電子帳簿保存法

契約書の電子化とは?メリットや注意点を徹底解説

更新日:2024.09.04

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業務の効率化や環境への配慮から、書類のペーパーレス化に踏み切る企業、団体が増えています。契約書も電子化することでさまざまなメリットがもたらされます。

一方で、性急に電子化を進めてしまうと思わぬトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。そこで今回の記事では、契約書の電子化について、メリットや注意点を中心に詳しく解説します。契約書の電子化を検討中でしたら、ぜひ参考にして下さい。

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契約書の電子化とは何か

契約書の電子化とは、電子署名を付与したファイルを交換することで契約を締結することです。単に電子契約と呼ばれることもあります。昨今は、電子化した契約書を締結するためのシステムを提供する民間事業者も増えてきました。

なお、電子化された契約書の法的な有効性について疑念を持つ人もいるかもしれませんが、紙で作成され、書面に押印または署名が施された契約書と同様、裁判で証拠として扱われます。タイムスタンプによってその契約書が有効であることを証明できるからです。なお、タイムスタンプとはある時刻にそのデータが存在し、その時刻以降改ざんされていない事実を証明する技術を指します。

契約書の電子化に関する法律

契約書などの電子化に関する法律は複数あるので、事前に目を通しておくのが望ましいです。特に重要となる法律を紹介します。

電子帳簿保存法法定保存文書のうち、納税に関連する書類のデータ保存について規定した法律
電子署名法電子署名について、書面への署名・押印と同等の法的効力を認めるための法律
IT書面一括法電子取引を促進するため、書面作成が義務付けられている取引において、相手方の承諾を前提に電子取引を認める法律
デジタル改革関連法デジタル改革を進めるための法律の総称で、契約書の電子化には「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が深く関係する

書面の契約書と電子化した契約書の比較

書面であっても、電子化した契約書であっても、裁判で証拠として使えることに変わりはありません。しかし、細かい部分はかなり異なるため、具体的にどのような違いがあるかを理解しておきましょう。

比較項目書面契約書電子契約
媒体紙への印刷電子データ
署名方法記名押印、署名電子署名
締結日時の証明方法日付記入、確定日付の取得認定タイムスタンプの付与
契約内容の受け渡し方法書面の郵送または持参メール、ビジネスチャットを通じた電子データの送受信
保管方法倉庫、キャビネットでの原本の物理的な保管自社内サーバー、外部データセンターによる電子的な保管

署名方法の違い

まず、大きな相違点として署名方法の違いが挙げられます。書面の契約書は、書類に記名・押印しますが、電子化した契約書では電子署名を施さなくてはいけません。電子署名とは契約書などをデータ化した電子文書に対し付されるサインです。自分がデータを作成したことを証明する「公開鍵」とそのデータを暗号化するための「秘密鍵」を使い、改ざんやなりすましがないことを確認する仕組みになっています。

証明方法の違い

証明方法においても、書面と電子化では違いがあります。書面の契約書では契約書に直接記載する日付が締結日時となりますが、電子化した契約書では認定タイムスタンプで締結日時を証明する仕組みです。

タイムスタンプとは、ある時刻にそのデータが存在し、かつその時刻以降改ざんされていないことを証明するための技術を指します。このうち、一般財団法人日本データ通信協会による認定を受けた時刻認証業務認定事業者が発行するタイムスタンプが「認定タイムスタンプ」として扱われるため、できるだけ認定タイムスタンプを使うのが好ましいです。

受渡方法の違い

受渡方法にも大きな違いがあります。まず、書面の契約書の場合、原本を郵送したり、担当者が持参したりして受け渡すのが一般的です。

しかし、電子化した契約書であれば、インターネット上でのファイルのやり取りにより受け渡すことになります。請求書の物理的なやり取りが無くなるので、時間や場所を気にすることはありません。担当者が出社する必要もないので、テレワークを推進している企業にも親和性の高い方法です。

契約書を電子化する方法を解説

契約書を電子化するためには、電子契約サービスを利用する必要があります。さまざまな電子契約サービスを提供する事業者が存在するため、よく比較検討した上で選びましょう

なお、電子契約サービスには当事者署名型と事業者署名型の2タイプがあります。

当事者署名型契約の当事者同士が機器・認証用ICチップ入りカードなどを使い、事業者の助けを得ずに電子署名を付与する
事業者署名型(立会人型)契約の当事者ではない第三者が、当事者の指示により電子署名を付与する

