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経費精算業務では、日々発生する立替経費を効率的に精算する必要があります。2023年10月施行のインボイス制度により、領収書の取り扱いが大きく変わったことで、経費精算業務にも多大な影響を及ぼしています。
2024年3月に実施したインボイス制度に関する調査によれば、約30%の社員が経費精算の負担が増加したと回答しています。インボイス制度施行時に経理業務における対応体制を万全にしたものの、現在も業務の煩雑化に悩まされている人は多いのではないでしょうか。
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この記事では、経費精算の基礎知識からインボイス制度による影響、経費精算における対応方法のポイントまで詳しく解説します。施行から約1年のタイミングで、今一度社内における業務フローを見直し、より効率的な体制を構築するためにもぜひご覧ください。
経費精算の基礎知識
経費精算とは、従業員が業務に関連する費用を自分で一時的に立て替えた場合に、その金額を企業が後から返金する手続きのことです。以下では、経費精算で主に取り扱う勘定科目と、インボイス制度との関連について解説します。
経費精算の主な勘定科目
そもそも「経費」とは、企業の事業活動において発生する費用のことです。経費精算では、取引の内容を記録するために、収入や支出の内訳を示す「勘定科目」に従い分類します。勘定科目ごとに経費を記録することで、資金の流れを把握しやすくなります。
また、税金の算出においても、勘定科目による仕訳は必須です。勘定科目にはさまざまなものがありますが、経費の仕訳では主に以下のような勘定科目を用います。
- 租税公課
- 地代家賃
- 給与賃金
- 消耗品費
- 旅費交通費
- 飲食接待費
- 研修費
- 福利厚生費
- 広告宣伝費
上記の中でも、従業員の経費申請に用いることの多い勘定科目は「旅費交通費」「飲食接待費」などです。
よく使われる経費科目について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
インボイス制度と経費精算業務の関係
経費精算の業務は、インボイス制度と切っても切り離せない関係にあります。経費精算で従業員が行う経費申請では、多くの場合支払った費用の金額や内容を証明するために領収書が必要です。
インボイス制度は、領収書の発行・保管に大きな影響を及ぼしています。よって、経費精算においても制度に従って、適切な対応を行う必要があります。
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インボイス制度の概要
インボイス制度とは、2023年10月から導入された、消費税の仕入税額控除の適用を受けるための新たな方式です。正式名称は「適格請求書等保存方式」と言います。
インボイス制度の導入により、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには要件を満たした「適格請求書(=インボイス)」の受領・保存が必要になりました。
インボイス制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
インボイス制度が経費精算に与える影響
インボイス制度では、経費精算時に提示する領収書が適格請求書(インボイス)でない場合、仕入税額控除を受けられないと定められています。そのため、領収書が適格請求書あるいは適格簡易請求書かどうかを確認する必要があります。
インボイス制度の施行前は、3万円未満の課税仕入に関しては帳簿のみの保存で適用できる特例が認められていました。しかし、施行後に特例が改正され、原則として3万円未満の取引でも仕入税額控除を受けるためには適格請求書の保存・管理が必要です。
ただし、以下のような3万円未満の取引については、請求書等の交付が困難であるなどの理由で、現在も帳簿のみの保存で仕入税額控除の申請が認められています。
- 公共交通機関による旅客の運送
- 自動販売機および自動サービス機からの商品の購入等
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仕入税額控除の変更点の概要
インボイス制度の施行前後で、経費精算における仕入税額控除は大きく変わっています。以下では、その変更点について詳しく解説します。
経費精算における対応法
経費精算では、領収書の処理が必須です。インボイス制度によって、領収書の取り扱いにどのような変更点が生じたのか見ていきましょう。
適格請求書か否かを確認
経費申請時に提出された領収書が、適格請求書か否かを確認する必要があります。領収書が適格請求書でない場合は、仕入税額控除を受けることができないため、税額を負担しなければなりません。
経費申請された領収書を、適格請求書とそれ以外に振り分けておくと経費処理がスムーズに進むでしょう。なお、免税事業者は適格請求書を発行できません。よって、免税事業者との取引で発行された領収書は全て適格請求書でないものです。仕入税額控除が適用されないため、税額を負担する必要があります。
適格請求書の要件を満たしているか確認
経費精算時に受け取った領収書で、適格請求書に振り分けられる場合は、それぞれが要件を満たしているか確認します。適格請求書発行事業者が発行した領収書でも、適格請求書として認められるためには記載要件を全て満たしている必要があります。
記載要件を満たしていない場合、適格請求書として扱われず、仕入税額控除が適用されません。つまり、税額を負担することになるため、領収書の受領時に必ずチェックすることが重要です。
適格請求書が不要な経費
インボイス制度に伴い、適格請求書の保存・管理が不要な経費について一部変更がありましたが、それでも特例としての扱いが認められている場合があります。以下では、適格請求書が不要な経費と、中小事業者への経過措置について解説します。
領収書が不要な経費一覧
適格請求書が不要で、帳簿における必要事項の記載のみで仕入税額控除を受けられる経費には、以下があります。
