インボイス制度

インボイス制度導入後の海外取引!影響や確認事項について詳しく解説

更新日:2024.11.19

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インボイス_海外取引

2023年10月からインボイス制度が導入され、国内に限らず海外取引においてもさまざまな影響があります。インボイスの処理方法を正しく把握しないと、業務の非効率化に加え、取引相手との信頼関係を損ねる恐れがあるでしょう。

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この記事ではあらためてインボイス制度の概要を見た上で、海外取引への影響や海外法人と取引する際の確認事項、注意点などを解説します。また、インボイス管理に適したツールも紹介するので、海外取引が多い事業者はぜひ参考にしてください。

インボイス制度とは?

インボイスの正式名称は「適格請求書等保存方式」です。インボイス制度とは、消費税の複数税率(8%・10%)に対応するための仕入額控除方式のことです。適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者に限られており、消費税の課税事業者のみ登録できます。

売り手と買い手双方が課税事業者の場合、売り手は買い手に適格請求書を発行・保存し、買い手も保存しておくことで消費税の仕入額控除が適用されます。

たとえば、A社がB社から100円の資材を税込み110円で仕入れて製品を製造し、C社に220(消費税20円)円で販売したとしましょう。この場合、A社はC社から20円の消費税を受け取っているものの、B社に10円の消費税を支払っているため、A社が納める消費税の合計額は30円となり二重課税となってしまいます。

もしA社もB社も適格請求書発行事業者であれば、C社から受け取った20円からB社に支払った10円を引き、10円だけを納税します。これが仕入税額控除です。

仕入税額控除について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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インボイス制度が海外取引に及ぼす影響

前段では、国内取引でのインボイス制度の概要について解説しました。しかし、海外の仕入先から商品を輸入する場合でも、売り手が国内の課税事業者もしくは国内取引に該当すれば、インボイス制度に対応しなければなりません。

ここでは、海外取引でインボイス制度の影響がある場合とない場合、それぞれの対応について解説します。

海外取引においてインボイス制度の影響がない場合

海外取引においてインボイス制度の影響がないのは、国外取引で輸入を行う場合です。国外取引とは、具体的に次のような取引を指します。

  • 国外にある資産の譲渡や貸付を行う場合
  • 国外で役務(サービス)の提供を行う場合

国外での取引は日本の消費税が適用されず課税もされないため、インボイス制度の影響を受けません。

出典:国税庁『No.6210 国外取引

海外取引においてインボイス制度の影響がある場合

海外取引においてインボイス制度の影響があるのは、日本への消費税納付義務が生じる取引を行う場合です。

具体的には、海外企業であっても日本国内に支店や工場のように事業を行う「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)以下、PE」があれば、消費税の課税対象となります。

ただし、取引先の海外企業が日本国内にPEを持っていなくても、次のような場合には日本の消費税が課税される場合があるため、事前に確認が必要です。

  • 資本金が1,000万円以上の国外企業の場合
  • 国内企業とBtoB取引をしている場合
  • 仕入の代行を国内企業に委託している場合
  • 日本国内で商品やサービスを売買・提供している場合
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外国法人との取引をケース別に解説

海外企業との輸出・輸入取引に分けて、適格請求書の発行が必要かどうか見てみましょう。

  • 海外企業への輸出取引

基本的に海外へ商品や資材を輸出する場合は免税取引に該当するため、適格請求書の発行は不要です。適格請求書は買い手から交付を求められた場合に発行するのが原則であり、日本の課税事業者ではない海外企業から適格請求書の交付を求められることはありません。

  • 海外企業からの輸入取引

海外から国外取引として商品や資材を輸入する場合、原則として適格請求書の発行依頼は不要です。ただし、例外として次の3つのケースでは、海外企業との取引であってもインボイス制度の対応が必要になります。

