仕訳FAQ

固定資産は使わなくなったら除却処理!除却のポイントと仕訳を徹底解説!

更新日:2024.10.26

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会議室

会社には建物や備品、車両などさまざまな固定資産があります。これらは固定資産台帳などで管理しているのが一般的です。年に一度、現物実査を行うと故障して使用していないものや、古くて廃棄したいものなどがでてきます。それらは勝手に処分してはいけません。

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固定資産に計上したものは「除却」という処理をして帳簿上の残高をけさなければならないからです。除却にはいくつかのパターンがあり、仕訳で使う勘定科目もちがいます。

この記事では長年経理を担当している筆者が固定資産の除却処理のポイントと仕訳について詳しく解説します

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固定資産の除却とは?

固定資産は取得した時点から減価償却を始め、最終的に除却します。固定資産の除却とは、事業で使用することを中止して、帳簿から除く処理のことです。簡単にいうと、使わなくなった固定資産の簿価(固定資産の残高)をなくすことです。

減価償却が進み固定資産の資産価値がなくなっても、その資産を使用している限り除却することはできません固定資産台帳に記載しておきます。除却は使用を中止した場合や廃棄する場合に行いますので注意しましょう。

また、償却済みの資産が壊れたからといって除却をせずに廃棄してはいけません。帳簿には資産価値1円として載っていますから、廃棄とともに除却の仕訳をします。

会計上は帳簿から固定資産を除いた時点で固定資産除却損を計上しますが、税務上は固定資産を廃棄するまでは除却損を損金に算入できませんので注意しましょう。廃棄したことを確認できるマニフェスト(産業廃棄物管理票)などの書類や資料は保存しておくとよいでしょう。

固定資産の償却処理により除却の仕訳はかわる

固定資産の償却方法により除却の仕訳はかわります固定資産の償却方法には「直接法」と「間接法」があります。「直接法」は減価償却しながら固定資産の簿価を減額する方法です。「間接法」は減価償却累計額に減価償却額を積み上げていく方法で、固定資産の簿価は取得時の簿価のままです。

固定資産の除却を考える前に、まずは自社が行っている固定資産の償却方法を確認しましょう。償却方法により仕訳で使う勘定科目もちがってきますので注意しましょう。

固定資産の記帳方法と仕訳

固定資産の記帳には「直接法」と「間接法」があります。それぞれの取得から除却までの仕訳を確認していきましょう。会社により科目の設定や利用している会計ソフトの設定などさまざまなパターンがありますが、例として機械装置が故障して廃棄する仕訳をご紹介します。

(1) 直接法

固定資産を減価償却しながら帳簿価額を直接減らしていきますので、除却の仕訳をするときは減額した簿価を固定資産から除く処理となります

【固定資産を取得したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
機械装置1,000,000預金1,000,000

【固定資産を償却したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費200,000機械装置200,000

 【償却累計450,000の時点で除却するときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
固定資産除却損550,000機械装置550,000

(2) 間接法

固定資産を減価償却するときに減価償却累計額を使う方法です。固定資産の簿価は取得時のままで除却時に減価償却累計額とあわせて処理します

【固定資産を取得したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
機械装置1,000,000預金1,000,000

 【固定資産を償却したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費200,000減価償却累計額200,000

 【償却累計450,000の時点で除却するときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却累計額450,000機械装置1,000,000
固定資産除却損550,000  

 基本的な固定資産の処理のながれをご紹介しましたが、実際の除却では廃棄処分費がかかったり、下取りにだしたり、売却して利益がでることもあります。

減価償却方法については以下の記事で詳しく解説しています。

固定資産の除却処理と仕訳

固定資産の除却パターンには費用が発生したり、下取りにだして収益がでたりと様々なパターンがあります。実務で発生するパターンと間接法の仕訳をみていきましょう。

(1) 簿価1円の固定資産を除却した場合

簿価1円の固定資産とは耐用年数の減価償却がおわった後に引き続き使用している状態の固定資産です償却が済んでも引き続き使用している機械や車両、建物などが該当します。使用を中止した時の除却の仕訳は次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却累計額999,999機械装置1,000,000
固定資産除却損1  

(2) 除却して除却損が発生した場合

固定資産が故障するなどして耐用年数の途中で除却する場合があります。その場合は減価償却がおわっていませんので未償却の部分が除却損となります

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却累計額800,000工具・計測器1,000,000
固定資産除却損200,000  

