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収入印紙が不要な文書の具体例11選を紹介します。
課税文書に当たるかどうかは、文書のタイトルだけでなく実質的な内容によるので、判断が難しいことがあります。
筆者は上場企業での経理・財務経験があり、収入印紙の貼られた領収書や契約書を扱う業務を行っていました。
この記事が、印紙税法に関する知識を深める参考になれば幸いです。
収入印紙が不要な事例11選【判断のポイント】
この章では、収入印紙の要・不要の判断のポイントを解説したあと、一般的な会社の取引で使用される収入印紙が不要な文書で、判断に迷いやすいもの〇選を紹介します。
収入印紙が不要か判断するポイント【非課税文書・不課税文書】
収入印紙が不要な文書は非課税文書もしくは不課税文書です。
- 不課税文書:印紙税法の課税文書ではないもの
- 非課税文書:印紙税法の課税文書に該当するが、例外的に課税されないもの
印紙税がかかる文書は、印紙税法に定められた20の文書。これに当てはまらなければ不課税文書で、収入印紙は不要です。
非課税文書の代表的な例としては5万円未満の領収書。領収書には収入印紙が原則必要ですが、5万円未満であれば非課税文書です。
非課税文書は国税庁の「印紙税額一覧」から見ることができます。
国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」も併せて確認すると良いでしょう。
それでは、以下で収入印紙が不要な文書の例を紹介します。
収入印紙が不要な例①5万円未満の領収書・レシート
領収書の金額が5万円未満であれば収入印紙は不要です。
5万円未満の金額の判断については、税込み額のみ記載している場合には税込み額で、消費税額を分けて記載していれば税抜き額で判断します。
消費税額を分けて表示していれば、収入印紙を払わずにすむ場合もあるので、領収書にはなるべく総額だけでなく消費税額を分けて記載することが望ましいです。
なお、手書きの領収書だけではなく、レジから出るレシートについても同じように、5万円未満であれば収入印紙が不要、5万円以上は収入印紙が必要です。
レシートも印紙税法で定める第17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当するからです。
参考:国税庁「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書」
収入印紙が不要な例②クレジットカードで払ったことを明記した領収書
金額が5万円以上の領収書でも、クレジットカードで支払ったことを明記してあれば、収入印紙は不要です。
クレジットカードでの支払いは厳密にいえば信用取引であり、お金のやり取りが発生していないので、課税文書にあたらないからです。
ただし、領収書にクレジットカード払いであることを記載していない場合には、通常の領収書とみなされて課税文書となることがあるので注意してください。
収入印紙が不要な例③PDFやFAXで発行した領収書
領収書をPDFで発行して電子メールで送ったり、FAXで送ったりした場合には、5万円以上の取引であったとしても収入印紙は不要です。
実際に書面を発行していないので、課税文書を作成したとみなされません。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。
国税庁「コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」
金額の大きな取引では、電子上での領収書発行で節税するという選択肢を知っておくと良いでしょう。
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収入印紙が不要な例④請求書
請求書には原則、収入印紙が不要です。課税文書にあてはまらない「不課税文書」に該当します。
ただし、請求書兼領収書の場合や請求書というタイトルであっても実質的には領収書として機能する文書の場合には、領収書とみなされて課税文書になるので注意しましょう。
例えば、請求書に「領収済」などの印鑑を押した場合には、領収書と同じ機能がある文書としてみなされます。
詳しくは以下の記事で解説しています。
収入印紙が不要な例⑤注文書
注文書には収入印紙が必要なケースは少ないですが、まれに課税文書に該当する場合があります。
✅注文書に収入印紙が必要なケース
- 基本契約を交わしていて注文書で契約が成立する場合
