請求業務

内部統制監査とは?実施の流れや要点、報告書の記載内容も解説

更新日:2024.08.08

この記事は約 5 分で読めます。

内部統制 監査

上場企業は内部統制を行い、その有効性を評価した結果を内部統制報告書に記す必要があります。そして作成した報告書をもとに、公認会計士や監査法人など外部の監査人による内部統制監査が行われます。

内部統制監査は内部統制が有効に機能し、健全かつ効率的な業務が行えているかどうかを、外部の第三者が確認することです。この記事では、内部統制監査の概要やポイント、監査の流れ、報告書の記載内容などを解説します。

また、2024年4月1日開始事業年度より適用される監査実施基準の改訂内容についても紹介します。是非最後までご覧ください。

【関連する無料ガイドブック】
▶ 請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

内部統制監査について

まずは内部統制監査の概要と、混同されやすい内部監査・会計監査との違いを見てみましょう。内部統制監査・内部監査・会計監査は、それぞれ実施する主体、監査対象が異なります。実施に向けて明確に違いを知っておく必要があります。

内部統制監査とは

内部統制監査は、企業が作成した「内部統制報告書」の内容が適正かどうか、外部の監査人である監査法人や公認会計士が監査することです。ひと通り監査が完了すれば「内部統制監査報告書」にまとめて企業へ渡します。企業は「内部統制報告書」と「内部統制監査報告書」を併せて金融庁へ提出しなければなりません。

内部統制監査は、全ての上場企業に義務付けられています。そのため、これから上場を予定している企業も内部統制を構築し、監査を受けるための体制を整える必要があります。

内部監査・会計監査との違い

内部監査とは、企業内部の独立した組織が企業の目的を達成するために、適切かつ効率的に業務を実施しているかどうかを監査することです。内部監査では財務報告に係る内部統制だけでなく、さまざまな内容を監査します。

一方で内部統制監査は、企業とは独立した第三者の立場である監査法人や公認会計士などの監査人が、財務報告に係る内部統制を監査します。内部統制監査は「外部の独立した立場からの監査」である点が内部監査とは異なり、主な目的は外部の利害関係者の利益を守ることです。

また会計監査では、外部の監査人が財務諸表の内容が適正であることを監査します。内部統制監査と財務諸表監査は、外部の独立した監査人による監査である点では共通していますが、監査の対象が異なります。

請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策

内部統制監査の目的

内部統制監査の主な目的は、企業が財務報告に係る内部統制を適切に構築・運用しているかどうか外部の監査人が監査・報告し、その情報をもとに投資家などの利害関係者が正しく意思決定できるようにすることです。

加えて、内部統制監査には以下のような目的もあります。

  • 業務効率の向上
  • モニタリングによる不正の防止

それぞれ解説します。

業務効率の向上

内部統制監査の目的の1つは、事業の効率性を高めることです。

内部統制監査では内部統制の有効性を評価するため、もし不備があれば企業は対策を講じなければなりません。上場企業にとって内部統制監査は義務ではありますが、監査を通して結果的に業務効率性や業績の向上が期待できます

モニタリングによる不正の防止

内部統制の主な目的のもう1つは、事業活動に関わる法令や規則などを遵守することです。内部統制監査では、企業が事業活動に関わる法令や規範を遵守していることを確認し、もし不備があれば対策を講じることになるでしょう。

法令を遵守することで不正をはじめとしたさまざまなリスクを防ぎ、社会的信用の失墜や予期せぬ損害の発生を防ぎます。不正が起きると金銭的な損失や信用力の低下など、事業活動に大きな影響を与える懸念があるため、不正のリスクを防ぐためには長期目線で継続して内部統制を評価することが重要です。

内部統制監査報告書とは

内部統制監査報告書とは、監査人が内部統制監査を実施した結果、企業の財務報告に係る内部統制が有効に機能しているかどうか結論を表明する文書です。内部統制監査報告書の記載内容と、内部統制報告書との違いを解説します。

内部統制監査報告書の記載内容

内部統制監査報告書は、会社名や代表者の氏名の他に以下の事項を記載します。

  • 監査意見
  • 監査意見の根拠
  • 監査上の主要な検討事項
  • 内部統制報告書に対する経営者や監査役、監査役会の責任
  • 内部統制監査における監査人の責任
  • 利害関係

