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DXの実現にはペーパーレス化が避けられません。一方で、やり方によってはかえって業務が不便になってしまうケースも起こり得ます。そのため、ペーパーレス化が非効率化を生み出す場合の原因と解決方法について把握しておくことは、DXを実現させる上で不可欠です。
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この記事では、ペーパーレス化の推進において不便が生じるケースや、その原因と解決策を紹介します。「思ったようにペーパーレス化が進まない」「ペーパーレス化は意味ないのでは」と考えているDX担当者は、ぜひ参考にして下さい。
ペーパーレス化とは?
DXを実現する上でペーパーレス化は主要な指標の1つです。ここではなぜペーパーレス化が推進されているのか、その背景やペーパーレス化によって企業が得られるメリット、必要性を解説します。
ペーパーレス化が推進されている背景
ペーパーレス化が推進されている背景には、次のような社会情勢の変化があります。
- DXの推進
ペーパーレス化が推進されている大きな要因の1つが、政府が主導するDXの推進です。DXとは業務のデジタル化を進めることにより、新たな商品の開発や新規事業を創出し、競合他社との差別化を図るための取り組みを指します。そしてデジタル化に欠かせないのがペーパーレス化です。
- リモートワークの普及
多様な働き方の実現に向けた、リモートワークの導入はもはや当たり前となりつつあります。そして、リモートワークを普及させるポイントとなるのがペーパーレス化です。帳票管理や資料作成・閲覧などを時間・場所を問わず可能にするには、ペーパーレス化が必須です。
- 電子帳簿保存法、インボイス制度による業務の煩雑化
電子帳簿保存法の改正により、多くの帳票やビジネス文書の電子保存がしやすくなりました。また、インボイス制度の導入により経理担当者の負担は大幅に増加しているため、効率化を進める上でもペーパーレス化が欠かせません。
- SDGsなど環境配慮への意識の高まり
ペーパーレス化を推進することで、紙の使用量を減らせます。その結果、SDGsが掲げる「つくる責任、つかう責任」の実現につながります。
以上のような社会情勢の変化に合わせてペーパーレス化を推進することで、企業の競争力強化や企業意識の高さの提示が可能です。
参考:経済産業省|DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)(2024年)
ペーパーレス化によって得られるメリット
ペーパーレス化の推進により、企業が得られる主なメリットは次の4点です。
1. コスト削減
ペーパーレス化を実現すれば紙や印刷代、郵送代に加え、保管場所にかかるコストを削減できます。
2. 柔軟な働き方の推進
ペーパーレス化により時間・場所を問わず文書の作成や閲覧が可能になれば、わざわざオフィスに出向く手間がなくなり、柔軟な働き方の実現が可能です。
3. 業務効率化
デジタル文書は紙文書に比べて検索しやすいため、必要な書類を探す手間が軽減します。また紛失リスクも減り、メンバー間ですぐに共有できるのも大きな利点です。
4. セキュリティ強化
デジタル文書は詳細な閲覧制限を設定できるため、紙文書の物理的保管に比べ、セキュリティ強化にもつながります。
ペーパーレス化のメリットについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧下さい。
ペーパーレス化を不便に感じるケース
ペーパーレス化には多くのメリットがあるものの、適切に推進しないとかえって業務が不便になりデメリットを感じてしまう場合があります。ここでは具体的にどのような場合に不便さを感じてしまうのか、以下のケース別に解説します。
- 従業員のITリテラシーが低い
- 移行段階にかかる手間が負担になっている
- 紙のように直接書き込むことができない
- 解像度が低く、視認が難しい場合がある
従業員のITリテラシーが低い
ペーパーレス化を成功させるには、従業員に一定のITリテラシーが必要です。もしITリテラシーの低い従業員が多い場合、次のようなケースに陥ってしまう恐れがあります。
