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『領収書に印鑑がないと、無効なの?』
結論から言えば、領収書には印鑑は必要ありません。
領収書の必須項目のなかに印鑑は含まれていませんし、法律上で決まっているものでもありません。
しかし、一般的な領収書には会社の角印が押されます。偽造防止のためや商慣習上、押印しているのです。
この記事では、以下について解説します。
- 領収書に印鑑が必要ない理由
- 一般的な領収書の印鑑の押し方
- 領収書の印鑑は誰が押す?押し忘れたら?などの疑問を解決
筆者は上場会社の経理担当として多くの領収書の経費処理を行っていました。
経理目線での解説も併せて行うので、領収書を発行する業務にかかわる人はもちろん、経費精算に領収書を使う人、経理担当の人も参考にしてみてくださいね。
領収書に印鑑は必要なのか?【結論:必須ではない】
領収書に印鑑は必要なのか。結論から言うと、領収書の印鑑は必須ではありません。
法律上、領収書への印鑑が必要とはされていません。
ただし、商慣習上、ほとんどの領収書には印鑑が押されています。
この章では領収書の印鑑の法律上の扱いと、社会通念上の印鑑の扱いを見ていきます。
領収書に印鑑は必須ではない
領収書に印鑑を押すことは必須ではありません。
ただし、後述しますが収入印紙の割印(消印)は必須です。
ここで述べているのはあくまでも、領収書の会社名にかぶせて押す印鑑のことを指しています。
領収書は所得税や法人税を計算するときに、証憑として重要な書類になります。
国税庁は領収書への記載が必要な項目を以下の5つとしています。
- 領収書の作成者・会社名
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとの合計金額
- 領収書の宛名
国税庁「No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた」より
このように、印鑑は領収書への必須項目に含まれていません。
しかし、一般的な領収書には印鑑が押してありますよね。必須ではないですが印鑑は押してあった方が良いのです。
偽造防止のために領収書の印鑑はあったほうが良い
領収書に押す印鑑は会社の角印が使用されます。これには、領収書の偽造を防止する目的があります。
印鑑なしの領収書であっても、必須事項が書かれていれば領収書として認められますが、簡単に偽造できてしまいます。
領収書を偽造されてしまうと会社の信用にもかかわりますし、偽造した会社が納める税金が減ってしまう、不正に経費精算した社員にお金が振り込まれてしまうなどの問題があります。
領収書への印鑑は、「会社が正式に発効した書類ですよ」と証明する目的で押されています。
領収書に印鑑がないと失礼だと思われるかも
一般的に領収書には印鑑が押されているもの、と考える人も多いです。
いくら法律上に問題がないとしても、取引先から「失礼だな」と思われないためにも印鑑は押しておいた方が無難です。
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領収書に印鑑がない!経費にしても大丈夫?【税務上OK】
従業員が経費精算のために提出してきた領収書に、印鑑がない!
このような場合、領収書は有効なのか、無効なのか。
印鑑がなくても領収書としては有効ですし、経費にしても問題なし。
この章では経理上・税務上の領収書の印鑑の取り扱いについて解説します。
印鑑なしの領収書も経費にしてOK
印鑑なしの領収書は、税法上は経費にしても問題ありません。
先ほど述べた通り、以下の5点が領収書に書かれていれば、領収書として有効です。
- 領収書の作成者・会社名
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとの合計金額
- 領収書の宛名
なお、レシートも以下が記載されていれば領収書の代わりとして認められます。
- 店の名前
- レシートの発行日
- 商品名
- 金額
レシートには宛名が記載されていませんが、小売業(コンビニ・スーパーなど)、旅客運送業(タクシー、公共交通機関など)、飲食業などは領収書の宛名がなくても良いと法律で例外として認められています。
また、3万円以下などの少額の場合、やむを得ない場合には領収書がなくても、消費税法上の仕入税額控除の対象として認められるとしています。
ただし、従業員の不正を抑止するために、領収書の受け取りルールは社内でしっかり共有しておきましょう。
収入印紙の割印(消印)は必要【押し忘れは納税したことにならない】
領収書に印鑑は必須ではない、くりかえし伝えてきましたが、収入印紙の消印(割印)は必須。
5万円以上の領収書には収入印紙を貼り付ける必要があります。消印(割印)とは、収入印紙の模様部分と台紙とをまたいで押す印鑑のことです。
収入印紙は貼り付けただけでは納税したことになりません。
再利用を防ぐために、消印(割印)が必須と、印紙税法で定められています。
領収書の印鑑と、収入印紙の消印(割印)は別物なので混同しないように注意してください。
消印(割印)については以下の記事で解説しています。
領収書の印鑑の押し方は?