契約書を電子化した場合のメリットとは

契約書を電子化することにより、具体的にどのようなメリットがもたらされるかを見てみましょう。

コスト削減が実現する

1つ目のメリットは「コスト削減が実現する」ことです。紙の契約書は印刷・封入・発送の作業が必要であり、印刷代、郵送代や作業にかかる人件費が発生します。年間で発送する請求書の数が多ければ、かなりの金額になるでしょう。

しかし、電子化できれば、これらのコストを削減することが可能です。

また、紙の契約書の場合、印紙税がかかるためその分のコストや貼付漏れのリスクにも留意しなくてはいけません。しかし、電子化した契約書をやり取りするのであれば、印紙を貼付する必要もないため、その分のコストを削減できます。

業務効率が良くなる

2つ目のメリットは「業務効率が良くなる」ことです。紙の契約書の場合、押印や製本、袋とじなどの作業が必要です。発送する請求書が多ければ、担当者にもかなりの負担がかかります。しかし、契約書を電子化すれば上記のような作業が不要になるため、業務効率の改善につなげることが可能です。

また、紙で発行した請求書はファイリングしますが、後で確認したくても探すのが大変になります。しかし、電子化されていれば検索もしやすくなるので、探す作業に時間を取られることもありません。

コンプライアンスを強化できる

3つ目のメリットは「コンプライアンスを強化できる」ことです。契約書を電子化すれば、クラウド上などで一元管理でき、業務の透明性も向上します。結果として、契約や更新の抜け漏れの防止につながるでしょう。

加えて、契約書の閲覧権限を設定するなどすれば、契約に無関係な従業員が内容を閲覧できなくなるため、流出などのトラブルを防止することも可能です。加えて、電子署名と認定タイムスタンプを電子データに組み合わせて施せば、改ざんリスクを最小化できるので、コンプライアンスをさらに強化できます。

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契約書の電子化に取り組む際の注意点とは

契約書を電子化することにはさまざまなメリットがありますが、注意すべき点もいくつかあります。

電子化できる書類とできない書類がある

まず、電子化できる書類とできない書類がある点に留意しなくてはいけません。契約書の電子化に伴い、社内すべての書類の電子化も併せて検討することは多々あります。しかし、電子化できない書類は除外する前提で進めることが必要です。

電子化できる書類

電子化が認められる契約書の例を紹介します。デジタル改革関連法により電子化が認められるようになったものも多数含まれるのが特徴です。なお、ここで紹介する以外にも電子化できるものはあるので、弁護士などの専門家に確認して下さい。

名称根拠、関連法令
業務委託契約書民法632条、同643条
秘密保持契約書 個人情報保護法、不正競争防止法、特許法
売買契約書 民法555条
下請法第3条書面下請法第3条

電子化できない書類

電子化が認められていない書類の代表例を紹介します。ここで紹介するもの以外にも、契約書を公正証書として作成することが求められる場合は電子化ができない点に注意が必要です。公正証書は公証人が紙媒体で作成するのが前提となっており、現状電子化が認められていないことが背景にあります。

名称根拠、関連法令
任意後見契約書任意後見契約法
事業用定期借地権 借地借家法23条
農地の賃貸借契約書農地法3条

取引先から理解してもらう必要がある

契約書の電子化にあたっては、取引先から理解してもらう必要もある点に注意が必要です。伝えてはみたものの、従来どおり、紙の請求書を希望される可能性もあります。無理強いは取引先との関係に影響を及ぼすため好ましくありませんが、まずは電子化に伴うメリットなども伝えて交渉してみましょう。それでも同意が得られなかった場合は、紙で作成し郵送するなどの特別な対応を取りますが、担当者への周知徹底を忘れてはいけません。

契約書を電子化する体制づくりの流れ

契約書を電子化するにあたっては、社内の体制を整えることが重要です。具体的な流れを解説します。

導入目的やゴールを設定する

まず、導入目的やゴールを設定するところから始めましょう。導入目的が曖昧だと社内でうまく普及しないなどの問題が発生する恐れがあるためです。具体的な導入目的は企業によっても異なりますが、以下の目的が設定されることが多くなっているので、参考にして下さい。

