電子帳簿保存法

領収書はメールで送れる?具体的な方法と注意点を徹底解説

更新日:2024.08.23

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近年、作業のデジタル化により業務の効率化を図ることが推奨されています。自社におけるペーパーレス化やシステム導入を進める中で、取引先や本社宛の領収書をメールで送付したいと考えている企業も少なくないでしょう。

本記事では、領収書をメールで送付する場合のメリット・デメリットや送付方法の種類、領収書を送る際のメール文例などについて解説します。領収書をメールで送付するために必要な情報を把握するために、ぜひお役立て下さい。

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領収書はメールで送付できる?

領収書をメールで送付すること自体は、法的に問題ありません。また、領収書にはレイアウトやフォーマットの指定はなく、税務処理に必要な事項が網羅されていれば領収書として認められます。

電子帳簿保存法に従う必要がある

領収書のメール送付では、電子帳簿保存法(電帳法)における規定に注意が必要です。電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類の全てまたは一部について、データ保存を可能とする法律です。対象の書類には領収書も含まれており、領収書をメールで送付、保存する際には「電子取引」の要件に沿う必要があります。

書類のデータ化に関する規則は、随時アップデートされるため、最新情報については国税庁のホームページで確認しましょう。

なお、メールで送付、もしくは受領した領収書の電子データを、紙に出力して保存している場合には注意が必要です。従来は、電子データを紙の保存に替えて良いとされていましたが、2022年の法改正以降は原則禁止となりました。

2024年1月以降も猶予措置は続いていますが、基本的にはメール添付された領収書のデータはデータのまま保存する必要があります。

電子帳簿保存法に対応した領収書の保存法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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領収書をメールで送付するメリット

領収書を紙媒体から電子データのメール送付へ変更することで、さまざまなメリットが期待できます。ここでは、領収書をメール送付する主なメリットについて解説します。

印紙代がかからず、コスト削減に繋がる

領収書をメール送付する大きなメリットとして、コスト削減が挙げられます。従来のように書面の領収書をやり取りする場合、用紙代やインク代、取引先に送る際の封筒代や郵送代、作業をする人の人件費といった多くの費用が発生します。

1つずつは少額でも、取引が多いほど金額が積み上がり、年単位での負担は大きくなるでしょう。領収書を電子データ化し、メールに添付して送れば、印刷や郵送の費用をカットできる上、作業効率が高まり人件費の削減にもつながります

また、紙の領収書では、受領金額が5万円(税別)以上の場合、金額に応じた収入印紙を貼り付けることが定められています(印紙税法基本通達第44条)。しかし、電子データの領収書なら印紙税がかからないため、大幅なコスト削減につながります。

保存・管理しやすい

領収書を電子データ化することで、紙の書面が不要となるため、管理の効率が向上します。紙の領収書は量が増え続けるため、保管するためのスペースが増えていきます。また、過去の領収書を探すのに時間と手間がかかるでしょう。

一方、電子データ化した領収書をメールでやり取りする場合、データが手元に保存されるため、保管場所は不要です。また、共有フォルダやデータベースで一元管理ができ、業務負担の軽減につながります。

領収書の保管・整理方法について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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必要なときにすぐ見つけられる

紙媒体から電子データへ移行することで、検索性がアップします。紙の領収書は、適切に保管されていないと保存場所がわからず、必要な情報にたどり着くまでに時間を要します。

領収書をPDFなどのデータに変換し、まとめて保存しておけば、検索機能で瞬時に探すことが可能です。送信日時や内容などを履歴から簡単に検索でき、業務効率性がアップするでしょう。

テレワークに対応できる

紙媒体の領収書は、郵送作業や印刷、ファイリングなどの作業があるため、出社を余儀なくされます。また、過去のデータを参照したい場合でも、保管場所に自ら出向くか、誰かに頼んで確認してもらうことになります。

一方、領収書をメール送付する方法なら、オフィスに出社せずに領収書の発行や送付が可能です。テレワークや自宅勤務にも対応しやすく、働き方の多様化を促すことにもつながります。

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領収書をメール送付するデメリット

領収書のメール送付では多くのメリットが見込まれますが、デメリットもあります。ここでは、領収書をメールで送る際に考えられるデメリットについて具体的に見ていきましょう。

作業工数が増加する可能性がある

電子データ化した領収書をメール送付する際、運用方法によっては工数が増える可能性があります。PDFなどにした領収書データの内容やファイル添付の方法、メール本文、宛先といった項目を1つずつ確認した上で送付しなければなりません。

