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請求書には収入印紙が原則として不要です。ただし、領収書を兼ねた請求書については収入印紙が必要な課税文書になります。
この記事では以下について解説します。
✅ この記事でわかること
- 請求書に収入印紙が必要かの判断の仕方
- 課税文書かどうかを見分ける方法
- 請求書に収入印紙を貼る時のポイント
筆者は上場企業の経理担当として、請求書を処理する業務を行っていた経験があります。収入印紙の管理も業務として行っていたので、その知識が参考になれば幸いです。
請求書の基礎知識については「請求書の書き方を見本で解説【失敗しない書き方・送り方】」を参考にしてみてください。
請求書に収入印紙はいくらから必要?判断基準を解説!
請求書には原則、収入印紙は不要です。
ただし、請求書が領収書を兼ねている場合には収入印紙が必要な課税文書にあたることもあります。
請求書に収入印紙が必要かどうかの判断のポイントを紹介します。
請求書に収入印紙は原則いらない
請求書は印紙税法で定める20種類の課税文書に含まれません。
したがって、原則は請求書に収入印紙を貼る必要はありません。
主な課税文書の例は以下の通りです。
【課税文書の例】
- 代金5万円以上の領収書
- 契約書
- 請負の契約書
- 約束手形・為替手形
- 預金証書
- 保険証券
- 配当金領収書
最新の課税文書については国税庁ホームページから確認しましょう。
請求書に収入印紙が必要な場合|5万円以上の領収書を兼ねた請求書
請求書の中には、領収書を兼ねたものがあります。5万円以上の請求書兼領収書には収入印紙が必要です。
たとえ文書のタイトルが「請求書」となっていたとしても、実質は領収書として機能するなら、課税文書である領収書とみなされるからです。
例えば、以下のような請求書は収入印紙を貼る必要があります。
【収入印紙が必要な請求書の例】
- 「代金受領済み」などの記載がある
- 「代済」「相済」「了」などの記載がある
- ゴム印を押すなど代金受領済みかわかるようになっている
自社の発行する請求書が、領収書にあたらないか確認しておきましょう。
課税文書になるかは書類の内容で判断しよう
課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。
国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
請求書という名称でも実質は領収書、というように文書のタイトルではなく実質的に課税文書になるかどうかで判断する視点が大切です。
課税文書にもかかわらず、収入印紙を貼り忘れたことが税務調査などで発覚すると、実際に貼る収入印紙の額の3倍が過怠税として徴収されます。(自己申告なら1.1倍)
なお、PDFをメールで送るなど電子上で発行した請求書兼領収書であれば、課税文書にはあたりません。先方がプリントアウトして保存していても印紙は不要です。
ただし、PDFで作成した請求書兼領収書を発行者側がプリントアウトして先方に渡すと課税文書となります。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。(中略)ファクシミリや電子メールで文例3から文例6までのような文書を送信した後に、改めて、文書を持参するなどの方法により正本となる文書を貸付人に交付する場合には、その正本となる文書は、それぞれ印紙税の課税文書となります。
国税庁「コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」
節税の知識として知っておくと良いでしょう。
請求書に収入印紙を貼る際の3つのポイント
請求書に収入印紙が必要な場合、貼り付ける際のポイント3つを解説します。
✅ 請求書に収入印紙を貼る際のポイント
- 請求書に貼る収入印紙はいくら?金額一覧
- 収入印紙には割印(消印)を忘れずに
- 貼り付ける場所はどこでもOK
ひとつずつ解説していきます。
請求書に貼る収入印紙はいくら?金額一覧
請求書に収入印紙が必要な場合、領収書と同じ第17号文書に該当すると考えられます。
請求書の記載の額によって貼り付ける収入印紙の額が異なります。
✅ 請求書に収入印紙が必要な場合の金額一覧
受領金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円以上~200万円未満 | 400円 |
200万円以上~300万円未満 | 600円 |
300万円以上~500万円未満 | 1,000円 |
500万円以上~1,000万円未満 | 2,000円 |
1,000万円以上~2,000万円未満 | 4,000円 |
2,000万円以上~3,000万円未満 | 6,000円 |
3,000万円以上~5,000万円未満 | 10,000円 |
5,000万円以上~1億円未満 | 20,000円 |
1億円以上~2億円未満 | 40,000円 |
2億円以上~3億円未満 | 60,000円 |
3億円以上~5億円未満 | 100,000円 |
5億円以上~10億円未満 | 150,000円 |
10億円以上 | 200,000円 |
金額の記載がないもの | 200円 |
国税庁「印紙税額」より
なお収入印紙代金の負担義務があるのは請求書の発行者です。領収書の収入印紙代金の納税義務者は領収書の発行者のため、同様の扱いとなります。
請求書に貼る収入印紙には割印(消印)を忘れずに押印
収入印紙は貼りつけただけだと納税したことになりません。
収入印紙の彩文(模様部分)と、台紙をまたぐようにして印鑑を押す割印(消印ともいう)をしてはじめて納税したことになります。印紙税法で決められていますから、忘れずに割印をするようにしてください。
割印(消印)の目的は収入印紙の再利用を防ぐことです。ポイントは次の3つです。
- ゴム印やシヤチハタもOK
- 氏名、名称などを表示した日付印もOK
- 自署の場合は氏名でも会社名でもOK
割印(消印)という名称ですが、ボールペンで自署してもOKです。ただし、再利用を防ぐためなので、㊞のように誰が記入したかわからない自署では割印として認められませんから注意しましょう。
割印(消印)のやり方については以下の記事で図解しています。
貼り付ける場所はどこでもOK
収入印紙を貼り付ける場所は、特に決められていません。
一般的には、書類上部の左端もしくは右端・書類した部分の空きスペースに貼り付けます。
割印(消印)することも考慮して、貼り付けやすい位置に貼ればOKです。
請求書に誤って収入印紙を貼り付けたら?【還付される】
収入印紙が不要な請求書に誤って貼り付けてしまった場合には、税務署で手続きをすると還付されます。
✅ 請求書に誤って収入印紙を貼った場合の対応
- 収入印紙をはがさずに、請求書ごと税務署の窓口に持っていく
- 税務署で「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記入
- 請求書と印紙税過誤納確認申請書を税務署窓口に提出
- 後日、銀行もしくは郵便局で還付
収入印紙は少しでも破損していると還付を受け付けてもらえません。
請求書に誤って収入印紙を貼り付けてしまった場合には、切り取ったりはがしたりせずにそのまま税務署の窓口に持っていくようにしてください。
その場での現金による返金ではなく、後日、銀行や郵便局を通じて還付されます。
請求書に収入印紙が必要?|まとめ
- 請求書には原則として収入印紙が不要
- 領収書を兼ねた請求書は領収書とみなされる
- 文書の内容で課税文書かを判断する
請求書には収入印紙は不要ですが、実質は領収書としてみなされる文書であれば、取引額が5万円以上であれば課税文書になります。
課税文書かどうかの判断は、文書のタイトルではなく実際の機能や目的を考えることが大切です。
収入印紙の貼り忘れは、請求書・領収書を受け取った取引先にも迷惑がかかりますから、慎重に判断するようにしましょう。
PDFなど電子上で発行した請求書兼領収書には、5万円以上であっても収入印紙が不要です。節税の方法として知っておくと良いですね。