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他業界から建設業界に入社したら勘定科目を始め仕訳にも違いがあり、わからないことだらけですよね。
私は、建設業界外の上場企業の経理課で3年勤務していました。今回の記事を執筆するにあたって、建設会計についてリサーチしましたが、貸借対照表から損益計算書の科目すら違うことに驚きを隠しきれませんでした。
現在のあなたは「一般企業の経理の知識はあるけど、建設会計についてはわからない立場」だと思います。そこで、同じ立場の私が、建設業界にどっぷり漬かっている経理マンに代わって、あなたと同じ立場で考えてた上で記事をまとめてみました。したがって、わかりやすくまとめられているはずですので、ぜひ参考にしてみてください。
さて、今回の記事では、建設業に入社したばかりのあなたに向けて建設業会計独特の4つの勘定科目の仕訳について解説します。また、今後、建設業会計に詳しくなり、会計ソフトを選ぶことも出てくるでしょう。その際に参考になるソフトも6つ特選したのでぜひ活用してください。
建設業会計とは
建設業会計とは、建設業を営む会社に適用された会計のことです。建設業は請け負った工事により短くて数ヶ月、長くて数年の時間がかかります。しかし、数年の請負工事をしている間、まったく収益が発生しないとしたら会社は倒産してしまいます。したがって、建設業会計では、収益計上や費用計上で他の業界にはない基準を設けています。
したがって、以下では建設業会計独特の収益と費用の計上基準について解説していきます。
建設業会計の収益と費用の計上基準
建設業会計の収益と費用の計上基準については、以下の2つの基準があります。
- 工事進行基準
- 工事完成基準
工事進行基準とは、未完成の工事の進行を合理的に見積もり、その結果に応じて当期の収益や費用を計上します。
一方、工事完成基準とは、請負工事が完工し、成果物の引き渡しを行った時点で収益と費用を計上します。工事進行基準を適用するためには、以下の3つの要件があり、把握できていない場合は、工事完成基準を利用しなければなりません。
- 工事収益総額
- 工事原価総額
- 決算日における工事進捗度
私は、工事完成基準の方が馴染みがありました。なぜなら、私の会社では出荷日ベースで売上を計上しており、工事完成基準と考え方が似ていたからです。だからこそ、一般会計から建設業会計を学んだ方は私と同じ印象を抱いたのではないでしょうか?
しかし、工事進行基準については、既存の知識と照らし合わせることができないのでしっくりきませんでした。
さて、改めて工事進行基準とは、工事の進捗を合理的に見積もり、当期の収益と費用を計上する基準です。例えば、ビルの工事をしていて、期中でも要件を満たせば請求書や未完工でも、収益計上できます。また、費用の計上も木材やコンクリート等の材料費や労務費、経費を期中の費用として計上できます。
なお、工事完成基準では、工事中の費用を「未成工事支出金」と呼ばれる資産の勘定科目で処理します。
建設業会計の貸借対照表・損益計算書の勘定科目を解説
建設業会計の貸借対照表・損益計算書の勘定科目は、一般会計の勘定科目と異なります。以下では、特筆すべき勘定科目を貸借対照表と損益計算書に分けて紹介していきます。
建設業会計と一般会計の貸借対照表の勘定科目を比較
建設業会計と一般会計の貸借対照表の勘定科目の違いについて、以下の表で紹介します。
貸借対照表(一般会計)
資産 | 負債 |
売掛金 50,000 | 買掛金 40,000 |
仕掛品 70,000 | 前受金 20,000 |
… | … |
純資産 | |
… |
↓
貸借対照表(建設業会計)
資産 | 負債 |
完成工事未収入金 50,000 | 工事未払金 40,000 |
未成工事支出金 70,000 | 未成工事受入金 20,000 |
… | … |
純資産 | |
… |
建設業会計と一般会計の損益計算書の勘定科目を比較
建設業会計と一般会計の損益計算書の勘定科目の違いについて、以下の表で紹介します。
損益計算書(一般会計)
売上高 | 100,000 |
売上原価 | 60,000 |
売上総利益 | 40,000 |
… | … |
↓
損益計算書(建設業会計)
完成工事高 | 100,000 |
完成工事原価 | 60,000 |
完成工事総利益 | 40,000 |
… | … |
建設業会計の貸借対照表の勘定科目4つと仕訳を解説
建設業会計の貸借対照表の勘定科目4つと仕訳について解説します。いずれの勘定科目も建設業特有で、使い方がわからないと言われる物を厳選しました。
1.「完成工事未収入金」のポイントと注意点
完成工事未収入金は、一般会計でいうところの売掛金に当たります。使い所としては以下になります。
- 当期に工事が、完成もしくは引渡し(売上)
- 入金は翌期
決算時点で未入金の売掛金に限り、完成工事未収入金を使用します。
完成工事未収入金の仕訳
(当期)引渡し時点
完成工事未収入金100,000 / 完成工事高100,000
(翌期)入金
現預金100,000 / 完成工事未収入金100,000
