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業務効率化や環境保護などの見地から、請求書をPDFファイルにして取引先に送ることでペーパーレス化の導入を検討している企業もあるでしょう。しかし、ペーパーレス化にはさまざまなメリットがある反面、熟慮して取り組まないと、思わぬ不都合が出てくることもあるので注意が必要です。そこで今回の記事では、請求書のペーパーレス化によるメリット、デメリット、導入手順を解説します。
そもそもペーパーレス化とは何か
そもそも、ペーパーレスとは紙(paper)をより少なく(less)することを意味します。例えば、請求書の場合、紙に印刷して郵送するのではなく、メールやクラウドシステムなどを経由し、データ形式で請求書の送付・受領を行います。
2020年に入り大流行した新型コロナウイルス感染症により、請求書のペーパーレス化は急速に進みました。感染拡大防止の観点から、他人との接触機会を減らすために導入されたテレワークとの親和性が高かったためです。他にも、ペーパーレス化には業務の効率化、コスト削減などのメリットがあります。
請求書のペーパーレス化における法律の要件を確認
電子帳簿保存法の要件を満たせば、請求書はデータ保存が可能です。主に以下の3つの分野にわたり要件が定められていますが、より細かい要件があり、くまなく満たす形で保存することが求められています。
- 電子帳簿保存の保存要件
- スキャナ保存の保存要件
- 電子取引の保存要件
また、データとして請求書を保存する場合でも、5~7年は保存することが義務付けられています。要件を満たす形での長期間の保存が求められるため、保存業務やコスト面などに課題を感じている企業も多いのが実情です。
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請求書をペーパーレス化するメリットとは
請求書のペーパーレス化には、さまざまなメリットがあります。ここでは以下の4点について詳しく解説します。
コスト削減につながる
ペーパーレス化は、コスト削減にも効果的です。請求書を紙で発行して郵送した場合、用紙代や封筒代、郵送代などの費用が必要です。1通単位では大した金額ではないように思えますが、1年を通して考えると大きなコストになるので決して軽視できません。
ペーパーレス化が実現すれば、大幅なコスト削減につながるでしょう。特に、2024年10月1日からは郵便料金が値上げされるため、今まで以上にコストがかかる以上、ペーパーレス化は優先して取り組むべき課題といえます。
管理しやすい
ペーパーレス化により、請求書が管理しやすくなるのも大きなメリットです。紙の請求書は会社や年度ごとに分けてファイリングなどして保管しなくてはいけません。そのため、ある程度のスペースが必要であるうえに、数が多くなると探す時に時間がかかったり、請求書の紛失・破損につながったりする可能性が出てきます。
一方、請求書をデータで管理しておけば、スピーディに検索できるうえに、紙のように紛失・破損する心配もありません。また、保管スペースを設けなくて済むのでオフィスが広くなくても対応できます。
テレワーク対応が可能
請求書のペーパーレス化により、テレワーク対応が可能になります。従来のように、紙の請求書を取り扱うためには出社する必要がありました。データから請求書を印刷し、確認したうえで封入・発送するという作業はテレワークでは難しい部分があるためです。そのため、他の部署ではテレワークを導入しているのに、請求書を扱う部署は出社という不平等な扱いも起こり得ます。
しかし、ペーパーレス化してデータの請求書をやり取りできる状態にすれば、テレワークをしている従業員も自宅から請求書業務をこなせるのが大きなメリットです。
再発行・修正が容易
再発行・修正が容易になるのも、請求書をペーパーレス化するメリットです。紙の請求書の場合、再発行や修正が必要になったら該当箇所を探してデータを修正し、再度郵送する準備をしなければいけません。取引先に修正後の請求書が到着するのはどれだけ早くても翌日以降になります。
