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「住民票を発行した時の手数料はどう仕訳・記帳すれば良いのだろう」このようにお悩みではありませんか?
この記事では、住民票の発行手数料の記帳・仕訳例から、記帳する際の注意点、そもそもなぜ勘定科目を租税公課とするのかといった点について解説します。
筆者は、事業主として長年「青色申告」を実施しています。その経験から、住民票の発行手数料の記帳・仕訳をどのように行えば良いのかといった点を通じて、スムーズに記帳を行うためのポイントをわかりやすく解説していきます。
ぜひ正しい記帳・仕訳を知り、今後の経理業務をスムーズにするための参考としてください。
住民票発行手数料の勘定科目|記帳・仕訳例
冒頭にて、住民票発行手数料の勘定科目は「租税公課」だと解説しました。しかし、記帳の際には細かい状況の違いにより、記帳方法が少し異なる場合もあります。ここでは、さまざまな状況において具体的にどのように記帳を行えば良いのかを、具体例を提示しながら解説します。
『租税公課』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、以下のように記帳します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 200 | 現金 | 200 |
もし「事業用の財布が手元にない」などの場合は、勘定科目は「租税公課」のままで良いですが、「貸方」で「事業主借」とします。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 200 | 事業主借 | 200 |
以上のように、個人事業主の場合は勘定科目「租税公課」とし、事業用の口座・財布から支払った場合は「貸方を事業主借」として記帳します。コンビニや郵便局を経由して取得する場合も変わりません。
「支払手数料」や「雑費」としても計上可能ですが、消費税の観点からは望ましくありません。
法人の場合
法人の場合でも勘定科目は原則「租税公課」とします。しかし、法人によっては継続して「支払手数料」として処理してきた、または「雑費」として処理してきた場合もあります。その場合は「継続性の原則」により、継続して勘定科目を考慮します。
住民票の発行手数料という「支払手数料」ではありますが、取引相手は「公的機関」です。この場合、やはり「租税公課」として記帳することが本来の仕訳です。
また、支払手数料は多くの取引において消費税の課税対象となりますが、住民票の発行手数料は課税取引ではありません。そのため、税務上の観点からも「支払手数料」とせずに「租税公課」とすることが望まれます。
勘定科目を「雑費」として仕訳することも可能ですが、後述する企業会計の原則「継続性の原則」を満たさなければいけません。
住民票発行手数料を記帳する際の注意点
住民票の発行手数料を記帳をする際は、原則「租税公課」として記帳します。また、次に挙げる点にも注意しましょう。
- 「支払手数料」として記帳する場合は、「非課税」として区分する
- 仕入額控除の対象にはならない
支払手数料として記帳する場合は非課税とする
会計ソフトを用いている場合は、「支払手数料」として記帳する場合に「非課税」として課税取引とは明確に区分することが重要です。
なぜなら、消費税の計算時に必要だからです。多くの場合、支払手数料は課税取引であるため、住民票の発行手数料を「支払手数料」として記帳する際には注意しましょう。
住民票の発行手数料は、「地方公共団体」が法令に基づいて徴収される手数料であるため、「非課税」となっています。
国、地方公共団体、別表第三に掲げる法人その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者が、法令に基づき行う次に掲げる事務に係る役務の提供で、その手数料、特許料、申立料その他の料金の徴収が法令に基づくもの(政令で定めるものを除く。)
出典:消費税法第6条第1項 別表第一
住民票の発行手数料は仕入額控除の対象にはならない
仕入額控除は、消費税の二重課税を解消するためにある制度です。具体的には課税期間中の課税売上に係る消費税額から、仕入税額を控除することで納める消費税額を抑えることができます。
住民票の発行手数料は「非課税取引」であるため、二重課税の解消とはなりません。そのため、住民票の発行手数料は仕入額控除の対象にはならないのです。
租税公課とは
住民票を発行した時に発生する手数料の記帳・仕訳の具体例を解説してきました。以降では、「そもそも租税公課って何?」といった方に向けて、「租税公課」について詳しく解説していきます。
そもそも「租税公課」は、「租税」と「公課」の2つが組み合わさってできている用語です。租税は国税や地方税などの税金のことです。公課は、少しややこしいのですが、税金以外で公的機関に支払ったものです。具体的には次のように分類されます。
租税となるもの
租税となるものは、以下のものが挙げられます。
- 登録免許税
- 印紙税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 自動車税
- 消費税
- 事業税
- 不動産取得税
- 地価税
- 事業所税
- 都市計画税
- その他
公課となるもの
公課となるものは、以下のものが挙げられます。
- 印鑑証明書の発行手数料
- 住民票の発行手数料
- 印鑑登録証明書の発行手数料
- 戸籍謄本の発行手数料
- その他公的機関に対する手数料
租税公課の注意点
では、国や地方公共団体に支払ったものはすべて「租税公課」で良いのかといえば、それは違います。次の3点をおさえておく必要があります。
- 費用として計上できるもの(損金となるもの)
- 税別方式の場合は租税公課とならない
- 年度末に未払いであれば「未払金」などで処理する
そのため、個人の住民税や所得税、社会保険料(国民健康保険税、国民年金保険料)に関しては租税公課として仕訳・記帳することはできません。
