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メールを使えば、企業の外部関係者にもPDFファイルなどを添付することで書類を送ることも可能です。しかし、可能だからといって従前は郵送していた書類を送ることに対し「もしかしたら失礼では?」と消極的な企業もあるでしょう。
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今回の記事では、メールで請求書を送るのはありかなしか検討した上で、送る場合の例文、注意点を紹介します。
請求書をメールで送付してもいいのか
結論からいうと、請求書をメールで送付すること自体、法的には問題ありません。請求書は、取引先との間に問題が生じた際、取引関係の存在を証明する役割を有しています。しかし、直接的に請求書に関係する法律は存在しないため、メールで送付しても法的に問題はありません。
ただし、メリット・デメリットがある上に、取引先によってはメールでの請求書の送付に難色を示されることがあります。詳しくは後述しますが、まず、取引先の意思を確かめた上でどのように進めるか考えましょう。
請求書をメールで送るメリット・デメリットを解説
請求書をメールで送ることには、どのようなメリット・デメリットがあるのかについて、具体的に解説します。
メリット
メリットは以下の通りです。
- コストの削減がしやすい
- 再発行や修正がしやすい
- 他ツールとの連携がしやすい
コストの削減につながる
メールで請求書を送付することで、コストの削減につながります。紙で請求書を作成・郵送すると用紙代や切手代などのコストがかかりますが、メールで送れば用紙・切手は必要ないため、その分のコストを減らすことが可能です。また、印刷・発送作業にかかる時間や人件費も減らせるので、業務の効率化にも役立ちます。
再発行や修正がしやすい
メールで請求書を送ることには、再発行や修正がしやすいというメリットがあります。紙の請求書に不備が見つかった場合、データを変更して印刷、郵送といった手間がかかるでしょう。しかし、メールで請求書を渡す場合は、データ変更が完了したらメールで送るだけで問題ないため手間が減らせます。
他ツールとの連携がしやすい
メールで請求書を送るのは、他ツールとの連携がしやすいというメリットがあります。会計ソフトの種類によっては他ツールと連携できる場合があるため有効活用しましょう。例えば、請求書の読み取りが可能な会計ソフトであれば、必要な取引の記録、計算に自動で対応してくれるので、会計処理がスムーズになります。
請求書送付の電子化が可能なシステムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
デメリット
請求書をメールで送るデメリットは以下の通りです。
- 導入・運用コスト
- 情報漏えいのリスク
- 取引先の意向
導入・運用コストがかかる
請求書をメールで送るのに伴い、導入・運用コストがかかることに注意が必要です。具体的には専用ソフトやスキャニングのための費用などがかかる可能性があります。商品・サービスによっては導入コストだけでなく、継続的に費用がかかる場合もあるので確認し、事前の見積もりにより比較検討する必要があるでしょう。
情報漏えいのリスクがある
請求書のメール送信に限ったことではないが、電子ファイルをやり取りする場合は情報漏えいのリスクを考える必要があります。情報漏えいを防止するためには、以下の防止策を講じましょう。
- ウイルス対策を徹底する
- ファイルの取り扱い方法についてのルールを明確化する
- 従業員教育によりリテラシーを強化する
紙の請求書を希望する取引先がいる可能性がある
取引先の中には請求書をデータで受け取ることに対応できない所もあります。紙の請求書を希望する取引先がいた場合、自社の請求書の渡し方がメール、紙の両方になる可能性があります。渡し間違えの防止を含めた業務フローの整備やメールでの送付への切り替えを見据えたヒアリングなど、周辺業務も発生します。
メール以外の送付方法とは
メール以外の方法でも請求書を送ることは可能です。具体的な送付方法として、以下の2つを解説します。
送付方法1:郵送
印刷した請求書を封筒に入れ、郵送する方法です。メールで送る場合とは違い、ビジネスマナーとして送付状の添付が必要になります。また、請求書は信書であるため、封書やレターパックなどで郵送しなくてはいけません。宅配便は使えないので要注意です。
なお、送付する際は、封筒の表に「請求書在中」と記載しておくと丁寧な印象を与えられます。さらに、社印を押して控えを残せば改ざんがしにくいので、トラブルを防ぐために万全を期するならその方向で進めましょう。
