この記事は約 6 分で読めます。
近年、クレジットカードや電子マネーなどが普及し、キャッシュレス決済の選択肢が増えています。キャッシュレス決済は利便性が高く、ビジネスシーンでの利用も多くなりました。ただし電子マネーでの決済では、領収書発行の取り扱いや経費処理の方法など、現金取引とは異なる点が多くあるため注意が必要です。
この記事では、電子マネーでの取引で領収書を発行できるのか、また経理処理の方法などを解説します。そして、経費精算に電子マネーを用いるメリットや、利用における具体的な注意点も併せて紹介します。電子マネー取引を活用することで、経費精算を効率的に行いたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
電子マネーとは
電子マネー決済(以下、電子マネー)とは、現金を電子化し決済するサービスのことです。支払い時に現金を用意する必要がなく、また現金のやり取りによるミスがなくなるため、簡単に決済できます。
身近な例では駅の自動改札を通過する際に使用する交通系ICカードがあります。他にも電子マネーにはさまざまな種類があるため、以下で電子マネーの種類や、クレジットカードとの違いを解説します。
電子マネーの種類
電子マネーは決済方法や特徴により、さまざまな種類があります。普及している主な電子マネーは以下のように分けられます。
- 交通系ICカード
- プリペイド型電子マネー
- クレジットカード系電子マネー
- QRコード決済系電子マネー
交通系ICカードの代表的なサービスはSuicaやPasmoなどです。発行元がJR東日本のような交通サービス提供会社であることから、電車やバスなどの交通機関でスムーズに運賃を支払えます。他にも店舗や自動販売機、タクシーなど、幅広く利用できます。
プリペイド型電子マネーは、nanacoや楽天Edyなどが代表的です。事前にチャージしてから利用するプリペイド型のサービスで、スーパーやコンビニなどを中心に幅広く利用できます。
クレジットカード系電子マネーは、代表的なものにQUICPayやiDがあります。クレジットカードをスマートフォンに登録しておき、支払い時にはスマートフォンを提示するだけで、後日指定のカードから決済される仕組みです。クレジットカード番号を知られることがなく安全に利用できます。
QRコード決済系電子マネーは、PayPayや楽天Payが代表的です。モバイルアプリに表示されたQRコードを提示、または店舗にあるQRコードを読み取ることで決済します。支払いは事前にチャージする方法や、クレジットカードを紐付ける方法などから選択が可能です。
クレジットカードとの違い
クレジットカードもキャッシュレス決済の1つですが、電子マネーとは決済の仕組みが異なります。
電子マネーの決済方法には、利用者が事前にチャージするプリペイド型、使った金額を後で決済するポストペイ型などがあります。ポストペイ型は基本的に利用者がクレジットカードに紐付けて決済し、店舗側へは電子マネーの運営会社が代行して支払う仕組みです。
一方でクレジットカード決済では、店舗側にクレジットカード会社が代行して支払い、利用者に後日クレジットカード会社へ代金をまとめて請求されます。
また、クレジットカードを発行する際には事前に審査が必要であり、結果によっては利用できない場合もあります。一方で電子マネー決済はプリペイド方式があるため、基本的に審査なしで利用が可能です。
なお、法人クレジットカードで経費精算するメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
電子マネーで支払うと領収書はもらえるのか
原則として電子マネー決済の場合、領収書は発行されません。店舗側は、電子マネーの運営会社から代金を受け取るため、電子マネーでの決済時点ではまだ「代金を受け取った」として領収書を発行できないからです。
ただし、店舗によっては依頼すれば発行してくれることもあるため、必要な場合は確認しましょう。電子マネー決済では、レシートが領収書の代わりとして多く利用されます。ただし、レシートには以下の点が記載されていることを確認しましょう。
- 利用した店舗などの名称
- 購入年月日
- 購入した商品名やサービスの内容
- 購入金額
- レシートの宛先名(受取人)
なお、利用店舗がインボイス発行事業者であり、利用者がインボイスを受領したい場合には、インボイスの要件を満たしたレシートであることを確認しましょう。要件を満たしていないレシートであれば、別途インボイスの発行を依頼する必要があります。
もし電車やバスなどの交通費でレシートをもらっていない、もしくは紛失した場合には、電子マネーの利用履歴を保存し、内容を記録しておけば経費として認められます。
本記事では、交通費精算の課題解決法や経費精算システムの活用方法をご紹介するPDF資料を無料配布しております。交通費精算を効率化したい方は是非ご覧ください。
【関連する無料のお役立ち資料】
▶ 交通費精算の5大課題を解決するには?経費精算システムの活用方法も合わせて解説
※1分でお役立ち資料をダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。
