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1990年代後半から2000年代にかけて日本の企業で不祥事が相次いだことをきっかけに、コンプライアンスに注目が集まりました。その後も重要度は年々高まっており、近年では取引先に対してもコンプライアンスを求める傾向が強くなっています。
本記事では、取引先に反社会的勢力との付き合いがないか、法令違反を犯していないかなどを調べる手段である、コンプライアンスチェックについてお伝えします。コンプライアンスチェックの具体的な手順や注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
→ダウンロード:請求書支払業務を取り巻く内部統制の課題と4つの解決策
コンプライアンスチェックとは何か?
コンプライアンスチェックとは、自社と取引を行う企業が反社会的勢力とつながりをもっていないか、不正や不祥事、法令違反を犯していないかチェックすることです。
コンプライアンスチェックは、基本的には新たに取引を行う企業を対象に行います。ただし、取引開始後に何かしらの問題が発生する懸念もあるため、万が一に備えてすでに取引を行っている企業に対しても、定期的に行うのが一般的です。
詳しくは後述しますが、コンプライアンスチェックを実施する方法としては、自社で行う方法と信用調査会社に依頼する方法の大きく2つに分けられます。
コンプライアンスチェックが必要な理由
コンプライアンスチェックが必要な主な理由は次の3点です。
- 政府指針や条例において重要視されている
- 金融庁などで反社会的勢力排除に向けた取り組みが求められている
- 企業における社会的責任という点において重要視されている
ここでは、それぞれについて詳しく解説します。
1. 政府指針や条例において重要視されている
コンプライアンスチェックが必要とされる1つめの理由は、政府指針や条例においてコンプライアンスチェックが重要視されているからです。
2007年6月、法務省が公開した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」の中で、企業に対して次の点を求めています。
「反社会的勢力を社会から排除していくことは、暴力団の資金源に打撃を与え、治安対策上、極めて重要な課題であるが、企業にとっても、社会的責任の観点から必要かつ重要なことである。」
参照|法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」
また、2011年には全国の都道府県で暴力団排除条例が施行されました。この条例の第18条に、次のように記載されています。
「事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。」
上記の条例により企業は取引先に対し、暴力団関係者でないか確認することが求められるようになりました。
もし確認せずに取引を継続した場合、条例違反として罰則を受けるだけでなく、企業として社会的信用を失う恐れがあります。そのため企業は取引先に対し、厳格なコンプライアンスチェックを行う必要が生じました。
2. 金融庁などで反社会的勢力排除に向けた取り組みが求められている
コンプライアンスチェックを求めるようになったのは、法務省や地方自治体だけではありません。2013年12月、金融庁は「反社会的勢力との関係遮断に向けた取り組みの推進について」を発表しました。
この取り組みは主に金融機関に対して、反社会的勢力との取引に関し、厳格な審査を行うことを求めるものです。
さらに2018年1月からは金融機関が警察庁の「暴力団情報データベース」への接続を開始しました。これにより取引先が反社会的勢力と関連があった場合、自社も関連があると見なされ、金融機関と取引でき無くなるリスクが生じます。
そうなると融資を受けられず、他の取引先との取引もなくなりかねません。そうしたリスクを避けるためにも、コンプライアンスチェックは必ず行う必要があります。
3. 企業における社会的責任(CSR)という点において重要視されている
1990年代後半から、企業の不祥事が頻繁にニュースで見られるようになりました。企業が不祥事を起こす理由はさまざまなものの、競合他社との争いの中で生き残るために利益向上を追求し過ぎたケースは少なくありません。
当然ながら、企業として利益を追求することは大切です。しかし、相次いで発覚した不祥事の反動もあり、現在では利益追求と同時に企業として社会的責任を果たすことも求められています。
そして企業が果たすべき社会的責任の1つが、反社会的勢力との取引排除です。多数の企業が取引先に対してコンプライアンスチェックを行い、反社会的勢力との関連がないかどうか重視するようになっています。
もし取引先が反社会的勢力との関連があることに気付かず取引を継続した場合のリスクは、行政処分や上場廃止、融資停止などの罰則だけではありません。世間に反社会的勢力との関連があると認識され、企業として大きな信用の失墜につながります。
企業としての信用に傷がつけば、他の企業との取引が難しくなる上に顧客も離れてしまうため、取引先に対するコンプライアンスチェックの重要度が高まっているのです。
さらに、昨今において企業は自社だけではなく、株主や子会社などのステークホルダーに対しても社会的責任を果たすことが求められています。自社を取り巻くさまざまな関係者に対して責任を果たすためにも、コンプライアンスチェックは必須です。
コンプライアンスチェックに加え、内部統制についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また内部監査を実施することで、業務内容や業務フローの中で不正につながるリスクを洗い出して仕組みを改善し、リスクの発生を防ぐことができますので参考にしてください。
コンプライアンス チェックの手順
コンプライアンスチェックは国や地方自治体、金融機関からの要請により、企業として社会的責任を果たすために欠かせないものとなっています。コンプライアンスチェックは以下の手順で行いましょう。
- 情報収集
- リスク評価
- モニタリング