監査法人の監査結果は「監査意見」と呼ばれ、以下の4種類に分かれます。

1. 無限定適正意見

一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、適正に表示しているという結論。

2. 限定付適正意見

一部において適切ではない部分があるものの、総合的に判断して報告書は適正であるという結論。一部の不適切部分は、監査報告書の中で開示される。

3. 不適正意見

適切でない部分があり、総合的に判断して報告書は適正ではないという結論。不適正とする理由は監査報告書の中で開示される。

4. 意見不表明

重要な監査手続が実施できなかったため、監査意見が表明できないという結論。意見を表明しない理由は監査報告書の中で開示される。

参考:『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(p28〜30)』(2023年)

内部統制報告書との違い

内部統制報告書と内部統制監査報告書は、作成する主体と監査対象が異なります。

まずは企業が自社の内部統制の有効性を評価して、結果を「内部統制報告書」に記載します。その後、企業の評価結果をもとに外部の監査人が内部統制を評価・検証の上、作成する書類が「内部統制監査報告書」です。

監査する対象が「財務報告に係る内部統制」の有効性である点は共通していますが、内部統制監査報告書は企業の評価内容について監査することが目的です。

内部統制報告書の詳細については以下の記事でも解説しています。

関連記事
内部統制報告書とは?義務付けられている企業や作成の流れを解説
内部統制報告書とは?義務付けられている企業や作成の流れを解説

内部統制監査におけるアサーションとは

外部の監査人による内部統制監査では、内部統制が以下の6つのアサーション(監査要点)を満たしていることを確かめます。

  1. 実在性
  2. 網羅性
  3. 権利と義務の帰属
  4. 評価の妥当性
  5. 期間配分の妥当性
  6. 表示の妥当性

監査ではそれぞれのアサーションを脅かすリスクと、リスクに対応する内部統制が構築・機能しているかどうか評価します。以下で各アサーションの概要を見てみましょう。

参考:日本公認会計士協会『監査要点(アサーション)

1. 実在性|資産や取引が実在・発生しているか

実在性では資産や負債が実際に存在していること、取引や会計事象が本当に発生していることを確かめます。実在性は、他の5要素の前提ともいえます。

実在性を確認するための内部統制の例は、以下の通りです。

  • 現金:現金や通帳などの現物を確認し、帳簿との一致を確認する
  • 預金:銀行から残高証明書を取り寄せ、預金残高と帳簿との一致を確認する
  • 売掛金:取引先へ残高の確認を行い、残高と帳簿との一致を確認する
  • 棚卸資産:実地棚卸に立ち会い、正確にカウントしていることを確認する
  • 借入金:銀行から残高証明書を取り寄せ、借入残高と帳簿との一致を確認する

2. 網羅性|資産や取引は全て正しく計上されているか

網羅性とは計上すべき資産や負債、取引、会計事象が全て帳簿上記録され、財務諸表に反映されていることです。

網羅性を確認するための内部統制の例には、以下が挙げられます。

  • 現預金:銀行から残高証明書を取り寄せ、全ての預金が帳簿に計上されているか確認する
  • 棚卸資産:実地棚卸に立ち会い、帳簿に計上されていない在庫がないことを確認する
  • 売掛金・買掛金:取引先へ確認し、計上漏れがないことを確認する
  • 借入金:銀行から残高証明書を取り寄せ、全ての借入金が帳簿に計上されているか確認する

3. 権利と義務の帰属|資産・負債に対する権利・義務が会社に帰属しているか

権利と義務の帰属とは、財務諸表に計上されている資産に対する権利、負債に対する義務が企業に帰属していることです。

権利と義務の帰属を確認するための内部統制の例は、以下の通りです。

  • 棚卸資産:実地棚卸に立ち会い、倉庫に自社製品ではない預かり在庫がないことを確認する
  • 無形固定資産:特許権などが自社の権利であることを登録書類などで確認する

4. 評価の妥当性|資産・負債が適切な価格で計上されているか

評価の妥当性とは、財務諸表上、資産や負債を適切な価額で計上していることを指します。

評価の妥当性を確認するための内部統制の例は、以下の通りです。

  • 棚卸資産:商品の評価の妥当性を確認するため、劣化した商品の評価減を検討する
  • 売掛金:回収状況を確認し、貸し倒れや売り上げ取り消しの可能性を確認する
  • 有価証券:時価評価など、会計基準に沿った適切な評価がされているかどうか、評価減の必要性を検討する
  • 貸付金:回収状況を確認し、貸し倒れの可能性を確認する
  • 有形固定資産:遊休資産や休止固定資産の有無、評価減の検討、廃棄すべき固定資産がないか確認する

