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企業で扱う文書の保管期限は、法律で定められています。監査時など必要な時に指定の書類をすぐに取り出せるよう、適切に分類、管理しておくことが重要です。
紙の書類を保存する際には、経年劣化などによる破損や紛失、災害への対策も考慮しなければなりません。また、保存期間を過ぎた書類は適切な方法で破棄するなど、さまざまなルールがあるため、文書管理の方法が整備されていないと、作業負担が大きくなる可能性があります。
この記事では、文書保管の方法やルール、保管期限別の書類の種類、保管手順などについて解説します。文書保管に関して抱えやすい課題とその対策についても紹介しますので、文書保管の効率化に向けてぜひお役立て下さい。
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文書保管とは
企業で作成、管理する書類には、会社法や税法などで保存期限が定められているものがあります。紙の書類で保管する場合は、過去のデータを参照したい時や、監査時など指定の書類が必要になった場合にすぐ取り出せるよう、年度・書類などの項目別に分類、ファイリングして保管するのが好ましいです。
また、保管文書の電子データ化が認められているものについては、電子帳簿保存法などのルールに従って管理する必要があります。ここでは、紙の書類と電子情報それぞれの保管について解説します。
紙の書類の場合
紙の書類を保管する場合、書類の「種類」「発行日(年度)」「取引先名」などで分類し、ファイリングして棚に収納するのが一般的です。ファイルや棚番号などの保管場所を記録した管理台帳を作成し、社内で共有することでスムーズな運用が実現します。
管理台帳には、保管期限や廃棄方法といった入力項目を設けておくと、長期的な管理をする場合に役立つでしょう。
電子情報の場合
書類を電子化する場合は、電子帳簿保存法などのルールに従う必要があります。具体的には、以下のような要件が電子帳簿保存法にて定められています。
- 訂正・削除履歴の確保
- 相互関連性の確保
- 関係書類などの備え付け
- 見読可読性の確保
- 検索機能の確保
単純に書類をスキャンしてPDFなどに変換し、保存するだけでは不十分なため注意が必要です。
電子化した書類を社内で共有する前に、ファイル名の付け方や保管場所、フォルダの分類方法など管理ルールを統一しておくことが大切です。
電子帳簿保存法に則したファイル名の付け方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
文書保管の法律で定められた期間
企業で扱う書類は、その性質によって異なる保管期間が法律で定められています。文書保管の期間は、主に以下3つに分けられます。
- 永久保管など長期間の保管
- 5〜10年間の保管
- 1〜4年間の保管
上記それぞれに該当する書類について解説します。
長期間保管が必要な文書
企業や事業の存続に関する重要度の高い書類は、永久保管や30〜40年といった長期保管が必要です。主に以下のような書類が該当します。
【永久保管が必要な書類例】
- 定款
- 官公庁への各種届出書類や官公署からの許可書・認可書
- 株主名簿など株式に関わる帳簿
- 特許や商標など知的所有権に関する書類
- 社旗や社則に関する書類
- 効力の永続する契約書類
- 重要な権利・財産の得喪・保全・解除・変更に関する書類
- 社内報などの重要刊行物
- 製品の開発・設計に関する重要書類
- 重要人事に関する書類や労働条件の協定書
上記以外でも、企業が独自に永久保管すべき書類を定めているケースもあります。
【30〜40年の保管が必要な書類例】
30〜40年など長期的に保管が必要な書類として、以下があります。
- 石綿健康診断個人票(40年)
- 特別管理物質の製造や取扱業務に常時従事し、または従事した労働者の特定化学物質健康診断個人票(30年)
- 除染等電離放射線健康診断個人票(30年)
- (緊急時)電離放射線健康診断個人票(30年)
5~10年間保管が必要な文書
5〜10年間の保管が必要な書類について見ていきます。
【10年保存が必要な書類例】
10年間の保管が義務付けられている書類は、会社の経営に関するものが中心です。以下は、10年の保管が必要な書類例です。
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 監査役会議事録
- 監査等委員会議事録
- 委員会議事録(指名・監査・報酬委員会)
- 製品の製造・加工・出荷・販売の記録
- 会計帳簿および事業に関する重要な資料
- 計算書類および附属明細書
なお、満期・解約となった契約書類についても、10年の保管が推奨されています。
【7年保存が必要な書類例】
社員の給与や所得税などに関する書類は、7年間の保存が義務付けられています。決算に関する作成書類も7年保管書類に含まれていますが、貸借対照表や損益計算書など一部は10年保管が義務付けられているため注意が必要です。
