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決算公告の概要から法的要件、作成方法やメリットまでを解説

更新日:2024.09.30

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決算業務を担当したことがあれば必ず耳にするのが「決算公告」という言葉です。しかし、決算公告の詳細については詳しく知らないという人も少なくありません。株式会社は基本的に決算公告を行う義務がありますが、一部不要のケースもあります

決算公告の概要や必要性を知ることは、業務を通じて自社の競争力を高めることにもつながります。まずは、決算公告の目的や適切な進め方への理解を深めておきましょう。

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この記事では、決算公告の概要から法的要件、作成方法やメリットまで詳しく解説します。自社の競争力強化のために最適な行動をとりたいと考えている人は、ぜひ最後までご覧ください。

決算公告の概要

決算公告とは、企業の決算内容を公に告知することです。決算公告の義務については、会社法で規定されています。すべての株式会社は、事業年度終了後に経営状態や財務情報などを広く知らせなければなりません。

決算公告では、貸借対照表の公告を行うのが一般的です。ただし、大会社は貸借対照表に加えて損益計算書の公告も必要です。決算公告の掲載方法は、官報公告、新聞公告、電子公告の3種類があります。

以下では、決算公告の目的について解説します。

決算公告の目的

決算公告の目的は、会社の財務状況の透明性を外部に向けて示すことです。会社の決算内容を外務に向けて公表することで、株主や債権者、取引先は経営状況を把握できるようになります。株主はリターンが見込めるか、債権者は資金回収ができるかどうか、取引先は安全な取引ができるかを慎重に見極める必要があります。

決算公告は、株主や債権者、取引先にとって、投資や取引をする上で信用に値するか見極めるための重要な判断材料です。会社にとっても、株主や債権者、取引先との信頼関係を築く上で大切なアクションと言えます。決算公告を怠れば、信用の低下や取引における不利益につながるおそれがあります。

決算公告の実例

決算公告への理解を深めるには、実際に企業が公表した決算公告を見ることをおすすめします。どのような形式で公告されているのか実際に見ることで、概要の理解がスムーズになるでしょう。

決算公告は、官報、企業ホームページ、日刊新聞に掲載されます。各種媒体から検索して、公告されている会社の決算内容をチェックしてみましょう。

国立国会図書館の「リサーチ・ナビ」を活用すると、企業の財務内容が掲載されている情報源を調べられます。

参考:国立国会図書館|企業の財務内容について調べる

国税庁・公正取引委員会の注目資料を解説

決算公告の方法

決算公告は、必要書類を作成して自社の方針に適した掲載方法を選んで行います。発表方法を事前に決めておくと、書類作成の流れがスムーズです。

この章では、決算公告における掲載の種類、発表までの流れを解説します。

掲載の種類

決算公告の掲載媒体は、定款で定めていれば自由に選択できます。

決算公告における掲載媒体の種類は、以下の通りです。

〇官報公告

官報公告は、平日に政府が発行している機関紙を用いた発表方法です。貸借対照表の要旨のみを記載すれば良いため、他の方法に比べて手続きの手間を省けます。掲載費用は約7~15万円で、新聞公告に比べてリーズナブルです。ただし、申し込みから掲載までに約1週間かかります。

〇新聞公告(日刊新聞紙)

新聞公告は、日本経済新聞のような日刊新聞を用いた発表方法です。紙面を購入して貸借対照表の要旨や業績に関するアピールポイントを掲載します。掲載費用は非常に高く、数百万ほどかかるケースもあります。

〇電子公告

電子公告は、企業ホームページや信用調査機関サイトを用いた発表方法です。自社ホームページで発表する場合、手間はかかるものの更新にかかる費用だけで済むためトータル費用は安く抑えられます。ただし、貸借対照表の要旨だけでなく、必要書類の全文を記載する必要があります。