電子マネーの経費処理は支払い方法によって異なる
電子マネー決済をした場合の会計処理は、支払い方法によって異なるため注意が必要です。ここでは、以下3つの支払い方法に分けて紹介します。
- プリペイド方式
- ポストペイ方式
- デビット方式
プリペイド方式の場合の仕訳
プリペイド方式で電子マネー決済をする場合、まずは事前に現金をチャージしておく必要があります。
例えばPayPayに10,000円をチャージして、チャージ分から3,300円分の消耗品を購入した場合の仕訳は以下の通りです。
仮払金 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
消耗品費 | 3,300円※ | 仮払金 | 3,300円 |
※消費税は税込経理を採用しています(以下、同様)。
仮払金の残高がPayPayのチャージ残高と一致するように処理しましょう。
ポストペイ方式の場合の仕訳
ポストペイ方式で電子マネー決済をする場合は、クレジットカードに紐付けて支払います。QUICPayのようなクレジットカード系電子マネーだけでなく、交通系ICカードやQRコード決済系電子マネーでも、多くのサービスでクレジットカード払いの設定が可能です。
例えば店舗で3,300円の消耗品をQUICPayで購入・決済し、後日普通預金の口座から金額分が引き落とされたとします。この場合の仕訳は以下の通りです。
【決済時点】
消耗品費 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 |
ただし、期中で発生主義を採用せず、現金引き落とし時にのみ経費を認識する場合は、決済時点で仕訳をしないケースもあります。
【クレジットカード利用分の預金引き落とし時点】
未払金 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 |
もし、決済時点で仕訳をしていない場合は、口座からの決済が完了した段階で以下の処理をしましょう。
消耗品費 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 |
デビット方式の場合の仕訳
デビット方式で電子マネー決済をする場合は、決済のタイミングで紐づけた預金口座から代金が引き落とされます。デビット方式はデビットカードだけでなく、QRコード決済系電子マネーでも設定可能なケースがあります。
例えば店舗で3,300円消耗品を購入、デビットカードで決済した場合の仕訳は、以下の通りです。
消耗品費 | 3,300円 | 普通預金 | 3,300円 |
経費精算に電子マネーを用いるメリット
経費精算に電子マネー決済を取り入れる主なメリットには以下が挙げられます。
- 小口現金などの現金管理の負担を軽減できる
- 現金の受け渡しを誤るリスクを軽減できる
- 使用履歴を確認できる
それぞれ詳しく紹介します。
小口現金などの現金管理の負担を軽減できる
従業員が立て替えた経費を会社が精算する経費精算業務は、件数が多く現金のやり取りや振込処理が必要になるなどの理由で、事務処理の大きな負担となりやすいでしょう。業務用にSuicaなどの電子マネーを用意して経費を電子マネーで決済すると、現金を精算する必要がなくなり、事務処理上の負担を軽減できます。
小口現金は金庫への保管など現物の管理や、帳簿と残高が一致しているかどうか確認が必須です。精算業務が多い場合、小口現金を出したり、入出金を把握して残高と帳簿の一致を確認したりといった手間が増えます。経費を電子マネー決済して精算が不要になれば、こうした現金管理の負担の軽減も可能です。
また、小口現金の管理は属人的になりやすい業務です。電子マネー決済で小口精算業務を減らせば、経理業務の属人化を防ぐことにもつながります。
小口現金管理が楽になる方法については、以下の記事を参考にしてください。
また本記事では、小口現金に関するガイドブックも配布しております。ぜひご覧ください。
【関連する無料ガイドブック】
▶ 面倒な作業から解放!小口現金管理の効率化ガイドブック
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
現金の受け渡しを誤るリスクを軽減できる
現金では、誤った金額をやり取りしてしまう懸念があります。また現金を扱う場合、盗難や紛失のリスクも少なからずあるでしょう。経費を電子マネー決済して精算が不要になれば、受け渡しのミスや紛失などのリスクがなくなります。
使用履歴を確認することができる
電子マネーは使用日時や場所、決済した金額をデータで確認できます。使用履歴を確認することで従業員の不正利用がないかチェックでき、もし領収書を紛失した場合にもある程度の予測がつくでしょう。
使用履歴は、電子マネーの会員専用Webサイトなどで確認できるように設定が可能です。簡単に一覧で管理できるため、現金精算にはない利便性があります。
電子マネーを経費精算に用いる際の注意点