ここでは、適切にコンプライアンスチェックを進める手順と情報収集の方法について、具体的に解説します。
1. 情報収集
コンプライアンスチェックで最初に行うのは、取引先となる相手企業の情報収集です。まず、相手企業の担当部署からの取引申請や取引先からの申請情報に間違いがないか確認します。
確認する方法の詳細は後述しますが、利用するのはインターネットや新聞・雑誌、業界団体のリスト、自動検索ツールなどです。
また、企業が実在することの確認や取引先代表者の情報、経営層の逮捕歴、反社会的勢力との関わりなど、取引を行う上でのネガティブ情報の確認も上述の方法で同時に行います。
インターネットでの検索
最もコストをかけずに取引先の情報を収集する方法が、インターネット検索です。具体的には取引先の企業名や経営層の個人名などと「暴力団」「反社」「逮捕」などのネガティブワードを組み合わせて検索します。
インターネット検索で情報を収集するメリットは、自社で無料かつ簡単に行えることです。一方、キーワードの選定に手間がかかることや、検索結果の真偽を判断するのが難しい場合がある点はインターネット検索のデメリットといえます。
例えば、会社名でも「ひらがな」「カタカナ」「ローマ字」「英語」など、表記によって検索結果が異なるケースがあります。また、どの程度さかのぼって確認するべきかといった判断も難しいでしょう。
さらに検索結果に表示されるタイトルだけでは判断できないため、一つひとつリンクをたどって確認する必要があります。
無料で手軽にできる反面、キーワード選定にコツがいる上、時間と手間がかかることに注意しましょう。
新聞や雑誌での検索
より正確な情報を収集する方法として挙げられるのが、新聞や雑誌での検索です。上述したインターネットを用いた検索ではあるものの、新聞や雑誌などのデータベースを有料で利用する方法であるため、無料の検索サービスよりも真実性が担保されます。
検索方法はインターネット検索と同様に、企業名や経営層の個人名とネガティブなキーワードを組み合わせた複合検索です。
新聞や雑誌のデータベースを使って検索するメリットは、無料の検索サービスよりも情報の信頼性が高い点にあります。また、全国紙から地方紙まで幅広い記事を一括して検索できることもメリットです。
デメリットは、自社で行うため、検索と記事内容の確認業務に多大な時間と手間を要する点が挙げられます。また、経営層の個人名で検索した場合、仮に同姓同名の人がいればそれらも全てヒットするため、確認に手間がかかります。
新聞のデータベースで代表的なサービスの1つが「日経テレコン」です。500以上の媒体で掲載・報道された1.5億本の国内外記事や、30万人のキーパーソンの人物情報などを確認できます。月額8,000円に加えて、コンテンツの内容によって別途利用分の支払が必要です。
業界団体のリスト活用
自社が属する業界によっては業界団体リストのデータベースがあるため、これを利用するのも情報収集手段の1つです。
独自のデータベースを保有している団体としては、不動産業や金融業、建設業などが挙げられます。他にも国内には業界団体が100以上存在しているため、自社が属する業界でも保有しているデータベースがあるかどうか確認してみましょう。
また、公的機関では警察庁が「暴力団情報データベース」を提供しています。ただし、これを利用できるのは金融機関などに限られ、一般企業は基本的に利用できません。
自動化ツールの使用
もし、自社が属する業界で独自のデータベースを保有していない場合、反社チェックを自動で行ってくれるツールを使う方法がおすすめです。
新聞や雑誌のデータベースと同様に有料ではあるものの、反社会的勢力との関連性を確認するための専用ツールであるため、最新かつ正確性の高い情報を収集できます。
現在、反社チェックを自動で行うツールは、多くの企業から提供されています。導入を検討する際は料金や情報量を確認した上で、自社に合ったツールを選びましょう。
信用調査会社への依頼
ここまでは全て自社で情報を収集する方法を紹介しましたが、最後は外部の信用調査会社に依頼して情報を集めてもらう方法です。
信用調査会社は信用調査を専門で行う企業です。自社で限られた情報の中で調べるよりも、圧倒的な情報量と高い精度によるコンプライアンスチェックが実現します。
大手企業の場合、1件あたり数万円の費用がかかる場合もありますが、反社会勢力と取引するリスクをできるだけ抑えたい場合はおすすめです。
2. リスク評価
さまざまな方法の中から取引先の企業情報を収集したら、次は情報の内容に基づいてリスクの程度を評価します。
収集した情報の中で取引を行うにはリスクが高いと評価された場合は、疑わしい内容についてさらに深く調査を進めましょう。その結果、問題がないと判断した場合は取引をはじめ、問題が発覚した場合はすぐに取引を停止しましょう。
3. モニタリング
コンプライアンスチェックは取引を行う前だけでなく、開始後も定期的に行うことが重要です。取引先の情報や契約情報に変更がないか、外部情報や信用調査会社を活用してリスクの変化を適宜調査しましょう。
契約更新時や取引を行う部署に新たに人材が追加された時など、不定期に行う方法もありますが、不定期にするとイレギュラーな対応で手間が増えたり、長い期間チェックを怠ってしまったり、対応が困難になる場合があります。あらかじめ時期を決めて定期的に行う方が、効率的かつ適切にモニタリングできるでしょう。
取引先との円滑な取引を実現させるためにもコンプライアンスチェックを徹底しよう
コンプライアンスチェックは、自社と取引を行う企業が反社会的勢力とつながりをもっていないか、不正や不祥事、法令違反を犯していないかを確認するものです。
コンプライアンスチェックをしていない場合、もし取引先に反社会的勢力との関連があれば、条例違反として罰則を受けるだけではなく、企業の社会的信用を失うリスクがあります。
コンプライアンスチェックを行う際は、情報収集、リスク評価、モニタリングの順で進める方法が一般的です。情報収集は自社で行えば比較的コストをかけず実施できるものの、手間と時間をかけられない場合やより正確性を求める場合は、信用調査会社に依頼します。
取引先との円滑な取引を行うためにも、コンプライアンスチェックは必ず行うようにしましょう。