発表までの流れ

決算公告の準備から発表までの流れは、以下の通りです。

1決算書類作成
決算公告を行うに当たり、決算書類を作成します。貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書などが該当します。
2書類の監査と承認
決算書類の作成が完了したら、監査役や会計監査人の監査を受けなければなりません。監査後は、定時株主総会に決算書類を提出して株主による承認を受けます。定時株主総会は、原則として決算日の翌日から2ヶ月以内に開催するのが決まりです。
3資料作成
監査と承認が完了した決算書類を基に、決算公告資料を作成します。掲載の種類によって必要となる資料が異なるため、掲載先に確認しておきましょう。
4掲載媒体にて発表
自社が規定する掲載方法に沿って決算公告を行います。定款の規定がない場合は、掲載媒体は官報に限られます。

決算公告には、具体的な期限は定められていません。期限がないからと言って決算公告を怠ると、会社の透明性が損なわれるため注意しましょう

決算公告の必要性

決算公告は、会社の信頼性を担保するために重要な役割を果たしています。決算公告に関する業務を行う上で、法的な要件について確認しておくことも大切です。

以下では、決算公告に関する法的規則を解説します。

義務付けられる企業

会社の設立や運営に関する規定は、会社法によって定められています。会社法で定める企業の形態は、以下の4種類です。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合資会社
  • 合名会社

4つの形態のうち、会社法第440条第1項で決算公告を義務付けられているのは株式会社のみです。株式会社以外の3つの形態については、決算公告の義務はありません

株式会社とは、株式発行により資金を集めて事業を行う形態です。株式会社は原則、上場企業と非上場企業の両方に決算公告が義務付けられています。公開会社も非公開会社も決算公告が必要です。

決算公告の期限は定められていないものの、定時株主総会終結後に可能な限り早く公告するように定められています。定時株主総会とは、事業年度の終了後に開催される株主総会です。会社法第296条1項には、株式会社は最低でも年1回は定時株主総会を開催しなければならないと規定されています。

株主総会の開催時期については、以下の記事を参考にしてください。

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必要な記載内容

決算公告に掲載するように義務付けられている内容は、会社の規模や掲載の種類によって異なります。会社の規模と必要な記載内容に関しては、会社法第1項および第2項を確認しましょう。

会社の規模と必要な記載内容は、下記の通りです。

大会社貸借対照表
損益計算書
大会社以外の会社貸借対照表

大会社とは、資本金が5億円以上または負債が200億円以上の会社を意味します。最終事業年度の貸借対照表に計上した金額を基に、大会社かどうかを判断します。

掲載の種類と決算公告に必要な記載内容は、次の通りです。

大会社大会社以外の会社
官報公告・貸借対照表の要旨
・損益計算書の要旨
(損益計算書の要旨を公告しない場合は当期純損益金額を追加)
貸借対照表の要旨
新聞広告
電子公告・貸借対照表の全文
・損益計算書の全文
(借対照表や税効果会計などの注記事項も記載)
貸借対照表の全文

大会社の決算公告には、貸借対照表と損益計算書の両方が必要です。大会社以外の会社の場合は、貸借対照表の要旨のみを記載すれば問題ありません。ただし、電子公告を選択する場合は、貸借対照表の全文を記載する必要があります。

電子公告は自社ホームページで手軽にできますが、不特定多数の人に全文を知られる点がデメリットに感じる会社も少なくありません。全文の掲載に抵抗がある場合は、官報公告や新聞公告を選択するのがおすすめです

決算公告が不要となる場合

株式会社であっても、例外として決算公告が不要の会社もあります。

決算公告が不要となるケースは、以下の通りです。

〇有価証券報告書を提出している会社

有価証券報告書の提出が義務付けられている上場会社の場合、EDINETのデータベースに決算内容が公開されています。EDINETとは、金融庁が運営する電子開示システムです。EDINETに決算内容が公開されている会社は、決算公告を行う必要はありません。

参考:EDINET「金融庁」

〇自社ホームページで計算書類を開示している会社

自社ホームページにおいて計算書類の電磁的公示を行っており、以下の条件に該当する場合は、決算公告が不要です。

  • 定時株主総会の終結後、遅滞なく貸借対照表などの必要内容を開示している
  • 定時株主総会の終結の日から5年を経過する日まで開示している
  • 不特定多数の人が閲覧できる状態で開示している

