電子帳簿保存法

PDF化した契約書のやり取りの有効性とやり方とは?注意点も解説

更新日:2024.08.23

この記事は約 6 分で読めます。

働き方改革の推進により、多くの企業がペーパーレス化に取り組んでいます。さまざまな書類をPDF化することで、業務効率化や多様な働き方の実現につながります。

ただし、契約書のPDF化にはルールがあり、場合によっては契約書が持つ証拠力が弱くなってしまう可能性があります。契約書のPDF化を検討している人は、電子帳簿保存法の知識を深めて正しい方法で行いましょう。

今回は、PDF化した契約書のやり取りの有効性とやり方について詳しく解説します。PDF化するデメリットと注意点にも触れるため、ぜひ最後までご覧下さい。

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PDFファイルにした契約書でも問題ない

契約書の形式は、書類でもPDFファイルでも問題ありません。

契約書は、あくまで契約成立の事実や条件を形として残すためのものです。本来、契約は当事者同士の合意で成立するため、契約書を必ず作成しなければならないという決まりはありません。

書面の契約書をスキャナ保存してPDF化することにも法律上の規制はなく、ペーパーレス化の一環として実施することが可能です。ただし、契約書を証拠として用いるためには、法律上の効力の観点について把握しておく必要があります。

法律上、PDFファイルは準文書に該当します。準文書は原本に比べて証拠力が弱いことが特徴です。契約書をPDF化する場合は証拠としての法的効力が損なわれないように注意しましょう。

電子帳簿保存法の要件を満たさないと、有効性は認められない

契約書の有効性を担保するには、電子帳簿保存法の要件を満たした状態で保管する必要があります

電子帳簿保存法とは、仕訳帳・総勘定元帳・売掛帳などの国税関係帳簿書類のデータ保存に関わる法律です。有効性を認める要件として、「入力期間の制限」「タイムスタンプの付与」「解像度200dpi以上」などが挙げられます。

電子帳簿保存法に対応せずに不正や改ざんが行われた場合、法律違反となり過料が科せられる恐れがあるので注意が必要です。

電子帳簿保存法のスキャナ保存、電子帳簿保存法対応システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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契約書をPDF化する方法

契約書をPDF化する方法は、「スキャナ保存」「電子契約サービスの利用」の2種類です。以下では、それぞれのやり方と証拠力の違いを詳しく解説します。

方法1:スキャナを使って紙の契約書をPDF化する

一つ目は紙の契約書をスキャナで取り込んでPDF化する方法です。

契約書に記載されている内容を正確に取り込むために、あらかじめ付箋や留め具を外しておきます。スキャナ保存は、書類の数が多いと事務作業に手間がかかる場合があります。準備が整ったら、電子帳簿保存法の要件を確認し、不備のないようにスキャンしましょう。

ファイル形式に決まりはないものの、PDFを用いるケースが多く見られます。管理のしやすさを考えて、ファイル形式は統一しましょう。

PDF化した契約書のデータは、原本のコピーという位置づけになります。原本である紙の契約書に比べて、法的証拠力が劣る可能性があるでしょう。

方法2:電子契約サービスを利用して契約を締結する

二つ目は電子契約サービス上で契約を締結する方法です。PDF形式の契約書を用いて契約を締結するため、紙の契約書を残したり契約書をスキャンで取り込んだりする手間がかかりません。契約に関する業務がワンストップで完結します。

PDF形式の契約書を用いて契約を締結した場合、データ自体が原本となります。契約書のデータを紙に印刷して保管する必要はなく、PDF形式の契約書に電子署名とタイムスタンプを付与することにより、紙の契約書と同じように法的証拠力が担保されます。

電子契約サービスにはさまざまな種類があり、提供形態や対象となる従業員の規模がそれぞれ異なります。特徴や料金プランを比較して、自社にメリットが大きいサービスを利用しましょう。

契約書をPDF化した場合のメリットとは

契約書のPDFは、契約業務を行う担当者だけでなく企業全体にもメリットがあります。

ここでは、契約書をPDF化した場合のメリットを5つ紹介します。

ペーパーレスが実現する

電子契約サービスを利用して契約を締結する場合、ペーパーレスが実現します。ペーパーレスは事務コストの削減につながるため、企業にとって大きなメリットです。

契約書のPDF化によって削減できる主なコストは、下記の通りです。

  • 紙代
  • 印刷代
  • 郵送代
  • 収入印紙代
  • 契約書の封入にかかる人件費

PDF形式の契約書は、瞬時に送信できるため郵送にかかる手間とコストがかからなくなります。電子契約には収入印紙の貼付が不要であるため、収入印紙代も削減できます。

さらに、紙の燃焼量を削減できるため、環境保全にも効果的です。

ペーパーレス化についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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業務効率が良くなる