また、紙の領収書を扱う取引先が残る場合、メール送付の取引先との仕分けが必要になり、作業が煩雑化しやすいでしょう。さらに、添付ファイルにパスワードを設定するなど、管理の工数が増えて負担になることも考えられます。

セキュリティ上のリスクがある

領収書には機密情報が記載されており、メールでやり取りする際には、十分なセキュリティ対策が求められます。パスワードの設定は有効な方法の1つですが、そのパスワードが記載されたメールが流出する、あるいは第三者にのぞき見されるといったリスクが存在します。

従来までは、暗号化したパスワード付きの圧縮(Zip)ファイルをメールに添付し、解凍用パスワードを別メールで送信する「PPAP」という手法が主流でした。しかし、問題点が多く指摘されており、近年は廃止へと進んでいます。

そのため、PPAPでの対策は取引先によっては嫌がられる可能性があるので、他の対策方法を検討しておくと良いでしょう。

領収書を電子化してメールで送る方法

領収書を電子データ化してメールで送る方法には、いくつかの種類があります。ここでは、主な4つの方法を紹介します。

スキャンして取り込む

紙の領収書を、複合機やスキャナ、デジタルカメラ、スマートフォンなどを使ってPDFに変換し、ファイルをメールに添付する方法です。受け取った側が領収書の内容を読み取れるよう、鮮明な画像になっているか確認しましょう。

ただし、複数の領収書をまとめてスキャンすると、1つのPDFファイルとして出力される可能性があるため注意が必要です。解決方法としては、個別でスキャンするか、編集で1つずつに分割します。

また、スキャンしたデータを領収書として利用するためには、電子帳簿保存法で定められた「スキャナ保存」の適用要件を満たす必要があります。スキャナ保存には「200dpi以上の解像度」「タイムスタンプの付与」といった具体的な要件が細かく決まっているため、よく確認して活用しましょう。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度に関してより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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WordやExcelで作成する

WordやExcelは、ビジネスでよく使われるツールであり、領収書を作成する際にも使えます。ただし、WordファイルやExcelファイルの領収書は編集できてしまうため、改ざんを避けるためにもPDF化して送信することを推奨します。

WordやExcelには、PDF化する機能が標準装備されていることが多く、すぐに対応できるでしょう。また、ソフトやOSバージョンなど使用環境によっては文字化けして読み取れない可能性もありますが、PDFならWebブラウザで閲覧できます。

ただし、1通ずつ領収書データを作成することになり、領収書の数が多い場合は膨大な時間がかかる点に注意が必要です。

専用のシステムやツールで作成する

領収書を作成できるソフトや経理会計システムを使って、電子データ化してメール送付する方法も有用です。専用システムで作成し、そのままメールで送信できる上、送付履歴も自動保存されるため管理が容易になります。

また、一括送信などの便利な周辺機能が使えるものも多く、領収書の送受信とデータ管理の一元化によって、業務効率化が進みます。導入費用や保守費用などのコストが発生する可能性がありますが、自社に合ったものを選ぶことで費用対効果は高まるでしょう。

領収書代わりになるメールを送る

メール本文に、領収書に記載する内容をそのまま転記してメールを作成、送信する方法もあります。必要な項目をメール本文に記載し、領収書としての要件を満たしていれば、書面やPDFでなくても領収書として認められます。

また、受領したメールの本文は書き換えができないため、原本の保証に役立ちます。ただし、「受取側の設定で迷惑メールに振り分けられる」「自動で削除される」「メールアドレスが複数人で使われている」といったケースもあるため、事前に確認が必要です。

領収書をメールで送付する際の記載項目

メールの文章に領収書の内容を記載して送付する場合、必要な情報を全て網羅している必要があります。ここでは、領収書メールの記載事項について説明します。

発行者の氏名または名称

領収書を発行する側の企業名や、個人事業主の氏名などを記載します。必須とはされていませんが、一般的には発行者の住所や電話番号も併記します。

取引年月日

商品・サービスの取引をした日付を記載します。西暦と和暦はいずれでも問題ありませんが、社内の表記ルールとして統一しておくとスムーズです。

但し書き(取引内容)

但し書きや取引内容として、商品・サービスの名称を明確に記載します。複数の商品を購入した場合は、「(一番高額な商品の名称) + 他」といった記載で問題ありません。

ただ、領収書でよく見られる「お品代」は抽象的であり、正当性が認められない可能性もあるため避けた方が無難です。また、電子発行の場合は、商品名やサービス名に加えて、商品コードや取引番号も記載するのが望ましいでしょう。