領収書の印鑑の押し方を解説していきます。
なお、領収書の書き方の全般は以下の記事にまとめています。
角印を使うのが一般的【丸印は使わない】
領収書の印鑑は角印を使用するのが一般的です。
- 角印:会社の認印。社名が入る。形は四角
- 丸印:会社の実印。法務局に登録。形は丸
丸印は契約や会社の口座開設などにも使用される大切なもので、法務局に登録することで正式に会社の実印と認められます。
丸印を領収書の印鑑として使用しても問題はになることはありませんが、万が一偽造される恐れがあることを考えると、角印を使うべきです。
領収書の印鑑はどこに押す?
領収書の発行者の会社名や住所などの上からかぶせるように押すことが多いです。
どこに押すか決められているものではありませんから、会社ごとに自由に設定してかまいません。
個人事業主の場合の領収書の印鑑
個人事業主の場合も、法人の領収書と同じく発行者名や住所・連絡先の欄に少しかぶるように押印します。
印鑑は屋号があるならば屋号の角印が好まれますが、個人名の印鑑でも問題ありません。
領収書の印鑑は必須ではないのでシャチハタでも問題はありませんが、領収書の印鑑の目的である「偽造防止」の観点でいえば、シャチハタは避けたほうが無難といえます。
領収書の印鑑の疑問点を一気に解決!
領収書の印鑑についてよくある疑問をまとめて解決していきます。
領収書の印鑑は誰が押す?【代表者じゃなくてOK】
領収書の印鑑は必ずしも代表者でなくても構いません。
領収書の印鑑を押してもらうために、毎回社長にお願いしに行く、というのは現実的ではありませんよね。
収入印紙の印鑑についても同じく、代表者である必要はありません。
担当者のシャチハタで押す印鑑は必要なの?
飲食店や百貨店などで受け取る領収書には、担当者のシャチハタの印鑑が押されることがよくあります。
何度も書いている通り、そもそも領収書の印鑑は必須ではないので、担当者のシャチハタの印鑑も必須ではありません。
丁寧な印象を与える、万が一トラブルがあったときに担当者がわかるようにする、慣例上押している、といった理由で印鑑を押しています。
領収書に印鑑を押し忘れたら?
領収書に印鑑は必須ではないので、特に問題はありません。
気になるようであれば、取引先から領収書を回収して印鑑を押しなおすと丁寧な印象を与えます。
継続して取引を行っている取引先への領収書や、取引金額の大きな領収書の場合には、押印しなおしたほうが良いでしょう。
なお、収入印紙の割印(消印)忘れは、納税したことにならないので過怠税(本来納めるべき収入印紙の額の3倍)の対象になってしまうこともあります。
収入印紙の負担者は領収書の発行者。
受け取った領収書の印紙に消印がなくても追加で税金を払うことにはなりませんが、金額が大きい場合には指摘したほうが親切でしょう。
印鑑の色は黒でもいいの?
印鑑の色に指定はありませんから、黒でも問題になることはありません。
ただし、領収書に押す印鑑の色は一般的には赤です。受け取った側が違和感を覚えるかもしれません。
また、社名は黒のゴム印や印刷のことが多いので、黒で角印を押すと被って見えにくくなると考えられます。
領収書の印鑑の色は赤が無難です。
領収書に印鑑を押さずに印影を印刷するのはOK?
領収書に印鑑を押さず、印影を印刷することは問題はありません。
もともと、領収書の印鑑は法的に決められているものではありませんし、印影を印刷した領収書は偽造防止にも有効といえます。
印影をデータとして領収書に印刷するには2つの方法があります。
- 押印をスキャナで取り込んでデータ化する
- 専用サイトで印影を作成する
押印をスキャナで取り込み、領収書のフォーマットのデータに貼り付けて印刷する方法は、実際の印鑑の印影なので信用力はありますが、流出すると悪用の恐れがあります。
実印のデータ化は慎重に。
もう一つの方法は専用サイトで印影データを作成すること。無料ソフトや印鑑ショップのWebサイトから作成できます。
有料ソフトを利用すれば、タイムスタンプ(いつ押したのかがわかるデータ)の機能もつけることができ、より信頼性が上がります。
データの印影は電子印鑑ともいいます。印刷だけではなく、領収書をPDFなどのデータで送付する際にも使えますから、利用を検討してみると良いでしょう。
領収書の印鑑|まとめ
領収書の印鑑は法律で定められたものではないので、押印がなくても問題はありませんし、領収書としては有効です。印鑑なしの領収書を経費精算の証憑としても、税務上も問題ないです。
ただし、一般的な領収書には会社の角印が使用されていて、偽造防止の目的もあります。取引先からの信頼を得るためにも、領収書の印鑑はあったほうが良いでしょう。
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