すべての条件を満たす場合、電子公告と同じ状況で決算内容が公に告知されているとみなされます。

〇特例有限会社

特定有限会社とは、会社法施行以前の有限会社の呼び方です。会社法の下では株式会社として扱われ、株式発行もできます。会社法施行以前は決算公告の義務がなかったため、特例有限会社に対しては公告義務が免除されています。

決算公告のメリット

現在決算申告の義務があるにもかかわらず、対応を怠っている中小企業が多く見られます。決算公告は大企業が行うものというイメージを持つ経営者も少なくありません。

決算公告は、社会に対して嘘のない経営であることをアピールするチャンスです。法律で定められた義務をしっかり守って正しく対応している企業は、株主や取引先はもちろん従業員とも良い関係を築けるでしょう。

以下では、決算公告を行うメリットを紹介します。

信頼性の向上

決算公告を行うことで、企業の信頼性が向上します

決算公告の目的は、企業の財務状況を公表して外部に経営の透明性を示すことです。決算公告を行うことで、株主や取引先などのステークホルダーは企業の財務状況を把握できるようになります。透明性を確認できれば、信頼に値するかどうかの判断がスムーズになり、信頼性の向上につながるでしょう。

決算公告を行わない場合、財務状況や将来性などに関するネガティブな印象を与えるリスクがあります。「多くの中小企業が実施していないから」「面倒だから」などの理由で対応を怠ると、信頼性が低下につながるため注意しましょう。

また、決算早期化によるメリットも信頼性の向上につながりますので、併せて検討すると良いでしょう。

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競争力の強化

決算公告を行うメリットの1つに、競争力の強化が見込めます。情報開示が求められる現代において、正しく決算公告を行うことは企業成長に大きく影響します。

財務状況の公表によってステークホルダーからの信頼が深まれば、さらなる取引や投資の増加も期待できるでしょう。企業成長には、利益の向上や事業拡大、環境整備の充実が欠かせません。取引や投資が増えることで、資金面に余裕が生まれて企業成長のチャンスをつかみやすくなります。

従業員との信頼関係が高まれば、魅力のある組織を築くことが可能です。従業員エンゲージメントが向上し、競争力の強化につながるでしょう。

罰則を受けるリスクを回避

決算公告を適切に行えば、罰則を受けるリスクを回避できます。

株式会社は、定時株主総会終結後に可能な限り早く決算公告を行う必要があります。行うべき時期に決算公告をしなかったり不正な方法で行ったりした場合、罰則が生じる可能性があるため注意しましょう。

決算公告を怠った場合

決算公告を怠った場合と不正な手段で決算公告を行った場合は、代表取締役に下記の罰則が適用されます。

万が一罰則を受けることがあれば、企業の競争力の低下につながります。たとえ罰則を受けなかったとしても、会社法で義務付けられている対応を怠っているという事実はネガティブなイメージにつながりかねません。

決算公告を怠った場合
不正な手段で決算公告を行った場合
100万円以下の過料

参考:e-Gov 法令検索|「会社法」

不正な決算公告により第三者に損害を与えた場合

不正な決算公告により第三者に損害を与えた場合は、会社や関与する役員が罰則の対象となります。会社や関与する役員は、損害賠償責任を負わなければなりません。

参考:e-Gov 法令検索|「会社法」

会社を守るためには、決算公告で起こりうるリスクはしっかりと把握して回避することが大切です。

インボイス制度対応チェックリスト インボイス制度対応チェックリスト

決算公告の業務を通じて自社の競争力を高めよう

この記事では、決算公告の概要から具体的な進め方、メリットなどを解説しました。

決算公告とは会社の決算内容を外部に公表することです。財務状況の透明性を外部に示す目的で行われます。株主や取引先にとって、決算公告は経営状態や信頼性を見極める重要な情報源の1つです。

決算公告は、すべての株式会社に義務付けられています。ただし、有価証券報告書を提出している会社や自社ホームページで計算書類を開示している会社は決算公告が不要です。

決算公告には、信頼性の向上や競争力の強化が期待できるなどデメリットを上回るメリットがあります。決算公告を行っている企業は少ないものの、決算公告が企業成長につながるのは事実です。

まずは決算公告の法的な要件について理解を深めて、しかるべきタイミングで適切に対応しましょう。

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