- システムやツールの操作方法が分からず業務が滞ってしまう
ペーパーレス化を進めるためのシステムやツールを導入したものの、操作方法を理解できず、デジタル文書の処理業務自体がうまく遂行できないケースです。
- ペーパーレス化のメリットを理解できておらず紙にこだわってしまう
ITリテラシーが低い人は多くの場合、ペーパーレス化のメリットを理解できていません。そのため、わざわざこれまでの業務フローを変えることがただ面倒なだけに感じてしまい、紙文書での業務から移行が進まないケースが考えられます。
システムやツールの操作方法が分からない、ペーパーレス化のメリットが理解できないなどの理由から、ペーパーレス化に反対してスムーズな進行が困難になる懸念があります。
移行段階にかかる手間が負担になっている
ペーパーレス化を不便に感じる理由として、紙からデジタルへの移行にかかる手間が負担になり、思ったように進まないケースも起こりかねません。
紙からデジタルへ移行するには、システムやツール、デバイスの導入にかかる手間が発生します。それに加え、さらに手間がかかるのが取引先への周知です。
自社がスピーディーにペーパーレス化を進められても、取引先から紙の請求書しか受け付けないと言われれば、一部では紙の業務が残ってしまいます。
移行の期間も含め、紙とデジタルの業務を並行して行うのは担当者にとって大きな負担であり、不便に感じてしまうポイントです。
紙のように直接書き込むことができない
単純に紙文書をデジタル化するだけでは、かえって不便になってしまう場合があります。それはデジタル文書に紙文書のような柔軟性が欠ける点です。
例えば、紙文書であれば気になった点にマーカーを入れる、メモ書きをする、付箋を貼るといったことが気軽に行えます。しかしデジタル文書の場合、専用のデバイスやアプリを利用するなどの対策や環境の整備が必要です。
そのため、単純に紙をデジタル化しただけでは紙の方が柔軟性が高く使いやすいと感じてしまい、ペーパーレス化が進まなくなるケースも起こり得ます。
解像度が低く、視認が難しい場合がある
デジタル文書を閲覧するデバイスによっては書類の解像度が低くなり、内容を確認するのが困難になることも、ペーパーレス化を不便に感じるポイントです。
また外出先で資料を閲覧する際、通信環境によっては読み込みが遅かったり、画像が表示されなかったりといった場合もあります。
他にもデバイスのスクリーンの大きさによっては、内容を確認するために都度ズーム・ズームアウトやスクロールを繰り返し行わなければなりません。そういった動作が煩わしさにつながってしまい、ペーパーレス化が不便に感じてしまうのです。
ペーパーレス化を不便に感じる原因
ペーパーレス化により生じる不便を解消するには、根本的な原因・問題点の把握が必要です。ここでは主な3つの原因についてそれぞれ解説します。
- 適切なデバイスを揃えられていない
- 書類の管理方法が統一されていない
- 通信環境の制約を受けている
適切なデバイスを揃えられていない
ペーパーレス業務に必要となる適切な環境が整備されていないと、ペーパーレス化がかえって不便を生じてしまう場合があります。
ペーパーレスで業務を進めていくには、書類を閲覧するのに適切なデバイスや、管理するシステムなどの準備が欠かせません。デジタル文書を閲覧するシステムとしては、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを従業員に不足なく、かつ利用方法の教育も含めた準備が必須です。
そのうちの1つでも整備されていないと、デジタル文書の運用に不便が生じ、ペーパーレス化がかえって業務の非効率化につながってしまうでしょう。
書類の管理方法が統一されていない
デジタル文書の管理方法が統一されていない場合、業務が混乱する要因となり、ペーパーレス化に不便が生じてしまいます。
紙文書であればファイリングやラベルの貼付で管理しますが、デジタル文書の場合はクラウド上で管理をするため、新たなルールの策定が欠かせません。特に起きやすいのは次の3点です。
1. 書類やフォルダの名称設定がばらばら
例えば、ある部署では年号を西暦表示、ある部署では和暦表示になっている。「株式会社」「(株)」のように表記が統一されていないなど、書類やフォルダの名称が明確に定まっていないとデジタル文書のメリットでもある検索のしやすさが活かせません。
