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受取利息といえば預金の利息を思い浮かべ、通帳に振込まれる額が利息だと認識している方もいると思いますが実際には異なります。
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受取利息は振込まれてくる金額が支払額ではありません。利息から所得税と復興特別所得税が控除されていますので、控除された額を受取利息として仕訳しなければなりません。また、源泉徴収された税額を法人税の申告時に調整します。
受取利息は預金以外にも貸付金や有価証券などがあり、それぞれに処理する時の注意ポイントがあります。
この記事では20年以上にわたり経理を担当している筆者が、受取利息の処理と仕訳ポイントについて詳しく解説します。
受取利息とは
受取利息とは預金の利子や国債などの債券の利子、貸付金の利息などです。利率は年利が一般的で期間計算して利息額を計算します。また、受取利息には消費税はかかりませんので非課税で処理します。
会計では受取利息は営業外収益と認識します。受取配当金も含めて受取利息勘定を使用している場合もあると思いますが、損益計算書では受取利息と受取配当金は別勘定で表示しますので仕訳時点で別勘定を用いて処理するのがよいと思います。
受取利息に該当する項目
受取利息に該当する代表的なものをご紹介します。損益計算書の表示科目として受取利息と有価証券利息を区別する場合もあります。その場合は仕訳時点で勘定をわけて処理します。
1. 預金利息
預金には日々の決済や資金繰りなどに用いる決済預金と定期預金があります。残高の変動する預金口座の利息は入金時に受取利息として処理します。定期預金の利息も同様に、支払期日が1年以内の一定の期間ごとに到来するものは支払日に処理します。
2. 有価証券利息
国債・地方債・社債などの公社債の利息が該当します。公社債には利札がついていますので、利札を金融機関に持ち込むことで利息が受け取れます。
割引債やゼロクーポン債は利息のない債券で、額面より低い価格で発行され償還時に額面金額で償還することで差額が利益となります。その利益は受取利息として処理します。利付割引債では利札部分と割引債部分をわけて処理しますので注意しましょう。
また、償還期間まで保有する目的の満期保有目的債券で額面と取得価格に差がある場合は決算で評価替えをします。当期決算期間内の経過期間で差額を按分計算して受取利息勘定で処理します。
例えば額面100万円、取得価格98万円、当期の保有期間6カ月の1年債券の場合は、額面と取得価格の差額20,000円を12カ月(1年)分の経過月6カ月で期間計算し10,000円を処理します。
【評価替えの仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
満期保有目的債券 | 10,000 | 有価証券利息 | 10,000 |
有価証券から得られる利益でも株式は利息ではなく配当金ですので受取利息勘定では処理しません。別勘定の「受取配当金」を使いますので覚えておきましょう。
3. 貸付金利息
貸付することにより得られる利息です。一般の会社が他の会社に貸付することはイメージしづらいかもしれませんが、一定規模のグループ企業間では親会社が子会社に貸付することは珍しいことではありません。
グループ全体の経営を考え、資金の潤沢な会社が、金融機関から借り入れが難しい会社に貸付するのです。その場合の金利は、利益供与にならないように市場の金利を勘案して会社間で決め、利息の支払いも通常とかわらず行います。
受取利息の計算方法
受取利息は基本の計算式をもとに期間計算するのが一般的です。受取利息の計算方法を確認しましょう。
利息の計算式 = 預金(貸付金)金額 × 年利率 × 日数 ÷ 365日
普通預金は日々残高が変動しますので、日ごとの残高について1年を365日とする日割計算をして毎日の利息額を計算します。計算した利息はまとめて支払われ、多くの金融機関は年2回にわけて利息を支払っています。
源泉徴収税額の計算方法
受取利息の計算方法を確認しましたが、実際の支払いは利息から所得税と復興特別所得税の15.315%が源泉徴収されます。法人の地方税5%は2016年1月1日以降の支払分から廃止されていますので現在は引かれません。
源泉徴収税額の計算式 = 利息 × 15.315%(円未満切り捨て)
振込額の計算式 = 利息 - 源泉徴収税額
例えば300万円の預金を年1%で73日間預けた場合の税引後の利息を計算してみましょう。
利息:300万円×年利1% × 73日 ÷ 365日 = 6,000円
源泉徴収税額:6,000×15.315%=918