(3) 廃棄費用が発生した場合

除却するためにかかった廃棄費用や撤去費用などは固定資産除却損として処理します。仮に5,500円の廃棄費用を現金で支払った場合の除却の仕訳は次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却累計額800,000工具・計測器1,000,000
固定資産除却損200,000現金5,500
固定資産除却損(廃棄費用)5,000  
仮払消費税(廃棄費用に係る消費税)500  

(4) 売却益が発生した場合

車両など中古品としても一定の価値がある固定資産は売却することもあります。処理としては除却と同時に売却です。場合によっては下取りで売却益が生じることがあります。その場合は固定資産の除却と同時に売却益も処理します

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金(売却収入)400,000車両運搬具2,000,000
減価償却累計額1,700,000固定資産売却益100,000

売却収入には消費税が課税されていることがあります。売却益は不課税ですから消費税の処理をしなければなりません会計ソフトを使用して固定資産の管理をしている場合は、除却処理時に売却額を入力すれば自動で消費税の仕訳まで行われるものもありますので確認してみましょう。

(5) 売却価格が簿価にみたない場合

除却する固定資産を廃棄するとスクラップに値段がつくことがあります。収入は除却の仕訳とあわせて処理します

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金(売却収入)10,000備品500,000
減価償却累計額340,000  
固定資産売却損150,000  

車両などの売却額が簿価にみたない場合も同様の仕訳をし、下取りとの差額が売却損となります。

車両のリサイクル預託金の除却時の処理

固定資産として車両を購入すると、車両代金とあわせてリサイクル預託金を支払います。通称リサイクル料とよばれるものですが、これはあくまで預託金です。

リサイクル預託金は車を廃棄するときのものですので転売や下取りにだすと返還される仕組みです。そのため車両の購入時には返還される可能性があるため費用処理することができません

預託金の処理科目は、預託金・保証金・預け金などになりますので自社の勘定科目設定に従い処理しましょう。

リサイクル預託金と同時に、「資金管理料」も発生します。こちらは車両の廃棄・売却に関係なく返還されませんので、車両購入時に手数料などで費用処理しましょう

【車両を取得したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
保証金(リサイクル預託金)12,000預金12,300
支払手数料(資金管理料)300  

 【車両を廃棄したときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料12,000保証金(リサイクル預託金)12,000

 【車両を売却してリサイクル料が戻ってきたときの仕訳】

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
預金12,000保証金(リサイクル預託金)12,000

有姿除却とは?

固定資産の除却には「有姿除却」という方法があります。有姿除却では廃棄処分していなくとも、処分見込額を差し引いた額を固定資産除却損として計上することができます

【有姿除却】
次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。

(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

引用:国税庁|除却損失等の損金算入

有姿除却を行う場合は、その資産が今後事業に使用されることがないということが絶対条件です一時的に使用を停止する場合は要件に該当せず除却できません。

例えば特定の製品製造のための機械装置で、製品が廃番や製造中止になった場合で、その機械装置が他の製品の製造に利用できない場合などが該当します。有姿除却は使用される可能性がないという証明が重要ですので処理時には注意しましょう。

ソフトウエアの除却

無形固定資産であるソフトウエアも除却が必要です。資産の特性上、償却がおわる前に除却することもあるでしょう。その場合はソフトウエア除却損を計上することができます。ソフトウエアの除却については国税庁が詳しい要件を示していますので確認しておきましょう。

【ソフトウエアの除却】
ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実があるときは、当該ソフトウエアの帳簿価額(処分見込価額がある場合には、これを控除した残額)を当該事実が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

(1) 自社利用のソフトウエアについて、そのソフトウエアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウエアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウエアを利用することになり、従来のソフトウエアを利用しなくなったことが明らかな場合
(2) 複写して販売するための原本となるソフトウエアについて、新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内りん議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合

引用:国税庁|除却損失等の損金算入

この要件をみたす場合は次のような仕訳をしてソフトウエアの除却をします。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却累計額600,000ソフトウエア(無形固定資産)1,000,000
ソフトウエア除却損400,000  

 ソフトウエアの会計処理については「ソフトウエアの会計処理は難しい?パターン別の処理方法を徹底解説!」で詳しく解説しています。

まとめ

固定資産の除却は使用しなくなった資産についての処理のため、ついつい忘れがちです。しかし、帳簿に載っている以上、廃棄するのであれば必ず「除却」しなければなりません。

処理モレを防ぐために定期的な現物実査をおこない、資産の状況を把握して整理していくことが必要ではないでしょうか

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