、ビジネス向けの特典が用意されているものもあります。これらを活用することで、経費の実質的な負担を軽減することができます。ただし、ポイントの使用時には適切な会計処理が必要となるため、税理士等に相談することをおすすめします。
法人カードで経費の支払いをする際の注意点
法人カードの利用には多くのメリットがありますが、適切な運用のためにはいくつかの重要な注意点があります。
- 領収書と利用明細書を保管しておく
- 年会費がかかる可能性がある
- 法人カードと個人カードを分ける
ここでは、経理処理を正確に行い、トラブルを防ぐための3つの重要なポイントについて解説します。
領収書と利用明細書を保管しておく
法人カードで支払いを行った場合、カード会社から発行される利用明細書だけでは経費として認められない場合があります。そのため、利用時に受け取る領収書やクレジットカードの売上票は必ず保管しておく必要があります。
国税関係帳簿書類として認められるためには、利用店舗名、利用者名、利用金額、利用年月日、購入した商品名やサービス名の5つの要件を満たす必要があります。特にWeb明細は電子帳簿保存法の対象となるため、法人の場合は7年間、個人事業主の場合は5年間の保存が義務付けられています。
年会費がかかる可能性がある
法人カードの多くは年会費が発生します。年会費は「支払手数料」「諸会費」「雑費」などの勘定科目で経費計上できますが、カードの利用頻度が少ない場合は、コストが見合わない可能性があります。
年会費の相場は1万円から数万円程度で、カードによって大きく異なります。また、年会費無料のカードでも、初年度のみ無料で2年目以降は有料になるものや、年間の利用額が一定以下の場合は年会費が発生するものもあります。導入前に自社の利用状況を考慮し、最適なカードを選択することが重要です。
法人カードと個人カードを分ける
法人カードと個人のクレジットカードは、明確に使い分けることが重要です。これは経理処理を効率化し、不正や混乱を防ぐためです。法人カードを個人的な買い物に使用すると、経理担当者は利用明細や領収書との照合作業に余計な時間を要することになります。
また、個人のカードで経費を支払った場合、利用明細から事業用の支出を判断するのが難しく、経費の計上漏れが発生するリスクがあります。さらに、法人カードで貯まったポイントは会社の所有物となるため、私的利用は避けるべきです。そのため、業務用と私用で別々のカードを持ち、適切に使い分けることが推奨されます。
法人カードの経理処理に関するよくある質問
法人カードの経理処理では、通常の支払い以外にも、ポイントやキャッシュバック、分割払いなど、様々な場面で特殊な処理が必要になります。ここでは、経理担当者からよく寄せられる質問について、具体的な処理方法を解説します。
ポイントを使用したときの処理方法は?
法人カードで貯まったポイントを使用する際は、「雑収入」として計上するか、「値引き」として処理するかの2つの方法があります。例えば、3,000円の消耗品を購入する際に1,000円分のポイントを使用した場合、以下のような仕訳となります。
■雑収入として処理する場合 借方:消耗品費 3,000円 貸方:未払金 2,000円、雑収入 1,000円 |
■値引きとして処理する場合 借方:消耗品費 2,000円 貸方:未払金 2,000円 |
なお、ポイントを商品券などと交換した場合は、「前払金」や「貯蔵品」として処理します。
キャッシュバックを受けたときの処理方法は?
カード会社からキャッシュバックを受けた場合は、「雑収入」として処理します。
例えば、前月のカード利用額20,000円のうち1,000円がキャッシュバックされた場合、以下のような仕訳となります。
- 借方:未払金 20,000円
- 貸方:普通預金 19,000円、雑収入 1,000円
この処理は、実際にキャッシュバックが発生した時点で行います。キャッシュバックは通常、カード利用額から差し引かれる形で還元されるため、実質的な支払額が減少することになります。
分割・リボ払いの処理方法は?
分割払いやリボ払いを利用する場合は、商品の購入金額と手数料を分けて処理する必要があります。まず購入時に商品代金全額を「未払金」として計上し、支払いの際に発生する手数料は「支払利息」として処理します。
例えば、60,000円の商品を6回払いで購入し、1回あたり1,000円の手数料が発生する場合です。
■購入時の仕訳 借方:消耗品費 60,000円 貸方:未払金 60,000円 |
■支払時の仕訳(1回目) 借方:未払金 10,000円、支払利息 1,000円 貸方:普通預金 11,000円 |
これを毎月の支払い時に繰り返し行います。なお、利息計算時の消費税については、通常考慮する必要はありません。
まとめ
白色・青色申告の違いや適切な勘定科目の選択、ポイントやキャッシュバックの処理など、正しい知識を身につけることで、経理業務の負担を軽減し、より戦略的な経営判断が可能です。法人カードの導入と適切な運用により、経費の透明性が向上し、企業の健全な成長につながることが期待できます。
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