- 3万円未満の公共交通機関(バス・鉄道・船舶)を利用した場合の旅客運賃
- 適格簡易請求書の要件(取引年月日以外)を満たした入場券等のうち、使用時に回収される取引の費用
- 適格請求書発行事業者以外の古物営業者からの古物を購入する費用
- 適格請求書発行事業者以外の質屋からの質物を取得する費用
- 適格請求書発行事業者以外の宅地建物取引業者から建物を購入する費用
- 適格請求書発行事業者以外の事業者から再生資源や再生部品を棚卸資産として購入する費用
- 3万円未満の自動販売機・自動サービス機における商品購入の費用
- 郵便ポストに投下した郵便・貨物サービス(郵便切手類のみを対価とするものに限る)費用
- 従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当
ただし、上記経費には、上限額や適用要件が別途設定されているケースもあるため、国税庁のホームページなどで事前に確認しておくと安心です。
参考:仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存|国税庁
加えて、以下の取引に関しては、事業の性質から適格請求書の発行が困難な場合があり、交付義務が免除されています。
- 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売業務として行うもののみ)
- 農業協同組合(JA)、漁業協同組合または森林組合等に生産者が委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式による販売、かつ共同計算方式による代金精算で生産者を特定しないものに限る)
中小事業者への経過措置
インボイス制度では、中小事業者への経過措置として「少額特例」が用意されています。少額特例では、1万円未満の課税仕入れは適格請求書(または適格簡易請求書)なしで仕入税額控除の申請が可能です。
適用期間は、2023年10月1日から2029年9月30日で、記載条件を満たした帳簿を提出する必要があります。また、対象の中小企業者は「法人の場合は前々事業年度、個人の場合は前々年の課税売上が1億円以下、または前事業年度の開始日以後6月の期間(個人は1~6月)の課税売上が5,000万円以下の事業者」です。
なお、少額特例の適用については、1回の取引における課税仕入れ金額で判断します。複数の商品を同時に購入し、合計金額が税込1万円を超えた場合は、少額特例の対象外となるため注意が必要です。
参考:国税庁|少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要
インボイス制度下での経費精算のポイント
インボイス制度の施行による経費精算の変更点に適応し、効率的に業務を進めるために注意すべきポイントを紹介します。
領収書取得に関する社内ルールを作成する
経費精算では、経理部以外の社員から多くの申請が入り、領収書の提出が発生します。社員がインボイス制度に適応した領収書を持っていない場合、経費精算が円滑に進まなくなるため、経費精算における社内ルールを作成し、周知しておくことが重要です。
特に、3万円未満の取引について、従来は領収書がなくても帳簿のみで仕入税額控除が受けられたため、慣習的に領収書を取得しないケースもあるかもしれません。インボイス制度の施行に伴い、領収書の保存が必須となった点についてよく周知する必要があるでしょう。
混乱を防ぐためにも、領収書の取得を一律で定めておくと、領収書がなくて仕入税額控除が適用されない事態を避けられるでしょう。
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免税事業者との取引を再確認
免税事業者は適格請求書(または適格簡易請求書)を発行できないため、免税事業者との取引ではインボイスを用いた仕入税額控除を受けられません。適格請求書発行事業者との取引とは、経費精算の処理が異なる点に注意が必要です。
なお、免税事業者や適格請求書発行事業者ではない課税事業者との取引において、経過措置が設けられています。インボイス以外でも一定の仕入税額控除が受けられる決まりです。経過措置の適用期間と控除割合は、以下の通りです。
- 2023年10月1日〜2026年9月30日:80%控除
- 2026年10月1日〜2029年9月30日:50%控除
- 2029年10月1日〜:控除なし
経費精算の煩雑化にシステムで対応
インボイス制度に伴い、経費精算業務において領収書が適格請求書として認められるかどうか1つずつ判別する作業が発生し、業務負担が増加しました。そこで、経費精算システムを活用することで、負担の軽減につながります。
経費精算システムでは領収書の自動読み取りや振り分けといった機能により、経費精算作業を効率化することが可能です。よって、従来まで担当者が目視で1つずつ確認していた手間を削減できます。
TOKIUM経費精算は、スマートフォンで申請・承認ができる、クラウド経費精算システムです。オペレーターが領収書を高精度でデータ化するため、手入力によるミスを減らすことができます。領収書の原本はTOKIUMが回収し、突合点検・保管まで代行するので完全ペーパーレス化が可能です。
さらに、自社開発を含むあらゆる会計ソフトとも連携可能。電子帳簿保存法やインボイス制度にも応しています。
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インボイス制度導入後の経費精算を効率化する体制を整えよう!
今回は、経費精算とインボイス制度の基本知識から、インボイス制度における経費精算のポイントまで解説しました。インボイス制度により、経費精算業務に大きな変更が生じ、対応体制を立て直すために苦労しているケースもあるのではないでしょうか。
インボイス制度に従って、適切に対応できなければ企業の会計や税務関係にも影響が及びます。そのため、最低限必要な情報だけでもよく理解し、対応できる体制を整えておくことが重要です。本記事の内容を参考に、業務フローや対応方法を今一度見直してみましょう。