  1. 海外の売り手から輸入する場合
  2. 海外事業者の輸入手続きを国内事業者が代行する場合
  3. 輸入申告名義人と実質的な輸入者が異なる場合

それぞれのケースについて解説します。

海外の売り手から輸入する場合

消費税法において消費税の課税対象となる取引は、主に「国内取引」と「輸入取引」の2つです。

  • 国内取引の場合

取引先が海外企業であっても国内にPEがある場合、もしくは国内で取引を行う場合は、国内取引に該当するため消費税が課税されます。そのため仕入税額控除を行うには、取引先の海外企業に適格請求書を発行してもらわなければなりません。

  • 輸入取引の場合

輸入取引により税関当局の管轄下にある保税地域(外国貨物の保管・加工・製造・展示ができる場所)から仕入れる輸入品は原則消費税も課税対象です。

この場合、税関当局が交付する「輸入許可通知書」が適格請求書と同等の役割を持ちます。そのため、取引先の海外企業に対し適格請求書の発行依頼をすることなく、輸入許可通知書によって仕入税額控除の適用を受けられます。

海外事業者の輸入手続きを国内事業者が代行する場合

海外事業者が国内にPEを持たず、海外事業者と取引を行う国内企業が輸入手続きを代行するケースです。この場合、取引を行う商品の所有権、そして所有権を持つ企業が課税事業者か免税事業者かで、仕入税額控除を受けられるか判断します。

たとえば、国内にPEを持たない海外企業A社の商品について、国内企業B社が代行して輸入手続きをする場合、A社とB社は輸入取引の関係です。そのため、B社が仕入れた商品は課税仕入となり、A社に支払う消費税額は仕入税額控除の対象になります。

B社が輸入した商品を別の国内企業に販売するのも、課税資産の譲渡に該当するため、消費税の課税対象です。ただし、B社が国内企業に販売する段階までA社が商品の所有権を持っている場合、B社はA社が選任した納税管理人という立場になります。そして、販売する段階で所有権がA社からB社へ移行します。

また、この場合に海外から商品を輸入する際にかかる関税や、内国税を含めた輸入消費税の支払い義務があるのは輸入代行のB社です。

次に海外企業A社が課税事業者の場合、B社はA社に適格請求書を発行してもらうことで、仕入税額控除を受けられます。A社が免税事業者の場合は適格請求書を発行できないものの、発生した支払いに対する消費税額分については、仕入税額控除の対象です。

輸入申告名義人と実質的な輸入者が異なる場合

輸入取引の場合、税関当局が交付する輸入許可通知書があれば、適格請求書と同等の役割を持つため、仕入税額控除の適用を受けられます。ただし、輸入許可通知書に記載された関税法の輸入者である「輸入申告名義人」と「実質的な輸入者」が異なる場合、仕入税額控除を受けられるのは輸入申告名義人だけです。

たとえば、国内企業A社が海外企業B社から輸入取引を行う際に、輸入代行の国内企業C社に依頼するとします。そして代行手数料や輸入消費税は、後で代行企業C社からA社に請求してもらうとしましょう。

この場合、実質的な輸入者はA社であり、実際に商品の所有権を持つのもA社です。しかし、輸入申告名義人は輸入代行企業のC社です。仕入税額控除を受けられるのは輸入申告名義人であるC社であるため、後に輸入消費税を払うとしても、A社は仕入税額控除の適用を受けられません。

主要国のインボイス導入状況

現在、世界各国でインボイス制度の普及が進んでいます。ここでは日本と他国のインボイス制度の比較、各国で導入されている電子インボイスについて解説します。

インボイス制度を導入している国

日本以外でインボイス制度を導入している主な国は、イギリスやフランス、ドイツ、オーストラリア、韓国、タイ、インドネシアなどです。

日本の税率構造は8%と10%の2段階ですが、イギリスやドイツは3段階、フランスは4段階もあります。また韓国やタイ、インドネシアの税率構造は1段階のみではあるものの、財務の透明性や信頼性の向上、不正行為防止などの目的でインボイス制度を導入しています。

