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最近、テレビを見てたらあさイチでRPAが特集されたり、本屋に行けばRPAのムック本が売られてたりと、今何かと話題のRPA。
しかし、「RPAって最近よく聞くけれど、なんなのかよく分からない」「業務の自動化っていうけど、結局プログラミングする人じゃないとできないんでしょ?」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は知ってよく分からないRPAの仕組みや導入事例を徹底解説していきます。
RPAツールは製造業や地方自治体、金融業界などで導入が進んでおり、従来の業務を劇的に効率化することに成功しています。
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特に金融業界ではRPAツールの導入が急速に進んでおり、三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)ではすでに合計2万時間の業務を自動化させることに成功しています。
また、人事業務、経理業務、営業業務においてもRPAツールを活用することができます。例えば、見積書作成、スケジュール調整、帳票発行業務、経費精算業務などの分野で活用することができます。
本記事では、食品メーカーの経理部の事例など実際にRPAツール導入した企業の事例を交えながら、解説いたします。
RPAとは
PRAとは、「Robotic Process Automation(ロボッティック・プロセス・オートメーション」の略語です。
従来人間が手作業で行ってきたデータ入力や伝票入力などの「長時間煩雑で同じ作業が続き、しかも正確に行わなければならない作業」を、パソコンのソフトウェアが代わりに行ってくれるというものです。
近年話題になっているAIとの違いを一言でいうと、「自己学習能力」の有無です。
RPAについて、以下の記事で詳細に解説しております。
RPA導入速度が速い金融業界での4つのRPA導入事例
金融業界は三大銀行全てRPAを導入しており、業界全体で積極的にRPAを活用しています。労働集約型産業ですのでRPA導入の影響力は大きいといえます。
三井住友銀行:RPA活用で1500人分の余力を生み出す。今後はグループ全体でのRPA活用を進めていく。
2017年11月から三井住友銀行は日本IBM社が提供するRPAを活用し、紙帳票のデータ化を自動化させています。このRPA導入によって従来は300万時間かかっていた業務を自動化が可能なります。またこれにより1500人分の余力を捻出することを目標としています。
また、三井住友銀行のみならず三井住友フィナンシャルグループ全体(SMFG)でRPAプロジェクトに取り組んでいます。これは、本部部署の無駄な業務をなくすこと、重複している作業の集約を進めること、代替可能ならばRPAに代替することが主な内容です。
SMFG全体のRPA導入プロジェクトは2016年にはスタートしており、2017年時点で既にリテール部門を中心とした本店8店舗で13業務にRPAが導入されおり、オペレ―ションの自動化が進んでいます。
参考サイト:三井住友銀行がRPAを200業務に適用へ―大手コンサル4社がUiPathを導入
三菱UFJフィナンシャルグループ:3大銀行で最もRPA活用が進んでいる。自社開発も行っている。
三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)は他行に先駆けてRPAを導入しています。既に、約20業務で合計2万時間の作業を自動化させています。
特にコンプライアンス部門での実用化が銀行にとっても大きなメリットがあります。
様々なデータベースや記録にアクセスし、証跡を残さなければならない業務では、複数回システムへのログインや、データの移動を行う必要があります。従来は熟練の行員に頼っていましたがRPAで自動化に成功。結果、専門業務に従事する社員の6~7割の仕事を自動化することができています。
MUFGは今後国内ではリテール部門や法人部門の効率化をRPAを用いて行う予定です。海外ではアジアや欧米の海外拠点の効率化を進めていくそうです。
参考サイト:三菱東京UFJ銀行が可能性を拡げる、金融機関でのRPA導入による業務効率化
みずほ銀行:出資先のベンチャー企業と提携してRPA活用を推進中。業務の8割自動化が目標。
みずほ銀行はみずほ銀行が出資するBlue Labとシグマクシスが共同で開発、AIベンチャーのギリアの深層学習用開発ツールを利用し、手書き帳票の読み取りと入力を自動化するRPAシステムを既に導入中。2018年5月に実証実験に成功しました。今後実用化を進める予定です。
口座振替依頼書とは電力やガス、インターネット接続サービスなどの事業者との契約時に、金融機関の支店番号や口座番号、氏名を記入して銀行口座からの振り替えを依頼する帳票です。みずほ銀行が1年間に扱う依頼書は500万枚に上ります。
現在は事務センターのスタッフが帳票から必要な情報を読み取ってキーボードで入力する作業を繰り返し行っています。従来、人間が行っていた業務の8割がRPAの導入により自動化できる想定です。
参考サイト:AIやRPAで帳票処理を自動化する「AORソリューション」みずほFGが開発
楽天カード:RPA活用で従来の1/4に業務時間を短縮。
楽天カードのシステム運用部従来はカード決済システムからログを抽出し、データ加工、分析作業を行う必要がありました。サービス維持のためにハンドオペレーション作業になり、非日常的とはいえ200種類に及ぶ作業がありました。例えば ExcelではファイルAからファイルBに転記する作業などです。
しかしNTTデータのWinactorによるRPA導入により従来の1/4に作業時間を短縮が可能になりました。また従来は限定されたログでのみ分析を行っていましたが、RPA導入により全てのログをデータ分析の対象にすることが可能なため、より精度の高い分析ができるようになりました。
参考サイト:楽天カードがWinActorを導入。RPAで未来トレンドを手に入れた?
