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サラリーマンのスーツや車は必要経費になるの?ならないの?一度は疑問に思った事はありませんか?どう考えてもスーツは出勤するために必要な衣服であるにもかかわらず、会社の経費としては認められていませんよね。靴や仕事用のカバン、Yシャツやネクタイなど、仕事で使うものなのになぜ会社の経費として扱ってもらえないのでしょう?
結論から言いますと、サラリーマンのスーツは会社の必要経費ではありませんが、必要経費になるという考え方ができます。車はもともと資産に分類するものなので、経費ではありません。通勤や取引先への移動にかかるガソリン代、高速代などは経費になります。
サラリーマンのスーツや車と必要経費の関係について、いろいろと調べてみた結果から、必要経費になるという考え方についてご紹介していきたいと思います。ぜひ参考にしてください。
なお、経費で落とせるものの一覧については、以下の記事を参考にしてください。
1.サラリーマンのスーツや車が会社の必要経費になるのか?ならないのか?
冒頭でも申し上げました通り、サラリーマンのスーツは経費になるという考え方ができます。車は、車体代は資産扱いですので経費ではなく、ガソリン代や高速代などが経費扱いになります。
ですので車に関しては今回の記事内容の対象外となりますね。以降はサラリーマンのスーツに関しての情報をご紹介とさせていただきます。まずはサラリーマンのスーツが、会社の必要経費になるのかならないのかという観点で考えてみます。
a.必要経費になる場合
制服や作業服は必要経費になります。スーツを制服代わりとして、制服のように会社の更衣室に置いておき、私服で出勤してスーツに着替え、業務終了後、私服に着替えて帰るという完璧な構図があればスーツであっても経費として認められるかもしれませんが、その判断は会社によりけりというところでしょう。
実際に会社内ではスーツを制服のように着ているサラリーマンは見かけた事はありませんが、もし会社がスーツ代を必要経費と認めてくれるのであれば、可能性がないわけではないというところですね。
b.経費にならない場合
通常、サラリーマンのスーツは会社の必要経費として認められていないのが現実です。スーツじゃなければ売上が上がらないのか、と言われると一概には言えませんが、やはり身だしなみの観点から考えても売上に貢献するための、大事な要素の1つではあると思います。そう考えるとスーツは経費として考えても良さそうですよね。
ではなぜ、会社の必要経費として、サラリーマンのスーツ代は認められていないのでしょうか?うっすらお気づきの方もいるとは思いますが、会社の必要経費扱いにするには、業務用である事が証明できなければいけませんよね。会社経費である以上、会社の物なのですから私用として使うわけにはいきません。
スーツの場合、プライベートで着ている率と仕事で着ている率を毎日しっかり分けられるのか?と聞かれると、できなくはないかもしれませんが、誰もやらないですよね。仕事後にスーツのまま飲みにも行きますし、デートにも行くと思います。趣味の習い事に行く人もいるでしょう。
そう考えると、スーツは確かに仕事のために着ている物ではあるけれど、100%仕事だけで使っているわけではないわけです。そうなるとやはりスーツ代を会社経費にしてもらうという事は難しいと考えていいでしょう。
2.特定支出控除制度って何?始めからサラリーマンの必要経費が考慮されている?
さて、サラリーマンの必要経費について、現在の精度はどのようになっているのかを調べてみましたのでご紹介していきますね。関連する制度として特定支出控除制度がありますが、まずは予備知識として給与所得控除についてのお話から始めていきたいと思います。
スーツの話はどこへいっちゃったの?と思っているかもしれませんが、後ほど関連して出てきますのでご安心ください。
a.サラリーマンの特権!給与所得控除とは?