しかし、ペーパーレス化すれば、検索機能などを活用することですぐに請求書を見つけて修正、再発行をし、その場で取引先に送ることが可能です。間違いのないことが一番ですが、間違った場合でも迅速な対応ができるようになるでしょう。
請求書のペーパーレス化によるデメリットを解説
請求書のペーパーレス化にはさまざまなメリットがある一方、デメリットもあるので詳しく解説します。
導入・運用コストがかかる
請求書をペーパーレス化する場合、電子帳簿保存法に準拠しているなど、一定の基準を満たすソフト、システムが必要です。導入にはコストがかかるほか、利用するソフトやシステムによっては継続的な費用の支払いが必要になります。相見積もりを取ったうえで比較検討し、費用面・機能面で問題かを見極めながら進めましょう。
事前準備が必要
新しくソフトやシステムを導入する場合、事前準備が不十分だと、既存のデータが消える可能性があるので注意しなくてはいけません。これまでのデータが全部消えるなど、取り返しのつかない事態に陥ることも十分考えられます。このような事態を避けるためには、事前準備として以下の対策を検討しましょう。
- 記憶媒体を使ってバックアップデータをとる
- クラウドサービスを利用してクラウド上にバックアップをとる
法律の要件を満たさなくてはいけない
前述したように、請求書をペーパーレス化し、データで保存するためには、電子帳簿保存法が求める「真実性」と「可視性」の2要件を満たす形で進めないといけません。そのためには法律への正しい理解や継続して運用するための体制構築が必要です。具体策として以下のようなものが考えられますが、より詳しくは外部の専門家に聞きながら対応するのが望ましいでしょう。
- 社内規定を整備する
- タイムスタンプに対応したシステムを導入する
取引先に理解してもらう必要がある
請求書のペーパーレス化を進めることを、取引先に理解してもらう必要があります。取引先にも受け入れ体制を整えてもらわなくてはいけないからです。
請求書のペーパーレス化に取り組む前に、取引先に相談する必要があります。対面で相談したり、案内文を送付したりといった対応を検討しましょう。ペーパーレス化でのやりとりに難色を示した取引先に関しては、特別に引き続き郵送対応をするのも選択肢です。
ペーパーレス化を進める方法は2つある
請求書のペーパーレス化といっても進める方法はさらに細かく分類できるので、以下の2つの方法を紹介します。
方法1:書面をスキャンする
1つ目は紙の請求書をスキャナなどで読み取ってデータ化し、保管する方法です。自社内にスキャナもしくはスキャナ機能がついた複合機があれば進められますが、解像度や色調などについて、法律の要件が設定されているので注意が必要です。専用システムを導入した方が効率化につながりやすいかもしれません。
方法2:電子データの請求書を受け渡しする
2つ目は、紙でやりとりせず、電子データの請求書をやり取りする方法です。分かりやすい例を出すと、WordやExcelで作成した請求書をPDF形式で保存し、メールやチャットに添付して送ることが考えられます。ただし、検索機能、保存上の措置などについて法律の要件が決められているため確認が必要です。
請求書のペーパーレス化に取り組む際の注意点とは
請求書のペーパーレス化に取り組む際は、さまざまな注意点を意識しなくてはいけないため、詳しく解説します。
取引先に相談する
まず、取引先に請求書のペーパーレス化に取り組むことを伝えましょう。対面もしくは案内文での伝達が一般的です。併せてデータ化した請求書を受け取った時に必要な対応や保存要件なども周知する必要があります。
セキュリティ対策が不可欠
請求書のペーパーレス化には、セキュリティ対策が欠かせません。データのやり取りには、セキュリティリスクがつきものであるためです。必要に応じて自社のセキュリティ対策を見直しましょう。具体策として、以下の方法が考えられます。
- アクセス権限、セキュリティ方法の厳格化
- 暗号化などデータ自体のセキュリティ強化
- 保管期限の管理
