インボイス制度

インボイス制度で免税事業者は不利になる?実施後の影響や取るべき対応について解説!

更新日:2024.07.06

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インボイス制度 免税事業者

2023年(令和5年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が始まりました。

仕入時に支払った消費税の還付を受けるための仕組みですが、対象が課税事業者だけで、免税事業者は恩恵を受けられません。それどころか、取引する上で不利になると言われています。

大企業から中小企業、個人事業主まで関係する制度ですが、とくに個人事業主には重大な問題です。免税事業者になるか、ならないかの選択を迫られることになります。

本記事では、インボイス制度の説明やインボイス制度の対象、そして免税事業者が不利となる理由や、対応について解説します。フリーランスや個人事業主などの免税事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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インボイス制度とは?

インボイス制度は、別名「適格請求書等保存方式」とも言います売上で納める納税額から仕入の納税額を控除することで消費税の二重払いを防ぐしくみです。

2023年10月以降、仕入税額控除の適用を受けるには、所定の項目がそろった請求書(適格請求書)の作成・発行が必要になりました。

また、受け取った取引先(商品やサービスの買い手側)は、その請求書を保存しなければなりません。これが「適格請求書等保存」です

適格請求書には、決まった書式はありません。手書きでもよいとされていますが、記載項目が以下の要件を満たさないといけません。

  • 買い手側の事業者(名称および氏名)
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目の場合は、その旨も記載)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額
  • 発行者の名称または氏名
  • 発行者の登録番号

このうち、「適用税率」と「税率ごとに区分した消費税額」「発行者の登録番号」が新しく加わる項目です。登録番号は、Tプラス13ケタの法人番号あるいは13ケタの数字で税務署から通知されます。

消費税は、2019年から10%と8%(軽減税率)が混在しています。インボイス制度は、このなかで取引の消費税額と消費税率を正確に把握することを目的としています。

経理事務の観点からみた場合、請求書に記載する項目が増えるため、フォーマットやシステムの変更などが必要となります。また、取引相手がインボイス制度の対象者であるかの確認も必須です。

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インボイス制度の対象者は?

インボイス制度の対象者は、消費税の課税事業者に限られます。続いて、インボイス制度の対象者を詳しく解説します。

課税事業者が対象

インボイス制度で、適格請求書を発行できるのは適格請求書発行の登録事業者だけです。登録事業者になるには、まず課税事業者でなければなりません。つまり、適格請求書発行事業者になれるのは課税事業者だけです。

課税事業者の方は、仕入税額控除を受けるためにインボイス制度が始まるまでに事業者登録をする必要があります。登録事業者になってないと、仕入額控除の要件を満たせず、消費税の控除が受けられません。

また、登録事業者には、取引で適格請求書を発行する義務があります。経理業務で対応できるように準備が必要です。

免税事業者であるフリーランス・個人事業主はどうなる?

免税事業者は、インボイス制度導入にあわせて課税事業者になるか、あるいは免税事業者のままでいるかを選ぶことになります

どちらを選ぶかは任意で、事業の内容に合わせて決められます。年間売上高が1,000万円未満の零細事業者は消費税を免税されるので、とくにビジネスが小規模の方は、これまで免税事業者だったというのが普通でしょう。

しかし、免税事業者は適格請求書を発行できないため、消費税の控除は受けられません。消費税還付を受けたいなら、課税事業者になる必要があります。また、取引先との関係で、免税事業者を続けるのが難しくなるかもしれません。

免税事業者の対応や、課税事業者になる方法はこのあと詳しく解説します。

インボイス制度で免税事業者が不利になるのはなぜ?