それに仕事に関する勉強のための本購入、英語を使う仕事なら英会話教室のレッスン代、接待ゴルフ。会社から習い事やゴルフに行って下さいと言われれば会社経費にもなりますが、自発的に、仕事につなげるために使っているお金は基本自腹ですよね。
そういうサラリーマン特有の、間接的に経費になり得るもの、とでも表現した方がわかりやすいでしょうか。そういった費用に一定金額までなら課税されないという制度が給与所得控除です。
収入により控除額は変わりますが、サラリーマンであれば給与所得控除の金額くらいあれば必要経費として足りるでしょう、という金額です。この金額を給与から引いて、税金計算をしているので、控除額分の税金がかかっていない事になります。要は始めからサラリーマンの必要経費が給与から引かれているのです。
この控除額の範囲内でスーツや靴やカバンなど、会社経費にはならないけれど、サラリーマンとして必要になる物を買ってくださいね、という事なんです。これはサラリーマンの方が、お金を使っても使わなくても、税金計算としては控除額を差し引いてから計算するという、とても有り難い制度なんです。
という事は、テーマに戻って、サラリーマンのスーツは必要経費になるの?という議題に対しての回答は、必要経費になる、という事になりますよね。しかも控除額は年収300万円の人で108万円。結構な金額です。控除分がなければ、その分多く課税される事になる訳ですから、実際に108万円を使っていない場合、とてもお得になっているという事になりますね。
しかし、この給与所得控除について、社会人になった時、または大学時代などの学生時代に誰か教えてくれたのでしょうか?もし知識として知っていれば、スーツはサラリーマンの必要経費として自分で買うもの、だって給与から引かれて税金計算されているんだし。と納得すると思うんですよね。給与明細の内容についても新入社員時代にその見方などをきちんと教えてくれる会社は少ないのが現状で、知らない人の方が多いのではないでしょうか。
参考文献:No.1410 給与所得控除/国税庁
b.特定支出控除制度とは
サラリーマンのスーツは経費になる!という話題に関連する話として、特定支出控除制度の話が出てきます。
平成25年度以降、新しく認められた項目があり、その中に仕事で着る衣服代が入っているので、スーツは経費として認められた!という事になっているのでしょう。
特定支出控除制度を簡単に説明すると、給与所得控除の半分よりも多く自腹で必要経費を払った場合、半分の金額を超えてしまった分を所得から差し引いて税金計算しますよ、という制度です。
ただし、給与所得控除の半額は結構な金額です。年収300万円の人で給与所得控除額は108万円。その半分なので54万円を年間で使った場合、使った金額から54万円を引いた残額を所得から控除するという事になるんですよね。
この控除を受けるには、会社からの証明が必要であったり、確定申告をしなければいけなかったりと、手続き自体は面倒な感じがしますし(会社が内容を証明してくれなければ申告できない)、使った金額が戻ってくるわけではなく、あくまで税金計算の控除の1つという事になるだけなので、実用的なのかどうなのかは人によりけりなのでしょう。
もし給与所得控除の半額以上の必要経費を使ったという場合は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献:No.1415 給与所得者の特定支出控除/国税庁
3.そもそも経費とは?節税とは?根本から見直してみよう
今回は必要経費になるかならないかをいろいろと調べてきましたが、そもそも必要経費とは一体何なのでしょう?
そんなの知っているでしょ、という方がほとんどだと思いますが、今一度、必要経費の概念をおさらいし、節税についても根本から見直していく事で、今回のケースを考え直してみましょう。
a.必要経費とは
ご存知の通り、必要経費とは会社の経営上、売上を上げるために必要になる支払の事ですね。給料を始めとした交通費、交際費、消耗品費、通信費など、簿記上の費用扱いに分類される支払の事です。
売上を上げるために必要になる支払、という意味で言えば、サラリーマンのスーツは仕事上で着る仕事服のようなもの。制服とまではいかなくても一般的な身だしなみ、社会人のマナーとしてスーツを着ている人はとても多いですよね。
b.サラリーマンの必要経費とは
先程、給与所得控除の中で、サラリーマンの必要経費はすでに考慮されているというお話しをしましたが、そもそもサラリーマンの必要経費とは何なのでしょう?