- 注文書に双方の印鑑があり、契約書とみなされる場合
請求書兼領収書の例と同じように、注文書というタイトルであっても実質は契約書として機能する場合には、収入印紙が必要です。
ただし、一般的には、注文書のみで契約書となるケースは少ないといえます。
収入印紙が不要な例⑥注文請書
注文請書とは、注文書に対して「確かに注文を受け付けました」という意味で発行される文書です。
注文請書の収入印紙の要・不要は基本的に次の基準で判断します。
【注文請書の収入印紙の要・不要の判断】
- 収入印紙が必要:請負契約の1万円以上の注文請書
- 収入印紙が不要:売買契約の注文請書
工事や警備などの請負契約に関して発行される文書は第2号文書「請負に関する契約書」とみなされます。
契約書、という名称でなくとも、実質的には契約書としてみなされるからです。
注文請書の収入印紙については以下の記事にまとめています。
収入印紙が不要な例⑦契約金額1万円未満の契約書
契約金額が1万円未満の契約書は、非課税文書なので収入印紙は不要です。
収入印紙が不要な例⑧電子契約書
PDFにタイムスタンプを押すなどの方法で電子上で発行された契約書には、収入印紙が不要です。
電子上で作成した契約書は課税文書を作成したとみなされないためです。
双方の合意があれば、契約書を電子上で発行することも検討すると節税になるでしょう。
参考:国税庁「回答事例」
収入印紙が不要な例⑨リース契約
コピー機や車などのリース契約の契約書には収入印紙は不要です。
リース契約は売買契約もしくは賃貸借契約なので、これらの契約書は不課税文書です。
動産売買契約書や動産賃貸借契約書など、機械などの動産の売買や賃貸借にかかわる契約書については基本的に収入印紙が不要です。
なお、コピー機などの保守契約は請負契約なので収入印紙が必要です。
収入印紙が不要な例⑩雇用関係の契約書
以下の雇用に関する契約書は不課税文書なので、収入印紙は不要です。
✅ 収入印紙が不要な雇用関連の契約書の例
- 雇用契約書
- 出向契約書
- パートタイマー契約書
- 労働者派遣契約書
- 秘密保持契約書
収入印紙が不要な例⑪建物賃貸借契約書
建物の賃貸借契約書には収入印紙が不要です。
ただし、土地の賃貸借契約書は第1号の2文書「土地の賃借権の設定に関する契約書」にあたり、収入印紙が必要なので注意して下さい。
参考:国税庁「No.7106 建物の賃貸借契約書」
収入印紙の要・不要の判断に迷ったら【管轄税務署に相談が確実】
印紙税法では、課税文書に当てはまるものに課税、印紙税法に書かれていない文書には課税しない、としています。(課税文書限定列挙主義)
印紙税法に書かれていない文書を確認することは難しいです。また、文書のタイトルではなく、内容で実質的に課税文書とみなされることもあります。
判断が非常に難しく、個別の対応が必要になってきます。
判断に迷ったときには、管轄の税務署に電話などで問い合わせるのが確実です。
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収入印紙の要・不要の判断で知っておきたい基礎知識
この章では、収入印紙について知っておきたい基礎的な事項をまとめています。
そもそも収入印紙とは?貼らないとどうなる?
収入印紙とは、印紙税法に定められている20の文書を作成した際に貼り付けることで印紙税を納めた証明となるものです。
課税文書に収入印紙が貼られていないことが税務調査などで発覚すると、過怠税として本来納付する印紙税額の3倍を納付する必要があります。(自己申告の場合は1.1倍)
収入印紙には消印(割印)が必要
収入印紙は貼り付けただけでは、実は納税したことになりません。
収入印紙の模様部分と台紙をまたぐように押印する消印(割印)が必要です。
収入印紙の再利用を防ぐことが目的です。「消印(割印)」という名称ですが、署名でもOKです。
消印(割印)については以下の記事で図解しています。
収入印紙が不要な文書|まとめ
収入印紙が不要な文書の事例11選を解説しました。
- 5万円未満の領収書・レシート
- クレジットカードで払ったことを明記した領収書
- PDFやFAXで発行した領収書
- 請求書
- 注文書
- 注文請書
- 契約金額1万円未満の契約書
- 電子契約書
- リース契約
- 雇用関係の契約書
- 建物賃貸借契約書
課税文書に当てはまるかどうかは、個別の取引ごとに行う必要があるので判断が非常に難しい場合もあります。
収入印紙の要・不要について判断に迷う場合は、管轄の税務署に事前に相談するのが確実です。