しかし、個人事業税については「事業の経費」となりますので、「租税公課」として仕訳・記帳が可能です。
また、税別方式で記帳している場合は「仮払消費税」を使用します。支払いが年度をまたいでしまった・しまう場合は、原則として「未払金」として処理をします。
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勘定科目の決め方
そもそも勘定科目とは、事業における取引をわかりやすく記録するために必要な分類項目のことを指します。
以降では、記帳する際になぜ勘定科目ごとに仕訳して記入していくのか、多くの勘定科目があるが、どのように勘定科目を決めれば良いのかについて、基本的な考え方を紹介します。
勘定科目で仕訳・記帳する目的とは
そもそも、勘定科目は帳簿の作成要素のうちのひとつです。勘定科目を設定する目的には次のようなものが挙げられます。
- 誰が記帳しても、誰が見ても同じ理解が得られるようにするため
- 取引の流れや実態を把握・分類し、経営判断の材料とするため
- 決算時に必要な書類を作成するため
- 所得税などの税金を計算するため
この中で最も身近なものは、「所得税などの税金を計算するため」「決算時に必要な書類を作成するため」の2つでしょう。
事業においてお金の流れが明確にわからないと、税金の計算や、法に定められた決算資料の作成ができません。
また、誰が記帳しても同じ理解を得られることも重要です。
家計を例にすると、食費として勘定していたとしても、見る人によっては外食が含まれているのか、そうではないのかは記帳する人や見る人によっては異なる場合があります。
このようなことがないように、多くの勘定科目が存在しているのです。
法律で厳格には決められていない
多くの勘定科目がありますが、「このような取引の場合はこの勘定科目を使う」といった厳格な定めはありません。
しかし、多数存在している法人が決算のたびにルールもなくバラバラの勘定科目で仕訳された決算書を出してしまうと、投資家や取引先などの利害関係者(ステークホルダー)は困ってしまいます。
そのため、法令ではありませんが、ある程度のルール(原則)が定められたものがあります。それが「企業会計原則」です。個人事業主の場合は「所得税青色申告決算書」に記載されている勘定科目にしたがって帳簿を記入すると良いでしょう。
企業会計の原則にしたがう
「企業会計原則」は、一般的に公正であり妥当なものとして認められている企業会計の慣行のひとつです。そのため、「この企業会計原則」にしたがわなければいけません。
株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
出典:会社法第131条
「企業会計原則」の概要は次のとおりです。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則(複式簿記)
- 資本取引・損益取引区別の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
- その他、「貸借対照表原則」「損益計算書原則」など
ここですべては解説しませんが、まとめると「正しく明確にわかりやすく、継続して同じルールに則って行う」原則となっています。
この原則のなかでも、「継続性の原則」が仕訳においては重要です。つまり、住民票の発行手数料は基本的に「租税公課」として仕訳することが望ましいですが、「支払手数料」としても良いということです。これを経理自由の原則と言います。
この場合、「今年は支払手数料にしたが、来年からは租税公課としよう」などとすることは避けるべきなのです。
所得税青色申告決算書に記載されている勘定科目にしたがう
個人事業主として最も身近な「所得税の青色申告」に記載されている勘定科目にしたがうことも重要です。そうすることによって、個人事業主の決算書である「所得税青色申告決算書」の作成が楽になります。
所得税青色申告決算書に記載されている勘定科目には以下のようなものがあります。詳細は参考リンク先にて確認ください。(国税庁)
<損益計算書の部>
- 売上
- 仕入
- 租税公課
- 水道光熱費
- 旅費交通費
- 通信費
- 広告宣伝費
- その他
<貸借対照表の部>
- 現金
- 当座預金
- 定期預金
- 受取手形
- 売掛金
- 有価証券
- その他
<事業主勘定>
- 事業主借
- 事業主貸
- 元入金
参考:【PDF】所得税青色申告決算書(一般用)【令和元年分以降用】|国税庁
近年多くの企業では、経費精算システムを使って勘定科目の設定が簡略化されています。申請から承認までをスマートフォンで完結できる「TOKIUM経費精算」では、勘定科目を従業員が理解しやすい言葉に置き換えて設定できます。
従業員はわかりやすくなった科目名を選んで申請できるため、経理担当者の確認時において勘定科目の訂正が不要になります。また、会計システムにデータを連携する際には、正規の勘定科目名やコード情報を出力できるので、データの加工や修正に手間がかからない点も安心です。
TOKIUM経費精算の月額費用は、基本利用料(1万円〜)+領収書の件数に基づく従量制で決まります。また、利用できるアカウント数は無制限なので、従業員が何名であっても追加料金なしで利用可能です。そのため企業規模に関わらず、最小限のコストで経費精算を効率化できます。
「機能や料金を詳しく知りたい」という方は、下記より資料をご覧ください。
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まとめ
住民票の発行手数料は、本来「公課」となるものである点と、消費税の非課税取引である点から「租税公課」とすることが望ましいです。しかし、過去に支払手数料などで記帳している場合は、企業会計原則の継続性の原則により、支払手数料として記帳することが望まれます。
もし支払手数料として記帳する場合には、非課税取引として課税取引と明確に区分することを忘れないようにしましょう。
今後、勘定科目に迷った場合は企業会計原則に従い、個人事業主であれば青色申告決算書の勘定科目を参考にして記帳すると良いでしょう。