以下は、7年間の保管が必要な書類の例です。
- 取引に関する帳簿
- 決算に関して作成された書類
- 現金や預貯金のやり取りに際して作成された取引証憑書類
- 有価証券の取引に際して作成された証憑書類
- 取引証憑書類(請求書、契約書など)
- 電子取引の取引情報に係る電磁的記録
- 資産の譲渡等、課税仕入、課税貨物の保税地域からの引取りに関する帳簿
- 課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿、請求書等
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書など
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
- 源泉徴収簿
- じん肺健康診断記録
- 粉じん濃度の測定記録
【5年保存が必要な書類例】
5年の保管が必要な書類例には、以下があります。
- 事業報告
- 有価証券届出書・有価証券報告書
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し
- 産業廃棄物処理の委託契約書
- 契約期限を伴う覚書、念書、協定書などの書類
- 重要な内容の受信・発信文書
- 長時間労働者に対する医師による面接指導の結果の記録
- ストレスチェックの結果および医師等による面接指導の結果の記録
- 各健康診断個人票
- 従業員の身元保証書、誓約書などの書類
- 家内労働者帳簿
- 監査報告書
- 会計監査報告書
- 会計参与が備え置くべき計算書類、その附属明細書
1~4年間保管が必要な文書
人事、庶務、経理などに関する書類の多くは、1〜4年間の保存が必要です。
【4年間の保管が必要な書類例】
- 雇用保険の被保険者に関する書類
- 雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿
【3年間の保管が必要な書類例】
- 四半期報告書、半期報告書およびそれらの訂正報告書の写し
- 官公署関係の簡易な認可・出願などの書類
- 一般の社内会議記録
- 社内規程・通報の改廃に関する書類
- 軽易な契約関係書類
- 業務日報
- 参照の必要性のある往復書類
- 什器・備品台帳
- 賃金台帳
- 労働者名簿、社員出勤簿、雇入れ・解雇・退職に関する書類
- 災害補償に関する書類
- 賃金その他労働関係の重要書類
- 年次有給休暇管理簿
- 労災保険に関する書類
- 労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則に規定される機械の定期自主検査の記録
- 派遣元管理台帳・派遣先管理台帳
- 安全委員会議事録、衛生委員会議事録、安全衛生委員会議事録
- 雇用する労働者が障害者であることを証明できる書類
【2年間の保管が必要な書類例】
- 雇用保険に関する書類
- 健康保険・厚生年金保険に関する書類
【1年間の保管が必要な書類例】
- 臨時報告書、自己株券買付状況報告書
- 当直日誌
- 軽易な往復書類
- 住所・姓名変更届
- 軽易な通知書類、調査書類、参考書類
- 休暇届、欠勤願および休暇使用記録票
文書保管の方法や流れ
ここからは、実際に書類を保管する方法や作業の流れ、保管期限が過ぎた書類の廃棄処分方法ついて紹介します。
書類の整理と分類
まずは、保管が必要な書類を整理し、種類や担当部署などの項目で分類します。保管書類を分ける際には、以下のようなカテゴリを使うとスムーズです。
- 書類の種類
- 取引先
- 担当部署
- 年度・月別
- 50音順
分類した書類は、発行日や受領日順に整理しておくと検索性が高まります。
保管する場所と期間の設定
保管場所として、自社倉庫やオフィスの空きスペースなどを利用できますが、できるだけ紙の書類が劣化しにくい環境を選ぶことが大切です。温度と湿度の変化が少なく、直射日光が当たりにくい場所が好ましいでしょう。
また、重要書類については金庫や鍵付きの収納に入れ、書類を扱う人のみが手の届く範囲に配置します。加えて、各書類の保管期間も設定することが重要です。前述の法的な保管期間の規定があるもの以外は、必要に応じて部署や社内で取り決めを作ると、管理しやすくなります。
「保存期限:〇〇年〇月〇日まで」などと明記することで、保管期間中に誤って破棄するような事態を避けられるでしょう。
アクセス管理とセキュリティの確保
文書保管では、必要な人のみが、必要な時にのみ特定の書類にアクセスできることが重要です。また、紛失や改ざんによる情報漏えいなどのリスクを避けるためにも、十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。
社内で扱う情報の多くは機密情報であり、原則として書類は鍵付きの倉庫や部屋で保管します。鍵を使用する際や書類を持ち出す際に、貸出帳簿などで利用者や日時の記録を取り、アクセス管理を徹底しましょう。
