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皆さんは 「減価償却費と減価償却累計額の違いは?」 と言われてすぐに答えることができるでしょうか。減価償却の仕訳には 「減価償却費」 と 「減価償却累計額」 のようなややこしい違いをはじめ、直接法と間接法という仕訳方法の違いもあります。
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曖昧な解釈で覚えてしまわないためにも、本記事では減価償却を基礎から復習していき、減価償却の仕訳を完全に理解できるようにサポートをします。
まずは減価償却についてのおさらいから始めましょう。
減価償却の仕訳とは
減価償却の仕訳とは、お店や企業が行なった全ての取引をお金の動きに注目して記録することです。記録をすることで、銀行・株主・社員・税務署などに提示する決算書を作ることができ、自身も事業の業績を把握することが可能となります。
そもそも減価償却とは
事業に使われる建物、機械装置、車両運搬具など一年以上使用して、なおかつ一定金額以上であるものは固定資産と呼ばれます。減価償却とは、これらの固定資産を取得するのに要した取得価値を耐用年数で分割して費用計上するという考え方です。減価償却には大きく分けて定率法と定額法があり、それぞれに特徴があります。
適切な減価償却を行うことで正確な会計処理をすることができるとともに節税効果にも期待できるため、自分の事業形態にあった減価償却の方法を選択する事が大切です。
定率法
法人の場合は基本的に定率法での会計処理が求められます。初年度の償却費が最も高く、終了年度にかけて段階的に償却費が減っていくという特徴があります。定額法に比べ少し複雑ではありますが、資産を早く償却できるため他の事業に手を出しやすい、初年度の節税効果が大きいなどのメリットもある償却方法です。
定額法
定率法とは異なりシンプルで、初年度から終了年度にかけて償却費が一定であることが特徴です。また個人事業主は、原則定額法を用いた会計処理を行います。
減価償却の仕訳を行う上での知識
取得価値
固定資産を実際に使える状態にするまでにかかった費用のことを取得価値と言います。そのため、その資産の価額だけではなく運送料や設置費用も含まれます。
耐用年数
購入した固定資産は年月をかけて古くなっていき、いつかは使えなくなってしまいます。それぞれの資産を使用することができるだろう期間はあらかじめ決められており、それを耐用年数と言います。
『減価償却の耐用年数』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
借方
借方とは貸借対照表の左側に位置するものです。貸借対照表では、借方と貸方はイコールの関係になります。
貸方
貸方とは貸借対照表の右側に位置するものです。
残存価額
耐用年数が経過した後の資産価値を表すものです。耐用年数はあくまで資産を使用することができるであろうと期待されている期間のため、耐用年数が経過し、資産を償却したとしても必ずしも使えなくなるわけではありません。そのため購入時には劣るものの、耐用年数経過後にも価値は存在するのです。
減価償却費
減価償却費はそれぞれの年の償却費を表すものです。これは 「費用」 を計算する損益計算書で用いられます。
例えば取得価値100万円の資産、耐用年数5年で定額法の場合は減価償却費は毎年20万円となります。
減価償却累計額
減価償却累計額とは毎年の減価償却費を足し合わせたものになり、資産を償却するまでにかかった費用の合計額のことを示します。減価償却累計額は 「資産」 の項目で計上されるため、貸借対照表で用いられます。
『減価償却累計額』について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
https://www.keihi.com/column/20181
仕訳において 「減価償却費」 と 「減価償却累計額」 が異なる理由
減価償却費と減価償却累計額では、勘定される財務諸表が違います。損益計算書では 「費用」 を勘定するのに対して、 「資産」 を勘定するのが貸借対照表です。資産は次年度に繰り越すことができますが、費用はできません。そのため 「費用」 である減価償却費は当期のみの償却費を表し、 「資産」 である減価償却累計額は当期末までの合計額となるのです。
以下の表で確認してみましょう。
損益計算書 | 貸借対照表 |
費用 | 資産 |
その年1年分の償却費 | 期末までの償却費の合計額 |
減価償却費 | 減価償却累計額 |
様々な資産に対する仕訳
減価償却資産
減価償却資産には、建物・建物附属設備・構築物・船舶・車両運搬具・工具・器具備品・機械装置などが含まれます。これらの資産を耐用年数に応じて償却していくのが減価償却です。
一括償却資産
