インボイス制度

インボイス制度における立替金精算書の役割と活用法を詳しく解説

更新日:2024.08.22

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インボイス制度の開始に伴い、「立替金精算書」というキーワードを目にする機会が増えた人もいるでしょう。立替金精算書の役割や経費の立替などに使うインボイスの扱いについて、正しく理解できていないと、消費税の仕入税額控除を利用できない可能性があります。

本記事では、立替金精算書の概要から必要なケース、記載要件など細かな点まで詳しく解説します。立替金精算書の交付事例も紹介しますので、立替金精算書に関わるインボイス制度の正しい知識を得るためにお役立てください。

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立替金精算書の基礎知識と役割

そもそも、立替金精算書とはどのような目的で使用する書類なのでしょうか。まずは、立替金精算書の基礎知識と、インボイス制度における位置づけについて説明していきます。

立替金精算書とは

立替金精算書の「立替金」とは、取引先である企業や自社の従業員が支払うはずの代金を、企業が代理で支払うことです。

立替金が発生した場合に、後で正式に精算するために発行されるのが立替金精算書です。

例えば、契約上は取引先が支払うことになっている配送料や手数料を、一時的に自社が支払った場合は立替金が発生しています。

上記のようなシチュエーションで、取引先の代わりに自社が支払ったお金を回収するために立替金精算書が必要です。

なお、企業側が支払うべき経費を従業員が代わりに支払う場合は、立替経費という言葉が用いられます。例えば、企業から出張時の移動費が支払われるところ、従業員が代わりに支払う場合は立替経費に該当します。立替経費の場合も企業が仕入税額控除を受けるために、立替金精算書が必要になるケースがあります。

経費精算の概要、インボイス・簡易インボイスの書き方について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

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インボイス制度における立替金精算書の役割

2023年10月に正式にスタートしたインボイス制度では、売り手から交付されるインボイス(適格請求書)がないと、買い手は消費税の仕入税額控除を受けられない決まりです。消費税の仕入税額控除は、消費税の二重課税を防ぐ目的があり、売り手は売り上げにかかった消費税額から仕入や経費分の消費税額を差し引いて納税できます。

事業主にとっては消費税の納税負担を軽減でき、国にとっては消費税の過剰納付を防止できる、といったメリットがあります。ここで、買い手が消費税の仕入税額控除を利用するためには、売り手から買い手に交付されたインボイスが必要です。

立替金が発生した場合、消費税の仕入税額控除を申請するために注意したいのが宛先となる事業者名です。立替者に対して発行されたインボイスの宛名(書類の交付を受ける事業者の名称)が、仕入税額控除を受ける側の事業者名と異なる場合、仕入税額控除の要件を満たさないため申請ができません。

例として、A社が支払うべき代金をB社が代わりに支払い、仕入先はC社と仮定します。この場合、C社が発行するインボイスはB社宛となり、本来の支払者であるA社は消費税の仕入税額控除を利用できないことになります。

そこで、B社はA社宛ての立替金精算書を交付し、インボイスのコピーと併せてA社へ送付します。A社は受領した立替金精算書とインボイスのコピーを保管することで、消費税の仕入税額控除の適用を受けることが可能です。

なお、国税庁のQ&Aでは、仕入のインボイスが多い場合、立替者側で保管することを前提としてインボイスのコピーの添付は不要としています。

立替金精算書のみで支払者が仕入税額控除を受けるためには、仕入先がインボイス発行事業者であるかどうかを明記する必要があります。加えて、仕入先の事業者名や登録番号、各適用税額の区分など、仕入税額控除を利用するために必要な情報も漏れなく記載しましょう。

立替金精算書が必要な場合・不要な場合

インボイス発行事業者は、立て替えてもらった経費で仕入税額控除の適用を受けるには、立替者から立替金精算書の交付を受けなければなりません。立替金精算書を受領し保管することで、仕入税額控除の適用を受けられます。

ここでは、立替金精算書が必要なケースと不要なケースについて具体的に解説します。

取引先が仕入先へ支払う分を自社で立替払いしたケース

取引先が仕入先に支払うはずの代金を、自社が立替払いしたケースでは、仕入先が発行したインボイスの宛先が取引先ではありません。そのため、自社は立替金精算書をインボイスのコピーと併せて取引先へ送付することで、取引先は消費税の仕入税額控除を申請できます

