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注文請書に収入印紙が必要なのは、請負契約に該当して印紙税法上の第2号文書にあたるときです。
一方で、売買契約とみなされる注文請書には収入印紙は不要です。
「注文請書に収入印紙は必要」とだけ書いているサイトが多く見られますが、文書の内容によって収入印紙が不要なことがあるので注意してください。
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この記事のポイント
- 請負契約に該当する注文請書には収入印紙が必要
- 売買契約に該当する注文請書には収入印紙は不要
- 1万円未満の契約・電子上の契約には収入印紙が不要
- 別途契約書を交わして収入印紙を貼っているならば注文請書に印紙
筆者は上場企業で経理担当として多くの契約書や収入印紙を扱う仕事をしていました。この記事では、注文請書の収入印紙に関する内容を法令根拠をもとにわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
注文請書に収入印紙は必要?契約書ではないのになぜ?
注文請書には、収入印紙を貼る必要があるのでしょうか。
結論から言うと、請負契約に該当する注文請書には収入印紙が必要、売買契約に該当する注文請書には不要です。
この章では、以下の3点を解説していきます。
- 注文請書に収入印紙が必要な場合と法令根拠
- 注文請書に貼る収入印紙の金額
- 注文請書に収入印紙が不要の場合
請負契約の注文請書に収入印紙は必要【法令根拠】
請負契約の1万円以上の注文請書には収入印紙が必要ですが、売買契約の注文請書には収入印紙が不要です。
印紙税法が定める第2号文書「請負に関する契約書」にあたるかどうかが、収入印紙が必要な注文請書となるかの判断ポイントになります。
収入印紙が必要な第2号文書の例
- 工事請負契約書
- 工事注文請書
- 物品加工注文請書
- 広告契約書
- 会計監査契約書
- スポーツ選手・俳優などの専属契約
(国税庁「No.7102 請負に関する契約書」より)
請負契約とは、建設工事などの有形のものを完成させて引き渡すものや、警備や清掃などの役務の提供などを差し、実質的に請負契約となる注文請書には収入印紙が必要です。
一方で、物品の売買に関する注文請書は、継続する売買契約で第7号文書になるものをのぞいて不課税文書。収入印紙は不要です。
国税庁のサイトには以下のように記載されています。
✅ 請負契約と売買契約の判断基準
区分 | 内容 | 例 |
---|---|---|
請負契約 | 注文者の指示に基づき一定の仕様又は規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの | ・家屋の建築 ・道路の建設 ・橋りょうの架設 |
注文者が材料の全部又は主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容としたもの | ・生地提供の洋服の仕立て ・材料支給による物品の製作 | |
製作者の材料を用いて注文者の設計又は指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの | ・船舶、車両、機械、家具等の製作 ・洋服等の仕立て | |
一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするもの | ・大型機械の取り付け | |
修理又は加工を内容とするもの | ・建築・機械の修繕、塗装 | |
売買契約 | 一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの | ・テレビを購入した時のアンテナの取付けや配線 |
製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い、工作物を製作し、供給することを内容とするもの | ・建売住宅の供給(不動産の譲渡契約書) | |
あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの | ・カタログ又は見本による機械、家具等の製作 |
上記の「請負契約」に該当する注文請書なら収入印紙が必要、「売買契約」に該当する注文請書なら収入印紙は不要です。
契約書には収入印紙を貼るイメージがあるけれど、注文請書はなぜ収入印紙を貼る対象である「課税文書」になることがあるのでしょうか。
理由は、注文請書は、「契約書」と名前がつかないものの、注文書とセットで契約が成立したとみなされるから。
つまり、実質的には契約書と同じような文書といえます。
注文請書の仕組みについては次の章で解説します。
注文請書に貼る収入印紙の金額
注文請書に貼る収入印紙の金額は、契約の金額によって以下のように定められています。
契約の金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
200万円以下 | 400円 |
300万円以下 | 1,000円 |
500万円以下 | 2,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 |
1億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 100,000円 |
10億円以下 | 200,000円 |
50億円以下 | 400,000円 |
50億円超 | 600,000円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
第17号文書である領収書とは金額が異なるので注意してください。
また、契約書に消費税込額のみ記載している場合には、その金額で上記の一覧表にあてはまる金額の収入印紙が必要です。
税抜額で記載があれば税抜額が対象となります。
税抜額・消費税額・税込額をわけて表記すると節税になる可能性がありますから、別表記が望ましいでしょう。
注文請書に収入印紙が不要な場合
注文請書には収入印紙が不要な場合があります。
注文請書に収入印紙が不要な場合
- 売買契約に該当する場合
- 契約額が1万円未満の場合
- 電子上の契約の場合
- 契約書に別途収入印紙を貼り付けている場合
売買契約に該当する場合
先ほど述べた通り、売買契約に該当する注文請書には収入印紙が不要です。
例えば、カタログからオフィス用品を選んで大量に複数種類のものを注文する場合、注文請書を確認のために発行するケースが多いです。
これは売買契約にあたるので収入印紙が不要となります。
国税庁「物品販売の注文請書」も参照してください。
契約額が1万円未満の場合
注文請書に記載された金額が1万円未満の場合には収入印紙が不要です。
金額の記載がない場合には200円の収入印紙を貼る必要があります。(第7号文書に該当)
また、注文請書の消費税の記載方法によっては収入印紙が必要になる可能性があります。
税抜き額、消費税額は分けて記載しましょう。
電子契約の場合
以下の場合には注文請書に収入印紙を貼る必要はありません。
- メールに注文請書をPDFなどで添付して送る場合
- FAXで注文請書を送付する場合
- 電子上でタイムスタンプ・電子署名などで契約した場合
注文請書に限らず、電子上の契約書については収入印紙は不要です。
ただし、PDFを印刷して渡した場合には文書として扱われるので、収入印紙を貼る必要があります。
契約書に別途収入印紙を貼り付けている場合
注文請書とは別に契約書を交わし、収入印紙を貼り付けている場合には注文請書には収入印紙は貼らなくてOKです。
注文請書とは?【注文書とセットで契約とみなされる】
「注文請書ってそもそも何?どういう意味があるの?」
この疑問を解決します。
そもそも注文請書とは?