これから本格化する製造業での3つのRPA導入事例
製造業もRPAを積極活用。金融業と比較するとRPA導入のスピードは遅いといえますが、RPA事業社を活用し取り入れている企業が増えています。
マルコメ:卸先企業約50社のPOSデータ処理にかかる時間を約70%削減。
マルコメ株式会社(マルコメ)は長野県に本社を構える、味噌が代表的な食品メーカーです。
マルコメでは従来、各卸売企業のPOSデータ収集を行うルーティン業務がありました。細かい設定をしなければならないので手間がかかることに加えて、営業を介して取引企業に提出する資料のため正確さが求められるため単純作業ではありつつも負荷の高い作業でした。
従来は卸先企業約50社ごとに存在するPOSデータダウンロードサイトへアクセスし、条件を設定した上でデータを取得していたが1社約20分かかっていました。しかしその作業をソフトバンク社のRPAで自動化したところ、1社約5分で対応できるようになり、対応時間が約70%削減しました。
参考サイト:導入事例 マルコメ株式会社
サッポロビール:POSデータのダウンロード操作にRPA導入。年間約1100万のコスト削減。約5700時間の労働時間削減。
サッポロビールはいわずと知れた飲料メーカーです。
サッポロビールもPOSデータのダウンロード業務をユーザーシステム社のRPAで自動化しました。RPA導入前は商品カテゴリごと、取引企業ごと、合計で160回のダウンロード操作が必要で毎日一部のみしかできませんでした。また、一日中同じ作業をひたすら繰り返すだけで社員にとって苦痛でした。加えて、全てのデータがそろわないので、分析が不十分にならざるを得ませんでした。
しかしRPAによる自動化により、年間の事務コストは約1100万削減され、約5700時間の労働時間の削減に成功しました。また、これにより導入コスト一か月で回収することができました。
参考サイト:RPAの活用で、サッポロビールに年間約1100万円の削減効果
信州ハム:受注データ取得、データ変換の作業をRPAで自動化。
信州ハムは、ハムやベーコンをメインに扱う食品企業です。
信州ハムでは得意先から受注データをダウンロードし、データ変換するという作業がありました。しかし、企業ごとに受注データをダウンロードする手順は異なり、また毎日20社分行う必要があるため、煩雑さゆえにミスやもれも発生していました。
しかしユーザーシステム社のRPAを導入し、自動で得意先のデータをダウンロードしデータを変換しました。100社200スクリプトに対応することが可能になりました。その結果、対応者数が5倍になりましたが自動化していたため、人員補強を行わずに済みました。
参考サイト:今、働き方改革で注目されているRPAとは
自治体も活用!東京都など地方自治体でのRPA導入事例を3つ紹介
民間と比べるとRPA導入の速度は遅いかもしれませんが、一部で導入に踏み切る例もあり、今後さらなるRPAの活用が見込まれます。
神奈川県庁:約2000件の通勤手当と約280所属作成の災害用職員配備計画をRPAで自動化実証実験中。
神奈川県庁は2018年9月21日から12月31日までの約3か月、県庁業務に富士通と大崎コンピュータのRPAを活用して、業務効率化と業務負担軽減などを図る実証実験を開始しました。
RPAの効果を検証するのは、約2000件の職員の通勤手当の認定業務と約280所属が毎年作成している災害時用の職員配備計画の作成業務です。
富士通と大崎コンピュータは共同でこれらの作業を手作業で行う場合とRPAを用いて行う場合の時間を測定し、RPA導入の効果を計測します。
参考サイト:神奈川県、RPAロボで県庁の定型業務を自動化――富士通、大崎コンピュータと共同でRPA導入の実証実験
那覇市:国民健康保険課の納税相談業務、課税説明業務に必要なシステムのRPAによる自動化実験中。
那覇市は東京都にあるRPA事業会社のアイフォティーのRPAを採用して2018年10月から2か月間実証実験を行います。