2.「工事未払金」のポイントと注意点
工事未払金は、一般会計でいうところの買掛金に当たります。使い所としては以下になります。
- 当期の工事で発生した材料費・労務費・経費等
- 支払は翌期
決算時点で支払っていない買掛金に限り、工事未払金を使用します。
工事未払金の仕訳
(当期)材料費・労務費・経費の発生
経費30,000 / 工事未払金30,000
(翌期)支払
工事未払金30,000 / 現預金30,000
3.「未成工事支出金」のポイントと注意点
未成工事支出金は、一般会計でいうところの仕掛金に当たります。使い所としては以下になります。
- 当期の工事完工前に発生した材料費・労務費・経費
- 翌期に完工・引渡し(先行した費用の振替)
決算時点で売上に対応していない費用を、未成工事支出金として資産勘定を使用します。
未成工事支出金の仕訳
(当期)工事完工前に発生した材料費・労務費・経費
経費30,000 / 工事未払金30,000
(当期決算時点)先行した費用の振替
未成工事支出金30,000 / 経費30,000
(翌期期首時点)決算時点の未成工事支出金を損益計算書に振替(振り戻し)
経費30,000 / 未成工事支出金30,000
4.「未成工事受入金」のポイントと注意点
未成工事受入金は、一般会計でいうところの前受金に当たります。使い所としては以下になります。
- 期中に手付金として、お金を受け取る
- 期末に工事が完工して、引渡し
事前に受け取ったお金を前受金として、負債に計上します。なお、工事が完工し、引き渡した時点で売上に計上します。
未成工事受入金の仕訳
(当期)手付金としてお金を受け取る
現預金20,000 / 未成工事受入金20,000
(当期)工事が完工し、引渡す
未成工事受入金20,000 / 完成工事高100,000
完成工事未収入金80,000 /
建設業会計におすすめのソフト5選
建設業会計をある程度覚えたら、今度は建設業特有の会計ソフトです。
会社の規模感や予算、どの会計ソフトが相性が良いのかなど様々な要因によって建設業会計のソフトを決定していくことになります。あなたなりのこだわりや会社のこだわり、どうしても譲れない部分を決めてからソフトについて考え始めると絞りやすくなりますので、基準は事前に決めておきましょう。
私は、決算の早期化と会計方針を変更したタイミングで固定資産資産システムを入れ替えた経歴があります。その際は、目移りして回り道を沢山したので「基準を決めておいたらもっと早く決められたな」と思った記憶があります。
今回、紹介する建設業会計おすすめソフトでは、私が会計ソフトを入れ替えた際の知見を活かして、簡単にソフトについて紹介していこうと思います。よろしければ、こちらもぜひ参考にしてください。
建設業会計におすすめのソフト1.建設大臣NX
建設大臣NXは、建設業独自の会計方針を完備している会計ソフトで、建設業の会計ソフトを導入する予定があるならばまず間違いのないソフトです。価格は80万円から400万と幅広くあります。
建設業会計におすすめのソフト2.勘定奉行i10
勘定奉行i10は、中小企業の多くが利用している会計ソフトで、工事原価管理機能が充実しており、台帳のカスタマイズが可能です。価格は、スタンドアロン方式が60万円から80万円で、ネットワークモデルが200万円程です。
建設業会計におすすめのソフト3.スイート建設会計
スイート建設会計は、クラウド型で中小零細企業に対応している安価な価格設定が売りです。もちろん工事進行基準や工事完成基準にも対応しており、価格は25万円です。
建設業会計におすすめのソフト4.PCA建設業会計V.7
PCA建設業会計V.7は、建設業特有の項目に対応しているのはもちろんのこと、変わる消費税率を自動判定してくれるなど、経理を知らない人でも利用可能な会計ソフトです。価格は、スタンドアロン方式が25万円で、ネットワーク方式は80万円から利用可能です。
建設業会計におすすめのソフト5.MoneyForwardクラウド会計
MoneyForwardクラウド会計は、マネーフォワードの提供するクラウド会計です。どのパソコンからもアクセスできるので出張の多い経理マンや経理を社長が行っている1人親方の会社には特におすすめです。価格は、年額3万から6万円で利用できます。
どういった会計ソフトを利用するのが良いのか
「会計ソフトを選ぶ際の基準が特にない」といった方もいらっしゃるでしょう。その際は、契約している税理士事務所で利用しているソフトと互換性の高いソフトを利用するのが良いと思います。税理士事務所のチェックも、見たことのない元帳よりも見たことのある元帳の方が効率も良くなりますし、おすすめです。
まとめ
建設業会計の勘定科目や仕訳、会計ソフトについて、把握できましたでしょうか?
建設業会計は、一般会計と違う処理があります。また、今後は会計基準の変更なども発表されていくことでしょう。したがって、アンテナをしっかりと立てて日々の理解と把握を欠かさないようにしてください。
もし、あなたが建設業界に在籍したばかりであるならば、よろしければ以下の記事も読んでみてはいかがでしょうか?