交際費や交通費、通信費など、仕事上でかかる経費のほとんどは、領収書と一緒に申請すれば100%会社で精算してもらえますよね。それ以外で必要となる経費には何があるでしょうか?
今回のテーマでもあるスーツ代、ガソリン代、高速代など、仕事でも使うかもしれないけど、プライベートでも使っているよねという部類に入る物で他に考えられる物は、Yシャツ、ネクタイ、靴、カバン、腕時計、手帳やかっこいいボールペン、名刺入れ、必要な人はペンタブとかでしょうか。
仕事に関連する書籍代、仕事で必要な語学のレッスン代、忘年会や新年会を始めとした会社の飲み会の参加費、休日の接待ゴルフなど。
毎年、全てのスーツや靴やカバンを買い替える必要はないと思いますし、年収が300万円の人でも108万円の給与所得控除があるわけですから、サラリーマンの必要経費としては十分なのではないかと思いませんか?
逆に給与所得控除以上の自腹を切って経費を払っているのであれば、会社に請求できる領収書があるかどうかの見直しや、支払っている経費が本当に必要なものなのかどうかの見直しをした方がいいような気がします。
どのみち、サラリーマンの経費として特定支出控除制度を利用し確定申告をするのであれば、会社からの証明が必要になる訳ですから、会社が証明できるものであれば会社経費にできる物もあると考えるのが普通でしょう。特定支出控除制度を利用し、確定申告で申請したところで、何パーセントかの節税になるかもしれないものに比べ、会社経費扱いされれば100%戻ってきますから、どちらが得なのかと考えると、後者ですよね。
c.節税とは
節税とはその名の通り、税金を節約する事ですね。税金を節約すると一言で言っても、要するにどういう事?と思う方もいらっしゃるでしょう。まず税金は会社であれば利益に、サラリーマンであれば所得に対して税率をかけ、算出します。
今回はサラリーマンの節税に焦点を当てて考えてみると、給与-給与所得控除-その他の所得控除=課税所得となり、課税所得に税率をかけて所得税が計算されるわけです。という事はこの課税所得が少なくなれば、所得税も少なくなり、節税になるという方程式が成り立ちますね。
そして、給与所得控除は個人的に金額は変えられませんので、節税にアプローチできるところはその他の所得控除という事になります。これに今回の記事でご紹介している特定支出控除制度がありますよ、というお話しなのですが、ここまでの記事を読んでいただいてなんとなく察しがつくと思います。
特定支出控除制度がサラリーマンの節税につながるものなのか、というと無理があるでしょう、という答えになりますよね。よっぽど給与所得控除の半分の金額を超える範囲で、自腹で必要経費を支払い、会社からも証明をもらえて尚且つ、確定申告もきちんとやるというのであれば、確かに課税所得は減りますので結果いくらかの節税になるでしょう。
しかし使った出費の方がはるかに痛いですよね。それなら特定支出控除制度ではなく、別の節税対策に目を向けるか、給与所得控除の金額内で、できるだけお金を使わない方がよっぽどいいのではないかと思ってしまいます。サラリーマンは始めから給与所得控除で節税状態になっている訳ですから、有り難くあやかりましょう。
4.まとめ
サラリーマンのスーツや車は必要経費になるのか、ならないのか、について節税を含めて調べた結果をご紹介しましたがいかがでしたか?車に関しては冒頭で話題の対象から外してしまいましたが、スーツが経費になるという考え方についてはいかがでしたでしょうか。
経理上、必要経費扱いにするしない、該当する勘定科目の振り分けに関しても、必ずきっちりとどの会社もどの個人事業主も全く同じという事はないと思います。一定の法則こそ簿記や会計で振り分けるにしろ、業務内容や会社での捉え方などで多少グレーな部分があるのは仕方がない事でしょう。
サラリーマンのスーツが必要経費になる、ならないについての考え方も、もしかしたら全く違う考え方の人もいるかもしれません。あなたはどう思われますか?
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