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貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の3つを合わせて「財務三表」と呼ばれます。これらは一般的には決算書と呼ばれますが、本記事では、このうち、キャッシュフロー計算書(C/F)を理解することに焦点を当てています。
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キャッシュフロー計算書の読み方がよくわからない方はもちろん、キャッシュフローの概念があやふやだったり、そもそもキャッシュフローの考え方がよく分かっていない人でも、読み進めるだけで基礎部分が理解できるようになっていますので、じっくりと読み進めてみてください。
キャッシュフローとは
それではまず、キャッシュフロー計算書の説明をする前に、キャッシュフローの概要について、触れていきましょう。
キャッシュとは何か
キャッシュフローを理解するためには、まずはキャッシュの定義を掴むことが大切です。キャッシュは、英語にすると「cash」となり、現金を意味します。会計上はよく利益が重要視されますが、キャッシュ、すなわち現金の流れや、一時点でどれだけ現金を保有しているかを把握することも、資金繰りの点から非常に重要となります。
フローとは何か
続いて、フローの定義を明確にしましょう。フローは、英語にすると「flow」となり、流れを意味します。対義語としては、ストックという言葉があります。英語にすると「stock」となり、ある一時点で保有している量を意味します。
それぞれの意味について表にまとめると、下記のようになります。
【名称】 | 【意味】 | 【参照する財務三表】 |
フロー(flow) | 流れ | キャッシュフロー計算書(C/F) |
ストック(stock) | ある一時点で保有している量 | 貸借対照表(B/S) |
お金の流れ = キャッシュフロー
つまり、キャッシュフローという言葉の意味は、お金の流れを意味します。利益が大きいか小さいかに関わらず、現金が入ってきたらプラス、現金が流出したらマイナスになるので、キャッシュフローは、会社のお金の出入りを意味しているんだな、と考えてもらえれば、わかりやすいと思います。
キャッシュフロー計算書(C/F)とは
キャッシュフローについて、ぼんやりとでも理解して頂けたかと思います。ここからは実際に、キャッシュフロー計算書(C/F)をどのように読めば良いのかがわかるようになることを目標に、キャッシュフロー計算書(C/F)について1つずつ理解を深めていきましょう。
キャッシュフロー計算書は「C/F」と略されることが非常に多いです。ここまで読み進めてくださった皆さんであれば、これが何を表しているのかおわかりかもしれませんが、正式名称は、「cash flow statement」となります(statementは”書類”という意味です)。
理解してしまえば非常に単純で、お金の流れを計算した結果が書いてある書類なんだな、ということがわかればOKです。
キャッシュフロー計算書(C/F)が必要な理由
ではなぜ、このキャッシュフロー計算書(C/F)が必要なのでしょうか。その最も大きな理由としては、先ほどもちらっとご説明いたしましたが、資金繰りの点にあります。
黒字企業でも倒産してしまう原因は、キャッシュフローにあった
決算書上で利益をいくら出している会社であっても、実際にその利益が現金として回収できなければ、次の利益を生み出すことができません。そのため、キャッシュフローを把握して、現金がどれだけ回収できる見込みにあるのかや、これから手元にある現金がどれだけ流出するのかの予想を立てておくことが肝要となります。
これができていない企業は、仮に利益が上がって、決算書上は黒字であったとしても、事業を継続していくための資金がショートしてしまい、倒産に追い込まれるケースがあります。このような事態を起こさない為にも、キャッシュフローを把握しておくことは非常に重要だと言えるでしょう。
各財務三表の違い
財務三表におけるキャッシュフロー計算書(C/F)の立ち位置を更に明確に理解する為に、それぞれの財務三表の役割を簡単におさらいしておきましょう。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表(B/S)は、英語の正式名称は「balance sheet」で、日本語でも「バランスシート」として呼ばれることがあります。決算日に会社が保有している資産・負債・純資産について記録しており、企業の財政状態を表す書類です。
『貸借対照表』について気になる方はこちら
https://www.keihi.com/column/15807
損益計算書(P/L)
損益計算書(P/L)は、英語の正式名称は「profit and loss statement」で、一定の会計期間における企業の収益・費用を記録しており、経営成績を表す書類です。
貸借対照表(B/S)とキャッシュフロー計算書(C/F)との違い
貸借対照表(B/S)は、決算日時点の記録に過ぎませんから、あくまでも決算日の状態を教えてくれるに過ぎません。この点をキャッシュフロー計算書(C/F)でカバーしています。
キャッシュフロー計算書(C/F)があることによって、現金の流出入が可視化され、どんな原因で増えて(流入して)、どんな原因で減って(流出して)いるかがわかるようになります。
損益計算書(P/L)とキャッシュフロー計算書(C/F)との違い
損益計算書(P/L)は、一定の会計期間のおける収益と費用の差、つまり利益がどれくらい出ているかを表しています。一見、これが黒字であればうまく会社が回っていると思ってしまいがちですが、先ほど申し上げたように、利益が出ても、それがしっかりと回収できなければ意味がありません。
損益計算書(P/L)のみでは、回収まで追うことができません。そこで、キャッシュフロー計算書(C/F)を使って、収益・費用に対する現金の流れを追うことができるようになり、黒字倒産のリスクを予め回避することができるようになります。
キャッシュフロー計算書(C/F)の見方
