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稟議書の保管期間は、法律で明確に定められていないため、いつまで保管すべきか迷うケースもあるでしょう。企業活動を続ける限り、稟議書は増え続けます。また、過去の稟議書が必要なタイミングもあるため、適切に管理する必要があります。
本記事では、稟議書の保管期間や稟議書を電子化するメリットなどについて解説します。稟議書の適切な保管方法を導入し、自社における業務効率化やリスク管理を進めるためにぜひお役立てください。
稟議書の保管期間(保存期間)
企業で作成する書類の中には、取締役会議事録や契約書などのように保存期間が決められているものがあります。では、稟議書の場合はどうなのでしょうか。ここでは、稟議書の保管期間の決まりについて解説します。
稟議書自体には法律で定められた保管期間がない
稟議書の保管期間は、法律で明確に定められている訳ではありません。よって、稟議が通った後すぐに稟議書を処分してしまっても、法的な問題はないでしょう。
稟議書とは、物品の購入や契約の締結、サービスの導入などの際に、上長の承認や決裁を求めるための書類です。通常、業務の担当者が稟議書を作成し、必要に応じて上司や上層部の承認を得て、最終的に決裁が下されます。
つまり、外部への提出や公開は不要であって、保存期間について法的な規制もありません。よって、企業が独自の基準で保存期間を設定し、運用する必要があります。
永久保存することが望ましい
前述の通り、稟議書について、法律で定められた保存年限はありません。ただ、稟議書は企業の意思決定や業務をスムーズに進めるためだけでなく、訴訟などの際に証拠として用いられる重要な書類です。そのため、保管義務はなくても可能な限り永年保存することが望ましいでしょう。
なお、稟議書は企業のルールに沿って廃棄できますが、保管形態によって取るべき対応は異なります。クラウド保存など電子化している場合、保管場所やコストがかからなければ急いで破棄する必要はなく、そのまま残しておいてもそれほど影響はないでしょう。
一方、紙で保存している場合、書類が増え続けて保管スペースや管理コストなどが増えていきます。企業独自のルールとして永年保存の基準を設けていないのであれば、どこかのタイミングで破棄することになるでしょう。
また、破棄する書類が大量にある場合は、作業に手間がかかります。日付や申請者、内容などに分けて管理するなどルールを決め、廃棄の手間やコストを抑える工夫が必要です。
稟議書を紙で保管する際の課題
稟議書を紙で保管する場合は、他の書類と同じように印刷して保管します。また、稟議書の内容に関連した資料やカタログなどが含まれる場合も、一緒に保管することが理想的です。紙で保管する場合、保管システムやデータの取り扱いに不慣れな人でも、稟議書を扱いやすいというメリットがあります。
ただし、保管場所の確保や管理コストなどのデメリットも出てきます。ここでは、稟議書を紙で保管する場合に、考えなければならない課題について解説します。
紛失や漏えいのおそれがある
紙媒体で稟議書を保管する場合、紛失や情報漏えいのリスクに注意が必要です。稟議書は時間の経過と共に増えていくため、適切に保管されていなければ、大量の書類から一部を紛失しても気付けない可能性があります。
また、別の場所に紛れてしまっていても検討がつきにくく、追跡が難しくなるでしょう。不要な書類に混じっていて、誤って処分してしまう可能性もあります。
さらに、紙の稟議書は持ち出しが容易なため、社外へ持ち出されてしまい、機密情報が漏えいするリスクも出てきます。社外秘の重要な情報がいつの間にか流出してしまって、企業の社会的信用に関わるような重大なトラブルに発展する危険性もあるでしょう。
紛失や漏洩のリスクを最小限に抑えるためにも、保管場所の施錠や管理担当者の選定などのセキュリティ対策を導入し、厳重に管理する必要があります。
保管場所の確保が難しい
稟議書は、企業の経営活動が続く限り増え続けるため、書類の量が多くなった時の保管場所の確保も問題になります。紙の稟議書は印刷し、文書として保存します。また、原則として関係する資料やカタログなど添付書類も一緒に保管するため、場合によっては1回の稟議で大量の書類を保管しなければなりません。