5. 期間配分の適切性|収益や費用は適切な期間で計上しているか

期間配分の適切性とは、取引や会計事象が適切な金額で帳簿に記録されていること、そして収益と費用が適切な期間に配分されていることです。

期間配分の適切性を確認するための内部統制の例には、以下が挙げられます。

  • 売り上げ:期末日前後の売り上げ伝票や出荷報告書などを閲覧し、来期の売り上げであるにもかかわらず、当期の売り上げとして計上していないことを確認する
  • 売り上げ原価:期末日前後の売り上げ原価の伝票を閲覧し、適切なタイミングで原価が計上されていることを確認する
  • 経費:期末日前後の請求書などをもとに、適切な時期に経費が計上されていることを確認する

6. 表示の妥当性|財務諸表に表記している項目が正しいか

表示の妥当性とは、取引や会計事象を適切に表示していることです。表示の妥当性を確認するための内部統制の例は、以下の通りです。

  • 借入金:1年以内に返済される予定の借入金が流動負債に計上されているか確認する
  • 関係会社に対する債権・債務:表示が適切かどうか確認する

加えて、適切な注記が記載されていることも併せてチェックします。

内部統制監査の流れ

内部統制監査は、企業が内部統制報告書を作成してから、監査人がその内容を監査します。内部統制監査の一連のフローは、以下の通りです。

  1. 監査の対象となる内部統制の範囲を把握
  2. 企業全体の内部統制が適切に整備・運用されていることを評価
  3. 決算・財務報告や各業務プロセスの内部統制が適切に機能していることを評価
  4. 把握された不備に対する対応・評価
  5. 不備の集計と「開示すべき不備」に当たるかどうか判断
  6. 内部統制報告書を作成
  7. 内部統制報告書をもとに外部の監査人が監査
  8. 内部統制報告書と内部統制監査報告書を公表

基本的にはまず企業が内部統制の整備・運用状況を評価し、その結果を内部統制報告書に記載します。その内容をもとに監査人が内部統制の整備、運用状況を監査するという流れです。

2024年4月から内部統制監査の実施基準が改正

内部統制監査の監査基準・監査実施基準は2023年4月に改訂が公表され、2024年4月以降の事業年度から適用が開始されています。

主な改訂・追記内容の例としては以下が挙げられます。

  • 内部統制の目的の1つである「財務報告の信頼性」が、非財務情報を含んだ「報告の信頼性」に変更
  • 不正リスクへの評価・対応が重要である旨が明記
  • 内部統制の評価範囲の見直し。範囲を決定する際に「売り上げの概ね3分の2」といった基準を機械的に適用すべきでない旨の追記
  • 内部統制報告書において記載すべき事項の追加
  • IT活用に関してセキュリティの確保が重要な旨の明記

企業は基準の改訂にともない、監査法人と協議の上、適切な対応をとる必要があります。内部統制実施基準の改訂に関しては以下の記事でもまとめているので、参考にして下さい。

関連記事
【2024年最新】内部統制の実施基準が改訂!重要項目を徹底解説
【2024年最新】内部統制の実施基準が改訂!重要項目を徹底解説

内部統制監査業務を効率化するには

上場企業や上場を予定する企業にとって、内部統制監査の取り組みは必須です。内部統制監査はまず企業が内部統制を構築・運用・評価した上で、外部の監査人の監査も受けなければならず、企業の負担は大きいといえます。

内部統制の課題を解決するためには、有効な内部統制を構築できるシステムやツールの導入が効果的です。支出管理プラットフォームTOKIUMでは、有効な内部統制を構築すると同時に、セキュリティやコンプライアンスを強化します。

資料は無料でダウンロードできるので、比較検討の際にはぜひ参考にして下さい。

▶︎料金や機能・導入メリットがわかる【TOKIUMの資料をダウンロード】
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

【関連する無料ガイドブック】
▶ 請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティコンプライアンスの課題と4つの解決策
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティ・コンプライアンスの課題と4つの解決策
請求書支払業務を取り巻く内部統制・セキュリティ・コンプライアンスの課題と4つの解決策
支出管理プラットフォーム「TOKIUM」がすぐわかる 3点セット

関連記事