税引後の利息:利息6,000 - 源泉徴収税額918 = 5,082
この計算から利息:6,000円、口座振込:5,082円、源泉徴収された所得税と復興特別所得税:918円となります。
金融機関によっては「利息決算のお知らせ」として、利息の計算期間と金額・源泉徴収した税額を記載した通知が発行されますので確認してみましょう。
『源泉徴収税額』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
受取利息の仕訳ポイント
受取利息では利息が全額振込まれるものと源泉徴収されて振込まれるものがあります。全額振込まれるものは問題ないのですが、源泉徴収されて振込まれる利息は源泉徴収税額も利息の一部のため仕訳処理が必要となります。
一般的に計上する勘定は「仮払税金」ですが、会社によって勘定科目の設定は異なりますから「法人税・住民税及び事業税」や「租税公課」を使っていることもあります。自社の勘定科目を確認して処理しましょう。
【受取利息の源泉徴収税額の仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 5,082 | 受取利息 | 6,000 |
仮払税金 | 918 |
会計ソフトを使用している場合は入金処理できる勘定が預金・現金・手形・電子債権などに制限されていることがあります。その場合は、システム的に預金と同時に処理することはできないので、振替伝票で源泉徴収税額だけを仕訳します。
受取利息を口座入金額と源泉徴収税額にわけて仕訳する場合は次のように2本立てで処理します。
【受取利息の預金入金分の仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 5,082 | 受取利息 | 6,000 |
【受取利息の源泉徴収税額の振替の仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
仮払税金 | 918 | 受取利息 | 918 |
預金口座が複数ある場合は口座ごとの受取利息と源泉徴収税額の一覧を作成して、1カ月分まとめて税額を振替することもあります。
利息の仕訳方法についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
未収利息の処理方法
受取利息はその期間により計算して、決算日時点で入金されていない場合は経過期間分を未収利息として計上します。ただし、継続的に1年以内の一定期間ごとに支払日が到来するものは未収利息として処理しなくてもよいことになっています。そのため、預金利息や短期の貸付金は未収利息に計上しないことが大半です。
見落としがちなのは貸付金の利息です。貸付金も未収利息の考え方は預金と同じですが、貸付期間が長く支払期日が1年を超える場合があります。その場合は期間計算して決算整理仕訳で未収利息を計上し、翌期のスタート時に再振替仕訳をして調整しますので注意しましょう。
『再振替仕訳』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【貸付金の利息を未収利息に計上する場合の仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
未収利息 | 6,000 | 受取利息 | 6,000 |
【翌期開始時に未収利息を再振替する場合の仕訳例】
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
受取利息 | 6,000 | 未収利息 | 6,000 |
受取利息の税金と法人税
受取利息から源泉徴収された税金は当期所得に対する法人税の前払いとみなします。法人税の確定申告時に、納付すべき税額から所得税額を控除し差し引いた残額を納付します。
所得税額控除を受けるためには法人税申告書の明細書を作成しなければなりません。別表一の「控除税額」「控除税額の計算」欄に、源泉所得税及び復興特別所得税の金額を記入して法人税額を計算します。細かな内訳として別表六(一)と別表四も同時に作成して添付します。
この別表を作成するには、受取利息の額と入金時に源泉徴収された税額を把握しておかねばなりませんので通期で集計表を作成するなど対策しましょう。
まとめ
経理の処理は預金の入金額を確認して処理していくことが多く、受取利息のように源泉徴収されて振込まれるものは少ないので処理モレが起きやすい勘定です。しかし、法人税の申告にも影響する重要な作業です。
受取利息が発生するものをリスト化して支払時に税額が処理されているか確認しながら管理するようにしましょう。
『源泉徴収税額』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。