紙の状態で永年保存するとなると、広大な保管スペースを確保しなければならず、規模の小さな企業やオフィスでは困難でしょう。書類保管のために倉庫や追加のオフィススペースを借りるという選択肢もありますが、賃料や人件費などのコストが発生します。
書類を探し出すのに時間がかかる
稟議書を紙で保存する場合、必要な稟議書をスムーズに見つけられないという問題も起こります。日常業務では「昔の稟議書を参照したい」「似たような稟議の稟議書を探している」といったように過去の稟議書が必要になる場面も少なくありません。
紙の書類は検索性が良くないため、必要な書類がすぐに見つからない可能性があります。特定の稟議書を探したい時に「いつ作成されたものか」「どのような内容か」など、具体的に把握・整理できていなければ検索に時間がかかるでしょう。
特に、書類の量が膨大で、オフィスとは別の場所で管理している場合には、探し出すまでにより長い時間を要します。書類探しだけで1日が終わってしまい、業務に支障が出ることも考えられるため、検索しやすい方法で管理することが重要です。
ラベリングや保存エリアの区分など、該当の書類がある場所の見当がつきやすいようシステム化しておくと便利でしょう。
稟議書は「電子化して保管」がおすすめ
上記の問題点を解決するためには、紙の書類を電子化することがおすすめです。稟議書を電子化してデータで保管すればコストの削減につながります。また、検索性が上がるため、必要な書類をすばやく探せる仕組みを構築でき、業務効率化や生産性の向上も期待できます。
ここでは、稟議書の電子化による3つのメリットについて解説します。
コスト削減につながる
稟議書を電子化することで、コストの削減に役立ちます。紙の場合、保管場所の確保に加えて、印刷するための複合機やキャビネットなどの設備が必要です。
書類を電子化してデータで保存すれば、クラウドやメールで稟議書の内容を管理、共有できます。物理的な保管スペースや設備が不要になるため、書類保管用に借りている部屋や倉庫などの賃料、印刷紙やトナーなどの消耗品コストを削減可能です。
また、管理の作業工数を減らし、業務効率化が進むことで、人件費をカットできる場合もあります。加えて、社内や企業間で書類のやり取りが発生する場合にも、封筒や切手などの郵送費用も省けるため、トータルで大幅な経費の節約が見込めます。
過去の稟議書をすぐに探し出せる
稟議書を電子化することで、特定の稟議書をスムーズに探し出せるようになります。システムを導入し、稟議書をデータ化して保存すれば、検索性がアップします。
データベース内で提出した日付や部署、内容などで絞り込み検索をすることで、必要な書類をすぐに見つけられるでしょう。タグ付けやフォルダ分けにより、部署やカテゴリなどで分類しておけば管理効率も向上します。
また、稟議書には企業ごとにフォーマットがあり、内容に応じて決められた書き方に沿って作成する必要があります。稟議書をデータ化しておけば、過去の稟議書から似たものをすばやく探し出し、再利用することが可能です。
紙の書類で内容を写すとなると手間と時間がかかりますが、データの場合はフォーマットや必要な箇所をコピーでき、書類作成の時短にも役立ちます。
タイムスタンプ機能で承認作業のスピードアップや情報の改ざん防止につながる
稟議書の電子化システムには、タイムスタンプ機能の付いたものがあります。タイムスタンプ機能とは、いつ誰が決済を行ったのか、いつ修正されたのか、など過去の更新データが自動的に記録される機能です。内容の修正が行われた場合にも、日付や修正箇所を後から確認できます。
タイムスタンプ機能によって稟議書の履歴情報が保持され、承認フローの進捗状況を可視化できます。そのため、進捗が滞っている承認者へ催促がしやすくなり、スムーズな承認作業につながります。
また、万が一情報の改ざんがあった場合にも、タイムスタンプの履歴を見れば問題箇所を簡単に特定することが可能です。結果的に、稟議書の作成や承認における効率化が期待できます。
ペーパレス化の方法についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
稟議書の電子化をする際はシステム導入がおすすめ
稟議書を電子化する際には、システムを活用するのが一般的です。システムを使わずに電子化することも可能ですが、業務の効率性は劣ります。