バックアップと災害対策
地震や台風、火災などが起きた際に、紙の書類では紛失してしまう可能性があるため、安全面での対策も必要です。定款など特に重要な書類は、耐火性のある金庫に入れるなどの方法を検討しましょう。
ただ、全ての保存書類を金庫に入れるのは非現実的です。浸水を避けられるよう2階以上の部屋で保管する、勤務場所とは別の倉庫やサテライトオフィスに保管する、といった対策を講じましょう。また、保存書類を電子化してデータ保存することは、災害時のバックアップとして有用です。
廃棄処分
保管期限が過ぎた書類は、順次処分して保存スペースを確保する必要があります。情報漏えいのリスクが高まるため、書類をそのまま破棄することは避けなければなりません。基本的には、記載内容が読み取れないような形にして破棄するのが望ましく、多くの企業ではシュレッダーで裁断する方法が採用されています。
また、よりセキュリティ性の高い方法として、溶解処理も推奨されています。紙を水で溶解させる溶解処理は、処分する書類が大量の場合にも有用です。
文書保管のよくある課題
最適な文書保管を実践する上で、さまざまな課題に直面する可能性があります。ここでは、文書保管で起こりやすい課題とその対処法について説明します。
書類整理にかかる負荷の大きさ
通常業務と並行して書類の管理を行う場合、業務量が増える可能性があります。また、誤発注などのトラブルが発生した際には、早急な対処が求められるため、担当者の負担となることもあるでしょう。
日々発行される請求書や納品書、領収書などの書類は、後でまとめて整理しようと溜めておくと相当な量になってしまいます。一度で全ての書類を整理することは現実的ではないため、できる限りこまめに整理しておきましょう。
また、ファイリングした書類を保管場所に移すタイミングなど、文書保管の社内ルールを決めておくことも大切です。
保管書類の検索性の悪さ
紙の書類を保管する場合、必要な書類を探すのに時間がかかる場合があります。オフィスとは別の保管場所へ書類を移動するために、長い時間作業を中断しなければなりません。また、複数の書類が必要な場合には、日付順などでファイリングしていても全てを揃えるまでに時間がかかります。
加えて、書類がどこに行ってしまったかわからなくなる可能性もゼロではありません。紙の書類で物理的に保管する場合には、紛失のリスクを避けるために対策が必要です。
書類保管作業の属人化
書類の整理・保管作業を徹底しようとすると、どうしても担当者が固定してしまいます。その結果、担当者以外は書類の分類やファイリングの方法を理解していない、という属人化の状態を招く可能性があります。
業務が属人化すると、担当者が体調不良などで急に休職、退職することになった場合、業務が滞ってしまいます。また、書類がデスクやダンボールに散乱し、労働環境に影響が及ぶ可能性もあります。書類保管のマニュアル作成や情報共有などにより、作業を属人化させないよう工夫することが大切です。
保管場所の必要性(紙書類の場合)
紙の書類は日々増えていくため、保管スペースを確保しなければなりません。保管期間を過ぎた書類を丁寧に処分していても、普段使っていない会議室や執務スペースだけではいずれ書類が収まり切らなくなるでしょう。
自社で書類の保管場所が作れない場合は、屋内型のトランクルームや文書保管専門業者などを活用する方法も有用です。
文書保管を効率化するサービス
文書保管を効率化するために、書類の電子化サービス「TOKIUMインボイス」も役立ちます。TOKIUMインボイスでは、紙やFAX、PDFなどあらゆる形式の請求書を代わりに受領し、システム上に自動でデータ化して記録します。
また、請求書の原本の保管も代行するため、自社における文書保管の負担を軽減できます。加えて、請求書の支払い申請や仕訳もオンライン上で自動的に完結する上、全てのデータはクラウド上で閲覧が可能です。
電子帳簿保存法の保管要件への対応や、インボイス制度に関する登録や点検作業も代行でき、法改正による追加業務の負担を抑えられます。
なお、経理業務を大幅に効率化できる電子インボイスについては、以下の記事が詳しいので参考にしてください。
文書保管は法律で定められた期間を確認!
文書保管の方法は、紙の書類と電子データとで異なり、書類ごとに法律で定められた保管期間を厳守する必要があります。書類を保管する際には、バックアップや災害対策なども考慮した上で、種類や取引先などに応じて適切に分類、整理することが重要です。
ただ、紙で保管する場合、保管スペースや整理作業の属人化、セキュリティ性といった課題が出やすいため、電子化も検討すると良いでしょう。電子データでの書類保管には、電子化サービスを活用する方法も有用です。
なかでも、TOKIUM電子帳簿保存はおすすめな文書管理システムです。
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