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修正申告とは、当初の税務申告が誤っていた場合に正しい内容に修正するものです。自ら誤りに気付いて行う場合と、税務調査の指摘によって行う場合があります。この記事では修正申告の概要や、税務調査で指摘された際の修正申告の流れ、追徴課税の詳細などを解説します。
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税務調査の指摘により修正申告をする場合、企業側が損失を受けるケースがあるため注意が必要です。税務調査はいつ入るか分からないため、現在調査を控えている人だけでなく、経営者や経理担当者は修正申告への理解を十分深めておきましょう。
修正申告の概要
修正申告というと一般的には税務調査で指摘された結果行うイメージを抱かれやすいですが、必ずしもそれだけではありません。修正申告の概要やどのようなケースで行われるのか、そして税務調査との関係を解説します。
修正申告とは
修正申告は一度提出した税務申告に誤りがある場合、法定期限後に正しく修正することです。修正申告は、納税者が自ら気付いて行うケースと、税務調査で指摘された結果行うケースがあります。
過去の税務申告の内容を訂正する手続きとしては、修正申告の他に更正の請求があります。修正申告は申告の結果、所得・税額が増える場合の手続きで、逆に税額が減る(還付になる)場合に行うのが更正の請求です。まとめると以下の通りです。
- 修正申告:申告した納税額が本来より少ない、または還付される税金が多い場合に訂正する。申告 の結果、追加で納税が必要。
- 更正の請求:申告した納税額が多過ぎた場合に行う。請求が認められれば税金が還付される。
税務調査との関係
税務調査は、納税者による税務申告の内容が正しいかどうか税務署が調査するものです。法人税や所得税などは、納税者が自ら税額を計算して納税する「申告納税制度」が採用されています。そのため、税務署は税務申告に誤りがないことを税務調査として調べる必要があります。
自ら誤りに気付いて申告を訂正することも修正申告に分類されますが「修正申告」という言葉は、税務調査の結果を示す場合に使われることが大半です。実際には自身で気付いて行うよりも、税務調査で指摘されて修正することの方が多いためといえます。
以下では税務調査の流れと税務調査で修正申告となるケースの例を紹介します。
税務調査の流れ
税務調査は、一般的に以下の流れで行われます。
1.税務署からの通知
税務調査が入る旨を税務署から電話で伝えられます。通知先は、税理士に税務申告を依頼している(税理士が確定申告書に税務代理権限証書を添付している)場合は税理士宛てに、自身で税務申告している場合は納税者本人宛てであることが一般的です。
ただし事前の通知がない調査もあります。その場合は、後日に日程の調整を依頼することが可能です。
2.税務調査実施日の日程調整
事前通知のあと、税務調査の日程を税務署と調整します。税理士に立ち会いを依頼する場合は税理士の予定も確認しましょう。
3.書類の準備
税務調査の際に必要となる書類を事前に準備します。抜け漏れがないか税理士と確認することも重要です。
4.調査の実施
一般的には、税務調査官がオフィスや店舗に訪問して実施します。書類の提出を求められた場合は指示に従いましょう。
5.結果の通知
税務署から調査の結果が通知されます。
税務調査の流れをより詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にして下さい。
税務調査で修正申告となるケース
税務調査の結果には以下の3通りがあります。
- 申告是認
- 修正申告
- 更正
1の申告是認は、税務申告の内容に問題や指摘事項がないことです。納税者はこれ以上の対応は必要ありませんがケースとしては稀です。
税務調査の結果、税務申告に誤りがあると判明した場合は、税務署からその旨が通知されます。納税者が誤りを認めれば修正申告を行い、追加の納税をします。この時点で税務署の指摘に不服があれば、調査のやり直しの依頼や修正の放棄といった選択が可能です。
修正を放棄して何も行動を起こさない場合、税務署は税額を正す処分を行います。これが3の更正です。更正が行われると場合によって更正通知書が届き、納税者に異議がなければ内容にしたがって納税を行います。
もし納得できない場合は異議申立てができ、再調査や国税不服審判所への審査請求、最終的には裁判所に訴訟を起こすことも可能です。
修正申告の流れ
修正申告はどのような流れで行われるのか、以下の3つのケースをそれぞれ解説します。
- 税務調査後の申告
- 確定申告前の申告(訂正申告)
- 確定申告後、税務調査前の申告
税務調査後の申告
税務調査後の修正申告は税務署が税務調査で誤りを指摘し、受け入れた納税者が自身で行うものです。
納税者は修正申告書を提出し、不足している税金を納めます。また、多くの場合に本来納めるべきだった税金に加え、延滞税や過少申告加算税などの追徴課税を支払わなければなりません。
確定申告前の申告(訂正申告)
税務申告の期限前に既に提出した申告内容を訂正する場合は、修正申告ではなく訂正申告となります。訂正申告をする際は修正申告書ではなく、通常の確定申告書を訂正して再提出しましょう。期限内に最後に提出した申告書が正式なものとして受理されます。
修正申告は、税務申告の期限後に訂正する場合に行うものである点が異なります。
確定申告後、税務調査前の申告
前述のように税務調査は事前に通知される場合が多く、もし通知がないケースでも日程の調整依頼が可能です。
そのため、税務調査が入ると判明してから実際の調査まで少し日程が空きます。この期間中に、もし既に過去の税務申告の内容が誤っていると認識しているなら、税務調査で指摘される前に自主的に修正申告を行うこともできます。
ただし、修正申告書を作成するには事務負担がかかり、税理士に依頼する場合も短期間での修正申告は難しいでしょう。申告後に誤りに気付いた場合は、税務調査の通知が来る前に自主的に修正を行うことをおすすめします。
税務調査後の修正申告で発生する追徴課税