一般的に広く用いられてきた方法ですが、請求書を渡すまでの手間や送料がかかるため、企業によっては郵送を取りやめ、メールに切り替える動きをしていることがあります。
送付方法2:FAX
FAXで請求書を送るケースも存在します。郵送で送る場合と同じく、メールとは異なり送付状が必要です。郵送と比較すると簡易的な渡し方であるものの、郵送よりもスピーディに取引先へ請求書を共有できるというメリットがあります。
ただし、FAX機の状態によって請求書が鮮明に印刷されない場合があるのがデメリットです。また、FAX番号を間違うと取引先へ請求書が届かない可能性が出てきます。FAXで送る場合は送信後、取引先にちゃんと届いているかを電話で確認しましょう。
なお、監査の際は請求書の原本が求められるため、「原本はいらない」と取引先から申し出があっても別途郵送で原本を送るのが望ましいです。
請求書をメールで送付する時の必要項目を解説
請求書をメールで送付する際は、以下の内容を記載しましょう。
- 請求者の名前
- 取引年月日
- 取引内容
- 取引金額
- 請求書の交付を受ける事業者名
また、適格請求書(インボイス)を発行しているなら、以下の事項も記載する必要があります。
- インボイス発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
- 消費税額など
なお、請求書はPDFなど改変しづらいファイル形式での添付が望ましいです。
請求書をメールで送る時に役立つ文例を紹介
請求書の原本を送らない、郵送する場合の2パターンに分けて、メールで送る時に役立つ文例を紹介します。
文例1:原本を送らない場合
まず、請求書の原本を送らない場合の本文の文例は以下の通りです。なお、請求書が取引先のメールに埋もれないよう、件名で「請求書を添付している」ことが分かるようにしておきましょう。
件名:【請求書】◯月分請求書送付のご案内(●●株式会社) ○○株式会社 ××部 △△△△様 平素より格別のお引き立てを頂き、御礼申し上げます。 ●●株式会社■■部の▲▲▲▲でございます。 XXのお取引につきまして、○月分請求書を本メールにて送付させて頂きます。 お手すきの際にご確認頂き、期日までに請求額をお振込み頂ければ幸甚でございます。 【添付内容】 ご請求書(No.●●-●●).pdf 1通 なお、誠に勝手ながら、振込手数料はお客様にてご負担頂きますようお願いいたします。 添付ファイルが開封できないなど不都合な点やご不明な点がございましたら、まことに恐れ入りますが、ご一報頂きたく存じます。 また、請求書原本郵送の必要がございましたらその旨お知らせ下さい。 ご多用の折に恐れ入りますが、何卒宜しくお願い致します。 |
文例2:原本を郵送する場合
取引先企業によっては、保管方法や商習慣、監査における内部方針などの理由により、原本の提供を求めてくることがあります。希望があれば、まずメールで請求書を送り、追って原本を郵送する形で進めましょう。
このように、原本も郵送する場合のメール本文の文例を紹介します。
件名:◯月分請求書送付のご案内(●●株式会社) ○○株式会社 ××部 △△△△様 いつもお世話になっております。 ●●株式会社■■部の▲▲▲▲でございます。 XXのお取引に関して請求書を添付しております。 お手すきの際にご確認下さいませ。 【添付内容】 ご請求書(No.●●-●●).pdf 1通 なお、請求書原本も別途郵送させて頂きました。 本請求書中に記載の振込先へ、●年●月●日までにお振込み下さいますようよろしくお願い申し上げます。 大変恐れ入りますが、振込手数料はご負担頂ければ幸いです。 また、添付ファイルが開封できないなど不都合な点やご不明な点がございましたら、お手数をおかけいたしますが、ご一報頂きたく存じます。 ご多用の折に恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。 |
他の送信用メールテンプレについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご確認ください。
請求書をメールで送る時に気を付けたいポイントを解説
ここまで紹介したことの他にも、請求書をメールで送る時には気を付けるべきポイントがあるので、詳しく解説します。
事前に取引先へ確認する
まず、請求書を送る際は、事前に取引先に確認しましょう。法律的には、請求書に押印はいりません。しかし、発行元の押印があると証明力が高まるとされているので、取引先が押印を求める方針を採っていることもあります。このため、メールで請求書を送る場合、押印の形式をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。例えば、紙の請求書に押印してPDF化したり、請求書のデータに電子印鑑を押したりといった方法が考えられます。