また、多数あるシステムの中から自社に合ったものを選定するために、「自社独自の承認フローや申請方法に対応できるか」「設定や運用がしやすいか」など、事前に確認したい注意点もあります。
ここでは、稟議書の電子化に活用するシステム導入のポイントと、自社に合ったシステム選びについて解説します。
システムを用いない電子化には注意が必要である
システムを導入しなくても、稟議書をWordやExcelなどのファイルで作成し、PDF化してメールで送付する方法なら、簡単に稟議書を電子化できます。PDF形式にする際に編集不可の状態にしておくことで、メールでやり取りしている間に誤って編集されるような事態を防げるでしょう。
ただし、スムーズに決裁が行われれば問題ありませんが、差し戻しがあった場合には都度関係者へ伝達することになり、メールの誤送信や見落としのリスクがあります。また、差し戻しの度に元データを修正し、再度PDF化して保存しなければならず、手間が大きくなります。
加えて、社員間のメールでのやり取りが主となり、承認フローの進捗状況が確認しづらい点にも注意が必要です。
自社に合ったシステムを選択する
稟議書の電子化システムは、自社に合ったものを選ぶことが大切です。主なシステムには、以下の種類があります。
- 既存のワークフローシステム
- グループウェアシステム
- 稟議専用のシステム
各タイプの特徴や導入時の注意点をおおまかに紹介します。
既存のワークフローシステム
社内で利用している経理システムや退勤管理システムには、電子稟議用のワークフローシステムが搭載されているものがあります。稟議書のワークフローに活用できれば、費用をかけずに電子化が可能です。ただし、申請や承認、決裁の機能があり、通知や回覧がしやすいものを選ぶ必要があります。
また、営業用の顧客管理システムに付いている汎用ワークフローシステムを使うという選択肢もあります。その場合には、関係者分のライセンスを追加するために料金が発生し、割高になる可能性もあるため注意しましょう。
安全な申請・承認プロセスについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
グループウェアシステム
グループウェアシステムは、メールやチャットツール、カレンダー、ファイル管理など、社内の連絡や業務で役立つ機能を搭載したソフトウェアです。既存のグループウェアに備わっているワークフロー機能は汎用性の高いものが多く、そのまま稟議書関連の業務に利用できる場合があります。
また、全社的にグループウェアを導入している場合、ライセンスの追加不要で導入できる可能性もあります。ただし、議決承認などの複雑な承認フローに対応できないなど、操作性が高くない場合は導入効果が見込めないでしょう。
稟議専用のシステム
稟議専用のシステムは、企業独自の申請や承認フローに対応した設定や機能を備えた特化型システムです。紙の稟議書を電子化するタイミングで、より分かりやすいシステムを導入して、保存や管理に取り組みたい場合に適しています。
前述の既存システムや、汎用性のある機能だけではカバーできない部分も、稟議専用システムなら効率的に管理できます。項目の多いフォーマットを作成したい場合や、既存システムのライセンスコストを抑えたい場合にも選択肢の1つとして有用でしょう。ユーザー数や導入する範囲、既存システムとの連携について事前に確認しておくとスムーズです。
システム導入にあたって、利用したい機能が搭載されているか、費用対効果が期待できるか、などを総合的に考慮して選ぶことが大切です。
稟議書の保管に電子化システムを活用しよう
稟議書の保管期限は、法律で明確に決められている訳ではありませんが、重要な稟議書については永久保管が求められます。しかし、紙媒体で稟議書を保管すると、保管場所の確保や管理コストといった課題に直面します。また、紛失や漏洩のリスクを避けるためにも、電子化がおすすめです。
稟議書を電子化し、データで保管することで、印刷代や保管場所の賃料などコストの削減につながります。また、検索性が向上する上、タイムスタンプ機能などの活用によって、承認フローの進捗管理や業務負担の軽減といった効果も期待できます。
電子化システムを選ぶ際には、使える機能や費用対効果などを総合的に考慮し、自社に合ったものを導入することが大切です。