経理DX促進

ペーパーレス化推進に伴う課題とは?解決策をわかりやすく解説

更新日:2024.07.24

この記事は約 5 分で読めます。

近年、ペーパーレス化を推進する企業が増加しています。しかし中小企業を中心に、ペーパーレス化の推進にはまだまだ課題が残っているのが現状です。

ペーパーレス化のメリットについては理解していても、「導入コストが…」「電子帳簿保存法が…」など様々な理由から導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ペーパーレス化の定義やメリットを確認しつつ、企業が抱えがちな「ペーパーレス化を進める上での課題」を紹介していきます。それぞれの課題に応じた解決策についてもわかりやすく提案していますので、ぜひ最後までご覧ください。

「失敗事例」にならないための請求書受領システムの選び方

ペーパーレス化とは?

近年注目を集める「ペーパーレス化」。誰もが聞き覚えのある言葉だとは思いますが、改めてその意味について確認していきましょう。

ペーパーレス化の定義

「ペーパーレス」とは文字通り、「紙のない」状態を意味しており、あらゆる文書や資料を電子データによって処理・保存することを指します。ですので「ペーパーレス化」は、「紙を使わず、あらゆる文書を電子データによって処理する」状態への移行を指します。

ペーパーレス化の進め方と具体的な導入事例については、以下の記事をご覧ください。

関連記事
ペーパーレス化の方法とは?進め方4ステップと事例を解説
ペーパーレス化の方法とは?進め方4ステップと事例を解説

ペーパーレス化のメリット

ペーパーレス化のメリットについては理解している方が多いかと思います。主なメリットとして、以下の5つが挙げられます。

  • 業務を効率化できる
  • 情報共有がしやすくなる
  • 保管スペースが不要になる
  • セキュリティが向上する
  • 在宅ワークがしやすくなり、柔軟な勤務が可能になる

ペーパーレス化をうまく実現すれば、こういったメリットを享受できます。

ペーパーレス化を進めるうえでの課題

上記のようなメリットがありながら、ペーパーレス化がなかなか進まない背景には、ペーパーレス化の推進に伴う様々な課題が関係しています。問題なのは、企業によってどの課題が大きな弊害となり得るかが変わることです。

そこで、今回はペーパーレス化推進に伴うよくある課題を5つご紹介します。自社にとって重要な課題をピックアップし、具体的な解決策とあわせてご覧ください。

①ペーパーレス化の優先順位を分かっていない

最初に紹介するペーパーレス化の課題は、優先順位が不明瞭であるという点です。

ペーパーレス化をうまく進められない企業には、ペーパーレス化の優先順位が分かっていないケースが多いです。一言で「ペーパーレス化」と言っても、書類には様々なものがあります。例えば、会議資料、稟議書、領収書、納品書、請求書など、紙媒体で扱っているものは数え上げるとキリがありません。これらすべてを一気にペーパーレス化しようとすると、各所で混乱を招く結果になるでしょう。

このように、どの書類からペーパーレス化すべきかについての優先順位がはっきりしていない企業は、ペーパーレス化が滞ってしまいます。

②導入コストを懸念している

次に紹介するペーパーレス化の課題は、導入コストに対する懸念からペーパーレス化の導入に踏み切れない点です。

ペーパーレス化推進には、デジタルツールやソフトウェアの導入などでコストがかかります。ペーパーレス化がその企業にもたらす効果について具体的にイメージできなければ、このコストを理由にペーパーレス化の導入を見送ることになります。

【関連する無料ガイドブック】
▶ 電子帳簿保存システム選び方ガイド【5社の比較表付き】
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

電子帳簿保存システム選び方ガイド 電子帳簿保存システム選び方ガイド

③社員のITリテラシーが不足している

続いて紹介するペーパーレス化の課題は、社員のITに対するリテラシーが不足している点です。

PCやタブレットといったIT機器の操作に慣れていない社員が多いと、ペーパーレス化導入は進みづらくなるでしょう。

④紙文化・ハンコ文化からの脱却ができない

次に紹介するペーパーレス化の課題は、社内に紙文化・ハンコ文化が根付いている点です。

社内業務に必要以上に紙を用いたり、社内での申請などに印鑑を必要としたりする企業は未だに多いのではないでしょうか。こういった文化が根付いていることもペーパーレス化を阻む課題となります。