PDFファイルで送る
請求書をメールに添付する際は、PDFファイルに変換しましょう。WordやExcelなどで作成した請求書は改ざんされたり、取引先が誤って編集してしまったりすることが考えられます。取引先のPC環境によってはファイルが開けない可能性もゼロではありません。
トラブルの原因になりかねないので、メールに添付するには向いていません。一方、PDFファイルなら簡単には編集できないため安心してメールに添付できます。
押印の有無を確認する
請求書には印鑑を押すケースが一般的ですが、押印がなくても請求書の効力には関係なく、法的にも問題はありません。一方で、取引先の中には押印がなければ請求書として受け付けられない、という方針を採っている所もあるので注意しましょう。取引先がどのような方針を採っているのか、事前に確認しておくとスムーズに進められます。社内でも紙の請求書に押印するか、データに電子印鑑を押すのかを決めておきましょう。
件名に請求書の送付である旨を記載する
メールを送信する際は、件名に請求書の送付である旨を記載しましょう。例えば「◯月分請求書送付のご案内(●●株式会社)」などが考えられます。
請求書の受領者は一定期間にわたって保存しなくてはいけません。例えば、消費税における仕入税額控除を受ける要件の1つに「請求書を7年間保存すること」が挙げられます(消費税法施行規則50条)。このような背景があるため、請求書をメールで送る場合は取引先が管理・保存しやすいようファイル名に配慮するのが望ましいです。
具体的には、「20240701_T社_500000_システム費用請求書」など、取引年月日・取引金額・自社名などを含むファイル名を用いましょう。
メールの送信ミスに注意する
メールの送信ミスに注意しましょう。ここでいう送信ミスとは、請求書自体の間違いや、送信先、送信状況に起因する問題を含みます。自社の信頼を損ねるなどトラブルの原因になるため、以下の点に留意して送信して下さい。
- 請求書に記載漏れや書き間違いがないか
- 添付されているデータに間違いはないか
- データは問題なく添付されているか
- 送信先のメールアドレス、担当者名に誤りはないか
- きちんとメールを送信できているか
電子帳簿保存法にのっとる
請求書をメールで送る際は電子帳簿保存法およびその改正内容をチェックしておく必要があります。電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、2022年1月から改正法が施行されました。実務的には以下の4点が重要なので、問題がないか確認しましょう。
- 電子帳簿保存の事前承認手続の廃止
- スキャナ保存時のタイムスタンプおよび検索要件の緩和
- 適正事務処理要件の廃止
- 電子取引における書面保存の廃止
メールの場合、送付状は必要ない
メールで請求書を送る場合は、送付状は必要ありません。前提として、送付状がなくても請求書自体は有効です。また、前述したように、請求書を郵送もしくはFAXで送る場合は、送付状を添えると丁寧であると言われています。
しかし、メールの場合は必要ありません。送付状に記載する内容をメールの本文に記載すれば特に問題ないとされているので、そのように進めましょう。
さらに電子データ化した請求書を送る際の5つの注意点について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
PDF化した請求書は一定期間の管理が義務づけられている
PDF化した請求書は一定期間の管理が義務づけられているため、注意しなくてはいけません。一定期間適切に管理しなければ仕入税額控除が受けられないなどのデメリットがあるためです。一定期間管理する方法はさまざまですが、検索しやすい状態で管理・保存するという意味で以下の方法が考えられます。
- 月、もしくは取引先ごとにフォルダを作成して管理する
- TOKIUMインボイスなどの請求書管理システムを利用する
請求書はメールで送っても問題ない
請求書はメールで送っても特に問題ありません。ただし、取引先によってはメールでの請求書の送付を受け付けていないことがあるため注意が必要です。また、メールで送るためにPDF化した請求書は、一定期間適切に保管しなくてはいけません。書類保管に関連する一連の業務を円滑に行うためには、文書管理システムの導入が効果的です。TOKIUMの導入により、ミスなく請求書の管理ができ、業務の大幅な効率化につながります。紙や電子の書類の取り扱いに課題を感じていらっしゃるなら、ぜひ一度お問い合わせ下さい。