税務調査で指摘された後に修正申告をする場合、追徴課税を負担しなければなりません。追徴課税される税金には、延滞税と加算税があります。以下、延滞税との4つの加算税についてそれぞれ見てみましょう。
延滞税
未納部分に対する遅延利息の意味合いがあり、期限から納付が遅れた日数に応じて請求されるものです。以下で説明する4つの追徴課税がペナルティの意味合いである加算税であるのに対して、延滞税は利息のようなものである点で性質が異なります。
納付日が遅れるほど金額が膨らみます。計算条件が複雑なため、試算する場合は下の国税庁のページで確認して下さい。
過少申告加算税
税務申告の内容が誤っており正しい税額よりも少なく申告、納付していた場合に科せられるものです。
税額は原則として以下の通りです。
- 新たに納めることとなった税金の10%
- 新たに納めることとなった税金が、当初の納税額と50万円のいずれか多い金額を超えていれば、超えている部分は15%
ただし、税務調査で指摘される前に自ら誤りに気付き修正申告をすれば、過少申告加算税の負担は不要になります。
国税庁の下記サイトも参考にして下さい。
参考:国税庁|法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営方針)
無申告加算税
正当な理由なく申告期限内に申告しなかった場合に科せられるものです。税務申告をしていない場合だけでなく、期限後に申告した場合も同様に課せられます。
税額は原則として以下の通りです。
- 税務調査で指摘された場合、税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額
- 税務調査に関係なく自主的に期限後に申告をする場合は、納付すべき税額に対して5%の割合を乗じて計算した金額
令和6年1月1日以後に申告期限が到来するものは、300万円を超える部分は30%という要件も加わります。
国税庁の下記サイトも参考にして下さい。
参考:国税庁|法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営方針)
不納付加算税
源泉徴収した所得税を、正当な理由なく法定納付期限までに納付しない場合に科せられるものです。
税額は原則として以下の通りです。
- 本税に対して10%
- 税務署から指摘される前に自主的に納付した場合は本税に対して5%
ただし以下の場合は支払う必要はありません。
- 遅延したが納期限から1ヶ月以内に納付した(ただし過去1年間に期限後納付がない)
- 不納付加算税の金額が5,000円未満
- やむを得ない事情がある
源泉徴収した所得税が対象である点が、他の加算税と異なります。
国税庁の下記サイトも参考にして下さい。
参考:国税庁|源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営方針)
重加算税
悪質に隠蔽、仮装した場合に科せられるものです。例えば、帳簿や決算に関連する書類を破棄・隠匿・改ざんした場合、売り上げを意図的に隠す、架空の経費を計上するなどの行為が挙げられます。
上記の行為を繰り返すような悪質な場合には、さらに高額な重加算税が科せられることがあります。
詳細は下記の国税庁のページを参考にして下さい。
参考:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営方針)
修正申告には税理士の力を借りよう
前項のように追徴課税の負担は大きいため、税務調査で指摘があっても修正申告が本当に必要なのか、修正申告をすべきタイミングなどを考慮するべきです。その際には税理士の力を借りることをおすすめします。
税理士に依頼するメリットは、主に以下の通りです。
- 的確な判断ができる
- 税務調査の前に準備ができる
- 税務調査の際にフォローしてもらえる
それぞれ解説します。
的確な判断ができる
税務調査の結果、指摘事項があれば修正申告を勧められます。税理士に依頼すれば、専門的な知識と経験をもとに、本当に修正申告すべき内容かどうか判断してもらうことが可能です。
税務署の指摘は必ずしも正しいとは限りません。納税者側から反論する余地があるケースもあります。しかし修正申告をせずに争った結果、最終的に税務署側の見解が正しいとされると、争う手間や費用だけでなく延滞税も増えてしまいます。税理士の意見を聞き、判断するのがおすすめです。
税務調査の前に準備ができる
税務調査の通知から当日までには、資料の準備だけでなく重点的に調査される事項を予測して対策を練られます。税理士は豊富な知識と経験から、事前準備をアシストしてくれます。
事前準備を入念に行えば、当日の税務調査をスムーズに進められるでしょう。例えば資料が見つからずに時間がかかって心象を悪化させてしまったり、想定していなかったことを質問されて答えられず、税務調査官に疑念を抱かせてしまったりといった状況を避けられます。
また準備の段階で誤りを見つけられれば、調査前に修正することも可能です。その場合は追徴課税の負担を軽減できます。
税務調査の詳細は下の記事にもまとめているので、参考にしてください。
税務調査の際にフォローしてもらえる
税理士に税務調査当日に立ち会いを依頼すれば、税務調査官との受け答えを代理で対応してもらうことも可能です。税務調査官の質問を理解できずに誤った回答をして、疑念を抱かせてしまう状況を避けられます。
正しく回答しないと、税務調査の結果が自社にとって不合理なものになる恐れがあります。顧問の税理士がいない場合も、税理士によっては税務調査に合わせて立ち会いを依頼できる可能性があるので、不安があれば探してみると良いでしょう。
税務調査への対応フローを今一度見直そう
この記事では修正申告の概要や流れ、追徴課税の詳細などを解説しました。追徴課税が発生する要件はそれぞれ異なるため、内容を把握した上で自社が負担するであろう税金を試算しましょう。
税務調査で指摘された場合、修正申告に対する判断は専門的な知識を要します。修正申告を検討する際には自社の損失を少しでも減らすために、税理士へ依頼して適切な判断を仰ぐことをおすすめします。
税務調査を控えている人もそうではない人も、この機会に修正申告と追徴課税の概要を確認すると共に、税務調査への対応フローを見直しましょう。