契約書をPDF化すると、契約作業における工数が省略されて契約業務を行う担当者の業務効率が良くなります

紙の契約書で契約を締結する場合、下記の工程が必要です。

  • 契約書の作成
  • 印刷
  • 内容確認
  • 署名捺印
  • 取引先へ交付

原本2通を取引先に郵送し、1通は内容確認と署名捺印をして返送してもらいます。不備があれば、その分契約の締結に時間がかかります。

一方、PDF形式で契約書を締結する場合、契約書の作成が完了次第、メールやクラウドサービスを利用してリアルタイムで送受信できます。契約締結までの期間も短縮できるため、双方にとって大きなメリットと言えるでしょう。

工程がシンプルになれば、取引先とのやり取りで起こる人的ミスも防ぎやすくなります

管理の負担が軽減する

契約書の管理の負担を大幅に削減できるのも、PDF化するメリットの1つです。

紙の契約書は、後から契約内容の確認が必要となった場合に手作業で探さなければなりません。取引先や年度別に保管していても、取引件数が多ければ見つけるまでに手間と時間がかかります。

PDF形式であれば、ファイル名から簡単に検索が可能です。破棄するタイミングや更新日を通知してくれる電子契約サービスもあるため、保存期間や契約内容の管理がしやすくなります。管理の負担が軽減すれば、業務効率化と人件費の削減効果も期待できるでしょう。

また、紙の契約書を保管するスペースも不要になります。キャビネットが置かれている場所を有効活用すれば、オフィスの快適度もアップします。

テレワークに対応できる

紙の契約書の場合、作成や管理などの業務は出社して行わなければなりません。テレワークに対応するには、契約書の業務をオンライン上で行う仕組みづくりが必要です。

PDF形式で契約を締結すると、パソコンやスマホから電子契約サービスにアクセスして契約書の業務ができます。社外からいつでも内容の確認や編集ができるため、働き方の選択肢が広がるでしょう。電子署名の使用により、ハンコを押すだけのために出社する必要もなくなります。

契約書のPDF化は、働き方改革の実現を目指す企業にとって大きなメリットです。

経理のテレワーク導入について、さらに詳しくご覧になりたい方は以下の記事をご覧ください。

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ガバナンスの強化につながる

契約書をPDF化すると、ガバナンスの強化につながります。

契約書には、自社だけでなく取引先の機密情報も含まれます。万が一契約書の内容が改ざんされたり情報が漏れたりすれば、社会的信用は低下し契約解除につながるなど企業ダメージは甚大です。

PDF化された契約書には、個別のパスワード設定が可能です。パスワードの設定により改ざんを防ぎやすくなります。紙の契約書と違って破損や紛失の心配がなく、情報を安全に管理できます。

電子署名やタイムスタンプにより、契約書の原本も担保されるので安心です。ガバナンスを強化することで、より透明性の高い経営を行えます。

契約書をPDF化した場合に考えられるデメリットを解説

契約書のPDF化には、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットを高めるためにも、デメリットへの対策は万全にしておきましょう。

ここからは、契約書をPDF化した場合に考えられるデメリットを解説します。

書き換えられる可能性がある

Wordなどと比較すると、PDFは書き換えされにくいファイル形式です。とはいえ、「PDF化=100%書き換えを防止できる」というわけではありません。

専用のソフトウエアがあれば書き換えは可能です。インターネットを経由する中で、契約書の内容を改ざんされたり、誤って修正されたりする可能性は少なからずあります。

書き換えを防ぐには、信頼性が高い電子契約サービスを利用することが大切です。システムの内容や運用手順を正しく理解した上で、導入する電子契約サービスを決定する必要があります。

適切なセキュリティ対策を講じて、契約書の整合性を保ちましょう。

セキュリティの対策が不可欠

改ざんを防ぐためにファイルにパスワードをかける方法もあります。しかし、パスワードが不正利用される恐れもあり、万全なセキュリティ対策とは言えません。

パスワードが不正利用されないように、アクセス権限を設定したり定期的に変更したりするなどの対策が必要です。従業員の情報管理への意識を高めるために、社内教育も徹底しましょう。