ここからは、実際にキャッシュフロー計算書(C/F)をどのように読み進めていけば良いのかを解説します。
キャッシュフロー計算書(C/F)を見ると、大きく3つの項目に分かれていることがわかると思います。
- 営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF)
- 投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF)
- 財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF)
それぞれ順番に解説していきます。
営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF)
営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF)は、企業の中心となる事業(いわゆる本業)活動における収入と支出の差額を表します。
この項目がプラスの場合は、本業によって資金を生み出せている状態となりますので、本業が順調であると判断することができます。
逆に、この項目がマイナスの場合は、本業で苦戦している、もしくは売掛金がきちんと回収できていないなどの原因が考えられます。
一般的には、営業CFはプラスである方が望ましいです。
投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF)
投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF)は、設備投資などで固定資産を購入したり、別の事業への投資などにより株式や債権などを取得した際などの現金の流れを表します。
この項目がプラスの場合は、固定資産や株式・債権などを売却して現金を得ている、と読み取ることができます。
逆に、この項目がマイナスの場合は、新たに固定資産を購入した、または投資を行った、と読み取ることができます。実際に何にお金を使ったのかを見るには、貸借対照表(B/S)を前期と当期で比較してみるとわかる場合があります。
一般的には、投資CFはマイナスである方が望ましいです。投資CFがマイナスであるということが、将来的に収益を生み出す可能性につながる為です。
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF)
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF)は、現金の不足分をどのように補ったかを表します。
この項目がプラスの場合は、借入金や社債など、貸借対照表(B/S)上の負債となる科目で資金調達をした、と読み取ることができます。
逆に、この項目がマイナスの場合は、貸借対照表(B/S)上の負債を返済した、と読み取ることができます。
一般的には、財務CFはマイナスである方が望ましいですが、企業の経営方針などによって評価は異なります。例えば、現在成長を続けている企業で、更なる事業拡大のための資金調達をする為に、一時的に財務CFがプラスとなる企業もあります。
キャッシュフローによる企業評価の基準
ここではケーススタディを用いて、キャッシュフロー計算書(C/F)の読み方を更に理解していきましょう。
事例1.:優良企業によく見られる例
優良企業の場合、一般的には下記のようなキャッシュフロー計算書(C/F)となっている場合が多いです。
営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF) | プラス |
投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF) | マイナス |
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF) | マイナス |
本業が順調なので、営業CFはプラス、投資を行っており、投資CFはマイナス、負債を減らしている為、財務CDもマイナス、という極めて理想的な状態です。
事例2.:成長企業によく見られる例
成長企業の場合は、下記のようなキャッシュフロー計算書(C/F)となっている場合が多いでしょう。
営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF) | プラス・マイナスどちらもあり得る |
投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF) | (大きく)マイナス |
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF) | プラス |
成長企業は投資にとてもお金を使っている場合が多い為、投資CFはマイナスになっている場合がほとんどです。その為、本業でまだ成果が上がっていない場合があり、営業CFはプラスの場合もマイナスの場合もあり得ます。資金調達も必要な為、財務CFはほぼプラスになっているでしょう。
事例3.:衰退企業によく見られる例
事業の存続が危うい衰退企業の場合は、下記のようなキャッシュフロー計算書(C/F)となっている場合が多いでしょう。
営業活動におけるキャッシュフロー(営業CF) | マイナス |
投資活動におけるキャッシュフロー(投資CF) | プラス |
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF) | プラス |
事例1.の優良企業とは全く逆のキャッシュフローです。本業がうまくいっていないので営業CFはマイナス、固定資産などを売却したりして資金を得ている場合がほとんどなので投資CFはプラス、借入も行わないと事業が立ち行かなくなるので財務CFもプラス、となります。既に借入が自転車操業化してしまっている場合は、一時的に財務CFがマイナスになることもあると思います。
まとめ
企業の業績を把握する上で最も重要視されるのは利益ですが、利益を上げる為には資金が必要です。キャッシュフロー計算書(C/F)が読めるようになることで、今自由に使える資金がいくらあるのかを把握する手助けにすることができます。資金を管理できるようになることで、リスクを抑えた経営が可能になるでしょう。