金額

商品・サービスの税込金額を金額欄に記載します。改ざん防止のため、金額の先頭に「¥」や「金」、末尾に「-」や「也」を付けるのが一般的です。また、金額が4桁以上の場合は「,」(カンマ)で桁を区切ります。

宛名

領収書の宛名となる取引先の企業名や個人の氏名を記載します。略称や名字だけでなく、正式名称を記載し、敬称として企業名には「御中」、個人名には「様」を付けます。

税率ごとの消費税額(課税事業者の場合)

課税事業者がインボイス(適格請求書)として領収書を発行する場合、税率ごとに区分した合計額と消費税額を記載します。また、税抜もしくは税別も併せて明記します。

適用税率は10%(標準税率)と8%(軽減税率)がありますが、原則として10%が用いられ、食品や消耗品費などには8%が適用されます。領収書の記載項目の適用税率を確認した上で、正しく記載しましょう。

適格請求書発行事業者の登録番号(課税事業者の場合)

課税事業者がインボイス(適格請求書)として領収書を受け取った場合、消費税の仕入税額控除を申請できます。インボイスとして認められるためには、適格請求書発行事業者の名称(または氏名)と登録番号が必要です。

課税事業者の登録番号を取得するためには、税務署へ申請が必要なため、早めに準備しておきましょう。

メールに領収書を添付して送信する際の文例

領収書をメールで送信する場合、メール本文は紙で郵送する際の送付状の役割を果たします。メールに領収書を添付して送信する際の、メール文例を紹介しますので、参考にして下さい。

【件名】◯月分領収書送付のご連絡(添付書類1通)

【本文】

株式会社〇〇〇 △△部

〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社▽▽▽▽の〇〇です。

「×××」のお支払いに関して、〇月〇日付でお振込を確認いたしました。

お忙しいところ迅速にご対応いただき、誠にありがとうございます。

つきましては、領収書を添付させていただきますので、ご査収のほどよろしくお願いいたします。

添付内容:×××領収書(PDF)1通

ご不明点やファイルを開封できないなどの不都合がございましたら、

お手数ですが〇〇までお問い合わせ下さい。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

—————————————————

株式会社▽▽▽▽ 〇〇部

〇〇 〇〇〇

TEL  :00-1234-5678

E-MAIL : xxxyyy@zzzz.co.jp

—————————————————

領収書をメールで送付する際の注意点

領収書をメールで送付する際の注意点を紹介します。領収書の電子データ化やメール対応を導入する前に確認しておきましょう。

取引先に確認する

領収書をメールで送付する前に、取引先が電子データの領収書を受け付けているか確認し、承諾を得ておく必要があります。「領収書は紙で保存する」など企業がルールを設けている場合、電子データの領収書を受け取ってもらえない可能性も考えられます。

トラブルを避けるためにも、領収書をメールで送付して問題ないか事前に確認を取ることが大切です。また、領収書の書式など相手の要望も聞いておくとスムーズに対応できます。

印鑑の必要性と押印方法について

印鑑の押印が必要かどうかも取引先に確認しておく必要があります。領収書への押印は慣習であり、義務ではないため省略しても問題はありません。ただ、中には「印鑑付き領収書のみ受け付ける」といった社内ルールを設定している企業もあります。

スムーズなやり取りのためには、押印のあるものをメール添付する方法が確実でしょう。紙の領収書に押印したものを複合機やスキャナで取り込めば、電子データ化することが可能です。

一方、最初からデータとして作成した領収書では、画像ファイルの印影を用いて押印できます。ただし、セキュリティ面を考慮して、識別情報付きの電子印鑑を用いるのが望ましいでしょう。

誤送信に注意する

メールの誤送信には特に注意が必要です。領収書のような重要な書類を誤った宛先に送ってしまい、大きなトラブルに発展する可能性も否めません。メールを送信する前に宛先や本文、添付ファイルをよくチェックしてから送信ボタンをクリックしましょう。

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領収書のメール送付で業務効率化を進めよう

法的には、領収書をメールで送付することは問題ありません。紙の書面からメール送付が可能な電子データに移行することで、コストの削減や保存・管理の効率化、多様な働き方への対応といった多くのメリットが期待できます。

一方で、作業工数の増加やセキュリティ性の確保といった課題も考えられます。また、領収書のメール送付を開始する前に取引先へ連絡し、電子データでも問題ないか確認しておくことが重要です。

電子データでも問題がなければ領収書のメール送付を積極的に導入し、業務効率化を進めましょう。

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