そのため、取引先が適格請求書発行事業者で、自社が代金を支払った場合は、自社が立替金精算書を作成し取引先に渡す必要があります。反対に、自社が適格請求書発行事業者で、代金を取引先に支払ってもらった場合には、取引先が交付した立替金精算書を受領しておく必要があります。

ただし、仕入先や経費の支払者が多い時や、インボイスのコピーは困難であると認められた時は、例外的に対応できる可能性があります。この場合、該当するインボイスを各自で受領・保管することを前提とした上で、立替金精算書だけで消費税の仕入税額控除を利用できます。

従業員が経費を立て替えたケース

企業の経費を従業員が一時的に支払ったケースでは、インボイスの宛先は従業員名であって、企業宛でないことがあります。例えば、従業員がインターネット通販で業務関連の備品を購入した場合や、個人のクレジットカードで支払いをした場合などです。

従業員宛のインボイスでは、原則として消費税の仕入税額控除が適用されないため、立替金精算書を持って対処する必要があります。

一方、従業員が経費を立て替えた場合でも、立替金精算書が不要になるケースもあります。例えば、企業宛に発行されたインボイスがある場合、インボイスだけで消費税の仕入税額控除を利用できます。

また、従業員が受け取ったのが簡易インボイスの場合も同様に、立替金精算書は不要です。さらに、次の段落で解説する簡易インボイスでは、交付先の事業者の氏名や名称を記載しなくて良いため、宛先が企業でなくても消費税の仕入税額控除を受けられます。

簡易インボイスが適用されているケース

簡易インボイス(適格簡易請求書)とは、一般的なインボイスよりも簡略化された記載が認められているインボイスです。タクシー業や旅行業をはじめ、不特定多数に対して販売やサービス提供を行う事業者が発行できます。

飲食店やスーパー、コンビニなどでの会計で発行されたレシートや領収書でも、必要な事項が記載されていれば簡易インボイスとして扱え、また手書きのものでも問題なく利用できます。

簡易インボイスは、交付を受ける事業者の氏名や名称の記載は必須ではないため、立替金精算書は求められません

立替金を支払う取引先が免税事業者のケース

立替払いをする取引先、つまり立替金を受け取る事業者が免税事業者の場合は、立替金精算書の作成や交付は任意になり、各社の規定によって変わってきます。

ただし、免税事業者は消費税の支払い義務がなく、インボイスを交付することもできません。

よって、消費税の仕入税額控除の対象とはならないため、インボイスの作成は不要です。

立替金精算書の作成方法

立替の証拠となる記載要件を満たして立替金精算書を作成する必要があります。ここでは、立替金精算書の作成方法を紹介します。

インボイス制度に対応した立替金精算書の書き方

立替金精算書には、決められたフォーマットや書式はありません。ただ、立替金請求書は相手に代金の支払いを依頼するために必要な文書です。消費税の仕入税額控除を受けるためには、立替が行われたことの裏付けとなるように記載することが求められます。

そのため、インボイスの記載要件をもとに、必要な項目を記載していきます。次の段落で、立替金精算書の記載要件について詳しく解説します。

立替金精算書の記載要件

立替金精算書の記載要件は、以下の通りです。

  • 適格請求書発行事業者の登録番号と名称

仕入先の会社名や住所、担当者名と、適格請求書事業者の登録番号を必ず記載します。

  • 課税資産の譲渡などを行った詳細な年月日

取引があった年月日について、立替金精算書では代金の立替をした日を記載します。インボイス上の取引年月日を参照することも可能です。

  • 課税資産の譲渡などに係る資産などの詳細な内容

どの取引に対して立替払いを行ったか詳細を記載します。記載ミスを避けるために、インボイスを見て転記すると良いでしょう。

  • 税率ごとに区分されている課税資産の譲渡などの合計額および適用税率

立替金精算書では、税率ごとの合計額および適用税率を分けて記載します。消費税率は、標準税率の10%と軽減税率の8%の2つです。インボイス制度では事業者の納税を正確かつスムーズに行うため、適用税率を必ず記載する必要があります。

  • 税率ごとに区分されている消費税額など

標準税率と軽減税率それぞれの合計額に対して、消費税の合計額を算出して記載します。標準税率と軽減税率の両方を含む複数の取引をまとめて記載する際には、混同しないよう注意しましょう。