2. 書類の種類ごとに格納するファイル分けがされていない
書類の種類ではなく、期間でファイルを分けて請求書や領収書を保存している、部署別にファイルが分かれているなど、明確なルールでファイリングされていないのも問題です。複数のルールが混在していると、どこに何を格納すべきか分からず作業が煩雑になります。
3. 書類のファイル形式が統一されていない
ある書類はPDF、ある書類はExcelのように、ファイル形式が統一されていないのもペーパーレス化を不便なものにする原因の1つです。書類によってファイル形式がバラバラになっていると、都度確認した上で作成する手間が増え、不便に感じてしまいます。
通信環境の制約を受けている
デジタル文書の作成・閲覧・管理は基本的に全てWeb上で行います。そのため、スムーズな運用を実現するには安定したネットワーク環境が大前提です。
通信環境が劣悪な場合、デジタル文書を保管しているクラウドへのアクセスも困難になり、業務そのものが成り立たなくなる恐れがあります。
オフィスだけでなく外出先や自宅でも安定した通信が利用できない場合、ペーパーレス化を不便に感じてしまうでしょう。
その他、ペーパーレス化に関する課題については、以下の記事をご覧下さい。
ペーパーレス化による不便を防止する方法
ペーパーレス化による不便を解消し、業務を快適かつ効率的に進めるコツとして次の4つのポイントを理解、実践する必要があります。
- ペーパーレス化のメリットの教育
- 適切なIT環境の整備
- 書類管理についてのルールを策定する
- 段階的に実施する
ペーパーレス化のメリットの教育
従業員に対してペーパーレス化によるメリットを教育します。ペーパーレス化により業務負担がどの程度軽減されるのか理解できれば、従業員の意欲が増し、ペーパーレス化がスムーズに進む可能性が高まるでしょう。
ペーパーレス化を行う理由を理解していないと、業務プロセスが変わることや導入にかかる手間で不安や不満ばかり溜まってしまい、思ったように推進できません。まずは従業員に対し、ペーパーレス化のメリットを教育することが大切です。
適切なIT環境の整備
デジタル文書を快適に作成・閲覧するには、デバイスやネットワークなどIT環境の整備も欠かせません。
また、ペーパーレスの導入から定着までの段階で、どれだけのデバイスが必要になるのか、ネットワークの増強が必要なのか事前に確認・把握しておくことも重要です。
移行段階で普及スピードを落とさないためにも事前に計画を立て、予算を組んでおくことでスムーズに導入できる可能性が高まります。
書類管理についてのルールを策定する
ペーパーレス化のメリットを最大限に生かすには、デジタル文書の管理に関するルール策定も必要です。
部署やチームにより、ファイル名や管理方法が統一されていないとデジタル文書のメリットである検索のしやすさが活かせません。基本的にデジタル文書はクラウド上で保管・管理を行うため、文書名やファイル名のルールを統一しておかないと、検索性が低下してしまいます。
部署やチームごとではなく会社全体で共通のルールを策定することで、誰でも簡単に目的の文書を見つけやすくなり、業務効率化につながるでしょう。
デジタル文書のファイル名をルール化する際のポイントについては、以下の記事をご覧下さい。
段階的に実施する
ペーパーレス化を実現させるには、段階的に進めるのも効果的です。紙からデジタルへの移行は業務プロセスを変えるだけでなく、従業員のマインドセットも求められます。
そのため、一気にペーパーレス化を推し進めてしまうとついていけない従業員も出てきてしまい、混乱が生じる恐れがあります。
業務内容によりペーパーレス化を進めやすい部署から導入し、成功体験を重ねながら徐々に拡大していくことで従業員も順応しやすくなり、無理なく導入できるでしょう。
適切にペーパーレス化を進めるために
電子帳簿保存法による電子保存の義務化やIT技術の進化が影響することで、ペーパーレス化は今後さらに拡大していくことが予想されます。不便が生じているためにスムーズなペーパーレス化が実現できていない場合は、早急な対応が欠かせません。
そのためには、ペーパーレス化で不便が起きている原因を明確にし、適切な対応をしていくことが重要です。この記事で紹介した解決策を参考にぜひ、スムーズなペーパーレス化を進めていきましょう。