⑤電子帳簿保存法の理解が追い付いていない

最後に紹介するペーパーレス化の課題は、電子帳簿保存法に対する理解が追い付いていない点です。

電子帳簿保存法は、税法のなかでも「紙媒体での保存」が義務化されている帳簿書類について、条件付きで「電子データ保存」を認めることと、インターネット上の取引データの保存を義務化することを定めた法律です。その要件が比較的厳格であるために、理解が追い付かないまま間違った電子データ保存を行うことを恐れてペーパーレス化に踏み出せないような企業も多いかと思います。

関連記事
電子帳簿保存法を図解でわかりやすく解説!対象書類や改正後の変更点についても紹介
電子帳簿保存法を図解でわかりやすく解説!対象書類や改正後の変更点についても紹介

ペーパーレス化推進の課題に応じた解決策

ここまで、ペーパーレス化を進める上での課題について説明してきました。この章では、前章で挙げたそれぞれの課題に対する解決策について提案します。自社でピックアップした課題を解決するための参考になれば幸いです。

①ペーパーレス化推進の目的を明確化する

社内のどの書類からペーパーレス化を導入すべきか、優先順位が分かっていないのであれば、「何のためにペーパーレス化を進めるのか」を明確にしましょう。ペーパーレス化の導入は、従業員の業務内容に変更が生じるなど、その影響が大きいためです。

具体的なペーパーレス化の目的としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 業務を効率化する
  • コストを削減する
  • 文書のセキュリティを向上させる
  • リモートワークなど、社員の柔軟な働き方を実現する

目的を明確にすることで、「目的を達成するためにはどの書類から優先的にペーパーレス化に取り組んでいけばいいか」を考えることができます。例えば、上記の「業務を効率化させたい」という目的の場合、「作業効率の悪い紙媒体での業務」をピックアップし、まずはその業務からペーパーレス化を導入していくことができるでしょう。

自社内でペーパーレス化を推進する目的を明確にし、効果が高いものから導入を進めていきましょう。

②ペーパーレス化推進の効果について、長期的な視点を持つ

ペーパーレス化をうまく導入できれば、長期的に社内の生産性を向上させることができます。しかし、ペーパーレス化の推進には一定の初期コストがかかることは避けられません。ペーパーレス化導入によるコスト増加の側面のみにとらわれていては、ペーパーレス化が進まないのは当然といえます。そのため、ペーパーレス化の長期的な効果をしっかりと把握することが重要です。

記事の冒頭でペーパーレス化のメリットについては軽く触れましたが、より「長期的な」効果に着目すると以下のようなものが挙げられます。

  • 現在自社でかかっている書類の印刷コストを削減できる
  • リモートワークができる社員が増えていくことで交通費を削減できる
  • 紙媒体の業務に割いている時間を削減できる
  • 書類の保管のために使われていたスペースを別の用途で有効活用できるようになる

これらは短期的に現れる効果ではないため、実感しづらいかもしれません。ですので、一つ一つ定量的に効果をシミュレーションして、ペーパーレス化によって自社の生産性がどれほど向上するかを把握しましょう。そしてペーパーレス化導入にかかる費用と比較することで、ペーパーレス化をどの程度行うべきかを合理的に判断できるでしょう。

【関連する無料ガイドブック】
▶ 成功事例に学ぶ!ペーパーレス化から始める経理DX
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます

支出管理ペーパーレス化から始める経理DX

③社員向けにIT研修を実施する

ペーパーレス化推進にあたり、社員のITリテラシーが不足している場合は、社員向けに研修を実施し、全社的なITスキルの向上を図ることが有効です。

社内での実施もいいかもしれませんが、IT関連に精通した外部の機関に研修を依頼することも有効ですので、あわせて検討してみるといいでしょう。

また、研修を行う対象によって内容も変わるかと思います。具体的には、新入社員向け、中堅社員向け、管理職向け、役員向け、といった対象が考えられるかと思います。どの層の社員のITリテラシーが向上することが望ましいのかを検討し、効果的な研修を行いましょう。

ペーパーレス化は多くの従業員の業務に影響を与えるため、研修の際には「何のためにペーパーレス化を行うのか」についても共有して理解を得たり、従業員の疑問点や不安点も一つ一つ解決していくことが必要です。