インボイス制度が始まると、課税事業者と比べて免税事業者が不利になると言われます。なぜなのでしょう。

取引先と契約の継続が困難になる

免税事業者は、適格請求書を発行できません。このため取引先は仕入時に払った消費税の控除に必要な請求書が手に入りません。

取引先は、もし免税事業者の仕入れ先と従来どおりの取引を続けるなら、消費税の還付をあきらめねばなりません。それなら取引先を変更したほうがいいことになり、契約を打ち切ってくるかもしれません。

あるいは、消費税分を価格に上乗せして請求するかもしれません。いずれにしても、仕入れ先の免税事業者は経営が厳しくなります。

また、免税事業者はこれまで「益税」(消費税の一部が事業者の手元に残って利益となること)の恩恵を受けてきました。しかし、インボイス制度で消費税の徴収が細かく、正確になることで、こうした利益はなくなっていくとみられます

課税事業者になると消費税を納付しなければならない

インボイス制度で取引先を失うくらいなら、いっそ課税事業者に転換しようという免税事業者の方もいるでしょう。ただ、消費税を納めると赤字になるという零細事業者には、悩ましい選択です。

課税事業者になった場合、これまでの免税の恩恵はなくなります。事業開始から2年未満の事業者や、売上高が1,000万円以下の零細事業者でも納税することになります。転換には慎重な判断が求められます。

免税事業者の方は、十分な経営基盤ができているかも含めて検討が必要です。

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インボイス制度で免税事業者が取るべき対応

インボイス制度の開始に向けての免税事業者の対応について解説します。

免税事業者には、課税事業者となるか、このまま免税事業者を続けるかの選択肢があります。それぞれの対応について詳しくみていきましょう。

課税事業者になる

免税事業者から課税事業者になると、消費税の計算や申告、納税などをしなければなりません経理事務では、適格請求書等発行事業者の管理、登録番号の管理、また免税事業者向けの経過措置中は控除額の管理などが必要となります。

一方で、適格請求書が発行できることで、取引先を失うリスクは軽減します

ただし課税事業者になると、原則として2年間は免税事業者に戻れません。また、消費税は欠損金が出ていても納付しなければなりません。

免税事業者のまま続ける

取引先が減るリスクはありますが、免税事業者のままでいることも可能です。

免税事業者のままだと、インボイス制度が始まってすぐに取引先が減少するのではないかと心配する方もいるでしょう。そのような影響に配慮して、実施後6年間の経過措置が設けられています

適格請求書等発行事業者以外から行った仕入れの消費税額を控除できるもので、前半3年間(2023年10月~2026年10月)は6割、後半3年間(2026年10月~2029年10月)は5割を控除可能です。

免税事業者の方は既存顧客に、適用を受けるかの確認が必要です。

免税事業者が課税事業者になるには?

免税事業者から課税事業者になるには、以下の手続きが必要です。

  • 「適格請求書発行事業者」への登録申請
  • 「消費税課税事業者選択届出書」の提出

それぞれの手続きの方法について解説します。

「適格請求書発行事業者」の登録申請をする

免税事業者から課税事業者になるには、適格請求書発行事業者への登録を申請します。

インボイス制度開始にあわせて課税事業者になる場合は、2023年3月31日までに納税地の税務署に適格請求書発行事業者の申請を行います

インボイス制度開始時の特例で、後述する「消費税課税事業者選択届出書」の提出が省略されます。

登録申請手続きはe-Taxからもでき、個人事業主の場合はスマートフォンからでも可能です。また申請書を管轄地域のインボイス登録センターへ郵送することでも手続きできます。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出する

2023年4月1日以降に適格請求書発行事業者に登録する場合は、登録申請にあわせて、消費税課税事業者選択届出書を提出します

選択届出書の提出は、税務署へ郵送もしくは持参して行います。手続きは適用を受ける課税期間開始日の前日までに行う必要があります。

課税事業者になるにあたって不安がある方は税理士に相談することをおすすめします。

また、国税庁のホームページにインボイス制度の特設サイトができているので、そちらもぜひご活用ください。

参照元:国税庁「特集 インボイス制度」

まとめ

2023年10月1日から仕入税額控除の方式としてインボイス制度が始まりました。インボイス制度の対象は課税事業者に限られます。免税事業者は適格請求書が発行できないことから、導入後は取引先から契約を解除される可能性があります

免税事業者は課税事業者となるか、そのまま免税事業者でいるか、の選択をすることになります。課税事業者となる場合は、適格請求書発行事業者への登録申請など手続きが必要です。

課税事業者になった場合、納税が必要ですし、2年間は免税事業者に戻れないので、不安な方は税理士に相談することをおすすめします。

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