総合的なセキュリティ対策を構築するには、セキュアなプラットフォームの利用も重要です。

電子帳簿保存システム選び方ガイド 電子帳簿保存システム選び方ガイド

電子署名で改ざんのリスクを低減できる

PDF化した契約書の改ざんリスクを低減するには、電子署名・タイムスタンプの付与が効果的です。タイムスタンプを付与する場合、電子署名の有効期限を延長することもできます。

以下では、それぞれの仕組みと目的を詳しく解説します。

電子署名とは何か

電子署名とは、入力フォームから秘密鍵を用いて署名する方法です。公開鍵暗号方式を基にした技術で、送信者の認証を行い契約書の改ざんを防ぐことができます。受信者は公開鍵を用いて署名を検証し、正当性を確認することが可能です。

契約書が改ざんされていなければ、ハッシュ値と呼ばれるアルゴリズムで生成された不規則な文字列が一致して非改ざん性が証明されます。改ざんされていないことの裏付けとなり、信頼性を確保しやすくなるでしょう。

ただし、アルゴリズムの危殆化を防ぐために有効期限が設定されています。電子署名の有効期限は最長で5年です。

タイムスタンプとは何か

タイムスタンプとは、日付と時刻を記すスタンプシステムです。タイムスタンプオーソリティ(時刻認証局)によって生成されたタイムスタンプにより、データの原本性や非改ざん性を証明できます。

利用者はハッシュ値を提供し、タイムスタンプオーソリティがタイムスタンプトークンを生成してタイムスタンプを付与する仕組みです。自身が持つハッシュ値と付与されたタイムスタンプのハッシュ値を比較することで、時間的正当性を確保できます。

タイムスタンプにも電子署名と同じ理由で有効期限が設定されています。タイムスタンプの有効期限は最長で10年です。

長期署名とは何か

長期署名とは、電子署名の有効期限を延長するための技術です。保管タイムスタンプを付与することで、電子署名から5年経過しても非改ざん性の証明を維持できます。

長期署名により、電子署名の有効期限を10年に延長できます。有効期限内に保管タイムスタンプを重ね打ちすれば、電子契約の法的な有効性を20年・30年と保つことが可能です。

契約書をPDF化する場合の注意点を解説

紙の契約書をスキャンしてPDF化する場合、いくつか注意点があります。PDF化を進める中でトラブルが発生しないように、原本の取り扱いやOCR処理の必要性などを理解しておきましょう。

以下では、契約書をPDF化する場合の注意点について解説します。

スキャンした場合は契約書の原本を紙で保管しなければいけない

紙の契約書をスキャンした場合、PDFの契約書は原本として扱われない可能性があります。電子帳簿保存法では原本を破棄しても問題ないとされているものの、税務関連以外では法的証拠力が劣るため注意が必要です。

契約内容に関する訴訟問題が起こった場合、紙の契約書がないと不利になる可能性があります。万が一に備えて、原本である紙の契約書も併せて保管しておきましょう。

文字を認識するためにはOCR処理が必要

スキャンしただけの契約書は、1つの画像とみなされるためシステム上で検索ができません。PDF化した契約書の検索性を上げるには、OCR処理をする必要があります。

OCRとは、画像上の文字を文字コードに変換してデジタルデータとして扱うための技術です。OCR処理により、書類検索だけでなくテキストデータをコピー&ペーストして業務システムに入力することも可能になります。

税務署の事前承認は不要になった

2021年12月末までは、契約書のスキャナ保存にはあらかじめ所轄税務署の事前承認が必要でした。2022年1月からは事前承認が不要となり、契約書のPDF化を導入しやすくなっています。

ただし、改正前に税務署の事前承認を受けている場合、保存の開始日以前に作成・受領した重要書類をスキャナ保存するには適用届出書の提出が必要です。適用届出書を提出してからスキャナ保存を完了するまでの期間は、特に定められていません。

電子帳簿保存システム選び方ガイド 電子帳簿保存システム選び方ガイド

要件を満たせば、契約書のPDF化はOK!

契約書のPDF化による有効性を担保するには、電子帳簿保存法の要件を満たした状態で保管する必要があります。契約書をPDF化する場合、「スキャナ保存」「電子契約サービスの利用」のいずれかを選択するのが一般的です。

電子契約サービス上でPDF形式の契約書を用いて契約を締結する場合、データ自体が原本とみなされるため、紙の契約書と同じように法的証拠力を担保できます。

TOKIUMでは、電子帳簿保存法対応のシステムを検討している人に役立つ情報をご案内しています。主要6社の特徴がまとめられている「文書管理システム選び方ガイド」を参考に、自社に合うシステムを探してみましょう。

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