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収入印紙の割印とは、収入印紙の再利用を防止するために印紙を貼り付けた台紙と、収入印紙の彩紋(柄の部分)とをまたぐように押印もしくは自署することを言います。
収入印紙の「割印」という言葉は一般的に使用されていますが、印紙税法では「消印」と呼ばれています。
収入印紙は貼り付けただけでは納税したことになりません。割印をすることが印紙税法で定められています。
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割印のポイントは以下の3つです。
- 割印を押すことは法律で決められている
- 目的は再使用の防止
- 印鑑ではなく署名でもOK
筆者は経理社員として、銀行との契約書や領収書の確認など実際に収入印紙を目にする機会の多い業務を行っていました。
この記事では、収入印紙の割印の方法を図解するほか、知っておきたい法律上の基本の知識を紹介します。収入印紙を扱う業務をしている人は一度読んでおくと役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
収入印紙の割り印(消印)とは?
収入印紙の割印とは、上の図のように台紙と印紙の模様部分とをまたいで押す印鑑のこと。
印紙税法では割印のことを「消印」と呼びます。したがって、正式な名称は消印ですが、「割印」という言葉は一般的に使用されています。
国税庁のホームページには次のように書かれています。
印紙税の課税対象となる文書に印紙を貼り付けた場合には、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(法第8条第2項)~中略~その文書に押した印でなくても、作成者、代理人、使用人、従業者の印章又は署名であれば、どのようなものでも差し支えありません。消印は印紙の再使用を防止するためのものですから、それに使用する印章は通常印判といわれているもののほか、氏名、名称などを表示した日付印、役職名、名称などを表示したゴム印のようなものでも差し支えありません(基通第65条)。~中略~一見して誰が消印したかが明らかとなる程度に印章を押し又は署名することが必要~略~
引用:国税庁「印紙の消印の方法」
つまり、収入印紙の割印のポイントをまとめると次の通りです。
- 割印を押すことは法律で決められている
- 目的は再使用の防止
- 印鑑ではなく署名でもOK
ひとつずつ見ていきましょう。
割印を押すことは法律で決められている
割印を押すことは印紙税法第8条第2項で決められています。
収入印紙を貼り付けていても割印漏れだと納税したと認められず、過怠税が追加で課せられることがあります。
過怠税は本来納めるべきだった収入印紙の額の3倍です。
目的は再使用の防止
収入印紙に割印をする目的は、再使用の防止です。いったん貼り付けた収入印紙をはがして再使用することができないように、割印を押します。
したがって、以下のポイントを守る必要があります。
- 誰が割印したのかが明確にわかるようにする
- 消すことができない方法で割印する
たとえば、収入印紙と台紙をまたいで㊞と書いただけ、二重線を引いただけでは誰が割印したのかわかりませんからNG。
また、消えるボールペンや鉛筆、シャープペンシルなど通常の方法で消せるものは割印として認められていません。
印鑑ではなく署名でもOK
割印という名称に「印」と入っているので印鑑でないといけない、と思われがちですが、実は割印は手書きでも問題ありません。
先ほど述べた通り、誰が割印したのかがわかるようにすればよいので、名前を手書きするのもOKです。その場合も印鑑と同様に、収入印紙と台紙にまたがって署名するようにしましょう。
なお、必ずしも代表者が割印する必要はなく、従業員や代理人が割印をすることも認められています。
そもそも収入印紙とは?
収入印紙について簡単におさらいしましょう。
印紙税法では、決められた課税文書に決められた金額の収入印紙を貼ることが義務付けられています。
課税文書は20種類あり、例えば以下のような文書が該当します。
【収入印紙を貼る課税文書の例】
- 5万円以上の領収書
- 10万円以上の約束手形
- 不動産等の譲渡に関する契約書
- 工事などの請負契約書 など
なお、電子契約やPDFなどの場合には印紙は不要です。課税文書の種類や印紙税額については、国税庁の「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」に細かく掲載されています。
収入印紙の割り印のやり方【図解でわかりやすく】
収入印紙の割印の方法を図解で具体的にみていきます。
収入印紙の割り印の基本
上の図のように、収入印紙と台紙をまたいで押印、あるいは自署するのが基本です。ポイントは次の通り。
- ゴム印やシャチハタもOK
- 氏名、名称などを表示した日付印もOK
- 自署の場合は氏名でも会社名でもOK
収入印紙の割印の目的は再使用されないこと。したがって、シャチハタでも良いですし、社名を自署してもOK。
契約書の割印の場合も契約書に押した正式な会社印でなくてもかまいません。社名の入った角印や自署でも効力があります。
割り印は誰が押す?【代表者じゃなくてもOK】
割印は必ずしも代表者が押さなくてはならないものではありません。
課税文書の作成者は、法第八条第二項 の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない。
引用:印紙税法施行令第5条
例えば領収書の収入印紙を貼るたびに、社長に印鑑をもらいに行くのは現実的ではありませんよね。
割印は代理人や従業員が割印することも認められています。
契約書の収入印紙の割り印のポイントは?
【契約書の収入印紙の割印のポイント】
- 1人の割印があればOK(全員は不要)
- 契約に使用した正式な印鑑でなくてもOK
契約書の収入印紙に、契約者双方の割印を押すのは慣例として行われますが、法律上は片方の割印があればOKです。
割印の目的は再使用の防止なので、甲乙の双方が押す必要はないのです。
また、契約書に使用した契印(複数ページにまたがる契約書の綴目に押印するもの)や止印(契約書の最後に押印するもの)と同じ印鑑である必要はありませんから、角印や担当者のシャチハタでも法律上はOK。自署でも構いません。
とはいえ、契約書の収入印紙の割印は通常は社印を押すことが慣例となっていますから、法律上は問題なくても、契約の相手先から失礼と受け取られないように、事前に確認しておくと良いでしょう。
収入印紙の割り印のNG例
- ㊞の記号
- 斜線や二重線を引く
- 消えるボールペンや鉛筆での自署
繰り返しになりますが、収入印紙の割印の目的は再利用の防止です。
その観点から、誰が割印をしたのかわからないものは無効です。
収入印紙の割り印を間違えたらどうする?
「印影が薄くなってしまった!」このような場合は、空いたところに再度押せば大丈夫です。
印鑑を重ねて押してはいけません。不鮮明になってしまいます。
また、収入印紙を貼らなくてよい文書なのに誤って割印してしまった場合は、税務署で課税文書でないと認められれば還付してもらえる可能性があります。
収入印紙の割り印|まとめ
【収入印紙の割印のポイント】
- 割印を押すことは法律で決められている
- 目的は再使用の防止
- 印鑑ではなく署名でもOK
収入印紙の割印は、法律で決められた大切な業務です。基本を確認して取引先とスムーズに契約書や領収書などの受け渡しができるように確認しておきたいですね。
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