④ハンコが必要な手続きを排除する / 電子印鑑を導入する

企業文化として、紙媒体での業務や印鑑が必要な手続きがある場合は、電子ツールを使ってその業務を代替できないかを検討すべきでしょう。

現時点で明らかに効率が悪いと誰もが分かっていながら紙媒体で行っている業務もあるかと思います。それだけでなく、必要だと思われていた業務がペーパーレス化によって必要なくなる可能性もあります。そのため、紙媒体の業務を一つ一つリストアップして、電子ツールやソフトを用いて効率化できないか考えてみることが有効です。

印鑑が必要な手続きや業務は、そもそもその手続き自体を排除できないか考え直してみましょう。どうしても印鑑が必要であれば、電子印鑑への移行ができないか検討してみてもいいでしょう。

⑤電子帳簿保存法対応のソフトウェアを導入する

「電子帳簿保存法への理解が追い付いておらず、ペーパーレス化に踏み出せない。」

そのような企業は、電子帳簿保存法に対応したソフトウェアを導入することが有効です。

電子帳簿保存法に完全対応したシステムを自社で構築したり、電子帳簿保存法に対応していないソフトウェアを後から対応する形で仕様変更するのは非常に困難です。そこで、電子帳簿保存法に対応したソフトウェアを利用することにより、自社が詳細な要件を把握していなくても法令に準拠した形でペーパーレス化を実現できるのです。

市販のソフトウェアが電子帳簿保存法に対応しているかどうかを判断するには、そのソフトウェアが「JIIMA認証」を得ているかを確認するのが一般的です。JIIMA認証とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)により、市販ソフトウェアが電子帳簿保存法の要件を満たしていると判断されたことを証明するものです。

下記の記事では、電子帳簿保存法に対応したシステムを紹介しています。システム選定の際に参考にしてみてください。

関連記事
電子帳簿保存法対応のシステム12選【比較ポイントは3つ】
電子帳簿保存法対応のシステム12選【比較ポイントは3つ】

まとめ

今回は、ペーパーレス化の推進を阻む課題と、それぞれの課題に沿った解決策を紹介しました。最後に、ここまでに述べたペーパーレス化のよくある課題とその解決策をセットでまとめます。

課題解決策
ペーパーレス化の優先順位を分かっていないペーパーレス化推進の目的を明確化する
企業が「どの書類からペーパーレス化を進めるべきか」という優先順位を把握しておらず、導入を後回しにしているペーパーレス化を行う目的を明確化し、その目的を達成する効果が高いものから順に導入する
導入コストを懸念している長期的な視点で効果を考える
ペーパーレス化には導入コストがかかり、その効果を短期的に実感しづらい短期的な費用対効果のみに囚われず、長期的な視点でペーパーレス化の効果を評価する
社員のITリテラシーが不足している社員向けにIT研修を実施する
社員がITツールを上手く使いこなせていないと、ペーパーレス化の推進は滞ってしまう社員向けにIT研修を実施することで全体のITスキル向上を図る必要がある
どの層の社員に研修を行うのかについても検討する
紙文化・ハンコ文化からの脱却ができないハンコが必要な手続きを排除する
電子印鑑を導入する
社内で紙や印鑑を必要とする業務が多く、ペーパーレス化に踏み出すことができない紙媒体の業務については一つ一つリストアップして、電子ツールを用いて効率化できないか考える
印鑑が必要な場合は、そもそもその手続き自体を排除できないか考え直し、どうしても必要であれば、電子印鑑で代替できないか検討する
電子帳簿保存法の理解が追い付いていない電帳法対応ソフトウェアを導入する
電子帳簿保存法の厳格な法的要件を把握できておらず、間違った電子データ保存をすることを恐れてペーパーレス化が進まない電子帳簿保存法に対応したソフトウェアを導入する
電子帳簿保存法に対応している市販のソフトウェアは「JIIMA認証」と呼ばれる公的な認証を得ており、法令に準拠したペーパーレス化を実現できる

ペーパーレス化の課題とその解決策について、ご理解いただけたでしょうか。

冒頭でも述べた通り、ペーパーレス化を推進する上で何が大きな課題なのかは企業によって変わります。自社が抱える課題に沿った解決策を考え、社内の混乱を招くことのないよう段階的にペーパーレス化を実現していきましょう。

DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
電子帳簿保存システム選び方ガイド
電子帳簿保存システム選び方ガイド
【5社の比較表付き】
TOKIUM電子帳簿保存資料
「TOKIUM電子帳簿保存」サービス紹介資料

関連記事