各国のインボイス制度の主な共通項は以下の通りです。

  • 適格請求書の保存が必要
  • 適格請求書に記載した税額が控除される
  • 消費税(付加価値税)番号や適用税率などの記載が必要

出典:財務省『諸外国の付加価値税におけるインボイス制度の概要

電子インボイスの普及

各国では海外取引のさらなる効率化を目指して、電子インボイス制度が普及しています。2024年現在、電子インボイスを導入している国は40か国以上あります。

電子インボイスとは、適格請求書を電子データでやり取りするための仕組みです。日本でも電子帳簿保存法の改正により帳票や領収書などの電子化が進む中、電子インボイス普及への取り組みが活発化しています。そこで電子インボイス普及の鍵として注目されているのが、Peppol(ペポル)です。

Peppolとは「Pan European Public Procurement Online」の略称で電子文書の仕様や、ネットワークなどの運用ルールを取り決めた国際規格です。「European」という単語が含まれているように元々は欧州から生まれたもので、現在では日本を含む多くの国で標準規格となっています。

Peppolは、売り手から売り手アクセスポイント、Peppol Infrastructure、買い手アクセスポイントを経由して、買い手へと電子データが流れていく4コーナーモデルを採用しています。売り手と買い手が直接取引をせず、それぞれのアクセスポイントとPeppol Infrastructureを介すことで、スムーズな取引の実現が可能です。

電子インボイスもこの4コーナーモデルを使うことで、Peppolネットワークに参加している世界中のどの企業とも電子インボイスをやり取りできます。

Peppolに対応したシステムの導入が必要ではあるものの、Peppolへの理解を深めることが、国内外のさまざまな企業間における電子インボイスの普及につながるでしょう。

電子インボイスについては、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

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インボイス管理のためのシステム

Peppolを活用した電子インボイスの普及も含め、インボイス管理を効率的に行うには、適切なシステムの導入が欠かせません。そこでおすすめなのが、請求書の受取から保管・管理まで完全ペーパーレス化を実現するクラウド請求書受領システム「TOKIUMインボイス」です。

TOKIUMインボイスを活用すれば、電子帳簿保存法で定められた保管要件に完全対応していることに加え、適格請求書発行事業者番号のデータ化や突合点検などの代行も行います。そのため、インボイス制度に対応するための工数を最小限に押さえ、担当者の負担を大幅に軽減できます。

またPeppolでの電子インボイス受領にも対応しており、Peppolで受領した請求書と、紙やメールで受領した取引関係書類の紐づけ管理も可能です。海外取引に加え、国内で紙の請求書を使う企業とのやり取りがある企業でも、効率的に請求書を管理できます。

他にも請求書の金額や日付、口座情報など99%以上の精度で自動データ化、会計ソフトへの取り込み形式に合わせてCSVファイルの作成など、手入力での作業がほとんど不要になります。

経理担当者の負担軽減や電子インボイスの対応に悩んでいる場合は、参考資料を無料でダウンロードできるのでぜひご覧ください。

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海外取引がある企業はインボイス制度に適切に対応しよう

この記事ではインボイス制度の導入による海外取引への影響と、企業の対応について解説しました。企業はインボイス制度導入以前に比べ、より多くの変化と対応が求められます。また、海外法人との取引の際にも迅速かつ適切な対応が必須です。

そこで、もう一度重要な点を確認しておきましょう。

  • インボイス制度の理解

まず各国のインボイス制度の違いについて理解して適切に対応できるよう、特に自社が取引を行う国の制度は十分把握してください。

  • 法規制の遵守

海外の法規制についても随時把握する必要があります。国によっては厳しい罰則が科せられる場合がある上、企業の信頼失墜にもつながるため、法規制の遵守は必須です。

  • システムの導入

インボイスの管理を効率化するために、適切なシステムの導入を目指しましょう。自社の課題や予算を勘案した上で、最適なシステムを選択してください。

この記事が、企業の海外法人とのスムーズな取引の実現に役立てられれば幸いです。

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