注文請書は「請書(うけしょ)」とも呼ばれて、「注文を承りました」ということを証明する書類です。
上の図のように、お客さんからの注文書への返答として、注文請書が使われます。
注文書・注文請書が交わされると、契約書という名称の書類ではないものの、契約が発生したとみなされます。
したがって、注文請書は契約書と同じように収入印紙がかかるのです。
注文請書と見積書・依頼書の関係
注文請書のように取引先と交わされる文書については、見積書や依頼書があります。
それぞれの文書が持つ意味合いをまとめると次の通りです。
- 依頼書:見積もり依頼や資料請求などの依頼をするときに送る文書
- 見積書:料金がいくらかかる見込みかを示す文書
- 注文書:客が発注の意思表示を示すための文書
- 注文請書:注文を受けたことを示すための文書
上記の書類は必ず作成しなければならない、というものではありません。
特に、注文請書の作成は商慣習上において、作成が求められるケースは多くはなく、注文書を受け取った時点で注文を受けたとしている会社もあります。
なお2022年1月の電子帳簿保存法の改正に伴い、注文書の電子保存に関して変更点がありました。さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
注文請書の書き方・収入印紙の貼り方
この章では、注文請書の書き方を解説していきます。
注文請書に必ず記載したいのは以下の6点です。
- 発注日
- 発注者の情報(会社名・住所・連絡先)
- 注文請書の発行者の情報(会社名・住所・連絡先)
- 発注内容(〇〇業務委託、など)
- 金額
- 支払い条件(月末払いなど)
以下で注文請書の書き方のポイントを解説します。
注文請書の書き方のポイント【消費税は別表記】
注文請書の書き方で注意したいのは金額の記載。
税抜き額、消費税額、税込み額を分けて表記したほうが良いでしょう。
上述の通り、収入印紙が必要な注文請書の場合、税込み額のみの記載だと収入印紙を多く貼らなくてはならない場合があるからです。
経理担当としても、消費税額がいくらなのかはっきりわかる方が経理処理にも便利です。
注文請書の収入印紙の貼り方のポイント
注文請書に収入印紙が必要な場合には、割印(消印)を忘れずに。
割印(消印)とは、収入印紙の模様部分と台紙をまたいで押す印鑑(署名も可)のことです。
収入印紙は、割印(消印)がなければ納税したことにならず、過怠税が発生する可能性があるので注意しましょう。
『割印(消印)』の詳しい方法についてはこちらの記事にまとめています。
注文請書の収入印紙に関する疑問を解決!
収入印紙に消費税はかかる?
収入印紙の購入は課税の対象としてなじまないので、基本的には消費税がかかりません。(非課税)消費税がかからないのは郵便局のほか、印紙売りさばき所として業務委託されているコンビニでの購入です。
一方、金券ショップは印紙売りさばき所ではないため、収入印紙を購入した場合には消費税がかかります。ただし、金券ショップでは額面よりも安く収入印紙を購入できますし、消費税が課税されるので仕入税額控除を使うと節税ができます。
収入印紙を貼らない、割印(消印)なしだとどうなる?
収入印紙を貼る必要がある文書にもかかわらず、収入印紙を貼らなかった場合には過怠税が課せられます。
過怠税は本来貼るはずだった収入印紙の額の3倍。(自己申告すれば1.1倍)
また、収入印紙に割印(消印)がなければ、納税したとみなされませんから、過怠税の対象になることがあります。
税務調査での調査項目としてチェックされますから、貼り忘れ・消印漏れのないようにしたいですね。
収入印紙の代金は誰が払う?
注文請書の収入印紙の代金は、契約書と同じく注文者側、受注者側、両者が連帯して負担するのが民法上の決まりです。
「連帯」とは、必ずしも収入印紙代の半額ずつを負担しなければならない、というものではなく、両者の合意があればどちらか一方が負担しても構いません。
金額がそれほど大きくなければ、注文請書の発行者が収入印紙代を負担していることが多いです。
取引額が大きい場合には、収入印紙代の負担について双方で話し合っておくことが望ましいでしょう。
なお、領収書の収入印紙は、発行者が負担するとされていますので、扱いが異なります。
注文請書は請負なら収入印紙が必要!
注文請書の収入印紙は、注文の内容が請負で、印紙税法上の2号文書にあたるのであれば収入印紙が必要です。
物品の売買など、売買契約に該当する注文請書には収入印紙が不要ですから、作成する注文請書が課税文書に該当するかどうかは国税庁のサイトで確認しましょう。
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