- 文書管理システムを活用した不要なデータの廃棄
万が一、情報漏えいの問題が発生した場合の対応方法なども事前に決めておくことが望ましいです。
段階的に導入する方法もある
一気にペーパーレス化に取り組むと現場の負担になる可能性があるので注意が必要です。請求書以外の業務も同時並行で動いていくことになる以上、無理にペーパーレス化を進めたことで他の業務の質が落ちてしまっては本末転倒です。
段階的にペーパーレス化に取り組むのも1つの手段といえます。例えば「年内に社内規定を見直す」「導入すべきシステムをピックアップする」など範囲を決めて、少しずつ移行を進めていきましょう。請求書業務に関与する従業員の理解度を確かめながら進めるのも重要です。
ペーパーレス化に取り組む手順を解説
請求書も含め、企業においてペーパーレス化に取り組む手順を詳しく解説します。
手順1:目的の明確化
まず、目的を明確にしましょう。ペーパーレス化の目的によって、導入すべきシステムなどが変わってきます。目的の具体例として考えられるのは以下のようなものです。
- コストを削減したい
- 業務効率を改善したい
また、自社でペーパーレス化を完結するのか、他社のシステムを利用するのかも検討する必要があります。自社での完結も難しくありませんが、目的次第では他社のシステムを利用した方が効率的です。
手順2:運用体制の見直し
ペーパーレス化をする目的が明確になったら、運用体制の見直しに移ります。
自社完結にしてもシステム導入にしても、今までにない運用が求められることから、運用体制を見直す必要が出てくるためです。具体的には、以下の課題が生じます。
- システム導入後の人員配置を検討する
- 運用マニュアルを作成する
重要なのは、導入時だけでなく、継続して問題なく業務を続けられる体制を整えることなので意識しましょう。
手順3:取引先への連絡
請求書をペーパーレス化することを取引先に伝えましょう。ただし、取引先によっては難色を示したり、「紙の請求書以外は受け取らない」旨を伝えてきたりする可能性があります。このような場合、まずは受領側のメリットも併せて伝えるなどの対応をしてみましょう。伝え方次第で納得してくれるケースもあるので、試してみる価値はあります。
しかし、どうしても納得してもらえない場合は、取引先に応じて柔軟に対応しましょう。考えられる対応のパターンとしては、以下のようなものがあります。
- ○月○日までは紙の請求書を発行する
- 今後も従来通り紙の請求書を発行する
なお、この段階でペーパーレス化が難しいと回答する取引先があまりに多かった場合は、ペーパーレス化そのものを見直す必要が出てきます。早い段階で連絡を済ませ、できるだけ多くの取引先から前向きな意見をもらえることが望ましいです。
手順4:紙の取引先の対応を検討
取引先への連絡が一通り終わった時点で、紙の請求書の発行が必要な取引先のリストを取りまとめましょう。そのうえで、自社でできる対応を検討し、業務を円滑に進められる体制を整える必要があります。
手順5:改ざん防止対策の検討
請求書を含めた書類の改ざんは、企業の信頼性や事業活動に甚大な影響を及ぼすトラブルです。電子帳簿保存法の要件を満たし、法的に有効な書類にするためにも、改ざん防止対策を検討する必要があります。具体例をいくつか紹介しましょう。
- タイムスタンプを付与できる体制を整える
- 電子署名サービスを利用する
事前準備をしっかりして請求書のペーパーレス化に取り組もう
請求書を含めた書類のペーパーレス化は、業務の効率化やコスト削減、テレワーク対応という意味で非常に有意義です。しかし、導入には相応の費用や時間がかかるうえに、取引先の理解や法律の要件の充足が求められます。自社で完結させること自体、可能ではありますが、専用システムを導入した方が効率的、効果的に進められる可能性が高いケースも多いでしょう。
TOKIUMインボイスの強みは、電帳法の要件を満たすシステムであることです。また、取引先への変更案内なども代行できるため、担当者の負担を軽減できます。請求書を含めた書類のペーパーレス化をお考えでしたら、ぜひ一度お問い合わせ下さい。