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企業価値算定の『DCF法』とは?エクセル計算方法や割引率をわかりやすく解説!

更新日:2023.05.22

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デスクワークをする男性

「DCF法は専門用語が多すぎてよくわからない!」「DCF法を活用したい!」
企業評価などで用いられるDCF法という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?実際に見てみると専門用語も多くて、訳が分からないという悩みも多いようです。

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結論から言うと、経理業務を経験している方ならDCF法は決して難しくありません。DCF法は1~5年後の各年の企業価値の変化を計算するのに加え、6年目以降は一定の割合で企業価値が変化することを仮定した上でまとめて計算を行う方法です。「割引率」「永久成長率」などと難しい用語が出てきますが、これらは一般的な目安である割合があるため、それを使えば妥当な数値を計算で導き出すことができます。
今回はDCF法特有の用語や、エクセルを使った計算方法を、例題を元に詳しく紹介します。複雑な計算を行いやすくするためのエクセルツールも同時に紹介していますので、ぜひ活用してください。

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DCF法とは

DCF法とは一般的には割引キャッシュフロー法と呼ばれています。これは、企業や債券の将来価値を、時間が経過することで変動するリスクや金利などを加味した上で計算する方法です。
すごく単純な例で説明すると、5年定期で1%の長期預金に100万円を預けた場合、1,000,000×0.01=10,000円の利息が5年後に加わります。つまり、現在100万円の価値がある預金が5年後には101万円になるということです。※実際はリスクや金利の変動などでもっと複雑になります。
現在と将来の価値が変わる可能性があるものについても考慮して、将来の企業価値等を算出する方法を使うと、より確実な将来価値を知ることができます。
その方法の1つがDCF法とされています。企業が今後の自社のキャッシュフローを把握する上でも利用されますが、投資家が企業の将来をある程度予想するために利用されることが多いのが特徴です。

DCF法のメリット・デメリット

DCF法のメリットは、具体的な金額が算出できることです。割引率を正確に設定できればかなり具体的な金額を算出できるため、企業評価などに役立ちます。
逆にデメリットは、情報の誤差から算出される金額が大幅に異なるリスクがあることです。情報の精度が低いと算出された金額が大きく異なってしまします。
将来何が起こるかはわからないため、現在わかっている情報で計算をするしかありません。DCF法は将来価値をかなり厳密に算出できる方法ではありますが、正直なところ絶対正しいとは言い切れません。
確実な計算ができないという点はデメリットではありますが、これ以上の方法が無いというのが現状です。

DCF法のエクセルを使った計算方法

DCF法の計算方法は1~5年目と6年目以降で異なります。6年目以降は同様の条件で成長し続けると仮定した上で計算を行うからです。今回は1~5年目と6年目以降を分けて紹介します。
DCF法を使った計算式は、こちらのエクセルシートを参照してください。
DCF計算ツール

Ⅰ.1~5年目の計算方法

DCF計算式
DCFエクセル計算

DCF法の1~5年目の計算式は以下の通りです。※r=割引率

エクセルを使って計算すると、以下のような計算になります。
=(フリーキャッシュフローのセル)/(1+(割引率のセル))^(年数のセル)

例えば1年目のDCFの計算式は=B5/(1+B6)^B4となります。

  • B5セル=1年目のフリーキャッシュフロー
  • B6セル=1年目の割引率
  • B4セル=1年目の年数

この表を活用するためには、事前に「フリーキャッシュフロー」と「割引率」を算出しておく必要があります。それぞれの算出方法については後程紹介します。

Ⅱ.6年目以降の計算方法

ターミナルバリュー計算

6年目以降の計算式は以下の通りです。
6年目以降のDCF=ターミナルバリュー/(1+割引率)^5
DCF法を用いた場合、6年目以降のキャッシュフローは一定の割合で成長を続けると仮定して算出をします。6年目以降に成長を続けた場合のフリーキャッシュフローの総額を示すのが「ターミナルバリュー」です。
ターミナルバリューの計算式はこちら。
ターミナルバリュー=5年目のフリーキャッシュフロー(1+永久成長率)/(割引率-永久成長率)
エクセルを使った場合はそれぞれ以下の計算式になります。
6年目以降のDCF
=(ターミナルバリューのセル)/(1+(割引率のセル)^5
ターミナルバリュー
=(5年目のフリーキャッシュフローのセル)*(1+(永久成長率のセル))/((割引率のセル)-(永久成長率のセル))

ターミナルバリューの計算には、事前に「永久成長率」を算出しておく必要があります。こちらも後程紹介します。
1~5年目のフリーキャッシュフローを使って算出したそれぞれの値と、6年目以降のターミナルバリューを使って算出した値をすべてを合算したものが「事業価値」となります。

DCF法で必要な情報1.フリーキャッシュフローとは

フリーキャッシュフローを構成するもの

フリーキャッシュフローの算出方法の一つとして、営業キャッチフロー+投資キャッシュフローという方法があります。フリーキャッシュフローとは経営者の判断で自由に使う事ができる資金を指しています。