  • 郵送代の削減
  • 業務効率の改善
  • コンプライアンスの強化

電子契約サービスを選ぶ

契約書を電子化するなら、電子契約サービスの導入が不可欠です。自社が抱える問題を解決できるかなど、状況に合わせて電子契約サービスを選びましょう。ここで重要なのは、複数のサービスを比較検討することです。導入事例をチェックしたり、担当者全員で試用版を使ったりして検討してみましょう。

予算を確保する

電子契約サービスを選んだら、導入・利用にかかる費用を確認した上で、予算を確保します。ポイントはコストの削減額をしっかり伝えることです。書面から電子の契約書への切り替えによる削減額を伝え、決裁者の判断を仰ぎましょう。電子契約サービスの見積もりを取る際に、コスト削減額の試算をしてもらうと、説得力のある提案につながります。

社内の押印申請フローを整備する

導入する電子契約サービスによっては、従来の押印申請フローを見直す必要があります。電子化した契約書を効率良く取り扱うために、フローの見直し、整備を実施しなくてはいけません。その際は、実際に契約書を作成・管理している担当者の話を聞き、課題を洗い出しながら進めましょう。

電子署名管理規程を準備する

ここまで済んだら、電子署名管理規定を準備します。紙の請求書の頃の印章管理規程を電子署名に対応させるために行う作業です。電子署名のアカウントの管理者・権限者の設定も忘れずに済ませましょう。なお、電子署名の管理規定を整備する場合、以下のいずれかのパターンで進めます。

  • 電子署名に関する条文を印章管理規程に織り込む
  • 別個、独立した電子署名管理規程を策定する

導入における稟議を完了させる

ここまでの作業が済んだところで、導入すべき電子契約サービスを決定し、決裁者へ伝えましょう。その際、決裁者の判断の参考にするために、必要性なども併せて伝えると効果的です。また、利用したい電子契約サービスの運営会社が公開している導入事例を参考資料にすると、判断がしやすくなります。

社内へのアナウンスやマニュアル展開などを実施する

決裁が降りたら、社内に電子契約サービスの導入についてアナウンスします。必要に応じて社内外にマニュアルを作成、説明会を実施しましょう。また、社外向けのニュースリリースや社内のイントラネットを利用して、電子契約への移行を知らせると効率的に進められます。

電子契約サービスの選び方

電子契約サービスを選ぶ際に確認してほしいポイントについて、詳しく解説します。

電子帳簿保存法に対応しているか

電子帳簿保存法に対応しているシステムであるかは確認しましょう。電子帳簿保存法の要件を満たしていない電子契約の場合、書面でも契約書を保管する必要があるためです。タイムスタンプなどの機能が搭載されたものをおすすめします。

電子帳簿保存法への対応、また電子帳簿保存法対応システムの比較については、以下の記事にて詳しく解説しています。

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取引先も導入しやすいか

取引先におすすめしやすい電子契約サービスであるかも重要な策度となります。尺度の1つになるのが、取引先が利用料を負担する必要がないことです。また、サービスの運営会社が取引先に対して説明会を実施してくれることもあります。

書面契約に対応しているか

前述したように、取引先によっては従来どおり書面でのやり取りが必要になるかもしれません。そのため、書面の契約書を取り込む機能があると便利でしょう。これにより、書面契約と電子契約の一元管理ができるようになります。

セキュリティ対策が徹底されているか

契約書を電子化するとインターネット上で取り扱うことになるため、情報漏えいなどのリスクを抑えるために強固なセキュリティ対策が不可欠です。セキュリティ対策が徹底された電子契約サービスなら安心して使えます。

電子帳簿保存システム選び方ガイド 電子帳簿保存システム選び方ガイド

契約書の電子化にはさまざまなメリットがある!自社に合うサービスを探してみよう

契約書を電子化することには、コスト削減やコンプライアンスの強化など、さまざまなメリットがあります。しかし、電子化するためのサービスが使いづらかったり、担当者の意見を聞かずに電子化を進めたりすると、後々トラブルになりがちです。実際に契約書を作成する担当者の意見も聞きつつ、自社に合うサービスを探して、徐々に電子化を進めていきましょう。

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