電子マネー決済の導入は経費精算の業務効率化を図れますが、いくつか気をつけるべき点もあります。運用方法によっては、逆に経費精算業務を複雑化させてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
主な注意点は以下の3点です。
- 使用履歴を印刷しておく
- 都度計上かまとめての計上か統一する
- プライベート用とビジネス用で使い分ける
それぞれ詳しく解説します。
使用履歴を印刷しておく
電子マネーの使用履歴はデータを遡って確認できますが、紙に印刷しておくことが大切です。印刷により誰でも閲覧可能な状態にすることで、従業員の不正利用を牽制できるだけでなく、会計処理の際の根拠として残せます。
また、近年では税務調査で使用履歴の提出を求められるケースが増えており、その際に書面で提出する必要があります。SuicaやPasmoなどの交通系電子マネーは、使用履歴を券売機や駅窓口などで印字が可能です。
また、一部の電子マネーは管理ページから履歴を確認・印刷できます。税務署からの提出要請に備えて、定期的に印刷しておきましょう。
税務調査の準備をより詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
都度計上かまとめての計上か統一する
電子マネー決済の会計処理を取引の都度計上するか、まとめて計上するか統一しましょう。電子マネーを利用する機会が少ない場合は利用の度に経費処理を行うと良いですが、利用頻度が高い場合には、手間を省くために決算時にまとめて計上するのもおすすめです。
プリペイド方式の場合、チャージ時は仮払金として計上します。その後、電子マネー決済の度に仕訳を計上する方法と、次のチャージ時や決算時などに利用した分をまとめて計上する方法が選べます。しかし両者が混在すると、どこまで仕訳を計上したか確認する手間が増えて効率が悪くなるでしょう。
ポストペイ方式の場合は、一定の期間内に利用した金額が後日まとめて口座から引き落とされるため、利用した時と銀行口座から引き落とされる時の両方のタイミングで、経費処理を行う必要があります。そのためまとめて計上したい場合は、手間を減らすためにプリペイド方式を採用するのが良いでしょう。
まとめて計上する方法は事務処理上の手間が省ける一方で、適時に仕訳が計上されず、取引の実態をリアルタイムで帳簿に反映できません。また、まとめて仕訳を計上する場合は決算期がずれて計上しないように注意が必要です。
プライベート用とビジネス用で使い分ける
電子マネー決済はその気軽さや便利さから、経費とプライベート用で使い分けが曖昧になってしまう懸念があります。利用記録の中から、経費部分を抽出する作業は事務処理の負担となるでしょう。
負担を増やさないためには、事業用とプライベート用で利用する電子マネーを使い分けるといった対策が必要です。特に事業とプライベートのお金が混在しやすい個人事業主の場合は、意図的に分けるよう心がけましょう。
電子マネーの経費処理には経費精算システムの導入がおすすめ
経費精算の業務を効率化するツールに、経費精算システムがあります。電子マネー決済は、経費精算システムと連携し、自動的に使用履歴をシステムに読み込むことが可能です。紙の領収書による経費精算では、領収書を1枚ずつシステムに入力するなど事務処理上の負担がかかります。
TOKIUM経費精算ではクレジットカード明細や電子マネー、ETCなどのサービスと連携し、利用明細を自動で取り込み、そのまま経費登録が可能です。手入力が不要となるため、事務処理上の負担を軽減するだけでなく、申請時の金額や内容のミスも防げます。
また、事業用とプライベート用が混在している場合でも、手入力不要でプライベート利用分を除外できます。従業員が電子マネーで立て替えた経費を精算する方法でも、簡単に個人利用分を除外してデータを読み込めるため、事務負担を軽減できるでしょう。確定申告にかかる業務も効率化が期待できます。
電子マネーの経費処理や小口現金の工数でお困りの方は、ぜひ下記より資料をご覧ください。
▶︎ 機能や導入メリットがわかる!TOKIUM経費精算の資料をダウンロード
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
経費精算システムのメリットや比較ポイントについては、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
電子マネーを有効活用して経費精算業務を効率化しよう
近年、さまざまな電子マネーが普及し、多くの決済方法を選択できるようになりました。今後、業務においても利用する機会がますます増えるでしょう。
事前にチャージした電子マネーを業務用に利用すれば、小口現金の取引を削減でき、現金管理の負担を減らせます。また、従業員の不正や領収書紛失などのリスクを減らせる点もメリットです。
ただし、経理処理の方法やプライベートでの利用分が混在する懸念など、場合によっては効率が悪化することも考えられます。
経費精算システムを導入すれば、システム連携により電子マネーの利用履歴を自動で読み込めるため、入力の手間が省けて事務処理の負担を軽減できます。電子マネー決済を導入して経費精算業務の効率化を図りたい人は、ぜひシステムの活用もご検討ください。