営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフローとは、企業の営業活動から得られたキャッシュフローの事です。営業キャッシュフローがプラスであれば、本業で稼いだ金額で会社を回せているということになります。
対してマイナスの場合は、本業の収益では業務を回しきれず、銀行の借入金や固定資産売却などで資金を確保していると判断できます。

投資キャッシュフローとは

投資キャッシュフローとは、会社の将来に対する投資に関するキャッシュフローの事です。 具体例として、工場や倉庫の修繕、社用車やパソコンの購入、有価証券の取得などが挙げられます。
事業が順調で営業キャッシュフローが黒字の場合、企業の将来のために投資を行う企業が多いです。フリーキャッシュフローがマイナスである原因が投資キャッシュフローによるものであれば、企業の業績自体は問題ないと判断できます。

DCF法計算で必要な情報2. 割引率とは?

DCF法の計算結果を左右する要素として、割引率が挙げられます。割引率は企業の信頼度などから自分で決定できる部分ですが、この割合によってDCF法の計算結果が大きく変化します。
割引率を設定する上で注目したい考え方について紹介します。

割引率の考え方1.金利について

割引率を決める際に考慮したい情報の1つ目は金利です。冒頭でも紹介した長期預金などは、現在は100万円の価値でも利息が付けば5年後に105万円になるといった商品が多いです。現在価値と将来価値の差額を考慮するために、金利を考慮することはとても重要です。

割引率の考え方2.リスクについて

割引率を決める際に考慮してほしい情報の2つ目はリスクです。なぜなら、株価や不動産などは常にリスクがつきものだからです。
例えば500万円の社用車を交通事故で廃車にしてしまう、1,000万円で建てた倉庫が火災で焼失していまう、企業の倒産により持っている株の価値が大幅に下がるなど、大幅な損失につながる可能性があります。
金利よりも見落とされてしまいがちのため、必ず注意しておきましょう。

DCF法における割引率の設定方法

いざ、金利やリスクを考慮した割引率を設定しようとしても、相場や決め方がわからないと不可能です。割引率は専門的な決め方もあるが、実のところ、自分で決めてしまっても構わないものなのです。
理由は、将来の金利やリスクは予想がつかないものなので、どんな方法を使っても確実な割引率の設定は不可能といえるからです。
とはいっても、相場がわからなければどんな割引率を設定していいのか迷ってしまいます。実務では一般的に4~7%の割引率を設定することが多いようです。もし実際に作成する際に割引率の設定に迷ってしまったら、まずは5~6%の割引率を設定して作成すると良いでしょう。

DCF法計算で必要な情報3.永久成長率とは?

ターミナルバリューの計算の際に「ターミナルバリューは一定の割合で成長を続けると仮定して計算を行う」と説明しました。
その成長割合を「永久成長率」といいます。永久成長率は、一般的には0~1%で設定することが多いです。

DCF法の計算方法【例題を解いてみよう!】

それでは実際にDCF法の計算をしてみましょう。計算にはこちらのエクセルファイルを使用します。
DCF計算ツール

例題はこちら

今回は以下の条件の製品の価値について計算してみましょう。
製品の価値:1,000万円
割引率:10%
成長率:5%(これは年々5%ずつ製品価値が上がるという意味です)
永久成長率:1%

1~5年目のDCF算出方法

1~5年目のDCF算出

まずは、1~5年目のDCF計算に必要なフリーキャッシュフローを算出します。
1年目のフリーキャッシュフローは1,000万円です。2年目以降のフリーキャッシュフローは製品価値が5%ずつ上昇するため、以下の通りになります。
1年目のフリーキャッシュフロー=1,000万円
2年目のフリーキャッシュフロー=1,000万円*1.05^1=10,500,000
3年目のフリーキャッシュフロー=1,000万円*1.05^2=11,025,000
4年目のフリーキャッシュフロー=1,000万円*1.05^3=11,576,250
5年目のフリーキャッシュフロー=1,000万円*1.05^4=12,155,063
1~5年目のフリーキャッシュフローが算出できたら、エクセルに当てはめます。

フリーキャッシュフロー、割引率のセルに入力すると、2行目のDCF欄が自動計算されます。

6年目以降の算出方法と計算結果

6年目以降のDCF算出

6年目以降はターミナルバリューの計算が必要です。フリーキャッシュフロー欄に5年目のフリーキャッシュフローの値を入力します。
割引率に10%、永久成長率に1%を入力すると、6年目以降のDCF計算結果と6年目以降のターミナルバリューが算出されます。

あとは1~5年目のDCFと6年目以降のDCFを合算した金額が、右の合計欄に表示されます。この製品の価値は1億2620万8811円となります。

まとめ

DCF法の用語を読み解くと、金利やリスクなど、聞きなれた言葉が非常に多かった事でしょう。DCF法はそれらを加味した上での企業価値評価の方法であると紹介しました。
実際のところ、中小企業などでは常にこういった計算をせず、概算金額で金利やリスクの管理をしている場合もあります。もし企業や製品の将来価値を正確に把握したい場合は、今回のDCF法を役立てて頂きたいです。     

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