実証実験を行うのは国民健康保険課様の納税相談業務および課税説明業務の2業務です。同市の職員様が国民健康保険に関する市民からの問合せに対応する際、従来は基幹システムや住基システム、滞納管理システムなど複数のシステムを同時に照会する必要があり、業務が煩雑となっていたために自動化の検証に踏み切りました。
参考サイト:那覇市様がRPA導入に向けた実証実験をアイティフォーと開始、国民健康保険課の業務効率化を目指す
東京都葛飾区:源泉徴収管理システムにRPAを導入決定。年間444人分の業務を削減。
東京都葛飾区は、外部従業員に報酬を支払う際の源泉徴収票の管理システムにRPAを導入することを決定しました。
同区は2017年から既にRPA導入テストを行っており、年間444人分の業務を削減できることがわかったため、2018年に導入することを決定しました。同区はRPAを導入したことにより、従来かかっていた職員の労働時間を大幅に削減できたことや、また事務ミスが減少したことにより労働生産性の向上が見受けられたそうです。
参考サイト:東京都葛飾区、源泉徴収精算にRPAを導入、検証では年間444人日の作業工数を削減
経理業務を大きく効率化するRPA導入事例
経理業務は比較的にRPAに代替するイメージがつきやすいかもしれませんね。
以下、全てRPAで自動化することができる業務です。
◆RPAツールにより効率化できる経理業務
- 帳票発行業務
- 経費精算業務
- データの突合業務
- 報告書作成
次に、実際にどのように業務を自動化しているのか図を使って解説していきます。
経理部門の代表的な業務である経費精算のRPA導入前後をみていきます。
以下は、食品メーカーのB社のRPA導入前後を図にしたものです。
RPA導入前は、紙媒体で経理に申請されます。経理担当者は、それら全てを確認し、不備があるものは再申請をお願いします。月末になると、経理部門はプレミアムフライデーであっても月末であったら残業せざるを得ませんでした。
RPA導入後は、RPAが経費精算システム、会計システムを管理しているので、経理担当者自身が経費申請の不備を確認する必要はありませんし、複数のシステムを扱って入力を繰り返す必要もありません。B社はRPAを導入したことによって月末でも月初と同様に残業をする必要がなくなりました。
営業業務を大きく効率化するRPA導入事例
営業でも間接業務やルーティン業務が多いものです。
◆RPAツールにより効率化できる営業業務
- 見積書作成
- 請求書作成
- 提案書作成
- 契約書作成
- 納品書作成
- 受注
- 発注
- セミナー案内
- 在庫管理
- スケジュール調整
これらは全てRPAで自動化させることができる業務です。
次に、実際にどのように業務を自動化しているのか図を使って解説していきましょう。
以下はオフィス家具販売のA社の営業部門で実際に導入された日立ソリューションズのRPAシステムを図にしたものです。
RPA導入以前は、取引先から送られてくる一枚一枚の注文書を営業部門の従業員が目視で確認しながら受注システムに情報を入力し、更に受注に必要な部品を発注システムに入力するという作業が必要でした。
一件あたりの処理時間は10分です。この作業に慣れている従業員ならば迷いなく処理できるかもしれませんが、新入社員や異動、また中途採用の従業員は慣れるまでに時間がかかったそうです。
また、いくら慣れている社員でも長時間同じ作業を繰り返す必要があるので、目の疲れや肩のこりを訴える方もいました。更に、この事務作業に時間を追われて営業成績を分析したり、今後の営業方針をたてたりという時間が満足にとれないでいました。
しかし、RPA導入後は、全ての作業をRPAが自動で行ってくれます。そのため、従業員は確認作業をするだけで済み、単純作業から解放されました。また、従業員が常にシステムに張り付いている必要がないため、営業成績の分析や戦略を練り直す時間もとることができるようになりました。