一括償却資産とは10万円~20万円の資産のことです。これらの資産に対しては通常の減価償却を行うのではなく、耐用年数関係なしに3年間で均等償却をすることができます。また、この償却方法では固定資産税がかからないというメリットがあります。
少額減価償却資産
少額減価償却資産とは10万円~30万円の資産のことです。少額減価償却資産であれば、全額をその年の経費として一括計上することができます。しかし、これは青色申告者だけに認められた特例です。
https://www.keihi.com/column/5189
減価償却の2種類の仕訳方法
仕訳には直接法と間接法の2種類があります。どちらも減価償却費を左側の借方に仕訳するところは同じです。
直接法
直接法では固定資産から減価償却費を 「直接」 差し引く仕訳方法です。原則、無形固定資産には直接法が用いられます。貸借対照表左側の借方には減価償却費を、右側の貸方には固定資産の勘定科目を書き入れます。固定資産の勘定科目には車両運搬具・工具器具備品・建物などがあります。
直接法では貸借対照表を見れば、帳簿価額( 固定資産の現在の価値 ) はわかりますが、取得価額を知ることはできません。そのため減価償却累計額を新たに表示し、以下の計算式を用いて固定資産の取得価額を求めることができるようにします。
「固定資産の取得価額=固定資産の帳簿価額+減価償却累計額」
直接法による仕訳
具体例を用いて直接法を確認していきましょう。
- 取得原価 1000000円
- 耐用年数 10年
- 償却方法 定額法
- 減価償却費 100000円
- 勘定科目 工具器具備品
このような場合、以下のような仕訳になります。
借方 | 貸方 |
減価償却費 100000円 | 工具器具備品 100000円 |
固定資産の減価償却費が100000円分発生したため、借方に減価償却費100000円を記入する。
固定資産の価値が100000円分逓減したため、貸方に工具器具備品100000円を記入する。
間接法
間接法は直接法と異なり、固定資産から直接減価償却費を引くことはしません。また、有形固定資産には間接法が適しているとされています。間接法では貸借対照表の借方には減価償却費を、貸方には減価償却累計額を書き入れます。そのため、固定資産の取得価額はわかるものの帳簿価額は以下の計算式によって 「間接的」 に求められるので間接法と呼ばれます。
「固定資産の帳簿価額=固定資産の取得価額−減価償却累計額」
間接法による仕訳
次は具体例を用いて間接法を確認していきましょう。
- 取得原価 1000000円
- 耐用年数 10年
- 償却方法 定額法
- 減価償却費 100000円
このような場合、以下のような仕訳になります。
借方 | 貸方 |
減価償却費 100000円 | 減価償却累計額 100000円 |
固定資産の減価償却費が100000円分発生したため、借方に減価償却費100000円を記入する。
勘定科目の減価償却費が100000円分発生したため、貸方に減価償却累計額100000円を記入する。
一括償却資産に対する仕訳例
一括償却資産とは10万円~20万円の資産のことです。多くの人が一括という言葉から、一度で全額を償却することができると思いがちですが、資産を三分割して経費にするということです。
例えば、2020年4/21に18万円のコピー機を購入した場合
18万円分の資産が発生して、15万円分の費用が発生したことを表す仕訳が以下です。
2020年4/21
借方 | 貸方 |
一括償却資産 18万円 | コピー機 18万円 |
コピー機は18万円なので一括償却資産の仕訳では1年につき6万円ずつ減価償却費にすれば良いのです。
そのため、1年目の2020年の仕訳に関しては以下の通りです。
借方 | 貸方 |
減価償却費 6万円 | 一括償却資産 6万円 |
このように購入した年である2020年度(使用期間9ヶ月) は6万円、2022年も6万円(使用期間12ヶ月) 2023年も6万円(使用期間12ヶ月) となり、購入日によらず3年間均等に処理することができるのです。
少額減価償却資産に対する仕訳例
少額減価償却資産とは10万円~30万円の資産のことで、青色申告者の場合はこれらの資産を購入した年に一括で経費計上できます。具体例を用いて確認していきましょう。
例えば、2020年4/21に18万円のコピー機を購入した場合。コピー機は一般的に工具器具備品の勘定科目に当てはまるため、購入日の仕訳は以下のようになります。
2020年4/21
借方 | 貸方 |
工具器具備品 18万円 | 現金 18万円 |
少額減価償却資産による特例では2020年度に一括で経費計上できるため、年末の仕訳は以下です。
2020年12/31
借方 | 貸方 |
減価償却費 18万円 | 工具器具備品 18万円 |
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