  • 書類の交付を受ける事業者の氏名・名称

立替金を受け取る側、つまり立替金精算書を受領する側の情報も必要です。事業者の名称や担当者名を記載しましょう。

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立替と立替金精算書の具体的な事例

ここからは、立替金精算書の交付事例を見ていきましょう。立替払いがある場合の立替金精算書の交付や利用について、より具体的にイメージするために役立つケースを紹介しますので、参考にしてください。

ビル管理事業者・各テナント・公共料金事業者間の取引のケース

ビル管理事業者とビルに入居する各テナント、そして公共料金事業者間の取引のケースを取り上げます。各テナント(A社)が支払うことになっている公共料金を、ビル管理事業者(B社)が代わりに公共料金事業者(C社)に支払い、後日各テナントからお金を回収することがあります。

この場合、C社はB社を宛先としたインボイスを発行します。そこで、立替金精算書の原則としては、A社が消費税の仕入税額控除を受けるためには、A社が宛先となった立替金精算書をB社に交付してもらう必要があります。

しかし、立替を受けた者へのインボイスのコピーが大量になるなどの理由で、インボイスの交付が難しい場合、B社はC社から交付されたインボイスを受領、保存することで立替の保証が可能です。よって、A社はB社が作成した立替金精算書の受領、保存をもって、仕入税額控除のための保存要件を満たすとみなされます。

なお、B社は立替払いについて、適格請求書発行事業者からの仕入なのか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入なのかを明確にしておく必要があります。また、立替金精算書に適用税率ごとの区分や日付などの情報を適切に記載することも重要です。

適格請求書発行事業者は、発行したインボイスの写しと、提供したインボイスの電磁的記録(電子インボイス)を保存する義務があります。発行したインボイスの写しと言っても、必ずしも原本のコピーである必要はなく、インボイスの記載内容が確認できる程度の情報が記載されていれば問題ありません。

例えば、適格簡易請求書を発行するレジのジャーナルや、インボイスの内容をまとめた一覧表や明細表などの保存でも要件を満たします。

出張や消耗費の購入に際して、従業員が立替を行ったケース

出張や消耗費の購入に際して、従業員が立替を行い、後日精算するケースです。出張の移動費や会社で使用する文房具などを従業員が立替払いした場合、従業員宛のインボイスを受領してしまうと、会社側はそのインボイスを用いて消費税の仕入税額控除を行うことはできません。

会社側での手続きをスムーズにするためには、従業員は基本的に会社宛ての立替金精算書を交付してもらう必要があります。ただし、従業員個人のインボイスしか受領できなかった場合は、インボイスだけでなく立替金精算書をもらい、セットで保存することで仕入税額控除の申請要件を満たすことが可能です。

なお、適格請求書発行事業者がインボイスの代わりに電子インボイスで対応した場合は、電帳法(電子帳簿保存法)に準じた方法で当該インボイスを保存すれば、消費税法における要件を満たします。

データ保存では、請求書フォーマットなどが視覚的に確認でき、記載内容がわかる程度であれば十分とされています。ただし、電帳法では、取引に関する記載事項を含む電子データを保存し、モニター画面や紙に速やかに出力できるようにしておく必要があります。

また、インボイスの記載事項は、1つの書類単体にまとまっている必要はなく、複数の書類や電子データを組み合わせることでも仕入税額控除の要件を満たすことが可能です。ただし、それらの書類や電子データの関連性が明確で、取引内容が正確に把握できるよう配慮されている必要があります。

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立替金精算書を適切に交付してインボイス制度に対応しよう

インボイス制度では、事業者名が記載されたインボイスを受領、保管することが、消費税の仕入税額控除を受ける必須条件です。立替金精算書は、仕入時などの代金を立替払いする場合に、交付されたインボイスが立替であると証明するための書類です。

適格請求書発行事業者の場合、立替をした事業者からインボイスのコピーと立替金請求書を組み合わせて受領、保管しなければ、仕入税額控除を受けられないため注意しましょう。ただし、簡易インボイスが適用されるケースや立替を受けた事業者が免税事業者の場合は、立替金精算書は必要ありません。

立替金に関するインボイス制度を十分に理解するためには、自社や取引先で立替金精算書が必要かどうかを事前に確認し、適切に対応することが重要です。

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