参考サイト:ロボットと人の未来、正しい知識で「RPA」を使いこなし、「働き方改革」を加速する
人事業務を大きく効率化するRPA導入事例
人事領域であってもRPAが活躍する業務は様々です。
◆RPAツールにより効率化できる人事業務
- 従業員の勤怠管理
- 採用管理
- 給料計算
次に、実際にどのように業務を自動化しているのか図を使って解説していきます。
以下はIT広告C社で導入された採用管理システムにおけるRPA導入前後の図式です。
PRA導入前は、C社は自社サイト、大手採用サイト複数と様々な募集媒体に応募が来る度に採用管理システムに人事担当者が応募者の情報を入力していました。また、面接前日には採用管理システムから面接担当者にリマインドのメールを送っていました。一連の作業を人事担当者が手作業で行っていた時は月約10時間かかっていました。
人事担当者が手作業で行っている場合、情報入力漏れがあったり、前日リマインドをし忘れることがあったりと様々な不備があり、人事担当者は不備の修正にも時間を割く必要がありました。
しかしRPA導入後は、全てRPAが自動で行うため、情報入力漏れや前日にリマインドをし忘れることもありません。そのため、本来の情報入力の時間は約月10時間かかっていたところから約月30分に短縮されたほかに、不備を修正する手間も減りました。その結果、人事担当者は人事戦略に余った時間をあてることができているそうです。
参考サイト:採用ロボット(RPA)革命
RPAを導入するには
RPAが向いている3作業
RPAは、人間が苦手で機械が得意な「長時間煩雑で同じ作業が続き、しかも正確に行わなければならない作業」を代替するシステムと書きました。
これらの特徴を3つにまとめるとこうなります。
- 情報が全てパソコン上に存在するもの
- 定期的に行う必要があり大量のデータを扱うもの
- 処理方法や判断規則が明確になっているもの
みなさんも、ルーティン作業をしていて「これ機械がやってくれればいいのに」と思ったことは一度ならず幾度もあると思います。RPAはまさにそのようなルーティン作業を代替してくれるのです。
RPA導入方法
STEP.1 : 自動化させる業務の棚卸を行う
「この業務自動化させたいな」と思っていきなりRPAを動かすことはできません。RPAで業務を自動化際には「業務のどの部分をRPAに任せるのか」を明確にする必要があります。そのため、RPAを動かす前に業務を見える化させる必要があるのです。
STEP.2 : 業務の取捨選択を行う
「実はこの業務引き継いだからなんとなくやっているだけだった」というようなことはありませんか。使いもしないデータや資料を作成しても無駄です。見える化させた業務が本当に行う必要があるのかどうかを検討しましょう。
STEP.3 : RPAで自動化させる
RPAでの自動化には様々な種類があります。自動化させたい業務に適したものを選びましょう。
3つの方法がありますが、画面の色や文字が変わってもRPAが画面を認識できるHTMLタグです。
- 座標認識
- 画像認識
- HTMLタグ
経理業務におけるRPAの限界
RPAの導入によって、業務効率化を進めることができます。しかし、経理領域においては、請求書・領収書の機械の読み取り精度は利用するシステムごとに異なり、システムによっては読み取られたデータを確認し修正が必須であるものもあります。したがって、RPA化のメリットを最大化するために、自社に最適な経理システムを慎重に選ぶ必要があります。
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まとめ
RPAとは人間が苦手で機械が得意な「長時間煩雑で同じ作業が続き、しかも正確に行わなければならない作業」を代替するシステムです。
RPAは金融業で積極的に、次に製造業で、更に自治体でも導入され始めており、今後もRPAの活用事例は増加していくと思われます。RPAは営業や経理以外にも人事などあらゆる業務の中で活用されるでしょう。